資料室

星々は人に影響を与えるか

Do Stars Influence Us?

リック・トイラー

by Rick Toiler

 古代バビロニア人やカルデア人は、惑星や恒星や月や太陽などの天体現象と、地球や人間界で起きるできごとの間には、例外なくあてはまる対応関係があると考えていました。なかでも肉眼で見ることのできる惑星は、神話の体系に取り入れられ、多くの場合に英雄や神々だと見なされ、特定の種類の影響を及ぼしているとされました。ごく自然なことですが、古代の人々は、惑星と人間界の間には直接の関係があると考えていたのです。人の日常の行ないは、天空で起きていることの影響を受けているとされていました。

 また、天空で起こることのすべてに対応して、何かが地上で起こるとされました。天空と地上には対応があるというこの考え方に従えば、神々の直接の行為や、神々の考えの結果であるとされていた、天空で起きたできごとは何であれ、人間社会のさまざまなできごとに、それ相応の影響をもたらすことになります。そして、天の神々と惑星には、特定の種類の能力や習慣や行ないがあるとされ、神々と惑星の影響を受けて、神々と惑星の性質が人間にも反映するという理論が作られました。

 今では自然現象として知られている多くのことが、古代人の間では、目的論的なものであると見なされていました。つまり、自然現象は、心を持つ何らかの存在が意図して起こしていると考えられたのです。自然現象は、自然の法則が機械的に働いたものだと考えられることはなく、惑星や太陽や月や、ときおり現れる彗星に関連した、人間に似た何かが意図的に起こしているものだと考えられていました。古代の占星術では、これらの天体は、人間を意のままに操るために、意図的に人間に影響を及ぼすとされていました。

 このような目的論的な影響という概念は徐々に変化していき、天体の影響は、完全に自然主義的に考えられるようになりました。つまり、それぞれの惑星には、ある固有の性質があり、その惑星が他の天体と同じ方向に見えたり、特定の位置関係にあったりする場合には、その固有の性質が変化したり強まったりすると考えられるようになりました。さまざまな天体の影響は、以前は気まぐれで予知できないものとされていたのですが、後に一定の影響であるとされ、この影響に反さないように人が行動するならば、人間界には統一と秩序が保たれると考えられたのでした。

 このようにして、天上界と人間界の間に対応があるという考え方は生き残り、人の生活は、惑星の見かけ上の動きに関係しており、生まれたときに、どの惑星が大きな影響を及ぼしていたのかに基づいて、天体と天体の間の関係が、地上でのさまざまなできごとにおいて、人間に影響を与えると考えられるようになりました。

占星術

Astrology

 何千年にもわたって、哲学者や博物学者や、神殿の書記や聖職者など、高度な教育を受けた人々が、占星術の研究に自身の人生の多くの時間を費やしていました。これらの人々は、「星を読む」(reading the stars)技法に全幅の信頼を置いていました。このような人たちが、研究によって十分に満足できる事実を発見したことは明らかです。その一例として、鑑定される人の出生の日付と時刻に基づいて、極めて精度の高い性格分析を行なう方法が開発されたことが挙げられます。私たちは、このような方法の精度を客観的に評価する方法を持ち合わせていませんが、確実に言えることは、天上のできごとと地上のできごとを結び付けようとした占星術師たちの活動と熱心な仕事ぶりが、多くの人々から尊敬の思いとともに眺められていたということです。

 人は克服することのできない運命に支配されているのだという考えが、長い歳月の間に強まり、人々は自分自身で何かを判断できるということを否定するようになったり、さまざまな惑星の動きに対応した、細々とした影響にがんじがらめにされているという結論を出したりするようにさえなりました。現代でさえ、これは特に極端な例ですが、ある星とある星の天宮図上の角度が好ましくないときには、どのような状況であっても、あるいは自らの理性が進めと命じていても、大胆な行いを避ける人がいます。このことを批判するつもりはありません。占星術で得られた予言を信頼している場合には、それは、いともたやすく自己実現的な予言(訳注)となりうるからであり、そのような場合には間違いなく、予言を無視しないほうが望ましいからです。しかし、そのような人々は極端な場合、自分の知性と意志を、想像上の自然界の力に服従させてしまいます。そのような力が、日々の些細な事柄にいたるまで、人生のあらゆる部分を完全に支配していると考えてしまうのです。しかし、現代の占星術師の多くは、惑星にはある種類のできごとを引き起こす傾向があるが、必ずしもその結果を強制するわけではないと主張しています。言い換えれば、ほとんどの状況において、占星術の基礎になっている惑星の影響力に打ち勝つ力が、人間には備わっているということを認めています。

訳注:自己実現的な予言(self-fulfilling prophecy):予言したと言う事実がその実現をもたらすこと。たとえば、ある株の価格が上がるという予言を著名人が行なうと、その株を購入する人が増えるため、それは自己実現的な予言になりやすい。

 占星術は、人類の歴史において一貫して信奉されてきた、最も古い信念のひとつです。では占星術の教義は、どの程度事実に基づいているのでしょうか。それは単なる古い迷信であって、人々が信じやすかった時代の名残にすぎないのでしょうか。古代シュメール人は一般に天文学の始祖として知られています。シュメール人は、肉眼で見える惑星や月や太陽の見かけ上の動きを研究し、そのそれぞれに、さまざまな自然現象を割り当てました。毎日の日の出と日没を正確に観察し、永遠に続く周期を、365と1/4日に区切ることにしました。彼らは、太陰月(訳注)の正確な期間を解明し、周期的に起こる月の満ち欠けによって、人間や動植物がさまざまな面でどのような影響を受けるかに着目しました。惑星のいくつかは、その軌道上で加速したり減速したりするように見えますが、その事実を神話によって説明していたことに疑いの余地はありません。

訳注:太陰月(lunar month):朔望月に同じ。月が朔(新月)から次の朔に、または望(満月)から次の望に至るのに要する時間。平均すると29日12時間44分2秒8となる。古代暦法では29.5太陽日としている。

 シュメール人は、一年のさまざまな季節で星々の位置が変わることに気づき、さまざまな恒星が、夜明けに太陽と同時に周期的な間隔で昇ることを観測しました。月の満ち欠けを研究して、潮の満ち干との関係や、生殖に関連する機能との関係について考えるようになりました。そして、これらの物理的な力や条件は、季節に影響を及ぼしているのであるから、あらゆる生きものにも影響を及ぼしているに違いないと推測しました。

 さまざまな天体が疑いなく季節に関連しているとされ、一方で季節は、地上の生きものに最も大きな物理的な影響を及ぼしているとされたので、時折現れる彗星や超新星も含めた天体の図表を作り、天体の動きの意味を解明することが極めて重要だと見なされ、人々の尊敬を集める技法になったのは不思議なことではありません。彼らが粘土板に刻んだ記録のおかげで、私たちは現在、今日のイラクとシリアを含む「肥沃な三日月地帯」と呼ばれている地域に住んでいた古代人の占星術の考え方を、かなり良く理解することができます。

星々の微妙な影響

Hidden Influences?

 太陽と月は、海の潮の満ち干のような大規模な自然現象を引き起こすことができることから、人間の神経系にも繊細な影響を及ぼすかもしれないと考えるのは理不尽なことではありません。太陽や月はその引力の影響によって、何らかの形で、神経のエネルギーの流れを遅らせたり活発にしたりすることがあるのでしょうか。2つのうちでも月は、潮の満ち干に、より大きな影響を及ぼします。月は、たとえわずかであっても、神経回路の中の情報の伝達を変化させることがあるのでしょうか。必ずしも重力の影響だけではなく、太陽の光の反射によっても、月の満ち欠けが植物にある程度の影響を与えるのであれば、人間の生理的な活動のサイクルにも影響を及ぼすことはほぼ確実です。

 月の満ち欠けによって、人間の神経系の状態は、周期的にわずかに変動します。そしてその変化が、太陰月のそれぞれの時期に、人間の分泌器官の働きに異なる影響を及ぼすことがすでに立証されています。もちろん、月の周期の他にも、体に影響しているさまざまな周期があり、その大部分は月の周期よりも強い影響を及ぼしています。しかし人体には、特に月の周期に対する極めて繊細な感知力があるようであり、他の周期に起因するあらゆる擾乱やノイズにもかかわらず、月が与えている影響を検知することができます。そして、月が私たち人間に強力な影響を及ぼしているのですから、人間も地球上の他の生きものたちも、惑星の運動と配置に対する、月の場合と似たような重要な感知力を発達させてきたというのはあり得ることです。

トロピカル占星術(訳注)で用いられる黄道十二宮に対する、 太陽の見かけ上の位置の一年における変化

訳注:トロピカル占星術(Tropical Astrology)は、黄道十二宮を分割する起点を春分点としている。この占星術はヘレニズム期に採用されるようになり、現代の西洋占星術でも主流となった。一方で、サイデリアル占星術(Sidereal Astrology)はインドの伝統的占星術であり、恒星の位置を基準として黄道十二宮を分割している。地球の歳差運動のため、この2つの占星術では黄道十二宮の位置が一世紀に1.4度ずつずれていく。

 月の満ち欠けが、植物の成長や、それどころかあらゆる生きものの生理学的な活動に影響を与えるということは、もはや、たわいない言い伝えではありません。しかし、月の影響がどの程度のものであるか、また特に、惑星の影響がどの程度のものであるかということは、解釈を基本とするために主観的になりがちな占星術と、天文学や生物学のような客観的な視点に立つ科学の、両方の背後にある重要な検討課題です。占星術が主観的な解釈にかなりの程度依存しているということだけが理由で、占星術が完全に誤りだと言っているわけではありません。というのも、長期にわたる正確な予測を行ったり、その時代に起きたできごとの分析に関して高い評価を得たり、治療者として成功した占星術師が、歴史上多く存在しているからです。

 聡明な人であれば、惑星や月や太陽が、少なくとも重力による影響を地球に与えているという事実を疑うことはないでしょう。科学は立証することができる事実と、再現することができる実験を扱うものであり、このような科学の研究で得られた客観的な発見には、それを否定する主張というものはあり得ません。しかし、占星術のような直観的な技法は、天文学という科学にある程度依存してはいますが、それに加えて直観や、疑う余地なく人間が持っている他のある能力にも依存しています。それは、現在の動向の中に、どのような全体的な傾向があるかということをある程度把握し、その傾向から、どのようなできごとが将来起こりやすいのかを把握する能力です。占星術は、総合的な長期的予測から毎日の詳細な予測までを細かく示すことができますが、精密な予測をなし遂げるためには、おそらくまだ、かなりの進歩が必要とされます。

 占星術が主張する長期的な影響のことを正しいと考えるとしても、一年のうちのどの時期に、ある人が生まれたかということだけに基づいて、その人が、攻撃的、競争好き、危険な性格であるとか、哲学的、親切、神秘的傾向があるなどといった大まかな分類に当てはまることが運命づけられていると、ほんとうに考えることができるでしょうか。これは科学には答えが出せない事柄のひとつだと思いますが、12に分割された宮のいずれかに生まれた人たちが、実際に12種類の全般的に異なる性格の特徴を示すということを、個人的な経験から私は、いささかも疑っていません。愚かだと思われるかもしれませんが、このことは、科学の探究の厳密さのことをとても素晴らしいと考えている人間である私の素直な意見です。占星術は、人の性格の分類という点において、極めて正確なものであるということをさまざまな機会に目撃してきたと、誠実に心から証言することだけが私にできることでしょう。そして今でも、なぜそれほど正確なのかに当惑しており、このことは最初に占星術の研究を始めた60年前と変わりません。

 結論として申し上げるならば、私は科学を信じ、客観的な観察ということが何にも勝ることだと信じ、真摯な科学の探究から得られる結論を信じていますし、科学の出す結論に完全な信頼を置いています。しかし、私には非理性的な信念もあります。うまく説明できないことなのですが、生涯をかけて行ってきた観察に基づく確固たる信念です。占星術の予測は私にとって、日々どんなできごとに出くわす可能性が高いかを告げてくれるといったたぐいのものではなく、ある人がどのようなタイプの人間であるのか、人生で何をなし遂げる可能性が高いのか、どのような危険に遭遇する可能性が高いのかを、大まかに描いてくれるものです。

 科学の厳密な正当性と、直観と解釈に基づく技法である占星術の中間に、バランスの取れた妥協点が見いだせると私は考えています。科学はありのままの真実について語る学問ですから、そこには反論というものがあり得ません。しかし同じように、経験豊かな占星術師の直観が出した結論に、科学は反論することはできないと言うことができます。あらゆる時代の人間に備わり、生き延びようとする奮闘のために役立ってきた直観という能力の詳細な性質とメカニズムは、理性に基づくいかなる研究によっても、いまだに解明や発見がされていないからです。

 ※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラ十字」(No.145)の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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