バラ十字会日本本部の本庄です。こんにちは。
今日は朝から曇りがちの天気でした。涼しくて過ごしやすかったのですが、やはり湿気には悩まされます。梅雨明けが待ち遠しいですね。
数年前から、さまざまな書籍やインターネットで、人生に働いている法則として「引き寄せの法則」のことが語られています。
私たちが普及に努めている神秘学では、望ましい方向に人生を変えるための指針として、人生に働いている法則を知り、その知識を活用することを重視していますので、この「引き寄せの法則」についても調べてみました。
大まかにいえば、「引き寄せの法則」とは、人間の心の中に作り出された思いや考えには、現実となる傾向があるので、最も強く思っていること、最も焦点を合わせて考えていることが、その後の人生に形になって現れるという法則です。
ですから、望んでいる状況を自分に“引き寄せる”ためには、それが実現したときの様子や気持ちを思い浮かべることが有効であり、不成功や失敗について考えることは、それらが引き寄せられてしまうので、特に避けなければならないとされます。
この法則が語っていることは、人間の心には、通常考えているよりも強い創造力が秘められていて、この創造力は、望むことを思い浮かべたり、考えたり、文字や言葉にしたりすることによって解放することができるということです。このことは、昔から様々な形で指摘されていることであり、特に目新しい主張ではありません。
たとえば、実現が遠いと思われる大きな望みのいくつかを、大学ノートのあるページに書いて、数十年の間忘れていた。そして、ふとそのノートのことを思い出し読んだところ、書き留めた望みのすべてがかなっていた。このような事例は、さまざまな本に登場します。
私もそのようなことが起きた方を実際に何名も知っていますし、ありふれたできごとでなら、私自身の体験もあります。
特に、人間の心の中にありありと形成されたイメージには、信じられないほどの創造力があるということが報告されています。
しかし、「引き寄せの法則」を、あなたが望んでいる状況を実現するための指針として使うと、主に3つの問題が生じてしまいます。
特定の考えやテクニックを批判することにはあまり気が進まないのですが、この問題は、人生の意義や自己実現という重大な事柄に直接関係していますので、あえて、専門家としての小職の見解をご紹介させていただきたいのです。
第1の問題は、「引き寄せの法則」が、人生に働いている唯一の法則であるとか、あるいは、他に配慮すべき重要な法則はないと考えてしまったときに生じます。
簡単な例を使ってご説明させてください。
風の強く雨がたたきつけるように降っている高速道路で、猛スピードを出して無謀な運転しているとしましょう。
このようことをしていれば、事故を起こすことをその運転手が一度も思い浮かべたことがないとしても、「引き寄せの法則」とは無関係に、遅かれ早かれ事故が生じてしまうことでしょう。
それは、摩擦の少ない道路でスピードを出し過ぎれば、風によって流されたり、カーブを曲がりきれなかったり、とっさの変化に対応するための時間が足りなくなったりするということが、物理的な法則から起きるからです。
精神的な法則と同時に物理的な法則がこの世に働いていることは明らかであり、それを考慮しないことは、単に愚かな行ないでしかありません。
あたりまえのことだと思われるでしょうか。
しかし、運動にも食事にも配慮せず、理想の体型をイメージするだけのダイエットを勧めている本も実際にありますし、成功哲学にも、いわゆる“スピリチュアル系”の分野にも、同じような例が多数あります。
別の言い方をすれば、ある望みを実現するときに「引き寄せの法則」を使ったからといって、物質的な準備や行動を、何もしなくて良いということにはならないのです。
第2の問題点は、ネガティブなイメージという問題です。
「引き寄せの法則」では、病気や事故などについてのイメージを持つことは、それらを引き寄せてしまうので、特に良くないと言っています。このことは、適切な指針と言えるのでしょうか。また、そのようなことは実際に起こるのでしょうか。
例として、お子さんを産んだばかりのお母さんのことを思い浮かべていただきたいのです。とても小さな赤ちゃんを前にして、この子が病気にはならないだろうか、怪我をしたりしないだろうかと案じることのないお母さんはいらっしゃらないのではないかと思います。
心の中の想像のすべてに、もし現実化する傾向があるとしたら、このような場合のお母さんは、いったいどうしたら良いというのでしょうか。考えまいとすることが、逆にひどいストレスになってはしまわないでしょうか。
実際には、このような心配は、人の自然な心の働きであり、このことによって、危険を避けたり、不測の事態へ素早く対応したりすることができます。
そもそも、すべての人のすべての想像に、このような「引き寄せの法則」が働くとしたら、この世界は目茶苦茶になってしまうことでしょう。
神秘学を学ぶと、そのような心配をする必要はないことが分かります。長くなるので、ここで十分にご説明することはできないのですが、ある法則により、他の人の害になるイメージが現実化することは、基本的には起こらないことが知られています。
さて、第3の問題点は、かなり微妙です。この場合も例を使って説明させてください。
自分の周囲には押しつけがましい人ばかりが集まっていると感じている、ある人がいるとします。
このような場合、それは「引き寄せの法則」によって起こっているのでしょうか。
つまり、その人自身が持っている「押しつけがましさ」が、その人の周囲に押しつけがましい人を引き寄せているのでしょうか。
それなら、自分の性格の「押しつけがましさ」や押しつけがましい人のことを考えないようにすれば、そのような人は「引き寄せの法則」によって去っていくのでしょうか。
このような例では多くの場合に、当の本人の性格に押しつけがましいという欠点、別の言い方をすれば、他の人に寛容な態度を取ることができないという欠点が見られるということが、心理学的によく知られています。
しかし、このことは「引き寄せの法則」によって起こっているのではありません。
それではなぜこのようなことが起こるのかという神秘学の解釈をご説明させていただきたいと思います。
私たち人間の潜在意識の深い部分には、高い知性を持ち、ほとんど何でも実現することができ、その本人の内面の進歩のことを真に考えている、聡明な親友のような精神が潜んでいると神秘学では考えています。そしてこの精神のことを、「内的な自己」(Inner Self)とか、「内なる師」(Master within)と呼んでいます。
一方、私たち人間の「外面的な自己」は、エゴに通常とらわれているため、自分の欠点はなかなか見通すことができないのに、他人の欠点にはたちどころに気がつきます。
ある人が押しつけがましいという心の欠点を持つ場合、その人の「内的な自己」は、押しつけがましい人がその人の周りに集まるという状況を作り出します。
そうすると、その状況から「外面的な自己」は、他の人の考えを尊重することの大切さを学ぶことができるからです。
「内的な自己」が、「他山の石」を用意しているのです。
そして、この不愉快な事態は、「外面的な自己」が寛容について学び終えたときに解消されることになります。
同じように、人間関係に起こる不快な状況や辛い状況の一部は、「内的な自己」が「外面的な自己」へ、レッスンとして与えていると考えることができます。
もちろんこのような考えがあてはまるのは、状況の一部だけだということを強調しておかなくてはなりません。先ほどの例のように物理的な原因で起きる場合もありますし、他に原因がある場合もあるからです。
多くの哲学者や思想家が、人生のことを基本的には学校であると考えています。「内的な自己」がレッスンを用意しているという、この見方と同じ見解です。
「内的な自己」が、自己を映す鏡、つまり他山の石として、その人の内面的な成長にとって最適な人間関係を用意するということは、実はよく起こることです。
そのような場合に「引き寄せの法則」という指針に従ったとしても、たとえば、押しつけがましさについて考えず、押しつけがましい人のことを全く想像しなかったとしても、その人がレッスンを学び終えるまでは、事態はまったく改善しません。
以上の3つをまとめましょう。望ましい方向に人生を変えるためのテクニックや指針として、「引き寄せの法則」には残念ながら、必要とされる要素の多くが欠けています。
バラ十字会の通信講座でも、「引き寄せの法則」に似たテーマが扱われています。具体的には、心の中に望むイメージを作り、自身の心の創造力を解放して、そのイメージを現実化するテクニックが、学習を開始して6ヵ月目の最後にご説明されます。
情報の出し惜しみをしているわけではないのですが、関連する法則のすべてをご説明し、このテクニックを有効に活用していただくためには、どうしても6ヵ月という準備期間が必要なのです。
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それでは、また(^^)/~