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「ゾーンに入る」とは

2016年1月22日


 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

昨日は二十四節気の大寒でした。今が寒さのピークでしょうか。

いかがお過ごしでしょうか。

 

最近、腹(ハラ)という言葉が心の片隅から離れず、調べ物をしたり実験をしたりしていました。いえ、これでは何のことか分かりませんね。順番にご説明させてください。「ゾーンに入る」という言葉をご存じでしょうか。

家事でも、お仕事でも、ゲームでも良いのですが、熱心に集中して何かに取り組んでいるときに、いわゆる「流れに乗った」と感じたことが、きっとあなたにもあることと思います。

このようなときは、順風満帆というか、心の負担を感じることなく、効率良くものごとを進めることができ、いつの間にか時間が飛ぶように過ぎています。

 

武道をされている方やスポーツ選手の例が多く伝えられているのですが、流れに乗ったこの状態がさらに進んで、生涯最高の絶好調とさえ感じられるようになる場合があります。そして、このような場合には、特殊な意識の状態が伴うことさえ少なくありません。

たとえば、あるプロ野球選手は打撃の練習中に、「ボールが止まって見えた」と言っています。世界的に有名なある指揮者の方は、絶好調のときに、指揮棒を振っている自分の姿が下の方に見えるという体験をしたことがあるそうです。

柔道で、相手の仕掛けてくる技が手に取るように予測できたり、スキーをしていて、体が勝手に動いて予期していなかった危険が避けられたり、バスケットボールで、ゴールからとても離れているのに、自分が打つシュートの成功があらかじめ分かったりします。音や匂いの感覚が異常に鋭くなったり、周囲の景色がゆっくりと流れて、深い湖の凪いだ水面のように感情が静まる人もいるようです。

回転競技中のスキーヤー

 

このような異常な絶好調の状態は、スポーツ選手やスポーツトレーナーの間で「ゾーンに入る」とか「ゾーン体験」と呼ばれています。そして、一流の選手の中には、意図的にゾーンに入ることができる人がいるそうです。

 

私も試し始めたばかりなので、本当に有効かどうかはまだ実感していないのですが、意図的にゾーンに入るためには、腹に意識を集中したり、腹の中心に重心を落とす練習をしておくことが役に立つと、ある本に書かれていました。

 

実は、腹については前々から気になっていました。おそらくあなたもご存じのことと思いますが、座禅や他の修行、日本や中国の武道の多くでは、下腹で呼吸をすることや、下腹の中心にあたる位置に意識を集中することが重視されます。この場所は、丹田もしくは下丹田と呼ばれ、ヨガでも、チャクラのひとつがこの位置にあるとされます。スポーツの時に、ここに重心があることを意識して、動作をここから始めると、確かに効率的に動くことができるように感じられます。

 

昭和30年代ごろまでは、下腹へのこの意識を、誰もが大切だと考えていたことを思い出します。丹田を体の中心軸から外さないようにすることが、「腰を入れる」という言葉で、年配の方からよくアドバイスされていました。どんな作業をするときにも、腰が入っていない「へっぴり腰」は格好の悪いものだとされ、それどころか、ものごとを真剣に手がけていなかったり、落ち着いていなかったり、へそまがりの考えを抱いている証拠のようにも考えられていたと思います。もう40年以上前の思い出になりますが、小学校の校庭の砂場で相撲を取るときには、へっぴり腰にならないように気をつけたものです。

下腹へ意識を集中したり、そこに重心を落としたりすることに重要な効果があるということは、日本人が昔から直観していた大切な知恵のように思えるのです。

 

このことに関係していますが、広辞苑などの辞書を見てみると分かりますが、「腹」という言葉には、とても多くの慣用句があり、人の感情とか本心とか度量を表わしています。

少しだけ例を挙げれば、「腹がすわる」(物事に動じない)、「腹が大きい」(度量が大きい)、「腹ができる」(覚悟する)、「腹に一物」(何かたくらみがある)、「腹に落ちる」(納得する)、「腹に納める」(秘密を心の中にしまっておく)などです。

 

以上のことから、腹部に重心を落としたり意識を集中したりすることが、スポーツの実力や精神面や、大げさに言えば、生き方にさえ影響をもたらすことは確実なように思われるのです。

しかし、なぜでしょうか。

合気道をしている男女

 

神秘学という視点から考えると、2つの理由が思い浮かびます。ひとつは、「気」と呼ばれることがあるエネルギーに関係しています。

バラ十字会では、生理的な活動のバランスを保ったり、サイキックな(psychic:超常的な)能力のもとになったりするエネルギーを「根源的生命力」(Vital Life Force)と呼んでいます。そして、この生命力にはプラスとマイナスの2種類があるとされます。プラスとマイナスと言っても良い悪いがあるわけではなく、電池にプラス極とマイナス極があるのと同じように、両方があることで機能しています。

 

当会の通信講座で学ばれている方々はよくご存じですが、このうちプラスの生命力は、肺で空気から取り入れられます。そして、マイナスの生命力は腸で食物から取り入れられます。

腹部に意識を集中することには、マイナスの生命力を増強したり、あるいはそれを全身に運んだりすることを促す作用があるのかも知れません。そして、このことにはグラウンディング(grounding)の効果が、きっと含まれているのでしょう。つまり、サイキックな事柄やスピリチュアルな(spiritual:心の深奥や魂の崇高さに関する)事柄に関する練習を、自己流で積んだりしている人たちの一部は、時としてプラスの生命力が過剰になり、精神的にのぼせたような浮ついた状態になることがありますが、マイナスのエネルギーによってバランスをとり、地に足が付いた現実に根ざした態度を強化することができます。それがグランディングの効果ということです。

 

腹部に意識を集中することに効果がある第2の理由に関係していますが、面白い発見がありました。直感のことは、日本語では「虫の知らせ」などと呼ばれることがありますが、英語では「腸の感覚」(gut feeling)と呼ばれるのだそうです。

バラ十字会の神秘学では、直感とは、知性によるのではなく宇宙意識(Cosmic Consciousness)から個人の意識に伝えられる情報であるとされます。つまり、大脳が情報を処理して導き出す答えではなく、個人を超えた源から直接に与えられる情報です。

(宇宙意識とは何かについては、ブログ記事「宇宙意識について」(http://www.amorc.jp/blog/?p=766)をご参照ください。)

 

この点から見ると、大脳の位置する頭部から意識をそらし、腸の位置する腹部に意識を集中することは、瞑想と同じように、知性の働きを静めて宇宙意識からの情報に耳を傾けるテクニックにあたるのかもしれません。宇宙意識から伝えられる、いわゆる「内なる声」は、個人も時間も空間も超越しており、そこには、科学や芸術のインスピレーション、道徳意識などが含まれていることが知られています。

 

ですから、腹部に意識を集中したり、重心を落としたりするスポーツの上達法や、それによって実現する高いレベルのスポーツの実践の先には、人類の現在の段階ではまだ一般的になっていない、高度な意識レベルに達する道が開かれる可能性があります。

実際のところ、スポーツを趣味や専門にされている方の多くは、知性を超えた「体全体に存在するような知」を求めることがスポーツの大切な目的のひとつだということを、そこはかとなく直観されているのではないでしょうか。さらに、先ほど話題にしたゾーン体験は、充実した極度に幸せな瞬間であるばかりか、〈一なるもの〉との絆の実感になることもあり、人生観を変えてしまうことさえあります。あらゆる意味で、ゾーン体験は神秘体験の一種だと言うことができます。

スポーツが秘めているこのような可能性を考えると、それは、人類の意識レベルの進歩に関わっており、オリンピックでどの国が何個金メダルを取るかというようなことよりも、はるかに重要なことのように思えます。

考えてみれば、そもそも弓道や合気道などでは、勝ち負けではなく、心身を統一し無我の境地を体験することが重視されています。つまり、物と心を超え、エゴを超えたレベルの意識を実現することを目指しています。このことは、未来のスポーツのあり方を先取りしているのかもしれません。

夕焼けを背景に弓を射る人

 

スポーツを趣味にされている方も、そうでない方も、手始めにインターネットで方法を調べて、腹式呼吸を練習してみたり、丹田に重心を落とす練習をしてみて、自分の動作や心の動きに、どのような変化があるかをお試しになってみてはいかがでしょうか。

 

今回は、いくぶんまとまりのない話でしたが、あなたにとって、少しでも何かのヒントになれば、心から嬉しく思います。

それでは、また。

 

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