バラ十字会日本本部の本庄です。こんにちは。
今日は台風一過で、東京とは思えない美しい青空になりました。
そちらには、被害など出ませんでしたでしょうか。
さて、黒澤明監督の「デルス・ウザーラ」という映画をご存知でしょうか。古い映画ですが、まだご覧になったことがなければお勧めです。
この映画の主人公はロシア人の探検家で、ロシア東部の、当時まだ知られていなかった地域の地図を作ることを政府から命じられます。
そして、この任務の最中に、デルス・ウザーラという名の先住民の猟師と出会い、彼にガイドを頼むことになります。
主人公と、測量に同行したロシア人の兵士たちは、仕事を進めていくうちに、極寒の森で生き残るためのデルスの知恵や、彼の実直な生き方を知ることになり、長い歳月にわたる友情を育むことになります。
この映画はある探検家の実際の記録をもとに作られており、デルスは、アムール川流域の森林地帯に現在も暮らしているナナーイ族(旧名ゴリド族)に属します。
極寒の地に住むこのような人々は北方民族と呼ばれています。網走にある北海道立北方民俗資料館の案内冊子によれば、エスキモーやアイヌなど、世界全体では58種族ほどの北方民族が暮らしているとのことです。
北方民族に限られたことではありませんが、他の民族の文化を知ることは、自分たちの文化を客観的に見るために役立ちます。しかし、一般的に言えることですが、異文化を深く理解するために、私たちは自分の側の先入観を取り除かなければなりません。
たとえば、北方民族の方々の一部は、動物の血をそのまま飲んだり生肉を食べたりするため、不衛生で野蛮な人たちだと見なされてしまうことがあります。しかしこのことは、極寒の地では衛生的に問題はありませんし、ビタミンを補給して生きて行くためにどうしても必要な場合もあります。
また、アイヌの「イオマンテ」と呼ばれる大規模な祭りでは、小熊の命を奪うのですが、それが野蛮な動物虐待だと見なされ、差別の一因になったことがあるそうです。しかし、アイヌの方々の精神文化を理解すると、そこに表されているのは、自然界と動物に対する限りなく深い敬意だということが分かります。

とても寒い土地は農業に適さないため、北方民族の多くは、今でも狩猟と採集によって食物を得ています。しかし歴史的に見ると、農耕と牧畜が広まる以前は、人類の大部分が狩猟と採集を行なっていました。
最初の人類が生じたのは700~1000万年前とのことです。その後のほとんどの期間、人は狩猟と採集によって食料を得てきました。狩猟と採集から農耕と牧畜へと多くの人が移行したのは、一万年前~数千年前という、人類の歴史から見ればごく最近のことです。そして、この移行の直前にあたる後期旧石器時代に、人々は道具を作る高い技術を用いて、従来考えていたよりもかなり幸せに暮らしていたことが分かってきています。
この時代の人は、果物や獲物がなくなると住む場所を変えました。ですから土地を所有するという考え方はありませんでした。放浪生活で所持していたのは、石器や火打ち石や少量の共有の品物だけでした。そのため、個人が物を所有するという考えもほとんどなかったようです。
自然の恵みに感謝し、獲物が得られることや災いを避けることを願って日常的に祈りが行なわれていましたが、そのほとんどは個人や小規模な集まりでの行ないであり、組織的な宗教はまだ発生していませんでした。
人口はあまり増えず、皆が協力し合って運営しやすい小さな集団として暮らしていたので、支配者はおらず国家もありませんでしたし、法律も必要ありませんでした。
狩猟では、獲物がどこにいるかを鋭く察知することが求められます。そのため、狩猟採集生活時代の人たちは、天候のきざしや動植物の変化の細部を観察することに長けていましたし、直感も現代人よりもはるかに鋭かったようです。薬草などについても、とても豊かな知識を蓄えて、子孫に受け継いでいました。
このような生活と文化のなごりを、たとえば日本では、東北地方のマタギや北海道の先住民のアイヌに見ることができます。
先ほども述べましたが、人類の大部分が狩猟採集生活から農耕牧畜生活に移行したのは、一万年前~数千年前と、ごく最近のことです。
ですから、人類史の大部分は狩猟採集時代にあたります。バラ十字会の神秘学の学習コースでも細かく検討されることのひとつですが、この時代が人の心に与えた影響は、私たち現代人にも、はっきりと残されています。
そのような影響のうち、負の遺産と考えられるものに呪術があります。
狩猟採集時代の人々は、自然現象の原因や病原菌についての知識をほとんど持ち合わせていなかったためだと思われますが、不思議な現象や病気の多くは、様々な霊のために起こるとされました。
それらの霊の好意を得たり、なだめたりするための方法として、生活の中には呪術がはびこっていました。呪術にまつわる様々な迷信やタブーが存在し、人々の生活や思考の一部から自由が奪われていました。
一方、プラスの遺産としては、自然や他の生き物に対する深い尊敬の念を挙げることができます。
たとえばアイヌの方々の文化には現在でも、このような尊敬の思いが、生活のあらゆる場面に行き渡っています。

アイヌの方々は、神なる魚である鮭を運んできてくれる川を神聖な存在だと考えています。そのため、川で洗濯をしたり汚水を流したりすることを行ないません。
猟や漁業や、日々の食事の際には、自分たちの命を育んでくれる、他の生き物の命に対する深い感謝を、儀式によって表すことを習慣にしています。
また、日々お世話になっている食器や道具にも魂が宿ると考え、古くなって棄てるときにも、礼を欠かないように扱います。
幸せに生きるために、そして、人生の意味についての健全な考え方を育んでいくために、先住民の方々の生き方から私たちは多くのことが学べるように思えます。
いかがでしょうか。少しでもあなたのご参考になる点があれば、心から嬉しく思います。
それでは、また。
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