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アゲハチョウの幼虫と進化

2016年9月2日


 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

日がかげるのが、ずいぶんと早くなってきました。きびしい残暑が終わるのも、もうすぐですね。

いかがお過ごしでしょうか。

 

2年ほど前のことなのですが、田舎からレモンが送られてきました。果汁を絞って趣味のカクテルを作り、残ったタネをプランターに蒔いておいたのです。無事に芽を出して育ちました。今では高さ60センチほどの立派な木になり、ベランダを美しい緑で飾ってくれています。

ところが昨日、ふと葉を見ると、可愛いアゲハチョウの幼虫が3匹食事中で、せっせと葉をたいらげています。

幼虫はまだ小さく、焦げ茶色と白のツートンカラーでした。鳥のフンへの見事な擬態です。もうすこし経つと、美しい緑色をした頭の大きい愛らしい姿になるのでしょうが、大切なレモンの木の葉を、食料としてすべて差し上げる訳にはいきません。彼らの成長を間近でずっと見ていたい気もして、ちょっと残念だったのですが、近所の草むらに移動してもらいました。

鳥のフンに擬態するアゲハチョウの幼虫

鳥のフンに擬態するアゲハチョウの幼虫

 

さて、アゲハチョウの幼虫を見ていて、疑問が沸いてきました。チョウが卵を葉に産みつけると、それが孵って青虫になり、青虫はさなぎになり、さなぎは美しい羽を持つ成虫になります。これは完全変態と呼ばれます。親になるまでに、なぜこんなに複雑な段階を経るのだろうかと思ったのです。

そして調べてみると、なかなか面白いことが分かりました。

 

完全変態をする昆虫は例外ですが、多くの生き物は、生殖細胞が受精すると、卵や子宮の中で一定の期間を経て成体と同じ形になり、その後に卵や子宮から出てきます。この段階を生物学では個体発生と呼びます。

話は突然大きくなりますが、生物は個体発生のときに、地球上に誕生してからの経てきた進化の歴史をおおむね繰り返すという説があります。

進化によってある生物種が誕生することは系統発生と呼ばれますので、個体発生が系統発生を繰り返すという言い方をされる場合があります。また、反復説と呼ばれる場合もあります。

そしてこのことが、先ほどの、アゲハチョウはなぜ完全変態をするのかという疑問を解決するキーポイントでした。

 

個体発生が系統発生を繰り返す例について、解剖学者、発生学者として有名な三木成夫さん(1925-1987)は、次のことを詳しく本に書いています(『胎児の世界』、中公新書)。

ニワトリや人間などの脊椎動物の祖先は、3億7000万年前までさかのぼると、肺魚やシーラカンスのような古代魚(肉鰭魚)でした。そしてその一部が、その後の2000万年ほどの間に、陸上で生活する原始的な両生類に進化しました。

この進化では、陸上の環境に適応するために、鰓(えら)が肺に変わりました。また、体全体の血液の循環システムにも大きな変化が起こりました。

その後両生類は、爬虫類や鳥類、そして私たちのような哺乳類へと進化していきます。

 

ニワトリの卵の中では、温め始めた4日目に、原始魚類が両生類に進化したときと同じ変化が起こります。この4日目は、養鶏業者の誰もが知っている危機的な時期で、慎重に条件を整えてあげないと孵化が止まってしまうのだそうです。

 

個体発生が系統発生を繰り返すということが人間にもあてはまる証拠を三木さんは多数示しています。母親の子宮内の羊水は、古代の海水と同じ成分をしています。それは、人類の遠い祖先が海中で生活をしていた段階を、胎児が繰り返すことができるようにするためです。受胎してから誕生するまでの38週間に、人間の胎児は、地球に生命が誕生してから今までの38億年の生物進化の歴史を再びたどるようです。

 

先ほどの陸上への進出、つまり魚類から両生類への進化について言えば、人間の胎児は受胎後30日~37日にこの進化を反復するとのことです。体全体にわたる大きな変化なので、無事に出産するために乗り越えなければならない、特に注意すべき時期だということです。

 

さて、アゲハチョウに話を戻します。アゲハチョウなどの昆虫の祖先は、約5億年前のカンブリア紀に登場したアイシェアイアという、ムカデやゴカイに似た生き物だとされています。

この生き物は、脊椎動物よりもやや早い4億年前に陸に上がり、後に進化して節足動物や昆虫になりました。陸上で生きることを選んだ理由は、すでに植物が陸で育つようになり、食べ物がたくさんあったからです。

 

陸に進出したばかりの昆虫の祖先は、成虫になるときにさなぎという段階を経なかったと考えられています。

しかし、個体発生が系統発生を繰り返すということは今と同じだったようです。つまり、当時の原始的な昆虫は、卵の中でまず、先祖のムカデのような形に成長し、その後に羽や脚などが整い、成体としての形ができあがった後に、卵から出てきたと考えられます。

 

しかしその後、この原始的な昆虫たちに不都合なことが起こります。両生類や爬虫類など、他のさまざまな生き物が陸上で生活するようになったので、自分たちを食べてしまう敵が大幅に増えたのです。

そしてこのとき、原始的な昆虫たちが生き残りのために取ったのは、驚くべき戦略でした。

それは、成虫になる前に多くの個体が食べられてしまっても、種全体としては生き残るために、小さな卵をさまざまな場所に分けて、なるべくたくさん産むようにするということです。

 

このことは、決して簡単なことでも常識的な戦略でもありません。なぜなら、卵を小さくしてしまうと、卵の中の栄養が少なくなり、誕生するまでに十分に大きく成長することができないからです。

そこで、先祖の形をした、いわば未熟児の段階で卵から出て、自力で食物を得られるように進化したのです。これが現在見られるチョウなどの幼虫などにあたります。

成長したアゲハチョウの幼虫

成長したアゲハチョウの幼虫

 

そして幼虫は植物の葉などを食べてある程度大きくなると、成虫になるためにさなぎをつくり、その中で自分の体を溶かして作り替えます。さなぎになることは、卵の中に戻るようなことだと言われています。このような信じられないほど巧妙なメカニズムのすべてが整い、完全変態をする昆虫が生じました。

 

このような生き物の進化の見事さには、ただただ驚くばかりです。生物学者の方々の多くには同意していただけないことでしょうが、進化の背後には、“宇宙意識”と呼ばれているような超越的な知性が働いているように私には感じられます。

 

ここまで調べてきて、進化の見事さのほかにも、色々なことを考えさせられました。

 

日本語の「うみ」と「産む」という言葉は、語源が同じだという説があります。今までご説明してきたことから考えると、女性の子宮は胎児にとって、まさに太古の海です。古代の日本人には、生物の進化についての科学知識はなかったことでしょうが、子宮は海だということを直観的に理解していたのかもしれません。

 

個体発生はなぜ系統発生を繰り返すのでしょうか。これは推測ですが、体を現在の状態に完成させるためには、何らかの理由があって、歴史的に経てきた手順を省略することができないのでしょう。

たとえを使って言えば、アプリケーションソフトをインストールするためには基本ソフト(OS:オペレーティングシステム)が必要なのと似た事情なのかも知れません。

 

さて、今回お話しさせていただいたのは、生物の体の進化についてでした。

以前に紹介させていただいたことがありますが、アブラハム・マズローやケン・ウィルバーのような、人の精神の発達について研究した心理学者は、その発達の順序と様子が、文化にかかわらず、ほぼ世界中で共通しているということを発見しています。

参考記事:『人生の学習-マズローの心理学』: http://www.amorc.jp/blog/?p=1157

 

そして驚いたことに、個人の精神のこの発達の順序と様子は、人類の歴史上での精神の発達を、再びたどるように進むとのことです。

この場合も、精神を現在の状態に完成させるためには、何らかの理由があって、歴史的に経てきた手順を省略することができないのかもしれません。

 

心理学のこの発見には、人類は今後どのように進歩していくのかということに関わる重要な情報が含まれているように思われます。

できれば近いうちに、ご紹介させていただきたいと思います。

 

今回は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

次回もまた、よろしくお付き合いください。

 

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