こんにちは。バラ十字会日本本部の本庄です。
東京板橋区の石神井川沿いでは、サクラもコブシも、つぼみがずいぶんと大きく膨らんできました。
そちらでは、春の訪れはどのような様子でしょうか。
「光は東方から」という古代ローマのことわざがあります。ローマの文化が生じたのは、東方にあるギリシャの文化のおかげだという意味です。
このことわざは、現在ではさらに広くとらえられて、ヨーロッパの文化が生じたのは、エジプトやメソポタミアで発生した古代オリエント文明のおかげだという意味にも使われています。
オリエント(Orient)の語源はラテン語のオリエンス(oriens)で、日が昇る方位である東のことを指しています。具体的には、イタリア半島より東がオリエントであるとされていました。
ヨーロッパから見て極東に位置する日本も、広い意味で言えばオリエントであると言えないこともありません。日本の文化が、今後世界に、今まで以上に重要な貢献を果たし、このことわざに第3の意味を付け加えることができたら、どれほど素晴らしいことだろうかと思います。
古代オリエントには、多くの神秘学派がありました。エジプト王朝の神秘学派、パレスチナのエッセネ派、ギリシャのオルペウス派、同じくギリシャのデルポイ神殿の学派などです。
これらの神秘学派では、春分の日が一年の初めと定められていました。つまり、極寒の時期が終わって訪れる、昼と夜の長さが等しく、太陽が真東から昇る日が、冬が春と交代する日であり、新年の初めだとされていました。
この時期には、長い冬の休息が終わり、若々しい動植物の姿が自然界のいたるところにあふれます。そして、古くなった物事に別れを告げて前に進みたい、新しいことを行いたいという促しが人の心を満たします。
ですから、古代に春分の日が一年の始まりに定められていたのは、とても自然なことに感じられないでしょうか。
一年を区切るこの方法は、古代ローマにも受け継がれて一時期使われていました。ところが、現在ほぼ世界中で使われている暦の一年の始まりは、真冬の1月(Janurary)の最初の日になっています。
このことには、あるいきさつがあります。
伝説によれば、ローマの名前は建国の祖であるロムルスに由来します。火と炉の女神ウェスタの神殿の巫女シルヴィアと軍神マルスの間には双子が産まれたのですが、ロムルスはそのうちのひとりです。
女神ウェスタの巫女でありながら妊娠したことでシルヴィアは処刑されるのですが、その前に、この双子を籠に入れて川に流します。たどり着いた先で、ロムルスとレムスは雌のオオカミに乳をもらって生きながらえました。
18歳のときにロムルスはローマを建国します。紀元前753年のことでした。そして、自分の国のための、とても素朴な暦を定めました。古代オリエントの習慣を受け継ぎ、やはり一年は春分の日から始まるとされました。
そして、春分の日の後の304日間だけが10ヵ月に分けられています。残りの冬の期間は、戦争も農業もできなかったので日付を数えませんでした。この暦の一年に10ヵ月しかないことは、10が神聖な数だと考えられていたことも影響しています。
父の軍神マルスにちなんで、一年の最初の月にはマルチウス(Martius)という名が付けられました。これは、その後2ヵ月ずれて、現在の3月(March)の語源になっています。
ロムルスの定めた暦では冬に日付がなく、そのことは徐々に不便に感じられるようになりました。そこで、後のローマ皇帝ヌマ・ポンピリウスは、11番目の月ヤヌアリウス(Januarius)と12番目の月フェブルアリウス(Februarius)を加えました。
あてがうことのできる日数が足りなかったので、現在の2月(February)にあたる最後の月フェブルアリウスは、他の月よりも日数が少なくなりました。
紀元前153年にこのヌマ暦の改革が行われます。ヤヌアリウスは、ローマ神話の出入り口の神「ヤーヌス」(Janus)に捧げられた月です。この神は前後に2つの顔をもち、過去と未来を見ているとされます。
この過去と未来が、前の年とこれから始まる年のことであると解釈され、また、このヤーヌス神は物事の始まりを司る神でもあることから、ヤヌアリウスが一年の初めの月に改められました。
つまりこの時点から、一年の初めは春分の日ではなくなり、現在の一月(January)の最初の日になりました。
地球が太陽の回りをちょうど一周する期間は、ぴったりと365日ではないので、年月が経った時にも、暦が実際の季節とずれないようにすることは、長年解決することができなかった難しい課題でした。しかも、戦争の影響や暦を定める人たちの不注意によって、暦の計算が間違ってしまうこともあったのです。
そのため、ヨーロッパでは暦の大規模な改革が3回行われました。この改革を行ったのは、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)、皇帝アウグストゥス、法王グレゴリウス13世です。
これらの改革の際に、7月にはユリウス(Julius)、8月にはアウグストゥス(Augustus)の名前が付けられ、現在の英語の7月と8月の名前の由来になっています。その他の月の名前は、ヌマの暦の名前がそのまま使われました。
ちなみにアウグストゥスは、2月から1日分を取り上げ、自分の月である8月に付け加えたので、1ヵ月が31日である大の月が、7月と8月で連続するようになりました。
さて、来週の週末には春分の日が訪れます。そこで、あなたにお勧めがあります。季節の変わり目を祝う、この古代の新年をきっかけにして、何かひとつ、新しいことを始められてはいかがでしょうか。
というのも、この本来の新年の初めに始められた何かは、いわゆる“流れに乗って”、順調に進んでいく可能性が高いことが、神秘学では知られているからです。
いかがでしたでしょうか。次回もおつきあいをいただければ、心から嬉しく思います。
ではまた。
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