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オルフェウスについて

2016年7月29日


 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

関東で、とうとう梅雨が明けました。東京板橋でも昨日までとは打って変わって、澄んだ青空に入道雲がかかっています。

そちらはいかがでしょうか。

 

先日の日曜日の昼ごろのことでした。大きく窓を開け放って、近所迷惑にならない程度のぎりぎりの音量で、テレビ番組「題名のない音楽会」を楽しんでいたのです。

 

番組では、日本を代表する2人のバイオリニストが紹介されていました。

そのひとりは徳永二男さんです。もう50年以上活躍されていらっしゃる、この楽器の演奏の日本の草分けで、高島ちさ子さん、小林美樹さんなど、後進のバイオリニストを多く育てています。

もうひとりは、三浦文彰さんです。国際的に活躍している演奏家で、大河ドラマ「真田丸」のテーマ曲を演奏したことで、さらに多くの人に知られるようになりました。彼もまた徳永さんの生徒です。

番組では、このふたりが3曲の小品を重奏したのですが、その締めくくりがモーツアルトの「ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲」でした。

 

私ごとですが、モーツアルトの曲は今まで、どうも美しすぎて、よそよそしいような感じがしていたのです。

ところがこのときは違いました。

バッハを思わせるような深みのあるなめらかな旋律に明るさがミックスされ、軽やかな2つの音色が、互いを追いかけ合っていました。

それはまるで2つの楽器が、会話を交わしているかのようでした。

 

そして曲の後半に入り、徳永さんが高音のメロディーをやや力強くリードした、そのときのことです。

窓の外のすぐ近くで小鳥が、(きっと私の勘違いだと思いますが)音楽と競い合うように高い声でさえずり始めたのです。

後から考えると、たった5秒ほどのことだったように思います。しかしその瞬間、小鳥の声とヴァイオリンとヴィオラが完璧に溶け合うと、まるで世界には魔法がかかったようになりました。

Violin, rose and music books

 

さて、英語のミュージックの語源になっているのは、女神ミューズです。ミューズとは、ギリシャ神話に登場する9姉妹で、学芸を司る神々とされています。このうちの詩の女神であるカリオペと、トラキア(バルカン半島の南東部)の王の間に男児オルフェウスが生まれます。彼は、神々と人間の歴史が始まって以来、もっとも優れた音楽家だとされています。

オルフェウスは竪琴の名手であり、彼の琴の音と歌声を聴くと、木々は頭を垂れ、野獣は彼の足もとに横たわり、嵐は静まり、岩だらけの崖は動いて、彼の乗る船のために進路を開いたそうです。

 

彼はニンフ(女の精霊)のエウリュディケと結婚しますが、新婚まもなくエウリュディケは毒ヘビにかまれて死んでしまいます。オルフェウスは、冥界の王ハデスとその妃ペルセフォネの心を、自分の音楽によって動かし、妻をこの世に連れて帰ることを許されます。ところが、ハデスとの約束を破って、地上に出る直前に妻のことを振り返って見たために、妻は冥界に引き戻されてしまいます。

「…オルペウスは、ついあの条件を忘れて、妻が後ろからついて来ていることを確かめようとして、後ろを振り返ってしまいました。するとたちまち彼女は後ろへ引き戻されました。二人はたがいに腕をのばして抱き合おうとしましたが、つかむのはただ空気ばかりだったのです! こうしてふたたび死の旅路へと引き戻されながらも、彼女は夫を怨むことはできませんでした。妻の姿を見たいという夫のその待ちきれぬ心をどうして咎めることができましょう! 『さようなら』と彼女は言いました、『これが最後のお別れです』、という間にも彼女はもう連れ去られてしまい、その声さえ夫の耳にはとどかなかったのです。」

(トマス・ブルフィンチ、大久保博訳、「完訳ギリシア・ローマ神話(上)」、角川文庫、1970年)

 

妻を失ったことを嘆く彼の慟哭の歌声には、樫の木も虎も身を震わせたそうです。

その後、オルフェウスが独り身であることを知ったトラキアの女性たちは、彼を誘惑しようとしますが、女性が来るたびに彼は冷たく追い払います。

恥をかかされたと感じた女性たちは、結託してオルフェウスを殺し、体を細かく切り刻んで、竪琴と一緒に川に投げ捨ててしまいます。

 

ミューズたちは、彼の体を集めてギリシャのレイベートラという地に葬りました。そのため、今でもこの地では、他のどの場所よりもサヨナキドリ(ナイチンゲール)が美しく鳴くのだそうです。

捨てられた竪琴はゼウス神が拾い、天に上げられて琴座になったとされています。

オルフェウスのこの物語は、その後の多くの音楽と絵画のモチーフになっています。

竪琴を描いた古いモザイク画

竪琴を描いた古いモザイク画

 

 

ギリシャ神話ではこのように神格化されているオルフェウスですが、いくつかの資料によれば、実在の人物だった可能性があるようです。彼への崇拝が基になって、紀元前6世紀ごろに、オルフェウス神秘学が成立しました。

 

オルフェウス神秘学では、人間の体には神の善なる魂の断片が閉じ込められていて、この魂の望みは、解放されて神々の世界に戻ることだとされています。そして詩と音楽という芸術には、この魂の善の働きを目覚めさせる力があると考えられていました。

またこの神秘学派では、人生の目的は、試練を体験することによって自身を浄化することであるとされていました。

オルフェウス神秘学は、西洋の神秘学の重要な源のひとつになりました。そしてこの影響によって、後の時代のあらゆる神秘学派で音楽が重視されています。

 

たとえば、ギリシャのピュタゴラス学派では、毎日は歌で始められ、歌で終わらせることが習慣になっていました。ピュタゴラスは、体や心の病気を治療するために音楽を用いたばかりか、この宇宙のことを、巨大な一弦琴のようなものだと考えていました。

参考記事:『音楽と神秘学派』

http://www.amorc.jp/blog/?p=1095

 

神秘学派のひとつであるバラ十字会(Rosicrucian Order:薔薇十字団)も例外ではなく、いつの時代も音楽を重視してきました。

その一例ですが、19世紀にフランスの神秘家ジョゼファン・ペラダンは、音楽や絵画などの芸術作品が、人間の魂を向上させるための観念論哲学の復興に役立つと考え、パリ市でバラ十字サロンという展覧会と夜会を開催しました。この催しのためにエリック・サティは竪琴とトランペットで演奏される『バラ十字のファンファーレ』を始めとするいくつかの曲を書いています。

参考記事:『エリック・サティとバラ十字サロン』

http://www.amorc.jp/blog/?p=783

 

20世紀初頭に南フランスで活動していたバラ十字会を継承した当会、バラ十字会AMORCの会員にも、多くの音楽家がいましたし、現在もいます。特に有名な方々を挙げるとすれば、エディット・ピアフ(1915-1963、シャンソン歌手)、ジル・ジャクソン・ミラー(1913-1995、作曲家)、アルベール・フェルベール(1911-1987、クラシック・ピアノ奏者)、アルバン・バティステ(1932-2007、ジャズ・クラリネット奏者)などです。

参考記事:『エディット・ピアフ』

http://www.amorc.jp/blog/?p=1116

 

音楽に深く携わっている方々の多くが神秘学に惹きつけられるようですし、神秘学を学ぶことによって、音楽から得られる感動の体験は、より深みを増すようです。

 

今回の話は以上です。興味深い点があったと少しでもお感じいただけたなら嬉しく思います。

次回は、ぐっとくだけた話題をお届けしたく思います。またお付き合いください。

では、また。

 

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