資料室

バラ十字古代エジプト博物館のコレクションから 〜命の家の書記の棺〜

Treasures from Rosicrucian Egyptian Museum 
〜 Coffin of a Scribe in the House of Life RC 612 〜

 この棺の断片からは、「命の家」で働いていた書記がこの棺に納められていたことがわかります。「命の家」とは、古代エジプトの神殿に付属していた学校や図書館のことで、古代エジプト人は「ペル・アンク」(Perw Ankh)と呼んでいました。ですから命の家は、古代エジプト人が蓄積していた知識の宝庫でした。こうした学校は、書記が学ぶ場所であっただけでなく、神官や祈祷師を養成する教育の場となっていました。

 子どもたちは8歳ごろになると、この学校でまず神官文字(hieratic:ヒエラティック)の筆記法を学び始めました。神官文字は、当時のエジプトで一般に用いられていた筆記用の文字です。その学習法は、『さまざまな職業の風刺(ふうし)の書』(Satire of the Trades)などの有名な文書を複写することでした。なおこの文書は、通称『書記者たれ!』(Be a Scribe!)と呼ばれています。子どもたちが神官文字を習得すると、その中でも極めて優秀な子どもたちだけが、象形文字(hieroglyph:ヒエログリフ)の筆記法に進みます。象形文字は、聖刻文字や神聖文字とも呼ばれますが、古代エジプトで特に神聖な筆記法であると考えられていました。この子供たちがやがて神官や祈祷師になり、神殿で行われる儀式の文書を読むことが許されるようになります。これらの儀式の文言は、書面として存在しているだけでも、また、読まれた場合にも、非常に強い力を持つと考えられていました。ですから、もしこの文書を冒涜したり、読み間違えたりするだけで、この世界の基盤さえも揺るがす危険があるとされていました。

 したがって、この棺に葬られていたような命の家の書記は特別な存在であり、子どもたちを教育したり、神聖な文書を保護したり伝えたり、世界が今後も守られることを確実にするという重要な責務を負っていまし。バラ十字古代エジプト博物館に所蔵されている棺の断片は、非常に素晴らしい出来栄えであり、この書記の身分の高さを示しています。おそらく「王家の谷」の墓を建設した腕の良い職人が作ったものと思われます。彼の身分を示す文字のほかに、側面の絵には書記が神々を礼拝し、そのお返しに表彰されている姿が描かれています。彼のような地位と身分にある高潔な神官にふさわしく、書記は頭を剃った姿で描かれています。

リサ・シュワッパハ・シリフ、文学修士
バラ十字古代エジプト博物館学芸員、副館長

 ※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラ十字」(No.142)の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

このページのTOPへ