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音楽と神秘学派

2016年4月15日


 

こんにちは、バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

昨晩から、熊本の地震のニュースを見ていました。被災されている方、余震も続き、さぞやご心労のことと思います。陰ながら励ましの思いをお送りさせていただきます。

 

音楽と神秘学派にはどのような関わりがあるのですかと、ある人から尋ねられました。

はい。とても昔から、深い関わりがあります。

 

音楽には、不思議な点があります。世界共通の“言語”として働いていて、ある人がどの国で、どのような環境に生まれたとしても、特に教わらなくても、陽気な音楽を聴けば陽気になり、悲しい音楽を聴けば悲しくなり、滑稽な音楽を聴けば笑顔になり、厳かな音楽を聴けば厳かな気分になります。

昔から世界中で音楽は貴いものであると考えられ、詩や演劇を豊かにするために使われてきました。また、軍隊を奮い立たせるためにも、子供を寝かしつけるためにも、苦境にある人に希望を与え元気づけるためにも、勇気ある行いを励ますためにも、絶望の淵にある人を慰めるためにも使われてきました。

(参考記事:「私の名は音楽」 http://www.amorc.jp/reference/material_027.html

 

音楽療法には、これからご紹介するように極めて古い歴史がありますが、心や体の不調に対処するための補完医療として、再び注目が集まりつつあります。

 

音楽にあたる英語は「ミュージック」(music)です。この語はもともと、ギリシャ神話の女神ミューズ(muse)の芸術を意味しています。ミューズとは、主神ゼウスが記憶の女神ムネモシュネとの間にもうけた9人の姉妹で、学芸全般を司る神です。

Young woman in red dress playing violin in mystic interior

 

一方、神秘にあたるラテン語は「ミステリア」(mysteria)です。最近の研究によれば、この語は、口を閉ざすという意味の「ムオ」(muo)と祝祭を表わす「teria」が語源だという説が有力です。つまり神秘とはもともと、「秘密が伝えられた祝いの祭り」を意味していました。

古代エジプトやギリシャでは、宇宙や神々、人生、生命についての教えは、教壇に立った先生から椅子に座った生徒に教えられたのではなく、祝いの祭りのときに、秘密を守ることを誓った人に式典(演劇)を通して伝えられたのでした。そして、そのような式典には歌や音楽がつきものでした。

 

世界最古の神秘学派は、古代エジプトのファラオ、トトメス3世が紀元前1400年ごろに創設したものだとされています。その後、その教えは主にギリシャの神秘学派を通して世界中に広がっていきました。

 

ギリシャ神話のオルフェウスという英雄の名前をご存知でしょうか。通常は架空の人物だと考えられていますが、いくつかの史料によれば彼は実在する人物で、エジプトで20年を過ごし、その地の神秘学派で学んでいます。

そして、古代の優れた教師が、ことごとく神格化されて伝説のベールに覆われてしまっているのと同じように、彼も神話上の人物になっています。

 

ギリシャ神話によれば、彼は竪琴の名手でした。この竪琴の音色と自分の歌声によって、野獣を手なずけたり、木におじぎをさせたり、石や絶壁を動かしたりしました。

オルフェウスはニンフ(女の精霊)のエウリュディケと結婚しますが、結婚してまもなくエウリュディケは毒ヘビにかまれて死んでしまいます。オルフェウスは、冥界の王ハデスとその妃ペルセフォネの心を自分の音楽によって動かし、妻をこの世に連れて帰ることを許されます。ところが、ハデスとの約束を破って、地上に出る直前に妻のことを振り返って見たために、永遠に妻を失います。

Jean-Baptiste-Camille Corot - Orphée
冥府のオルフェウス (ジャン=バティスト・カミーユ・コロー作)

 

オルフェウスが始めた神秘学では、式典は神殿のようなところではなく普通の住居で行なわれ、神々の歴史について語った聖なる歌によって教えが伝えられました。

 

同じ時代のことですが、ピュタゴラスも神秘学派を創設しています。彼はエーゲ海のサモス島の生まれで、哲学者タレスの勧めでエジプトに渡り、ヘリオポリス、メンフィス、テーベなどの大寺院で22年ほど学んでいます。その後にペルシャ軍によって捕らえられるなど、さまざまな体験をしますが、最終的にはクロトン(イタリア半島東部)に自分の学校を開きます。

ピュタゴラスはエジプトの寺院で、宇宙は数をもとに設計されていることや、音楽の理論などを学びます。しかし初めのころ、この2つを結びつけることがどうしてもできなかったのです。哲学者イアンブリコスの本によれば、ある日ピュタゴラスは鍛冶屋のそばを通り、金床の上の鉄片をハンマーが打つときに出るさまざまな音を聞いて、音の調和についての数の理論に思い至ったのだそうです。

そして、ピュタゴラスはドレミファソラシという7音からなる音階を発明します。

 

余談ですが、19世紀のオーストリアの作曲家ヨーゼフ・シュトラウスは、オーケストラの編成に金床を打つ音を加えて演奏される、「鍛冶屋のポルカ」という楽しい曲を作っています。

 

ピュタゴラス学派では、音楽とはコスモス(Cosmos:秩序ある宇宙)の調和が表れたものだと考えられ、音楽の研究が重視されていました。学んでいる人々の間では、日々を歌でスタートし歌で終わらせることが習慣になっていました。ピュタゴラス自身はといえば、自身で特別に用意した曲を演奏したり、古代の詩を詠唱したりすることで、病人を治療したとされています。

Sanzio 01 Pythagoras
『アテナイの学堂』に描かれたピュタゴラス(ラファエッロ、1509年)

 

ピュタゴラス学派の人たちは、恒星や惑星、月、地球など、存在しているすべてのものには声があり、神をたたえる歌を永遠に歌っていると考えていました。この歌は「天球の音楽」と呼ばれます。しかし、人間は物質という幻影に魂を捕えられているので、神秘家としての学びと実践を通して、宇宙との調和を取り戻し、この幻影から解放されるまでは、天球の音楽を聴くことはできないとされています。

 

一弦琴という楽器があります。細長い胴に、たった一本の弦を張った楽器ですが、ピュタゴラスは宇宙のことを、一弦琴のようなものであると考えていました。その弦の上端は絶対的な精神に結びつき、下端は物質に結びついています。16世紀のイギリスのバラ十字会員のロバート・フラッドは、自分の書いた本で、宇宙を象徴するこの一弦琴についての詳しい解説を行なっています。

現代の神秘学では、物質から宇宙精神まで、宇宙に存在するすべてのものは振動であり、振動数に着目することによって整列することができると考えています。そして、そのような整列によってできるスペクトルを「宇宙鍵盤」と呼んでいます。ピュタゴラスの一弦琴は、宇宙鍵盤という現代の考え方とよく似ています。

 

さて、最初の疑問に話を戻しますが、音楽はなぜ、私たちの心を揺さぶったり、治療に役立ったりするのでしょうか。

説明がやや専門的になってしまうのですが、バラ十字会の考えでは、音楽や人の声は、耳から脳脊髄神経系を通して脳に伝えられるのと同時に、サイキック中枢と呼ばれている器官を通して自律神経系にも伝えられています。

自律神経系に支えられて成立している意識である下意識は、体内の生理活動や感情を司っているので、音楽は、人の健康や感情に直接影響を及ぼすと考えられます。

(参考記事:「心の構造について」 http://www.amorc.jp/blog/?p=936

 

今回は、音楽と神秘学派のつながりということで、オルフェウスとピュタゴラスについてご紹介しました。この2人の神秘学派で教えられていたことは、はるかな歳月を越えて今日へと伝えられ、現代の音楽と神秘学に影響を与えています。

いかがでしたでしょうか。興味深いと感じていただける点が少しでもあったなら、心から嬉しく思います。

それでは、また。

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