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シートンの自己実現

2017年11月24日


 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

寒くなりましたね。北海道などの最高気温がマイナスなのをニュースで聴くと、東京に長年暮らしている私は、思わず身震いしてしまいます。

 

いかがお過ごしでしょうか。

 

さて、私ごとですが、コンラート・ローレンツというオーストリアの動物学者の書いた『ソロモンの指輪』という本を中学生のときに読んだことがあります。

肩ひじの張らない本で、読むと著者の動物に対する愛が伝わってきて、ほのぼのとすることができます。この本に私は、水槽で魚を飼う楽しさを教えてもらいました。

 

この本のまえがきでローレンツは、イギリス出身の動物学者シートンのことを紹介し、「動物の研究に全生涯をかけてしまった大馬鹿者」だと絶賛しています。

私の友人から、この動物学者シートンの生涯についての文章を寄稿いただきましたので、ご紹介します。

 

▽ ▽ ▽

 

記事「シートンの自己実現」

可児明美

可児 明美

 

『シートン動物記』は、小学校時代に読んだことがある人も多いかと思います。

子どもの頃、オオカミ王ロボを読んだとき、シートンが嫌いになりました。ロボを捕まえるやり方がとてもずるい、ひどいと感じたからです。

それ以来、シートンの本をあえて読む機会がなかったのですが、人間と動物との関わりについていろいろと考えさせられていたこともあり、オオカミという動物に個人的にとても惹かれるものもあり、子どもたちに本を紹介する折に、シートンについての本をいろいろと読む機会がありました。

 

シートンは1860年に生まれ、1946年に85歳でなくなっています。1900年を挟む時代を、シートンは生きたわけです。

 

Ernest Thompson Seton

アーネスト・トンプソン・シートン By Bain News Service; cropped and uploaded by JGHowes [Public domain], via Wikimedia Commons

 

詳しくは、『子どもに愛されたナチュラリスト シートン』(今泉吉晴著、福音館書店)などに書かれていますが、当時は今の私たちとは、職業に関する考え方が全くちがうことに驚かされます。

現代の日本で暮らしていると、義務教育を終えたら、その後進学もしくは就職、という進路が一般的でしょう。就職は、どの「会社」に就職するかが大きな関心事になっているように感じます。

中には、どの業界で働くか、もしくはどの職種で働きたいかという観点で就職を考えている人もいるでしょう。

自分もそうでしたし、まわりの就職する年頃の人たちを見てもそう感じます。

 

一方、シートンの場合は、生家は海運で繁栄していましたが、ある時大打撃を受けて、父親が決断し、カナダに移住することになります。カナダでは大自然の中で、資金は十分にある中で、原野に大きな屋敷を建て、必要なものは自給自足で賄うような生活でした。

もともと小さいころから自然や動物が大好きだったシートンは、大自然に育まれ、成長していきますが、シートンの子ども時代には、いくら動物について深い知識と理解を持っていたとしても、動物に関することで専門の職業として成立することはまずなかったそうです。

カナダ・オンタリオ州の池とスイレン

シートンが幼いころに出会ったカナダ・オンタリオ州の自然

 

つまり、シートンがやりたかったことが、「職業」としては存在していなかったのでした。

後に動物物語やその他たくさんの本を書き、精力的に講演活動をして、「ナチュラリスト、作家、そして画家としての仕事を一つにした自立した人生」を実現したシートンは、既存の「職業」に自分をあてはめるのではなく、自分のできることで、着実に仕事を作りだしていったのでした。

 

そのシートンの自己実現の過程を見ていくと、人とのつながりでいろいろな所に行ったり、いろいろな仕事をしたりしています。

画家をしたり、オオカミ猟師をしたり……。ネイティブ・アメリカンの文化にも強い関心をよせ、それについての本を書くほど、ネイティブ・アメリカンの人たちを理解し、深く交流しています。

 

また、自分が観察したことを克明に記録しています。膨大な観察日記から、あの動物物語の数々が生まれています。

物事をありのままにみて、正確に記録することができたこと、プロの画家でもあったということからも、シートンが優れた観察眼と豊かな表現力を持っていたことがわかります。

また、シートンは講演で、野生動物の鳴き声を本物そっくりに再現することができ、人々はたいそう感心し、喜んだそうです。

カナダ・オンタリオ州の湖と森の紅葉

 

そしてシートンが書いたネイティブ・アメリカンの本には、ネイティブ・アメリカンたちがよりどころとしている、生きる指針を見ることができます。

それには、自身の資質を育んで、属する社会のために役立つこと、自身に与えられたものを使って最善をつくし、死に向かっては「死の歌」を高らかに口ずさみながら赴くがよい、といったことが書かれています。

シートン自身も、自身の能力や才能を育み、惜しみなく発揮し、多くの人から喜ばれ、また反対勢力にも遭いながら、一貫してナチュラリストとしての人生を全うしました。シートンがナチュラリストでなかった瞬間は、一度たりともなかったはずです。

 

シートンが生きた85年間は、書かれたいろいろな本をあたってみても、多様にして多彩で、とても豊かで、簡単に述べるようなことはできませんが、もちろん苦難も数々ありますが、彼が様々な状況において「楽しんでいた」こと、彼の活動を支えてくれる人々が確実に存在していたことがうかがえます。

今なお多くの人々に影響を与え続けている、120年ほど前に活躍した、偉大なナチュラリストの偉業に触れる機会に巡り合えたことに感謝します。

おわり

 

参考文献

『子どもに愛されたナチュラリスト シートン』(今泉吉晴著、福音館書店)

『シートン動物記 オオカミ王ロボ』(アーネスト・T・シートン著、今泉吉晴訳、童心社)

『シートン自叙伝』(シートン動物記別巻、アーネスト・T・シートン著、集英社)

『レッドマンのこころ』(アーネスト・・シートン著、北沢図書出版)

 

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ふたたび、本庄です。

今回の著者の可児さんの前回記事はこちらです。彼女がシートンについて、小学生に行った楽しいブックトークを書き起こしていただいたものです。

参考記事:『オオカミは悪者?

 

今日はこの辺で、

では、また。

 

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