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自意識とエゴ

2015年6月19日


 

こんにちは。バラ十字会日本本部の本庄です。東京板橋では、梅雨らしい日が続いています。じめじめとしているのは致し方ありませんが、早朝は涼しくて快適です。

そちらは、いかがでしょうか。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

さて、よくご経験なさる場面だと思いますが、写真を撮られているときのことを思い出していただきたいのです。

笑顔を作ってからシャッターが切られるまでに、間が空いてしまうと、顔がだんだんとこわばってきて、なかなか良い表情が作れないというご経験が、おありではないでしょうか。

いわゆる「自意識過剰」と呼ばれる状態です。

 

最近読んだのですが、ある俳優の方がブログで、このような場合に役立つ方法を紹介していました。

そのためには想像力を活用して、カメラの向こう側に、自分のことを自然と笑顔にしてくれるものを思い浮かべるのだそうです。たとえば、恋人や家族や、あるいは人でなくても、好物の食べ物や、好きな花やペットなどを思い浮かべます。

すると、意識の焦点を自分からそらすことができ、いわゆる「自意識の罠」から逃れることができます。

 

実際に行なってみると分かりますが、この方法はうまく働きます。そして、このような優れたアドバイスには、たいてい背後に、何か本質的な知恵が隠されています。

 

バラ十字会の学習コースでは、人の心の働きには、特徴の異なる2つの部分があるということを学びます。

ひとつは、自己中心的な、つまり功利的で知性的な心の働きであり、いわゆる「エゴ」と呼ばれるものにあたります。この部分は、自分と他を完全に別のものと考える特徴があり、外面的な自己の働きにあたると言うことができます。

心のこの働きには、自分が世界の中心であると考える特徴もあります。また、自分以外の対象のことを、物であっても人であっても、自分とどのように関係しているかという観点だけから見る傾向があります。

優越感、うぬぼれ、自負心、自己中心的な気持ち、支配欲、賞賛されたいという欲求が強すぎることなどは、おおむね、心のこの働きから生じています。

また、エゴは巧妙に姿を変える性質があり、本人が気づかない形でも現れます。よく見られる例としては、他人への不寛容、心のこもっていない過度の礼儀正しさ、行き過ぎた自己犠牲、度を超した健康志向などがあります。

極論をすれば、私たちの考えや発言や行動にバランスが欠けているとき、そこには必ずエゴが絡んでいるとさえ言うことができます。

イワトビペンギン

 

一方、もうひとつの心の働きには、自分以外の対象と自分を完全に別のものとは見なさず、宇宙という全体の中の互いに関連する要素だと考える特徴があります。そして、自分から離れて、他の人の視点に立ったり、まったく客観的な科学的な視点に立ったりすることもできます。

そして、自分と他の人のことを、同一の価値と権利を持っている同じ人間だと見なします。ですから、心のこの働きでは、利己と利他が一致することが多いのです。多くの神秘家が、心のこの部分のことを内面的な自己、本来の自己の働きだと考えています。

 

哲学者の西田幾多郎(1870-1945)は、禅の体験を自身の哲学の基礎にしていたようですが、次の言葉を残しています。

「我々が物を愛するというのは、自己をすてて他に一致するの謂(いい)である。」

西田幾多郎

西田幾多郎

 

 

このように見ていくと、エゴにあたる外面的な自己が悪者で、内的な自己が善にあたると、単純な図式に従って考えてしまいそうになります。

しかし、エゴは絶対的な悪であり、完全に無くしてしまわなければならないと考えることは、極端すぎる考えのようです。外面的な自己と内的な自己という心の2つの働きは、生きていく上でどちらも欠かすことができず、両方がバランスしている場合に、人の行動には、共感、寛容さ、誠実さ、謙虚さ、忍耐などが特徴として表れると考えるのがより適切なようです。

 

しかし私たち人間は、エゴの方に強く影響されて行動してしまうことが多くあります。その理由は、次の2つのことだとされています。

 

ひとつには、人間がまだ心の進歩の途上にあるからです。

歴史の大部分の期間、人類は飢餓や気候変動、天災、肉食獣の脅威と常に戦っていました。そのような厳しい状況では、自己中心的な心の働きを主に使わなければ、生き残ることすらできなかったことでしょう。

そして、文化が発達した後も、この習性は長く残り続けました。

たとえば、西暦1,600年ごろまではほとんどの人が、地球を宇宙の中心だとする天動説を正しいと考えていました。自己中心的な考えの典型だということができます。

その後、地球は太陽のまわりを回っているという地動説が唱えられましたが、当時の人たちがこの新しい説を受け入れるのはとても困難だったようで、哲学者のカントは「コペルニクス的転換」という言葉を使っています。

最近ではさらに、太陽がある私たちの銀河は、宇宙にある約1000億個の銀河のひとつであり、太陽はその銀河の中心からかなりはずれた場所にあるということも分かっています。

つまり、宇宙全体から見れば、人類も太陽系もほんの取るに足らない存在でしかないことが現在では知られています。

以上はほんの一例ですが、このように一部の分野では、自分たちのことを客観視できるような優れた知識を人類は得ることができました。しかし物質の研究に比べて心の研究はまだあまり進んでいませんし、自己中心的な考えが強すぎる傾向が、現代社会に生きる個人にも、集団にも、まだ根強く残っています。

 

私たちがエゴに強く影響されてしまうもうひとつの理由は、人生の最初期にあります。

赤ちゃんは、大声で泣くと、誰かが聞きつけてくれて、おっぱいをくれたり、おしめを替えてくれたりするという経験をします。そしてその経験から、外面的な自己であるエゴの働きを主に使うことを覚えます。

この習性は赤ちゃんが生きていくために必要です。しかし、その後の成長で、別の習性・視点を十分に身につけることに何らかの理由で失敗すれば、エゴの強い影響にとらわれたままになり、気づかないうちに、とても不自由な生き方をする大人になってしまいます。

また、順調に内面的な進歩を遂げたとしても、私たちには誰にも、状況によってはエゴにとらわれてしまう傾向が残っています。

たとえば、自分の欠点を、突然、親しくない誰かに指摘されたような場合です。

 

では、そのような場面で、バランスの取れた心の働きをすぐに取り戻すためには、具体的には、どのようにしたら良いのでしょうか。最初にご紹介したカメラの話がひとつの例ですが、自分から意識をそらすテクニックが役立ちます。

それは、あらゆる時代にあらゆる文化で、言葉は違いますが、多くの人が共通して教えてきてくれていることです。次の2つのアドバイスのことを、きっとあなたもお聞きになったことがあるのではないでしょうか。

ひとつは、「周囲の人のことを、自分自身と同じように尊重する」ということであり、もうひとつは、「自分がしてもらいたいと望むことを、他の人に行なうように心がける」ということです。

この2つのアドバイスを常に守ることは簡単ではありませんが、心の片隅に置いておいて、少し心がけるだけでも、心に大きな自由がもたらされます。そして、周囲の状況が好転します。

 

少し大げさな言い方になってしまいますが、バラ十字会の神秘学の見方からいうと、これらのアドバイスは、普遍的な法則に沿った行動をするということにあたります。

長くなってしまうので、ここで十分にご説明することはできないのですが、愛、普遍的な道徳、利他的な行為、自と他の関係性の重視などは、この宇宙のあり方そのものに深く関連していて、宇宙の法則の表れだと考えるのは哲学的に有力な説のひとつです。

ちょっと話が、難しくなってしまいました。

 

さて最後に、分かりやすい目安ということについてご紹介させていただきたいと思います。

自分が、他の人のために一心に働いているという場面について考えてみてください。

もし、その行いが、今までご説明してきた心の2つの部分のバランスの取れた働きに基づいていれば望ましいのですが、ともすれば私たちは気づかないうちに、姿を変えたエゴを満たすために、自分すらだまして「他の人のために一心に働いている」ように見える行動をしてしまう場合があります。

そうすると、利他的な行為であるべきものが、残念なことに、単なる押しつけに変わってしまったりします。

 

では、どのようにしたら、このようなことが避けられるでしょうか。

誰にもご経験があることと思いますが、エゴの影響にとらわれずに行動をしているときには、すがすがしい、心地よい感じがします。

反対に、知らず知らずのうちにエゴを満たすために行動してしまっているときには、何となく自分が縮こまっているような窮屈な感じがしますし、何かが間違っていると心の奥底の声が教えてくれます。

ですから、写真撮影のときの俳優さんのテクニックや、先ほどの2つのアドバイスを思い起こして、自分から意識の焦点をそらして、ひとときの余裕を作ることさえできれば、うまくいっているかどうかは、比較的簡単に分かります。

 

いかがでしたでしょうか。実は今回のブログは、自戒の念を込めて書いた自分への覚え書きでもあるのですが、少しでもご参考になる点があったとあなたにもお感じいただけたなら、心から嬉しく思います。

それでは、また。

 

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