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人生の学習 - マズローの心理学

2016年6月3日


 

こんにちは、バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

東京板橋では、この数日、陽射しに恵まれているにもかかわらず、割と涼しい日が続いています。乾いた空気が爽やかで、緑が鮮やかに感じます。

いかがお過ごしでしょうか。

 

先日、何気なくテレビ番組を見ていたときに、本の最近の販売数のランキングが紹介されていました。本屋大賞の受賞作のほか、又吉直樹さんの『火花』、心理学者アドラーの思想を扱った『嫌われる勇気』などが売れ筋だそうです。

 

心理学は、ずいぶんと人気のようです。最近私も心理学の本を読んだり、心理学についての会話をある人と交わす機会があり、この分野の進歩のことを知って驚いたのです。私は心理学の専門家ではないので、あまり立ち入ったことをご紹介する能力はありませんが、キーワードだけをご紹介すると、交流分析、人格適応論、インテグラル理論などです。

 

人生の学習、つまり、豊かに幸せに生きるために役立つ学習として、心理学は素晴しいテーマのひとつだと思います。

 

心理学者というと、あなたは、誰のことを真っ先に思い浮かべるでしょうか。フロイトでしょうか、ユングでしょうか。それとも先ほどのアドラーでしょうか。

20世紀の初めに、彼らが作り上げた分野は精神分析学と呼ばれます。この心理学が主に目指していたのは、心に病を抱えている人たちを救うことでした。人の心には潜在意識という部分があり、行動に大きく影響を与えていることが分かりました。

 

またこの当時、心理学には別の流れもありました。急速に発達した物理学に影響され実験を重視するようになった心理学で、行動主義、実証主義と呼ばれています。

 

そして、アブラハム・マズローという米国の学者によって、この2つの心理学に転機がもたらされます。マズローは、心の病を抱えている人だけでなく、心の健康な人も研究すべきだと考えたのです。彼の創始した心理学は人間性(ヒューマニスティック)心理学と呼ばれます。

アブラハム・マズロー

アブラハム・マズロー

 

そして彼は、長く多面的な調査を行なった後に、人は潜在意識に、それほど絶対的に支配されているわけではなく、実験だけでとらえられる存在でもないという結論を出しました。そして、自由意志を用いて、創造的で幸せな生き方を実現することは、人の誰もが本来持っている能力であると考えました。人間についての、とても明るい見方だと思います。

 

またマズローは、このような自己実現をなし遂げている人の多くが、『至高体験』(Peak Experience)と呼ばれる経験をしたことがあるということも発見します。世界と自分が一体であることが感じられ、あらゆるものに生命が満ちていて、すべてのものごとに意義が感じられる体験です。

マズローのこの発見から、自己を超越する能力に特に注目する、トランスパーソナル心理学という分野が生まれます。

 

ところがここで、疑問が生じます。誰もが持っている人の自然な能力によって、自己実現、自己超越をなし遂げることができるのだとしたら、それをなし遂げる人が、世の中でほんの一握りであることはなぜなのでしょうか。マズローは2つの原因を挙げています。

ひとつは「ヨナ・コンプレックス」と呼ばれます。ヨナは、神の言葉を聞くことができたにも関わらず、臆病さのためにその通りに行動せず、それが原因で魚に飲み込まれたという、聖書の逸話に出てくる人物です。

自己実現を達成すること、天職を見つけること、幸せになること、至高体験を得ることなどを恐れる性質が人間にはあることをマズローは発見し、この性質をヨナ・コンプレックスと名付けました。これらが実現できる可能性が身近に感じられると、とたんに恐ろくなって、実現に向かって進むことを止めて逃げてしまうことが人にはあります。

 

自己実現、自己超越がそれほど簡単でない第2の理由は、「欲求の段階説」という考え方に関係しています。マズローによれば、人の欲求は6つの段階に分けることができます。最も基本的な欲求は「生理的欲求」です。食事とか睡眠とかの欲求で、これらをある程度満たすことができて初めて、人には次の「安全の欲求」が生じるようになります。そして、自分が安全であることをある程度感じることができるようになると、3番目の「社会的欲求と愛・所属の欲求」が生じるようになります。

同様にして、4~6番目に生じる欲求は次のようになっています。

4.「評価欲求」(他の人から価値ある人だと見なされること、他の人の中で価値ある人であること)

5.「自己実現の欲求」(道徳的であること、問題解決、先入観を持たないこと、事実を受け入れること)

6.「自己超越の欲求」(創造性、自発性、子供のような素朴さ、文化の超越、至高体験)

 

ある個人が、どの段階の欲求に満足していて、どの段階の欲求を持っているかということは、その個人の心理面での発達のレベルを示しています。これは、6段ある階段のようなもので、飛ばすことなく下から順番にひとつずつ上がっていかなければなりません。そのため、すべての人が5番目の段階に達しているわけではなく、6番目に達している人は、さらにわずかになります。

森の階段を登る女の子

 

また、アメリカの心理学者ケン・ウィルバーによれば、このような進歩は、個人が成長とともにたどる内面的な進歩であると同時に、世界の各地で、社会が歴史的にたどってきた進歩でもあると考えることができます。

そして現代の社会は、5番目の自己実現から、6番目の自己超越へ進んでいる途中の段階にあるようです。この意味では、6番目に達している人は、時代を先取りしている少数の人だと言うことができます。

 

しかし、このことは、心理学を基に作られた差別主義にはあたりません。ケン・ウィルバーによれば、進歩の段階が次に移行するとき、過去の欲求は新しい欲求に取って替わられるのではなく「含まれ超越される」のだそうです。つまり食欲や性欲や睡眠欲、安全への欲求は、捨て去られるべき低級な欲求ではなく、たとえば道徳的でありたいというような、それより上のカテゴリーの欲求を支える基礎として働きます。

 

彼によれば、このことは内面的な進歩だけではなく、あらゆる進歩にあてはまります。たとえば、宇宙の歴史には、まず原子が現れ、次に原子が結合して分子が現れ、分子の複雑な組み合わせによって細胞が現れ、その組み合わせである、私たちのような多細胞生物が現れました。多細胞生物には、以前のレベルを「超越」した多様性がありますが、原子や分子や細胞が、多細胞生物より劣っているのではありません。優劣の問題ではないのです。多細胞生物には、原子や分子や細胞が「含まれ」ていて、それに基礎にして生きることができます。

 

マズローの欲求の段階説によって、人の内面の発達には社会という要素がとても大切なことがわかります。生理的な欲求や安全の欲求を満たすためには、何よりも安定した社会環境が必要とされるからです。貧しい国や紛争地には、安全の欲求どころか、生理的欲求を満たすことも難しい人たちが多くいることでしょう。

先進国に生きている私たちは、内面の進歩にとって、かなり有利な状況にいることになります。ほんとうに幸せなことです。この幸せが早く世界中に広がることを心から願っています。そして、私たちのようにこの幸せを手にしている人は、自己超越の段階に早くたどり着く努力を重ねて、その成果を世界の精神面での進歩のためにフィードバックする責任があるのではないかと感じます。

 

では、私たちがこの階段を順調に上っていくためにはどうすれば良いのでしょうか。マズローは次のことを勧めています。

1.日常で、時間もプライドも忘れるほど何かに没頭する機会を持つこと

2.人生は選択であり、内面の成長は、どのような選択を行なうかにかかっているということを自覚すること

3.自分の心の内側の声に耳を傾けること

4.他の人からどう思われるかを気にしすぎずに、嫌なものは嫌だとはっきり言うこと

5.仕事に真剣に取り組み、能力をできるだけ発揮すること

6.他の人の欠点ではなく長所を見るように努力すること

7.自分の心理的防衛を発見し、それを捨てるように努力すること

 

いずれも、実に素晴しいアドバイスですね。一方で、かなり耳が痛いです。

 

最後の「心理的防衛」は、もしかしたら耳慣れない言葉ではないでしょうか。大ざっぱに言えば、自分の心を守るために、欲求が自分の中にあることを認めずに潜在意識に押し込めてしまうことです。心理的防衛には、抑圧、投射、分離など、いろいろな種類があります。ご興味のある方は、これらの言葉をインターネットで検索すると、有意義な情報がいろいろと得られることと思います。

 

至高体験を先ほど話題にしました。マズローが至高体験と呼んだことは、バラ十字会のような神秘学派では神秘体験と呼ばれています。マズローの研究によれば、聖人君子や歴史上の偉人だけでなく、誰にもこの体験を得る能力があり、それは人の内面の進歩における自然なできごとであり、また、内面の進歩のための起爆剤になると考えられています。

バラ十字会も同じ意見です。そして、神秘体験を含む内面的な進歩全般のための学習カリキュラムを、世界中の方々にご提供しています。

 

それでは、また。

 

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