宇宙のクウィンテセンスを求めて-中世とルネッサンスの錬金術師はどのように瞑想したか(後編) https://www.amorc.jp 神秘学通信講座「人生を支配する」 Fri, 15 Mar 2024 08:20:59 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.3 https://www.amorc.jp/wp-content/uploads/2021/09/cropped-amorc-favi-32x32.png 宇宙のクウィンテセンスを求めて-中世とルネッサンスの錬金術師はどのように瞑想したか(後編) https://www.amorc.jp 32 32 宇宙のクウィンテセンスを求めて-中世とルネッサンスの錬金術師はどのように瞑想したか(後編) https://www.amorc.jp/searching-for-the-cosmic-quintessence2/ Fri, 15 Mar 2024 08:19:27 +0000 https://www.amorc.jp/?p=13839 錬金術師ヴァシリウス・ヴァレンティヌスが描いたとされる瞑想のための象徴画「哲学者のアゾート」を用いた瞑想の方法が解説され、当時の錬金術師たちが行っていた瞑想を体験することができます。

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以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

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区切り

宇宙のクウィンテセンスを求めて-中世とルネッサンスの錬金術師はどのように瞑想したか(後編)
Searching for the Cosmic Quintessence: How Alchemists Meditated in the Middle Ages and Renaissance

デニス・ウィリアム・ハウク博士
By Dennis William Hauck, PhD

『哲学者のアゾート』(Azoth of the Philosophers)(バシリウス・ヴァレンティヌス作、1659 年)This restored and colored versioncopyright 1999 by Dennis William Hauck.
『哲学者のアゾート』(Azoth of the Philosophers)(バシリウス・ヴァレンティヌス作、1659 年)This restored and colored versioncopyright 1999 by Dennis William Hauck.

(前編はこちら)

「哲学者のアゾート」(Azoth of the Philosophers)は、ドイツの錬金術師バシリウス・ヴァレンティヌス(Basil Valentine)が描いたとされる、瞑想のための象徴画です(脚注10)。原画が描かれたのは1400年代の初頭ですが、その後200年間はキリスト教会の目から隠され、錬金術師たちの間だけで密かに共有されていました。この象徴画を多くの人が知るようになったのは、ルネッサンスの最盛期である1659年に『哲学者のアゾート』という本がパリで出版されてからのことでした。この書物の本文は、1626年にすでに出版されていた、挿絵のない版をベースにしています。ヴァレンティヌス作とされるこの本の題名は『アゾート、すなわち哲学者たちの隠された黄金への道』(Azoth, ou le Moyen de faire l’Or cache des Philosophes)でした。

アゾートの原画が秘密にされていたのは驚くべきことではありません。この絵は、実は錬金術のマンダラ(訳注)と呼ぶべきものであり、錬金術の作業によって意識を変容させるために用いられました。意識を変容させる目的は、神聖な完全性を獲得し〈創造者〉との合一を達成することでした。こうした精神的な実践は教会の外では許されず、錬金術師の中には処刑された者もおり、その最も良く知られた例はジョルダーノ・ブルーノ(Giordano Bruno)です。私室で祈りと瞑想を行うことによって神を体験できるということを話題にしただけでも火刑に処される可能性がありました。

(訳注:マンダラ(Mandara):元々は「円板」、「円輪」を意味するサンスクリット語。調和と秩序のある体系(Cosmos)を表す図。仏教では悟りの世界を象徴するものとして修法に用いられる。)

「アゾート」という錬金術の用語が最初に用いられたのは、ゾシモス(Zosimos)、ユダヤ婦人マリア(Mary the Jewess)やジャービル・イブン・ハイヤーン(別名ゲーベル)(Jābir ibn Hayyān or Geber)が書いた古代の書物でした(脚注12)。この語は、あらゆるものを原初の状態まで戻し、そこからそれを完成した状態にする万能の変性薬を意味し、その語源は、アラビア語の水銀(al-zā’būq)です。

「アゾート」(Azoth)という言葉の最初の2文字は、当時の学者が使っていた3つの言語の最初と最後の文字に合致します。それは、ラテン語の「A」と「Z」、ギリシャ語の「アルファ」(Α)と「オメガ」(Ω)、ヘブライ語の「アレフ」(א)と「タヴ」(מ)です。つまり、「アゾート」が意味しているのは、「大いなる作業」(訳注)の始まりと終わりの両方、すなわち「作業」の始まりにある混沌とした「原初の物質」と、終わりにある完成されたエッセンス(賢者の石)の2つを同時に含み、そのどちらもコンロトールするということです。

(訳注:大いなる作業(the Great Work):錬金術の別名。)

「哲学者のアゾート」(Azoth of the Philosophers)の中央の円には、髭を生やした錬金術師の顔が描かれていますが、「作業」はここから始まります(アルファ地点)。鏡をのぞき込むように、ここに錬金術師は意識を集中し、瞑想を始めます。錬金術師は、この内省を終えると内的な作業を始め、7までの番号が割り当てられた円の中に描かれた内的な操作を、マンダラを一周するように次々と行います。瞑想の終わり(オメガ地点)で中央の円に戻ると、今度は顔の、頂点が下を向いた三角形の中の部分に意識を集中します。

錬金術師の顔に重ねられた下向きの三角形は四大元素の「水」を表す記号であり、天から降り注ぐ〈創造者〉の恵みを象徴しています。

三角形の内側は〈創造者〉の顔だと見なすことができ、この絵がはっきりと示しているのは、〈創造者〉の顔と錬金術師の顔とが、「作業」をやり遂げた時点で一つになるということです。

不幸にして、このような考え方は神への冒涜と見なされ、中世では死罪にされることもありました。ルネッサンス後期に入り、神の崇高な性質が人間にも宿っているという考え方が社会に浸透してきたときに初めて、アゾートの絵が公開されました。

アゾートを使った瞑想はいたって明快なものですが、前もって、そこで使われる象徴記号の複雑な配置と意味を理解しておく必要があります。上の図案に描かれているマンダラ(円形の部分)は錬金術師の身体を図式化したもので、そこから伸びた四肢は、四大元素のバランスが完璧にとれていることを意味します。両足が中央のマンダラの背後から突き出し、片方を「地」に、もう片足を「水」に着けています。そして、右手には「火」を表す松明を持ち、左手には「空気」を象徴する羽が握られています。

また錬金術師は、背景に描かれている男性的な力と女性的な力との間で、バランスを保って立っています。彼は、右手側(図の左下)の丘の上でライオンに座っている太陽の王ソル(Sol)と、左手側(図の右下)の大きな魚に座った月の女王ルナ(Luna)との神聖な結婚によって生まれた子供なのです。エメラルド・タブレットには、「その父は太陽、その母は月」と書かれています(脚注13)。

陽気で外向的な太陽の王は笏と盾を持っていますが、それは理性が支配する目に見える世界に及ぼされる権力と強さを象徴しています。しかし、彼の足下の洞窟には、王に拒絶され無意識へと追いやられた心の内容を象徴する火を吹くドラゴンが、王が傲慢になりすぎたら襲いかかってやろうと待ち構えています。

物憂げで内向的な月の女王は、大きな魚を結わえた手綱を握っていますが、これは、王を脅かしているのと同じ無意識の影響力を彼女が受け入れており、この力と女王が結びついていることを象徴しています。彼女の背後にある麦の籾殻は、彼女が豊饒と生育に関連していることを表しています。左腕に抱え持った弓と矢は、彼女が自分の存在の一部として受け入れている、心と体の傷の象徴です。なぜなら意識の女性面は、あらゆる痛みや苦しみとともに、世界をありのままに受け入れるからです。

単純な意味としては、王と女王は、人間の経験の素材となる思考と感情を表しています。錬金術師が作業で扱うのもこの2つです。太陽の王は、スピリット(訳注)の特徴である思考と意志の力を象徴しています。月の女王は、ソウル(訳注)の混沌としたエネルギーを構成する、気分や感情の影響を表します。この両者がひとつに溶け合う(結婚する)ことによって、エジプトの錬金術師たちが「心の聡明さ」と呼んだ直観が豊かに働く、意識の新たな状態が生じます。

(訳注:スピリット(spirit):スピリットは極めて多義的な語であり、バラ十字思想では通常、物質を成立させているエネルギーを指すが、この場合は、魂の男性的な面を意味する。)

(訳注:ソウル(soul):通常はソウルという語は魂そのものをさすが、この場合は魂の女性的な面を意味する。)

錬金術師の両脚の間で、ルートチャクラ(第一チャクラ:全身を支える要である尾てい骨周辺)の高さには、正方形が描かれています。またその下方にはコルプス(Corpus:「身体」を意味する)と書かれた立方体の石があります。この石を囲む5つの星は、クウィンテセンス(Quintessence)つまり第5の元素(Fifth Element)が肉体に隠されていることを表しています。エメラルド・タブレットには、「(クウィンテセンスに)備わっている本来の力は、土に変わることで完成する」と記されています。錬金術師の頭があるべき場所には、翼のついた太陽の円盤が描かれています。これは、心の錬金術(訳注)の作業を通して現れる、高められた本質(ascended essence)、つまりその人のクウィンテセンスを象徴しています。

(訳注:心の錬金術(spiritual alchemy):卑金属を貴金属にすることを目標にした錬金術が「物質の錬金術」と呼ばれたのに対して、心の卑しい性質を貴い性質に変えることを目標にした錬金術は、「心の錬金術」、「精神の錬金術」、「スピリチュアル錬金術」などと呼ばれる。)

クウィンテセンスの翼の先に触れるようにして、左側には炎に包まれた大トカゲ(salamander)がおり、右側には止まっている鳥の姿が描かれています。大トカゲの下には「アニマ」(Anima:魂の女性面)、鳥の下には「スピリタス」(Spiritus:魂の男性面)と記されています。魂の女性面の象徴である大トカゲは太陽の灼熱に引き寄せられ、魂の男性面の象徴である白い鳥は月の冷気に引き寄せられています。これは、宇宙を動かしているエネルギーが持つ根本的な二元性を図示しており、女性的な「陰」と男性的な「陽」のエネルギーの相互作用を表す陰陽思想のシンボル(大極図)と同じ意味を持っています。魂の男性面(Spiritus)と魂の女性面(Anima)と肉体(Corpus)が大きな逆三角形を形作って、中央の錬金術師の図案の背後に配置されています。これらは一体となって、創造されたあらゆる生きものの内部に秘められている三つ組の根本要素を象徴しています。錬金術師たちは、この根本要素を硫黄(Sulfur)、水銀(Mercury)、塩(Salt)と表現しました。

宇宙を動かしているエネルギーが持つ根本的な二元性を図示しており、女性的な「陰」と男性的な「陽」のエネルギーの相互作用を表す陰陽思想のシンボル(大極図)
宇宙を動かしているエネルギーが持つ根本的な二元性を図示しており、女性的な「陰」と男性的な「陽」のエネルギーの相互作用を表す陰陽思想のシンボル(大極図)と同じ意味を持っています

アゾートのマンダラに示されている錬金術の作業をひとつひとつ進めることによって、準備作業が進行します。錬金術師の体を形作っている星形の模様は、すべての魂の中で進行している「内なるクウィンテセンス」という錬金術の秘密の過程を表しています。パラケルススは、これを「人間の中の星」(Star in Man)と呼びました。それは、「アニマ・ムンディ」(Anima Mundi)すなわち宇宙の魂の進化の過程と同じです。

「人間の中の星」からは「1」と書かれた黒色の放射が伸びており、その先端は肉体を表す石(Corpus Stone)を指しています。これは「天体の梯子」の1段目を表しており、そこに書かれている記号は鉛と土星の2つを意味します。これは「大いなる作業」を開始するときの、典型的な状態です。1本目の放射には塩を表す四角い記号も描かれていますが、これは、不完全な状態でこの世に出現した救済されていない物質から「作業」が始まることを示しています。それは、いかなる物質も完成へと導かれなければならないということさえ示している可能性があります。アゾートを巡る動きは時計回りで、天体の梯子の各段の間には一連の円が描かれ、次の段階へ進む方法、つまり現在の状況を変える方法が示されています。

これらは、錬金術の作業を示しています。

最初の円(第一の放射と第二放射の間)の中には、頭蓋骨に止まった黒いカラスが描かれており、円の外側には、「訪問する」や「旅立つ」という意味のラテン語「Visita」という語が記されています。黒いカラスは、錬金術の最初の「黒の段階」(Nigredo)の象徴であり、この段階では、変容させられる対象が、本来の成分に戻るまで分解されて浄化されます。

円の中の光景は、「焼成」(Calcination)という最初の作業を示しています。「焼成」とは、火という元素を用いて無価値なもの(dross:かす)を焼き払い、隠れている本質を露わにする作業です。「焼成」やその関連語である「石灰化する」(calcify)、「カルシウム」(calcium)などの単語は、石灰岩または骨を意味するラテン語の「calx」に由来しています。何かを焼成するとは、チョークのような灰白色になるまで燃やす、灰にする、焼き尽くすことです。第一の円に見られる頭蓋骨は、「焼成」を象徴する古典的なシンボルです。

この最初の作業が意味するのは、利己心と物質的な富への執着を打ち砕くことです。通常であれば、人は年齢を重ねるにつれて謙虚で質素になっていくのが自然な成り行きです。しかし、心の錬金術に携わる人たちは、自身に内在する傲慢さを、すぐに意図的に放棄します。この作業を進めるために、厳しい内省と自己評価という火を燃え立たせ、偽りのものすべてが排除されます。

アゾートの星の第2の放射は王に向けられており、この作業の対象が男性的な意識であることが示されています。これは「天体の梯子」の2段目にあたり、放射に書かれている記号は、金属のスズと木星の両方を表します。

2つ目の円の中の絵は「溶解」を表しており、黒いカラスが、自分が溶け出すのをじっと見つめており、より純粋で白い部分が自身の目の前に現れます。溶けた液溜まりに反射しているのは、「魂の鳥」(Soul Bird)の白い姿であり、この作業でこの姿が露わにされます。これはまだ錬金術の「黒の段階」であり、浄化の過程が続いています。溶解の円の外側の輪には、「内部」(Interiora)と書かれており、この作業が心の最も深い部分で行われることを表しています。

「溶解」とは、意識の拒絶された部分である潜在意識に完全に没入することによって、心の中のまがいものにあたる構造を破壊することを意味します。溶解に必要な心のエネルギーは「王水」(Waters of Dissolution)と呼ばれています。それは、錬金術師の内部に夢や声、光景、奇妙な感情といった形で現れ、日常生活と並行して存在する無秩序で不合理な世界を浮き彫りにします。溶解の間、意識はコントロールを手放し、埋もれていた物質的で束縛されたエネルギーが表面化します。

アゾートの第3の放射は「火」を表す松明に向けられ、鉄と火星を表す記号が書かれています。この放射にはまた、硫黄を示す小さな記号が書かれていますが、鉄は硫酸(Vitriol)の中で、硫黄と化学的に結合します。反応性の高い腐食性の液体である硫酸のことを、錬金術師たちは液体の火と呼んでいました。

3番目の円は「分離」(Separation)の作業を表しています。地に縛りつけられた黒い「魂の鳥」が2羽の白い鳥に分裂し、最初の2つの作業で取っておいた残りの部分を回収しています。これは魂の女性面と男性面の最初の結合であり、新たに獲得した高められた意識によって、取っておく価値があるものとそうでないものを識別できるようになります。この円の上には、「大地の」という意味の「Terra」という語が書かれていますが、これは、日常生活で形作られた性格の堕落したかすから抽出された、崇高な心のエッセンス(essence:精髄)を意味しています。

アゾートの第4の放射は、図面の上部にある、炎に包まれた大トカゲに「クウィンテセンス」の右の翼が触れている部分に向いています。この放射には、黄金と太陽の両方を表す記号が書かれています。

第4の円の中には、魂の女性面と男性面を表す鳥のつがいが描かれています。この2羽は、5本の突起のついた王冠(前の作業で取り戻した第5の元素すなわちクウィンテセンス)を掲げながら地上を飛び去ろうとしています。「作業」のこの段階では、変質させようとしている物質の、最も純粋で最も真正な部分だけが容器に残っています。「結合」(Conjunction)の目的は、取っておいたこれらの要素を物質界での全く新しい姿へと組み合わせることです。エメラルド・タブレットには、この段階に関して「それを育むものは大地である」と書かれています(脚注14)。この円の上には、「修正によって」あるいは「物事を正すこと」を意味する「Rectificando」という文字が記されており、この作業を祝福するように「クウィンテセンス」(Quintessence)の翼が広がっています。

錬金術師たちはしばしば「結合」の段階のことを「太陽と月の結婚」と呼んで、世界を知り経験するための2つの正反対の方法を象徴的に表しました。この「心の中の結婚」の後に、熟練した錬金術師は、直観的な洞察力が生じることを経験します。この洞察力からは、思考や感情だけによって得られる経験よりも優れた現実の感覚が生じます。アゾートの絵に見られるように「結合」は、物質を扱う前半の3つの低位の作業から、精神を扱う後半の3つの高位の作業への転換点に相当します。

惑星の軌道と太陽

アゾートの第5の放射は、クウィンテセンスの左の翼が、精神を表す止まっている鳥に触れている位置に向いています。この放射には、銅と金星を表す記号が書かれています。

5番目の円は、「あなたは発見する」を意味する「Invenies」という表題の内側にあります。ここでは「発酵」(Fermentation)という作業が行われますが、この作業からは予期せぬ謎の物質が作られます。それはアンブロシア(訳注)であり、魂の女性面と男性面の「結合」によって生じる最初の永続する固形物を表しています。円の中に描かれているのは、魂の女性面と男性面を表す2羽の鳥が木に巣を作り、卵を抱きながら神秘的な誕生が起こるのを待っている様子です。

(訳注:アンブロシア(ambrosia):ギリシャ神話に登場する神々の食べ物で、食べると不老不死が得られ、傷に塗ればたちまち治るとされる。)

「発酵」とは、「結合の子供」に新たな命を吹き込むことでその性質を完全に変化させ、まったく新しいレベルの存在へと高めることを意味します。想像力という「火」によって地上の領域を離れ、「穏やかに、絶妙な巧みさ」で、高位の情熱によってソウルを燃え立たせよと、エメラルド・タブレットは語っています。

精神的な発酵は、自然界で起こる物質的な発酵と同様に、腐敗(Putrefaction)から始まる2段階のプロセスを経ます。物質が腐ると分解が起こり、次に発酵が始まります。精神もまず腐敗すなわち堕落し、次に再生がもたらされます。錬金術師のダニエル・ストルキウス(Daniel Stolcius)は、『化学の楽園』(Chemisches Lustgaertlein、1625年)の中で、この不快な段階の重要性をこう述べています。「破壊は物質に死をもたらす。しかし魂は、生命を以前のように再生する。ただしそれは、種子が相応しい土壌で腐敗する場合に限られる。さもなければ、努力も作業も技法もすべて水泡に帰すであろう」。

この作業の流れが如実に現れているのが、ワインの醸造です。まず、ブドウを“犠牲”にして、つまり圧搾して、そのエッセンスを果汁として抽出します。やがて腐敗(一次発酵)が始まり、果汁の成分が分解されます。続いて、発酵作用を促す消化細菌の白い層が発生します。この段階では、錬金術師が「酵素」(Ferment)と呼んだ蝋状の物質や、「孔雀の尾」と呼ばれる油の膜が現れることがあります。最後に、ブドウ果汁が元々持っていた性質を新しい生命力が“征服”し、より高位の新しい存在、すなわち新しい命に置き換えられます。

こうした生じた高位の存在は、次の操作(蒸留)で解放され、正真正銘のワインのスピリット(アルコール成分)が生じます。そこには、純粋にされたブドウのエッセンス(essence:精髄)が含まれています。

このプロセスは、「結合の子」の死です。その結果、新たなレベルの存在への復活が起こります。錬金術師の絶望の闇(腐敗)からは、鮮やかな色彩の出現と意義のあるビジョン(孔雀の尾)が生じます。発酵は、熱心な祈り、神秘的な合一への欲求、トランスパーソナル・セラピー、深い瞑想など、さまざまな行為を通して達成することができます。人格の発酵は、自身を完全に超えた何かから届く、生き生きとした創造的刺激なのです。

アゾートの第6の放射は羽を指しています。羽は「空気」の象徴であり、非物質化(spiritualization)の過程を示しています。この放射は、通常は青藍色をしていますが、白色や灰白色で表わされることもあります。ここには、水銀と水星とを表す記号と、天空の原理(元素)である水銀を表す同じ記号が小さく記されています。

「蒸留」は錬金術の作業を大きく分類したときの6番目にあたります。「蒸留」を表す6番目の円の中には、バラの茂みの前の地面に横たわるユニコーンが描かれています。伝説によれば、ユニコーンは追われると息も切らさず逃げ続けるのですが、処女が近づくとおとなしく地面に横たわるとされています。処女とは、手元に残った不純物が除かれた物質のことで、罪のない可能性にあふれた状態に戻ったことを表します。円の外側には「Occultum」と書かれていますが、これは「秘密」もしくは「隠されたもの」を意味します。この段階の初期には、抽出すべきエッセンス(essence:精髄)は目に見えないからです。

「蒸留」は、錬金術全体の鍵を握る重要な段階で、揮発性のエッセンスを物質という「牢獄」から解き放ち、精製された形に凝縮させる作業です。蒸留を繰り返すと、錬金術師が「石の母」と呼んだ、極めて高濃度の溶液が生成されます。蒸留法の一種である「昇華」では、蒸気が蒸留器の上部で一気に粉末状の固体に凝縮し、そこに「固定された」まま残ります。エメラルド・タブレットには蒸留についてこう書かれています。「それは、地上から天に昇り、再び地上に降りる」(脚注16)。

人間の心に関して言えば、蒸留とは、肥大化したエゴや奥深く隠れたイド(訳注)から生じた不純な要素を、サイキックな力によって揺り動かして純粋な要素に変質させることにあたります。蒸留が必要とされるのは、不純な要素が次の最終段階に混入しないようにするためです。個人が行う心の蒸留の作業には、感傷や感情から自分を解き放ち、自分自身を規定している特徴さえそぎ落として、心の内容を可能な限り最高のレベルに引き上げるさまざまな内省のテクニックからなります。蒸留は、これから出現する〈自己〉(Self)、すなわち人間の真の姿、あるいは人間がそうあるべき姿から不純な要素を取り除く作業です。社会における蒸留は、科学的で客観的な実験作業という形で現われます。

(訳注:イド(id):フロイドが提唱した精神分析の用語。本能的衝動(リビドー)の貯蔵庫で、快楽原則に従って働く。)

アゾートの第7の放射は女王の領域を指しており、銀と月の両方を表す記号が書かれています。男性的な意識の変容は、ソウルの女性的な面において起こるのです。

7つ目の円には、開いた墓から顔を出す両性具有の若者が描かれており、その隣の外輪にラテン語で「石」を意味する「Lapidem」という文字が記されています。この語が表しているのは凝結(Coagulation)の作業であり、この作業では「結合」の過程から生じた「子供」が発酵したものと、「蒸留」の過程で放出された「非物質的なもの」が一体になります。魂の再生は、肉体と魂の最も純粋なエッセンスを、瞑想の光の中で一緒にすることによってだけなし遂げることができます。つまり凝結とは、魂の「究極の物質」(Ultima Materia)に姿を与え放出することであり、エメラルド・タブレットでは「全宇宙の栄光」と描写されています。この段階で、錬金術師たちは自分たちが「新しい」、すなわち再生された「塩」(Salt)を扱っていることを感じ取りました。

心の錬金術では、凝結はまず、すべてを超えた新たな自信として感じられます。また、人によっては、黄金と混じり合った光でできた第二の体として体験する人もいます。この体は、最も高貴な願望と進化を遂げた心を具体的に表現する意識の永遠の乗り物にあたります。

「凝結」は、魂の「究極の物質」(Ultima mateira)に姿を与えて放出することです。パラケルススはこの物質を「アストラル体」(Astral Body)と名付け、錬金術師たちは、「賢者の石」(Philosopher’s Stone)と呼びました。錬金術師は、この魔法の石を使えば、実在のすべてのレベルで活動できると考えました。

アゾートの絵には、この図柄についての深い思索を通してでなければ解明できない、より深い秘密が含まれています。このマンダラには7つの作業しか描かれていませんが、そこにはさらに8番目の段階が隠されているのです。その秘密は、作業に対応する円が8つあるにもかかわらず、放射が7本しか描かれていないという点に示されています。

また、この絵には1つ問題点があります。それは「天体の梯子」における天体の順序です。金星と太陽の位置が入れ替わっているため、錬金術師の絵の左側にある惑星の正しい順序が乱れ、そこまでの段階との論理的な整合性を欠いています。この点については、以下の瞑想で詳しく説明します。

マンダラの中心に描かれた顔をまっすぐ見つめながら、リラックスして意識を開放的な状態にすることから瞑想を始めます。錬金術師の多くは、この内省のプロセスを容易にするために、中央の錬金術師の顔を小さな円い鏡に置き換えました。次に、マンダラの中心を見つめたまま、王と女王や魂の男性面と女性面などが含まれている、周りに描かれている錬金術のイメージのすべてにも注意を払います。ゆっくりと直観を働かせながら、意味を把握する力とインスピレーションを得る力が高まっていく感覚を味わってください。こうして錬金術の作業を巡るあなたの旅が始まります。

最初に、ひとつひとつの放射を順番に見て行きます。「焼成」を表す黒い放射から始めます。この放射の上にある記号と、放射が「人間の内なる星」(Star in Man)のどこに位置しているかをよく観察してください。次に時計回りに、そこで行われる作業を説明した円に注意を移して行きます。描かれている光景を見ながら、あなたがその場にいて、描かれている光景を実際に見ている感覚を味わってください。こうしてマンダラを一周し、最後の操作である「凝結」に達すると、そこには両性具有の若者が墓場から出現する様子が描かれています。以上が、マンダラを使った瞑想で、あなたが錬金術師たちと同じことを行うためのヒントです。

ではここで、背筋を少し伸ばして、やや傍観者の立場になってください。つまり、この絵の全体をじっと見て、先ほどまであなたがなりきっていた「塩漬けの人間」の状態から抜け出してください。言葉を変えると、あなたがこの瞑想で、自身の意識をうずめていた平らな四角い絵という死の墓場から自分を解放するのです。あなたの注意に自由を与え、それが勝手に働くようにすると、視点はどこに向かうでしょうか。ほとんどの場合、視線は立方体の石を指している1の位置にある黒い矢印に引き寄せられることでしょう。これは、作業の開始時にある「塩」すなわち純化されていない物質であり、同時に作業の終わりにある新しい「塩」すなわち「石」でもあります。

この「8番目の」矢印の意味についてさらに瞑想を深めると、この矢印のまっすぐ上にある「結合」(Conjunction)を表す王冠が描かれた円にたどり着きます。これは、大地の力を借りて、新しい「塩」を目に見える物質として出現させるための作業です。同時にそれは、「下なるもの」(地)と「上なるもの」(天)の分岐点でもあります。つまり、隠された第8段階の作業とは、「結合」であり、それは「大いなる作業」の始まりであると同時に終わりです。このことを深く実感した錬金術師の中には、作業の手順全体を実際に変更して、変容の最終段階を7番ではなく黄金と太陽の記号が示す4番の放射で表す人もいました。バジル・ヴァレンタイン(Basil Valentine)が自著『哲学者のアゾート』(Azoth des Philosophes、1659年)に掲載した図版をもとに描かれたすべての図版では、「凝結」の矢印ではなく、「結合」の矢印の中に太陽と黄金が描かれています。

これは、「オクターブの法則」(Law of the Octaves)と呼ばれる、古代錬金術の原理の重要性を決定的に裏付けています。1音階に7つある音のうちの第1音が、より高い振動レベルで第8音として繰り返されるのと同じく、錬金術の7つの操作は、高い意識の周波数で物質の領域の操作を繰り返すのです。

別の言い方をすれば、錬金術の目標は、あらゆるアブラハム宗教のように精神の領域に留まるのではなく、仏教や道教の教義のように、その目標は、精神の領域で浄化され、次に、精神の領域の種子にあたる大地へと戻ることです。錬金術という「大いなる作業」は、エメラルド・タブレットに書かれているように、「宇宙全体を神聖なものにすること」に他なりません。それは、物質中に精神を凝結することであり、「宇宙のクウィンテセンス」(Cosmic Quintessence)の完全な目覚め、つまり物質に捕らえられている人類の真の人間らしさを担っている、隠された光と意識が放つ輝きの目覚めなのです。それが達成されるためには、2度目の「結合」という、魂の女性面と男性面の間の聖なる結婚による以外にはありません。この結婚は、現実の世界においては物質という十字の上で行われることになります。

本稿で検討した2つの瞑想法を含め、錬金術の瞑想の大部分では、第1段階として身近にある材料、つまり瞑想する人が抱え持っている古い自己やエゴを投げ捨てます。この作業は、錬金術師が「焼成」と「溶解」と呼んだ作業で、それぞれ、火と水の要素を用いて、日常的な思考や基本的な感情に働きかけることによってなし遂げられます。

第2段階では、五感から入ってくる感覚を減らし、日常的な関心事から意識を遠ざけるようにすることで、瞑想者が二元性を超越して男女両方の性質を備えた「自己」に目覚めるようにします。これは、「分離」と「結合」の作業において、高度な知性と洗練された感情(愛と慈悲)を働かせることでなし遂げられます。この2つの作業では、それぞれ、「空気」と「土」という元素が用いられ、内面に存在する正反対の要素が水平に(horizontal:対等に)一体化されます。この一体化(結婚)によって「小さな方の作業」(Lesser Work)が完了し、錬金術師個人の魂の女性面と男性面が一体になって、「哲学者の子」あるいは個人の「クウィンテセンス」という、高次の意識状態が誕生します

第3段階は「大いなる作業」であり、この作業は浄化された意識という崇高な領域で行われ、「上なるもの」と「下なるもの」の垂直方向の一体化が追求されます。この作業では、錬金術師の統一された意識によって、エネルギーの微妙な変換が行われます。先ほど述べたように、この過程は「エメラルド・タブレット」に極めて的確に表現されています。

「ていねいに、極めて巧妙に「土」を「火」から切り離せ。土は地上から天上へと昇り、再び地上へと降り、それにより「上なるもの」の力と「下なるもの」の力が自らの中で結合する。そのようにして、あなたは全宇宙の栄光を手に入れ、すべてのあいまいなものが、あなたには明らかになる。これこそがあらゆる力の中で最も偉大な力である。なぜならそれは、すべての「精妙な」(Subtle)ものに打ち勝ち、すべての「堅固な」(Solid)ものを貫くからである。」

この段階の作業では、もはや四大元素ではなく、原初の創造の力、つまり哲学者の水銀、硫黄、塩という三原質(Tria Prima)が扱われることになります。それは「発酵」と「蒸留」という作業にあたり、それぞれには水銀と硫黄が用いられ、純粋にされた精神の光(真の想像力)と最高の「客観的意識」が出現します。

最終作業である「凝結」は、個人の「クウィンテセンス」と宇宙の「クウィンテセンス」との合一であり、それは〈至高なる者〉の恩恵だけによって果たされます。新たに生じた「塩」は、凝結した場合には、より高い周波数、すなわちより高いオクターブにおける第2の肉体であると見なされます。それは、バラ十字の中央という地点での黄金の再生であり、この地点では、水平方向と垂直方向の合一が起こり、すべてが一つになります。

「祈り、作業しろ」(Ora et Labora)という言葉は、錬金術師のためだけのモットーではありませんでした。それは、内面の世界と外側の世界を統合し、現代の文化や科学が発見できずにいる現実の新しい側面を開くための秘訣を表す言葉だったのです。錬金術師たちにとって、これは単なる精神面にとどまるものではなく、精神と物質との比類なき結婚であり、肉体的な変容と精神的な変容の源でした。

脚注

10. これらの文章と挿絵の作者は、バシリウス・ヴァレンティヌスという人物ではないと、現在では多くの人が考えている。真の作者は1400年代初頭の人物であり、おそらく教会からの迫害を避けるために自身の著作を匿名にしたのだと思われる。

歴史家ジョン・マクスン・スティルマン(John Maxson Stillman)によると、1600年以前の公的記録や教会の記録には「バシリウス・ヴァレンティヌス」という名前は存在せず、彼を描いたとされている肖像画でさえ17世紀に製作されものである。

18世紀の学者たちの研究によると、ドイツの錬金術師であるヨハン・トールデ(1565-1624)が、古い塩鉱山の中に隠された、5作の匿名の原稿を発見し、「バシリウス・ヴァレンティヌス」というペンネームで発表した。その後、他の著作家たちも、自分の作品を伝説のヴァレンティヌスの作として発表するようになった。

11. ジョルダーノ・ブルーノは、1600年2月17日に火刑に処された。1548年にイタリアで生まれた彼は、哲学、数学、自然科学について、大きな影響を及ぼした多くの本を書き、学者としての尊敬を集めた。彼は錬金術を実践し、ヘルメス学の教えを世界の唯一の真の哲学として信奉していた。

彼はヘルメス学の哲学者たちについてこう述べている。「かの賢者たちは知っていた、万物に神が宿っていることを。そして、神の性質が自然の中に潜んでおり、対象物に応じてそれぞれの働きと光を与え、多様な物理的形態を通して、神の命と精神のために役立てることに成功している」。ブルーノは、ヘルメス学とエメラルド・タブレットの原理について、ヨーロッパ各地で公開講義を行った。彼は、無限の「唯一の精神」が万物の源であり、したがって、「唯一の精神」は万物の中に存在していると考えた。この点が、彼の数々の異端とされた行動の中でも最も教会を恐れさせた点である。彼は、教会の権威に頼らずとも、祈りと瞑想を通して神の心と人間の心がひとつになれると考えていた。

ブルーノは、思想の自由を激しく主張し、他の人々の心を支配しようとする者には我慢がならなかった。彼はこう叫んだ。「世の愚か者たちが、宗教、式典、おきて、信仰、まがいものの生活規則を作ってきた。愚者の中でも最たるものは、まったく何も理解していないのに、空理空論の世界に永久に閉じこもっている学者どもである」。

12. Theodor Abt-Baechi, Corpus Alchemicum Arabicum II.2 The Book of Pictures-Mushaf as-suwar by Zosimos of Panopolis (Berlin: Daimon Verlag, 2012); Raphael Patai, The Jewish Alchemists: A History and Source Book (Princeton: Princeton University Press, 2012); Syed Normanul Haq, Names, Natures and Things: The Alchemists Jabir ibn Hayyan and his Kitab al-Ahjar (Dordrecht, Germany: Kluwer Academic Publishers, 1994).
13. Dennis William Hauck, The Emerald Tablet: Alchemy for Personal Transformation (New York: Penguin Arcana, 1999), 45.
14. Ibid.
15. Ibid.
16. Ibid.
17. Ibid.

参考文献
Ashby, Muata Abhay. Meditation: The Ancient Egyptian Path to Enlightenment. Los Angeles: Cruzian Mystic Books, 1997.
Burckhardt, Titus. Alchemy: Science of the Cosmos, Science of the Soul. Louisville: Fons Vitae Press, 2006.
Case, Paul Foster. Hermetic Alchemy: Science and Practice. Boston: ROGD Press, 2009.
Corless, Roger. The Art of Christian Alchemy. Eugene: Wipf and Stock Publishers, 2008.
Harpur, Patrick. The Secret Tradition of the Soul. New York: Evolver Editions, 2011.
Hauck, Dennis William. “Materia Prima: The Nature of the First Matter in the Esoteric and Scientific Traditions,” Rose+Croix Journal 8 (2011), 72-88.
Hauck, Dennis William. The Sorcerer’s Stone: A Beginner’s Guide to Alchemy. New York: Penguin Citadel, 2004.
Jung, Carl Gustav. Mysterium Coniunctionis. Princeton: Princeton University Press, 1977. Vol. 14 in the Collected Works of C.G. Jung series.
Merrell-Wolff, Franklin. Transformations in Consciousness: Metaphysics and Epistemology. Albany: State University of New York Press, 1995.
Roob, Alexander. Alchemy & Mysticism: The Hermetic Museum. Bonn: Taschen, 2006.
Schrodter, Willy. A Rosicrucian Notebook: The Secret Sciences Used by Members of the Order. Newburyport: Red Wheel/Weiser, 1992.
Wikman, Monika. The Pregnant Darkness: Alchemy and the Rebirth of Consciousness. Lake Worth: Nicolas-Hays Inc., 2004.
Young, G. Bryan. “Meditation from Neurological and Rosicrucian Perspectives,” Rose+Croix Journal 2 (2005): 89-100.

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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宇宙のクウィンテセンスを求めて-中世とルネッサンスの錬金術師はどのように瞑想したか(前編) https://www.amorc.jp/searching-for-the-cosmic-quintessence1/ Fri, 15 Mar 2024 08:19:12 +0000 https://www.amorc.jp/?p=13833 意識研究の新分野の第一人者として知られるデニス・ウィリアム・ハウク博士が、「精神の錬金術」もしくは「心の錬金術」と呼ばれる錬金術師の瞑想の方法を、4つのステップに分けて具体的に説明します。

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以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

宇宙のクウィンテセンスを求めて-中世とルネッサンスの錬金術師はどのように瞑想したか(前編)
Searching for the Cosmic Quintessence: How Alchemists Meditated in the Middle Ages and Renaissance

デニス・ウィリアム・ハウク博士
By Dennis William Hauck, PhD

『祈り、作業しろ』(Ora et Labora)、ケイトリン・ブリーン(Katlyn Breene)著、2007 年。誰もが唱えていた錬金術師たちのこのモットーは、実際の作業や実験を補うものとして祈りと瞑想という手段を用いることを示している
『祈り、作業しろ』(Ora et Labora)、ケイトリン・ブリーン(Katlyn Breene)著、2007 年。誰もが唱えていた錬金術師たちのこのモットーは、実際の作業や実験を補うものとして祈りと瞑想という手段を用いることを示している

デニス・ウィリアム・ハウク博士は、意識研究の新たな分野における第一人者として知られ、科学史、数理論理学、心理学、神秘体験の科学的研究など、多くの関連分野での貢献を続けています。彼は人気の作家であり講師でもあり、古代の錬金術の原理を通じて、個人、文化、世界の変革を促す活動を行っています。バラ十字会員であるハウク博士は、バラ十字古代エジプト博物館に展示されている「バラ十字錬金術展」を企画し、12冊以上の著書と多くの論文と記事を執筆しており、そのいくつかは「ロージクルーシャン・ダイジェスト」(Rosicrucian Digest:バラ十字会米国本部雑誌)と「ローズ=クロア・ジャーナル」(Rose+Croix Journal:バラ十字会国際オンライン論文集)に掲載されています。

デニス・ウィリアム・ハウク博士
デニス・ウィリアム・ハウク博士

錬金術師たちのヘルメス思想(訳注)の見解によれば、〈創造者〉(the Divine)の精神によって、瞑想を通して光が一点に集められることによって宇宙は創造されました。エメラルド・タブレットには「万物は〈唯一の精神〉(One Mind)が行った瞑想によって〈唯一のもの〉(One Thing)から生じた」と書かれています。〈唯一の精神〉という根源は、自然そのもの、すなわち人間を含む創造された万物の中に埋め込まれました。

(訳注:ヘルメス思想(Hermetism):西暦1~3世紀にギリシャ文化圏で成立した『ヘルメス文書』に見られる思想。新プラトン主義と、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の秘伝哲学の影響が見られる。)

錬金術師たちは、瞑想によって光と精神の道を探し求めていました。形ある世界と万物の源である神聖な模範(divine ideals)が、この道によって一体になっているのです。錬金術師たちは、自らの意識を浄化し深い瞑想を行うことよって、〈創造者〉の精神とつながることができると考えていました。

中世の錬金術師たちは、瞑想の真の方法を権力者から隠していた一方、この方法は当時の錬金術師たちの間では公然の秘密でした。誰もが唱えていた「祈り、作業しろ。」(Ora et Labora)という錬金術のモットーは、金属と、自分自身と、そして究極の意味では世界全体を、どのようにして変容させるのかということを的確に表しています。

〈唯一の精神〉という神聖な源は、すべての物質的なものの中に存在しますが、それは、物理的な現実世界と非物質的な領域との境界に、四大元素(Four Elements:四大要素)を超越したものとして存在しています。アイザック・ニュートンは次のように書いています。「クウィンテセンスは、非物質的で、浸透性があり、変化を引き起こし、腐敗することがないものであり、四大元素がバランス良く結合したときに、そこから新たに出現する。」(脚注1)

錬金術師たちは、あらゆるものの中にこの神聖な要素が存在すると理解し、それを第5の元素を意味する「クウィンテセンス」(Quintessence)と名付けました。ある物のクウィンテセンスは、その物の聖なる姿、つまり真の正体を運ぶ媒体であり、その物の秘められた形相(form:本質的な特徴)を出現させる役割を担う生命力として働きます。

宇宙のクウィンテセンスとは、宇宙で活動する〈創造者〉の精神のことを指しています。それは、世界の混沌とした変化と徐々に進む進化の背後に働いている力です。ヘルメス哲学では、ロゴスすなわち〈言葉〉が、宇宙に形と独自性を与えるとされます。簡単に言えば、エネルギーを物質へと変換するものは精神の光なのです。

混沌とした状態にあった原初の物質から全宇宙を出現させた聖なる光と同じ原理が、私たち一人ひとりの内部に働いています。この聖なる光のことを、パラケルススは「真の想像力」と名付けましたが、この光が、人間の意識を誕生させた要因であるという考え方に、錬金術師たちが強く惹きつけられました。

錬金術師たちの言う「真の想像力」を、白昼夢や空想と混同してはいけません。スイスの分析心理学者カール・ユング(Carl Jung)は、一般的な想像力と区別するために、「真の想像力」のことをラテン語を用いて「イマジナチオ」(Imaginatio)と呼びました。それは実際には、自然の繊細なプロセスを思い浮かべて、神聖な元型とつながることです。

ユングはこう述べています、「イマジナチオという概念は、錬金術の著作を理解するための最も重要な鍵です。イマジナチオという想像のプロセスは、白日夢がそうであるような実体のない幻影と捉えるのではなく、実体のある現実のサトル・ボディ(訳注)であると捉えなければなりません。」(脚注2)

(訳注:サトル・ボディ(subtle body):クンダリーニ・ヨガでは人間には、物質的な身体、サトル・ボディ、コーザル・ボディの3つの体があるとされ、この3つはそれぞれ、バラ十字哲学の、物質身体、サイキック体、ソウル(soul:魂)にあたる。ユングは自身の錬金術の研究にこのサトル・ボディという考え方を取り入れている。ユングの考えによれば、人間の無意識には、比較的上層にあると考えられる個人的無意識、その基底にあり人類に共通する集合的無意識があるが、それをさらに超えると類心的無意識(Psychoid Unconscious)という心と身体の区別がつかないような領域が存在し、この領域の現実がサトル・ボディと呼ばれる。)

パラケルスス(Paracelsus)はこう述べています。「それゆえ、知るべきである。アストラル界(the Astral)からもたらされるこの完全な〈想像〉(perfect Imagination)は、〈ソウル〉(the Soul:宇宙の魂)から生じることを。(完全な想像によって)人生は解読されなければならず、魂の世界の現実(という本来の姿)に戻されなければならない。そのとき完全な〈想像〉は、瞑想という名を得る。」(脚注3)

この文でパラケルススが意味しているのは、〈真の想像〉(True Imagination)とは、あらゆるものの神聖な源を、(〈創造者〉が万物を創造したときに思い浮かべたように)人間がその心に再び思い描き、瞑想の中でそれに触れることだということです。この秘められた現実は常に存在しているのですが、通常の人の目には見えません。錬金術師たちが語った神聖なビジョンを知覚できるのは、浄化された意識が持つ心の眼と〈真の想像〉の力だけなのです。

カール・ユングは、錬金術の瞑想における〈真の想像〉の役割を説明し、驚くべき洞察を述べています。「想像という行為は、実際的な身体の活動であったのであり、物質変化の循環と合致していた。想像が物質変化を引き起こすと同時に、逆に物質変化によって想像が呼び起こされた。このようにして、錬金術師は単に無意識とつながっていただけでなく、変化させることを望む物質そのものにも、想像の力によって直接の関係を持っていた。したがって、想像という行為は、生命力を一点に凝縮した抽出物のようなものであり、クウィンテセンスのような性質を持つ、物質と心の混合物である。錬金術の全盛期には、心と物質は別々でなく、心と物質の中間の領域、すなわちサトル・ボディというサイキックな領域が存在した。サトル・ボディの特徴は、物質の形だけでなく心という形で現れることである。」(脚注4)

要約すると、「真の想像」とは、事物の本質を「〈創造者〉が夢見るように」捉えようとすることです。したがって、錬金術の著作家が「心の眼で見る」と言うとき、そこで語られているのは、外観を超えて、内的なクウィンテセンス、つまり「事物そのもの」に達するまで事物の秘密を見抜くプロセスです。

『錬金術師の実験室-大いなる作業の第一段階』(The FirstStage of the Great Work)、ハンス・フレーデマン・デ・フリース(Hans Vredeman de Vries, 1527-1604)作。この絵には錬金術師ハインリッヒ・クンラート(Heinrich Khunrath)が実験室で作業している様子が描かれている。『永遠なる叡智の円形劇場』("Amphitheatrum Sapientiae Aeternae"、ハインリッヒ・クンラート著、1595 年)の挿絵より
図2:『錬金術師の実験室-大いなる作業の第一段階』(The FirstStage of the Great Work)、ハンス・フレーデマン・デ・フリース(Hans Vredeman de Vries, 1527-1604)作。この絵には錬金術師ハインリッヒ・クンラート(Heinrich Khunrath)が実験室で作業している様子が描かれている。『永遠なる叡智の円形劇場』(”Amphitheatrum Sapientiae Aeternae”、ハインリッヒ・クンラート著、1595 年)の挿絵より

中世とルネッサンスの錬金術師にとって、「観照の祈り」は「個人的な実験室」で実践するものでした。その様子が、図2に「大いなる作業の第一段階」として描かれています。現代人が考える瞑想は主に東洋の瞑想であり、当時のヨーロッパ人は用いることができませんでした。

錬金術の全盛期に「個人的な実験室」で作業を行う際の主な手段は、瞑想ではなく「観照の祈り」でした。アルベルトゥス・マグヌス、ロジャー・ベーコン、ジョージ・リプリー、アグリッパ、パラケルスス、レイモン・リュリ、ニコラス・フラメル、アイザック・ニュートンと、他のヨーロッパの錬金術師の大部分は、精神的な実践として「観照の祈り」を行っていました。

錬金術師たちの瞑想は、極めて初期の頃から、今日普及している瞑想とは異なるものでした。特別な姿勢も必要ありませんし、マントラや呪文を唱えたり、望ましい意識状態を達成したりするための儀式もありませんでした。錬金術師が社会での仕事を終えて「個人的な実験室」に入った瞬間から作業が始まります。それは極めて自然な作業だと考えられていたので、手の込んだ準備は必要ありませんでした。

ひとたび注意が内面に向けられたら、高度な精神状態に到達できるかどうかは、その錬金術師の精神修養の程度次第でした。最も重要なことは、錬金術師が観照を開始したばかりの段階では、心理的なレベルや、潜在意識に関わるレベルで、活発な内面的作業がそこに含まれるということです。この種の作業には、明確な精神的な目標が常にありました。それは通常、〈創造者〉の精神と自分がひとつになるということでした。

錬金術について書いている多くの著作家の意見とは異なりますが、西洋の錬金術の起源がキリスト教にあることは否定できません。アブラハムの宗教(ユダヤ教、イスラム教、キリスト教)で行われていた祈りが、後に、中世の錬金術師たちの精神的な実践行為になりました。13世紀末には、錬金術はすでに体系化された基本原理を確立していました。その中には、「エメラルド・タブレット」に要約されているヘルメス思想の理論だけでなく、アダムの堕落の後に人間のソウル(soul:魂)が引き裂かれたという聖書の考え方も含まれていました。

ソウルを癒すことは、錬金術と宗教的伝統の共通の目標でした。それを達成する方法に関して意見の相違があったことは確かですが、この2つは、哲学的な根を同じ土壌に下ろしていたのです。錬金術の内面世界における最高の成果は「ミステリウム・コニウンクティオニス」(Mysterium Coniunctionis:結合の神秘)ですが、それは、引き裂かれたソウルを再び統合することでした。

ソウルを完成させるという神聖な作業こそが、錬金術という「大いなる作業」なのです。物質を変質させる錬金術の操作は、どんなものにも通用する原理であると彼らは考えていたので、鉛を金に変換する秘法を習得できた人は、同じ根本のテクニックを自身の内面にも適用できると考えたのでした。

中世の教会と錬金術師たちは対立していましたが、人間のソウルの救済という永遠の目的を共有していたのです。(脚注5)

静寂主義運動(Quietist Movement)の起源は、キリスト教の神秘家であるマイスター・エックハルト(Meister Eckhart, 1260-1328)の教えにあります(脚注6)。彼は、意識の浄化を通じて暴君のようなエゴの影響から逃れることによって、人は〈創造者〉との合一を達成できると考えました。この神秘思想の種子は教会に根付き、やがてミゲル・デ・モリノス(Miguel de Molinos;1640-1696)という司祭の著作によってスペインで花開きました(脚注7)。彼の思想はフランスとイタリアで急速に広がり、最終的にはヨーロッパの極めて広い範囲に及ぶ精神運動になりました。

静寂主義者たちは、人間の自己中心性を超えて〈創造者〉との合一に至るために、観照の祈りという方法を唱えました。彼らは、人間のソウルが〈創造者〉を内的に体験することが可能であり、この体験を得たソウルは、まだ地上にいる間に〈創造者〉の完全性を獲得できると考えていました。しかし、ソウルを変えられるのは〈創造者〉の恵みだけであり、それは、直観にしっかりと支えられた観照と浄化のための瞑想を通して、ソウルが浄化され高められた後にだけ起こります。

広い支持を集めた静寂主義運動の指導者に、スペインの修道女のアビラのテレサ(Teresia Abulensis, 1515-1582)がいます(脚注8)。彼女のメッセージの根本は、天国へ上昇は自身の内部から始まるということです。心の錬金術(訳注)に携わる大部分の人たちと同じように、彼女は、心が洗練されていない人間は内面的な厳しい作業を通して自身を変容させなければならないと唱えました。「自身の中に入ることなしに天国に入ることができると考えるのは愚かなことです」と彼女は述べています。しかし、「どんなに肥沃な土地でも、耕さなければアザミやイバラが生えます。それは人の心も同じです」(脚注9)と、内面の作業の前に、まず意識の浄化が必要であると注意を促してもいました。

(訳注:心の錬金術(spiritual alchemy):卑金属を貴金属に変えることが物質の錬金術と呼ばれるのに対して、心の中の卑しい要素を貴い要素に変容させることは「心の錬金術」もしくは「精神の錬金術」と呼ばれる。)

静寂主義者の瞑想
静寂主義者の瞑想

西洋の中世の錬金術師が実践した瞑想の一例を、4つのステップに分けてご紹介します。それは、静寂主義者たちが用いた、体系的に組み立てられた観照の祈りです。

静寂とは、集中すると同時にリラックスし、あらゆる関心から心を切り離すという単純な方法であり、他の様々な伝統思想とも共通する方法です。しかし、中世とルネッサンスの観照の祈りの実践者にとっては、これを実践する理由はただ一つ、〈創造者〉との合一のために心の準備をすることでした。

静寂の段階を始めるためには、楽な姿勢で椅子に座り、背筋を伸ばして目を閉じます。横になった状態では行わないでください。早朝、昼寝の後、休みの日など、誰にも邪魔されない一人になれる時間が最適です。

基本となる静寂の段階は、身体と精神とソウルのすべてのレベルで行います。身体のレベルからまず始めます。身体の感覚や外部からの刺激への関心を少しずつ手放していきます。まずは筋肉をリラックスさせて緊張を解くことで、体を「柔らげる」ことから始めましょう。

精神のレベルの静寂には、絶え間ない思考のおしゃべりと、感情のエネルギーの渦巻くような混乱を鎮めることが必要です。これはまだ初期的な段階であり、精神の働きはまだ完全には浄化されていないため、頭の中にまだ残っている様々な考えや、感情、記憶、空想、計画、心配や、他の印象に気を取られてしまいがちです。それらは、意図的にコントロールしようとはせず、ただ無視してください。押しのけたり包み隠したりすることにエネルギーを使わないようにしましょう。こうした残りかすは、注意を払わないことによって自然と消え去ります。

このような作業をしている最中に妨げになる他の要因には、洞察、解決策、あるいは「私は正しく行っているか」とか「自分はとても落ち着いている」といった、自分の状態についての感想があります。こうした執着はすべて、たとえ肯定的なものであっても、日常の関心事に精神を引き戻してしまいます。

精神は、何の考えも印象もない、まっさらな状態であるべきです。この状態に達するまでには多少時間がかかるかもしれませんが、離れて手放すという態度を保ち、すべてを単純な意識の状態に戻し続ければ、最終的にはこの状態が現れます。精神の静寂が達成できたら、目の後ろで額の奥にある、心の暖かい光に注意を向けましょう。

ソウルのレベルでの静寂の段階も、日常的な関心事や欲求から離れるためのものであり、罪悪感、欲深さ、プライドといったマイナスの感情や、心に染み付いた一切の願望を手放すことで、自身の内的な部分を落ち着かせる方法です。そのために必要になるのは、欠乏感、罪悪感、劣等感を克服することです。また、ソウルは無限の存在であり、この世界やこの世界に出現した一時的な自己(ego:エゴ)の行ないに結び付けられているものではないのを理解することです。ソウルに静寂がもたらされると、愛情に満ちた無邪気さと、えも言われぬ安らぎを感じるようになります。

ひとたび身体と精神とソウルに静寂がもたらされると、この第一段階の作業にはさらに、精神内の「静寂を育む」という作業が含まれてきます。ここでの主な作業は、自分個人の意志に対して行われる作業であり、自分の意志が消滅するようにする、すなわち、神聖な「静寂」の中で〈創造者〉の存在に自分の意志が吸収されるようにすることです。

あなたを溶かし去るものは「静寂」そのものだということを心得ていてください。心の錬金術の化学では、あなたを溶かし去るこの成分は、アルカヘスト(Alkahest)すなわち「万能溶剤」として知られています。

「静寂の祈り」を終了するときには、制限時間を設けたり、アラームを用いたりしてはなりません。できる限り長く行い、終わらせるべき時間が来たと感じたら、そっと「個人的な実験室」から退出して、作業を終了してください。意図の純粋さが、この作業をなし遂げるためには必要なので、純粋であるための気力が途切れた時点で終了しましょう。

静寂主義者の用いる方法の第2の段階は「復帰」です。ここでの観照の内容は、宇宙の〈唯一の精神〉(One Mind)の意志に完全に身を委ね、個人の意志に取って代わる〈創造者〉の導きを求めることに照準を合わせます。これは、宗教の用語を用いて言えば、〈創造者〉に自身を明け渡す(surrender)ことです。皮肉なことに、それが最も確実に起こるのは、自分自身を改善しようとする努力がことごとく失敗に終わり、挫折し失望したときです。これは、人生において並外れたことをしようとしていて、仲間や家族、職場や社会、宗教上の信条やその他の文化的制約によって、その目的が阻まれている人なら、誰にでも起こることがあります。

「復帰」を真に理解するには、これまで人生で、〈創造者〉をどのように拒絶してきたかを理解する必要があります。毎日の雑用や時間つぶしの仕事、義理や出世のために行動に身を投じて、自分の生活に精神性の向上という面があることを決して認めない人がいます。そうした人たちは神秘体験の存在や効用を受け入れていないか、そのような考えを受け入れると、日々力を注いでいる事柄に何らかの支障が出ると考えています。また、時間とエネルギーのすべてを奪い取られるような仕事に没頭し、心の崇高さに関わる体験をする余裕のない人もいます。さらに、愛が不足していることや、貪欲さ、辛い経験が理由で、世の中に対して頑なに物質主義的な見方をする人もいます。

この段階では、〈創造者〉のエネルギーに心を開くことができなかった原因をよく考え、心を閉じていることによってソウルがひどく傷ついてしまっているありさまを素直に認めましょう。

静寂主義の人たちの観照の第3段階は「回想」です。これは、二元性を超越し万物の神聖な源をしっかりと確認する段階です。回想の作業は、精神的な祈りを熱心に行うことから始めます。ここでは、世俗的な誘惑からソウルを引き離すことに集中し、精神の崇高さを求める情熱の力について誠実な観照を始めます。回想の段階に進むためには、先ほど述べた2つの段階に上達しておく必要があります。

回想に用いる主な手段は深い観照です。それは心の奥底からの実践でなければならず、表面的な知性によるものであってはなりません。それによって、宗教的な教義や慣習によって達成できるいかなるものも超えた深い敬虔さが、心の中に芽生えることが体験されます。心の中のこの清らかさが、あなたの導き手となって、ソウルは神聖な意志だけに導かれるようになります。

錬金術という観点から見ると、この導き手はトート神/ヘルメス神(訳注)であり、人の無限のソウルから現れて浄化された心の中に住む、内なる先導者です。実際のところ、〈創造者〉の助けが人間には必要であることに同意しなければなりません。自分という存在から完全に切り離された何か、それはこのプロセスの最終段階に進むための自信と強い信念をもたらします。なぜなら、日常表現されている性格つまりエゴは、そこに行きたがらないからです。

(訳注:トート神/ヘルメス神(Thoth/Hermes):紀元前4世紀にギリシャ人がエジプトを征服すると、エジプトでヘルメス思想が成立した。当時のこの地のギリシャ人は、エジプトのトート神をギリシャのヘルメス神と同一視した。)

この段階で極めて重要ことは、深い観照の状態を保ち、あなた自身の意志が溶け去るまで心の中に留まり続けることです。すると突然、紛れもない〈創造者〉の恩恵によって「生き生きとした新たな自分になった」と感じる瞬間が訪れます。

心の錬金術の化学の用語を用いるならば、ソウルを容れた器は密閉して、日常世界から来る不純物が混入しないようにしなければなりません。その時点で、いかなる種類の思考もすることなく、観想を直ちに止めなければなりません。また、この状態に至るまで用いていた方法も放棄しなければなりません。あなたのソウルは、〈創造者〉が観照の中で、観照を通して働くことを許さなければならないのです。その妨げにならいようにソウルを完全に解放し、恩恵が可能な限り流れ込み続けるようにしなければなりません。

静寂主義の人々が取り組む瞑想の最終段階は、達成するまでに時間がかかるかもしれません。しかし、先ほどのステップで開いた至高者の恩恵への通路を通して達成できます。ここでは、神聖なエネルギーの流入を伴う受動的な観照の状態に入ります。それは、至高者と共にいるという限りない慰めに心を奪われる体験です。

言い換えると、その人は完全に満たされ、生き生きと感じ、それ以上望むものは何もなくなります。真実の探求は終わり、その人はグノーシス(訳注)の至福の状態に達します。それは、人間が到達できる、そして到達を果たした希有で素晴らしい状態です。

(訳注:グノーシス(gnosis):ギリシャ語の元々の意味は、「知識」もしくは「認識」。〈創造者〉と人間本来の自己が同一であるという認識体験を指す。グノーシスによる救済を唱えるグノーシス思想は、西暦紀元前後にローマ帝国の圧政下にあった有産知識人層から広まった。)

一人ひとりのソウルは、宇宙の大いなるソウルの一部でもあります。したがって人間のソウルは〈創造者〉の領域に属し、〈創造者〉の核心にあたります。ですから一人ひとりが、〈創造者〉と同じ神聖な場所で暮らすことで、〈創造者〉の精神と一つになることができます。この神聖な場所に留まるためには、常にエゴを捨てて欲望を絶つことが必要です。プライドや自己愛を自身の全ての部分から捨て去らなければなりません。その結果残るものは、ソウルの真の住居である〈創造者〉の傍らに留まりたいという、素朴で純粋な願いだけです。

「流入で満たされた観照」を行っているときの自分の役割は、神聖なエネルギーを入れる完璧な器になることです。そうなることを考えたり、イメージしたりするだけでは十分ではありません。この最終段階では、体内の感覚が消えた完全に受動的な状態であり続けなければなりません。記憶や想像は〈創造者〉に吸収され、忘我の強い喜びが自身の内部を満たします。

(後編はこちら)

脚注

1. Philip Ashley Fanning, Isaac Newton and the Transmutation of Alchemy: An Alternate View of the Scientific Revolution (Berkeley: North Atlantic Books, 2009), 160.

2. Nathan Schwartz-Salant and Murray Stein, The Body in Analysis (Asheville: Chiron Publications, 1986), 32

3. Paracelsus (Philippus Aureolus Theophrastus Bombastus von Hohenheim), Liber de Imaginibus. (Bonn, 1531), Cap. XII.

4 Carl Gustav Jung, Psychology and Alchemy, Collected Works of C.G.Jung , Volume 12. (Princeton, NJ: Princeton University Press), para. 394-395

5. カトリック教会における神秘思想の歴史は、紀元前100年頃の新プラトン主義やグノーシス思想の一神論に遡ることができる。プラトンの唯心論的な形而上学に触発されたこれらの集団のメンバーは、ソウルと〈創造者〉との直接の合一を探求した。聖アウグスティヌスのような初期の教会指導者は神秘思想の方針を支持したが、最終的に定められた公式の教義では、心の崇高さを完成させることは現世では不可能であり、教会の外で神との合一をなし遂げようとする瞑想は、神への冒涜であると宣言された。

6. マイスター・エックハルトは、意識を浄化することで、人はエゴの横暴な支配から脱し、神との合一に到達できると考えた。しかし、彼の考える「神」は、教会の擬人化された神よりも、新プラトン主義〈唯一の精神〉(One Mind)に近く、1329年に教皇ヨハネ22世はエックハルトを異端者とする勅令を出した。

7. ミゲル・デ・モリノス(1628-1697)は静寂主義運動の創始者とされている。1675年に『霊の導き』(The Spiritual Guide)を発表し、心の崇高さを完成させる手段として瞑想を提唱した。この本は、啓示を得るための実践的な方法を求める人たちの共感を呼び、出版後6年間で20版を重ねた。ヨーロッパ各地で、この本の教えを実践するグループが生じ、教会までもが、モリノスのこのささやかな書物を認めた。数年後に神父たちはようやく、モリノスの人気の著書がカトリックの教義に反していることに気づいた。モリノスは、自宅でひとりでいるときにも「神の御前」で瞑想することができると主張したことで一線を越えてしまった。1687年に彼は異端審問にかけられた。教会は彼の裁判を公開の見世物にしようと考え、見物に来た人全員に、15年間は悪習にふけっても地獄の刑罰が免除されるという免罪符を提供した。モリノスは終身刑を宣告され、9年後に死亡した。裁判の後、教皇庁は『霊の導き』を含む彼のすべての著作を、既刊未刊を問わず悪書に認定し禁止する勅令を出した。

8. テレサ・サンチェス・デ・セペダ・アフマーダ(Teresa Sanchez de Cepeda Ahumada)は、1515年にスペインのアビラ(Avila)に生まれ、 「アビラのテレサ」(Teresa of Avila)として知られるようになった。彼女は20歳で修道女となり、カルメル会に入会した。テレサは機知に富み、聡明で美しい女性であった。彼女が行っていた心の実践は、「静寂の祈り」に重点を置いており、この祈りで達することのできる観照のレベルにおいて、彼女の魂は並外れた平安と休息を経験した。「静寂の祈り」を続けることで、神の存在を身近に感じられるようになると語った彼女は、修道院に来た2年後に消耗症(consumption)を患った。消耗症に陥ると、身体が衰弱し、病気に徐々に“吸い取られていく”かのような状態になる。現在では播種性結核(粟粒結核)と呼ばれるこの悪性の疾患は、その後3年に渡って彼女を死の淵に追いやった。彼女はその間、観照の祈りの実践と静寂主義運動に関する書物の研究に時間を費やした。彼女はこう説明している。「病気の最中に、私は魂の最も低級な片隅から立ち上がり、神という崇高な存在とひとつになりました。そして、神の癒しの恩恵が、この病気を打ち破ってくださったのです」。テレサはその後、静寂主義運動の有力な指導者になった。

9. Teresa of Avila, The Interior Castle, or the Mansions (London: Forgotten Books, 2007), 25,26.

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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当会の通信講座の教材
第1号

第1号:内面の進歩を加速する神秘学とは、人生の神秘を実感する5つの実習
第2号:人間にある2つの性質とバラ十字の象徴、あなたに伝えられる知識はどのように蓄積されたか
第3号:学習の4つの課程とその詳細な内容、古代の神秘学派、当会の研究陣について

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ヘヌティの捧げ扉 - バラ十字古代エジプト博物館のコレクションから https://www.amorc.jp/offering-door-of-henuti/ Fri, 15 Mar 2024 05:32:12 +0000 https://www.amorc.jp/?p=13834 捧げ扉とは墓の祭壇のことで、家族が故人に葬儀の供物を届けるための扉でした。この扉はエジプト第5王朝期のヘヌティ家の婦人の墓のためのものですが、女性の像には古代に変更が加えられたように見えます。

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以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

ヘヌティの捧げ扉- バラ十字古代エジプト博物館のコレクションから
Offering Door of Henuti – RC 1735

ヘヌティの捧げ扉
ヘヌティの捧げ扉

捧げ扉とは墓の祭壇のことで、家族が故人に葬儀の供物を届けるための扉でした。この扉はエジプト第5王朝期のヘヌティ家の婦人の墓のためのものですが、この女性の肩書きは記載されていません。女性の像には古代に変更が加えられたように見えます。おそらく別の所有者のために再利用されたのでしょう。

エジプト第5王朝期、石灰岩、高さ77.5cm

当会は神秘学の源流が古代エジプトにあると考え、その研究に注力しています。研究拠点のひとつ、米国カリフォルニア州サンノゼ市にあるバラ十字古代エジプト博物館は、毎年10万人以上が訪れる人気の観光スポットであり、子供向けの考古学のイベントを開催して、地元の教育にも貢献しています。

古代エジプト博物館
古代エジプト博物館

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第1号

第1号:内面の進歩を加速する神秘学とは、人生の神秘を実感する5つの実習
第2号:人間にある2つの性質とバラ十字の象徴、あなたに伝えられる知識はどのように蓄積されたか
第3号:学習の4つの課程とその詳細な内容、古代の神秘学派、当会の研究陣について

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「名言」それとも「迷言?」- 新しいことを始めるとき https://www.amorc.jp/start-somthing-new/ Thu, 22 Feb 2024 08:12:21 +0000 https://www.amorc.jp/?p=13662 「目標は立てるな、目的は持つな」という言葉があるそうです。人は何か新しいことを始めようと決心した時に、まず頭に浮かぶのが目標あるいは目的を達成した時の自分自身の姿ではないでしょうか。

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こんにちは。バラ十字会の本庄です。山形県に住んでいる、オヤジバンドでの演奏とお祭りが、三度の飯よりも好きだという私の友人から寄稿がありましたのでご紹介します。

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バラ十字会日本本部AMORC 理事 山下勝悦
バラ十字会日本本部AMORC 理事 山下 勝悦

以前にも同じタイトルで投稿させて頂きました。今回はその続編ということで、しばしのお付き合いのほどをよろしくお願いします。

それでは早速に行ってみましょう。

最初は名言?からです。

『目標は立てるな、目的は持つな』。これが誰の言葉だったのかは記憶にないのですが。人は何か新しいことを始めよう、あるいは挑戦しようと決心した時に、まず頭に浮かぶのが「目標」あるいは「目的」を達成した時の自分自身の姿ではないでしょうか。この際に気を付けなければならないことがあるのだそうです。

それは、目標・目的をきっちり定めている人ほど、目標・目的を達成した時点で、いわゆる「燃え尽き症候群」に陥る危険があり得るというのだそうです。

しかし、私の友人の場合は少し違います。

何か新しいことを始めるときに、自分自身に思いっきりハイレベルな目標を立てるのです。次に寝食を忘れて努力を続けるのです。そして最終的に目標を達成したと自覚した時点でスッパリと縁を切り、また別の世界に飛び込んで行くのです。

友人はこういった経験をフルに活用してユニークかつ楽しい人生を送っています。

まあ、ときおりユニーク過ぎる行動を起こして私らを楽しませてくれますが(笑)。

「私たちは誰しも無限の可能性を秘めているのです。目標や目的の高さを自分で限定して考えずに常に上を目指して生きて行きましょう。」という人もいるかもしれません。

そうは言っても、何ごとかに取り組み、精進・努力しておられる方々がよく言われる言葉に「壁に突き当たった」がありますよね。

そこで、それに対しての名言・迷言?です。

「壁と思うな、階段と思え!!」。

壁の上から首を出している6匹の犬

次からちょっと過激な迷言になります「壁はあっても天井はない!!よじ登って乗り越えろ!!」

さらに「壁? そんな物はぶち壊せ!! ベルリンの壁だって人が壊したんだから!!」。

さらに、こんな言葉を発する方も「壁? 見たこともなければ、ぶつかったこともないよ!!俺にはそんなことを考えてる暇などないよ!!」

前述の友人はこのタイプですね。

話が少し横にズレますが「努力」の二文字が出ましたのでもう一つ。

「努力を買うと、いつの世も忍耐がオマケで付いて来るらしい……。」

タレントの伊奈かっぺいさんの言葉です(笑)

でも、忍耐とは人が神から授かった才能の一つなのだとか。

それを信じて日々頑張ってます。

会談に座っている二匹の猫

さて、私はどの壁を選べば良いのでしょうか?

もしあるのであれば、壁を避けることの出来る回り道を探そうかと……。

「急がば回れ」の名言もありますからね。

区切り

再び本庄です。

聞いた話ですが、ベルリンの壁は市内でお土産として売られているそうです。壁は壊したり越えたりできるということを思い起こすために、手元にあると良いアイテムかも知れません。

下記は山下さんの前回の文章です。

陰陽師の新刊本、安倍晴明と蘆屋道満、『烏天狗ノ巻』の『梅道人』と『殺生石』

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第1号

第1号:内面の進歩を加速する神秘学とは、人生の神秘を実感する5つの実習
第2号:人間にある2つの性質とバラ十字の象徴、あなたに伝えられる知識はどのように蓄積されたか
第3号:学習の4つの課程とその詳細な内容、古代の神秘学派、当会の研究陣について

執筆者プロフィール

山下 勝悦

1947年11月22日生まれ。山形県村山市在住。バラ十字会日本本部AMORC理事。 おやじバンドでの演奏と地元のお祭りをこよなく愛し、日常生活の視点から、肩ひじの張らない神秘学(mysticism:神秘哲学)の紹介を行っている。

本庄 敦

1960年6月17日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部代表。東京大学教養学部卒。 スピリチュアリティに関する科学的な情報の発信と神秘学の普及に尽力している。 詳しいプロフィールはこちら↓
https://www.amorc.jp/profile/

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メセフティの棺 - バラ十字古代エジプト博物館のコレクションから https://www.amorc.jp/coffin-of-mesehti/ Tue, 20 Feb 2024 04:23:43 +0000 https://www.amorc.jp/?p=13649 メセフティ家の女主人の棺には、食事のテーブルや供物、死後の彼女を支援する神と女神の名前が描かれています。この面には毎朝太陽が昇るのを見るための目が描かれているため、棺の東側であることがわかります。

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以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

メセフティの棺- バラ十字古代エジプト博物館のコレクションから
Coffin of Mesehti – RC 2822

メセフティの棺
メセフティの棺
メセフティの棺(一部)
メセフティの棺(一部)

メセフティ家の女主人は、ナイル川に臨むエジプト中部の町アシュート(Asyut)に埋葬されました。アシュートは、南のテーベと北のメンフィスのほぼ中間に位置する町で、この町で作られた棺はシンプルな様式で作られ、側面に沿って供物の絵が描かれているので、見分けることが比較的簡単です。

絵の細部を見ると、女主人の食事のテーブルも描かれています。亡くなった女主人への贈り物の絵の間には、死後の彼女を支援する神々と、その妻の女神たちの名前がペアで縦に描かれています。

写真の側面には毎朝太陽が昇るのを見るための目が描かれていることから、それが棺の東側にあたることが容易に判別できます。棺の西側の部分は失われていますが、ニューヨークのブルックリン博物館に現在所蔵されているものがそうではないかと思われます。そちらの遺物には、鏡、履物、化粧品などの絵が描かれています。棺の東側には持ち主の名前が刻まれていますが、西側の部分にはありません。

この遺物は中王国時代(紀元前2066-1650年)のもので、塗装された木と石膏でできています。

エジプト中王国時代(第11 ~ 12 王朝期)、木材、石膏、顔料、43×179×43cm

当会は神秘学の源流が古代エジプトにあると考え、その研究に注力しています。研究拠点のひとつ、米国カリフォルニア州サンノゼ市にあるバラ十字古代エジプト博物館は、毎年10万人以上が訪れる人気の観光スポットであり、子供向けの考古学のイベントを開催して、地元の教育にも貢献しています。

古代エジプト博物館
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第1号:内面の進歩を加速する神秘学とは、人生の神秘を実感する5つの実習
第2号:人間にある2つの性質とバラ十字の象徴、あなたに伝えられる知識はどのように蓄積されたか
第3号:学習の4つの課程とその詳細な内容、古代の神秘学派、当会の研究陣について

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