投稿日: 2014/10/17
最終更新日: 2024/11/08

こんにちは。バラ十字会日本本部の本庄です。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

あるビジネス書に紹介されていたのですが、著しく業績を伸ばした米国の大企業のリーダーの方々を調査したところ、その人たちに共通する特徴は、IQ(知能指数)が高いことではなく、むしろEQとSQが高いことだったのだそうです。

このうちEQについては、すでにさまざまなところで取り上げられているので、あなたもお聴きになったことがあるかもしれません。「Emotional Quotient」もしくは「Emotional Intelligent Quotient」の略で、「情動指数」、「感情指数」、「心の知能指数」などと訳されています。

EQの高い人の多くには、次のような特徴があります。

・ 不快な状況に直面しても、瞬間湯沸かし器のように自身の感情を爆発させるのではなく、上手にコントロールする。

・ ネガティブな感情をポジティブな感情に転換することを得意とする。

・ 他の人の思いを敏感に察知する。

リーダーが高いEQを持っていれば、周囲の人たちのEQも高まることが知られています。多くの人の前向きな感情が刺激され、人と人との協力にもプラスに働くので、この能力に優れたリーダーがいる企業が成功する可能性が高いということは、とても納得できることではないでしょうか。

EQは、他者に共感する能力、他者と交流する能力、自身の感情の認識、 自身の感情のコントロール、自身の内的な目標を達成しようとする情熱から構成されている
- EQは、他者に共感する能力、他者と交流する能力、自身の感情の認識、自身の感情のコントロール、自身の内的な目標を達成しようとする情熱から構成されている

EQとビジネスでの成功に高い相関関係があることが日本に紹介されたのは、2000年頃のことでした。それ以降、EQを高めることを目的とした数多くの企業研修が作られています。しかし研修ではない、個人で行えるEQを高める方法がありますので、以下に3つほどご紹介します。

EQを高める第1の方法は、日常生活の中で、相手に共感することを心がけることです。しかし、注意しなければならないことがあります。共感には、情動的共感(emotional empathy)と認知的共感(cognitive empathy)の2つがあることが知られています。情動的共感とは、相手の感情を写し取ること、つまり、相手が悲しんでいるときに自分も悲しく感じる、喜んでいるときには喜びを感じる、怒っているときには怒りを感じることです。この共感は必ずしも否定されるべきものではありませんが、実際のところ、人間関係やビジネスを悪化させる場合も少なくないことが知られています。それに対して認知的共感とは、相手と同じ感情を感じるのではなく、相手の感情を理解することを意味します。つまり、自分が感情的になりすぎずに、相手がどのような感情をいだいているかを理解するように日常から心がけます。

第2の方法は、怒りへの対策です。自分が怒りを感じたときのことを記録して、傾向を見つけます。怒りを感じたら、すぐにその場でメモ帳か自分宛のメールなどに、起きた出来事と怒りの強さを10点満点で記録します。たとえば、「1日かけて作ったプレゼンのデータを間違って消してしまった。7」とかです。この記録のことをアンガーログと呼びます。記録がある程度たまったら、感情の状態が良いときにアンガーログを読み返します。何があなたの心を揺さぶったのでしょうか。他人の言動でしょうか、何かがうまくいかなかったことでしょうか。この方法によって、徐々に自分の怒りの原因と傾向を理解し、それに対処する方法を考えることができます。また、自己理解につながる場合も少なくありません。

ちなみに他人の特定の言動が極端に気に障ったり、憎らしいと感じたりする場合には、シャドーという心理的な現象が関係していることがあります。興味がある方は、次の記事をお読みください。

参考記事:『シャドー(影)とひとつになる

第3の方法は、ちょっと意外かも知れません。自分のネガティブな感情を即座に抑えつけてしまわないように心がけるということです。第1の方法では、相手の感情に認知的に共感することをご説明しましたが、この方法は自分に対してそうすることに似ています。自分の感情がネガティブなものであっても、それを抑えつけ過ぎずに健全ななりゆきにまかせます。感情は、波のように高まったり低くなったりしてピークに達し、自然に消えていきます。自分の感情を否定して不自然に断ち切ってしまうと、かえって心に望ましくない影響を残すことがあるからです。

経験の豊富なビジネスの指導者(イメージ)

「SQ」という言葉は、まだ世の中で、あまりひんぱんには話題にされていないようです。「Spiritual Quotient」の略で「スピリチュアル指数」などと訳されます。

残念なことに「スピリチュアル」というカタカナ語からは、日本では、あまり科学的とはいえないグッズの販売や、前世占いや運勢判断や降霊術のことをイメージしてしまう方が多いようです。しかし、もともとの英語の「spiritual」や「spirituality」には、そのようなニュアンスはほとんどなく、文学、音楽、絵画などに表れている崇高な精神性や、成熟した道徳意識のことを主に指しています。

いわゆる「スピリチュアル」と、本来の意味の「spiritual」については、下記のページでも紹介していますので、ご興味がおありでしたら参考になさってください。

参考記事:「スピリチュアルとは?本当の意味を簡単に解説、4つの実際の例、「感じる」というキーワード

「SQ」(スピリチュアル指数)は、「私とは何か」、「人間とは何か」というような根本的な問いに関連しています。しかし、必ずしも宗教に直接結びついているとは限りません。

SQの高い人の多くには次のような特徴があります。

・ 謙虚である

・ 強い使命感や責任感を持っている

・ 人生そのものに深く感謝している

それではなぜ、SQが高いことが、ビジネスでの成功に重要なのでしょうか。

強い使命感や責任感がプラスに働くことは容易に想像できます。

また、現代の社会では多くのビジネスが、さまざまな分野の、しかも世界中の多くの要素と複雑に絡み合っていて、その状況がめまぐるしく変わるので、過去の成功体験から得られた行動指針などは、むしろマネージメントに悪影響を及ぼすことが多いと言われています。

SQが高い人は、その謙虚さを生かして、心をいったん白紙にして、先入観やステレオタイプな反応を棄てて現状とひとつになり、状況にぴったりと合った対応を取ることが得意なので、未来が不透明で変化が速い今の時代のリーダーにうってつけだと考えられます。

戸外での瞑想

一方、バラ十字会などで神秘学(mysticism:神秘哲学)に親しんでいる方は、SQが高い人が成功するのには、別の理由もあることに思いあたるのではないでしょうか。

神秘学の理論では、人は自身の心の奥深くを通して、宇宙意識と呼ばれる、生物全体の集団の知性とつながっているとされます。

そしてこの知性は、集団の莫大な記憶をすべて蓄えており、しかも、個々の人間をはるかに超える能力を持つので、通常の方法では手に負えないほど複雑な問題を解決したり、新しいアイデアを生み出したり、未来を予測して、あらかじめそれに対応したりすることに役立ちます。

SQが高い人は、自分の心の奥の声に耳を傾けることが得意な人にあたり、そのため、宇宙意識という知性を知らず知らずのうちにビジネスに役立てているのでしょう。

さて、SQを高める方法についてお話する前に、ひとつご説明しておかなければならないことがあります。下図は、人間を構成するさまざまな要素を、表層(表面的な要素)から深層(本質的な要素)に順に並べたものです。

人間を構成する要素を表層から深層へと並べた図

神秘学でよく知られている原理ですが、表面的なものは変わりやすく、本質的なものはなかなか変わりません。このことは、湖の表面では水がよく動くのに対して、深い部分ではほとんど動かないことにたとえられます。

この図で最も左にある身体は、筋力トレーニングを数週間行えば、見違えるほど変わります。一方で、受験勉強のことを思い起こしていただければ、知性面を改善するためには、それよりもやや長い時間がかかることが実感いただけるでしょう。そして、感情面(EQ)やスピリチュアル面(SQ)を変化させるには、さらに粘り強いアプローチが必要とされます。

SQを高める方法として、よく取り上げられるのは次の3つのことです。

・ フィクションや伝記を読んで、登場人物の内面を想像する

・ 瞑想を行う

・ 自分が、感謝の思いにあふれた謙虚な人になれるように祈る

時として誤解されてしまうことがありますが、瞑想やこのような祈りは、特定の宗教と関連しているわけではありません。

ちなみに、当会の神秘学の通信講座は、SQを高めることをまさに目標にしています。その内容はこのブログには書ききれないほど広範囲にわたっていますが、たとえば次のテーマが挙げられます。

・ 人生と人間の心、そこに働いている法則を理解する

・ 瞑想の実習、望んでいる未来をイメージングする実習

・ 「普遍的な愛」を体験する実習

・ 善と悪と人間の自由意志について理解する

・ 実在体験、神秘体験とは何か。それを実現するためにはどうすれば良いか。

この通信講座には『人生を支配する』(Mastery of Life)というサブタイトルが100年近く前から付けられています。もちろん自分の人生を支配するという意味ですが、「mastery」には人生の「達人(master)になる」という意味も込められています。人生の仕組みを知り尽くし、人生をコントロールし、周囲の人たちを支援しているような人を意味します。

ビジネスの成功に限らず、「人生の支配」を実現するためには、遠回りのようでも、自身のSQを高めることが確実な方法です。

ご興味をお持ちの方は、下記の2つのページをご参考になさってください。

さまざまな機会にご説明していますが、20世紀は、科学や工業技術の発達をきっかけに、極端な物質主義に傾いた時代でした。そして、振り子が戻ってくるように、21世紀には心の大切さが見直されるようになると私たちは考えています。

今日ご紹介したビジネスリーダーのEQ,SQについての研究は、心の大切さが見直されていくという大きな流れのひとつの表れではないかと思います。

企業の経営や組織改革についての最新の研究で、このようなことが分かったという紹介を読んで、私はとても勇気づけられました。心の大切さを見直すということはビジネスだけでなく、世界規模で起こっているさまざまな問題を解決するためにも必要とされる事柄だと考えているからです。

いかがでしたでしょうか。あなたのご参考になる点が少しでもあったなら、心から嬉しく思います。

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第1号:内面の進歩を加速する神秘学とは、人生の神秘を実感する5つの実習
第2号:人間にある2つの性質とバラ十字の象徴、あなたに伝えられる知識はどのように蓄積されたか
第3号:学習の4つの課程とその詳細な内容、古代の神秘学派、当会の研究陣について

執筆者プロフィール

本庄 敦

本庄 敦

1960年6月17日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部代表。東京大学教養学部卒。
スピリチュアリティに関する科学的な情報の発信と神秘学(mysticism:神秘哲学)の普及に尽力している。
詳しいプロフィールはこちら:https://www.amorc.jp/profile/

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