こんにちは。バラ十字会の本庄です。
東京板橋は早くも秋雨のようで、朝から厚い雲がかかっています。涼しくて、空気がおいしく感じます。
そちらはいかがでしょうか。
ファーブルの「昆虫記」をお読みになったことがおありでしょうか。ジャン=アンリ・ファーブルは、南フランス生まれの生物学者で、今年が没後100周年にあたります。この「昆虫記」は大人にも子供にも、とても人気があり、私も小さい頃に読んだ覚えがあります。
最初の巻に出てくるのは、フンコロガシです。堅苦しい観察の記録ではなく、年配の方がていねいに語りかけるような文章です。豊かな陽射しに恵まれている暖かい南フランスの自然と生き物を、著者が心から愛していることが伝わってきます。
最近では集英社が美しい本を出していて、もし、お知り合いに昆虫好きの子供さんがいれば、プレゼントにうってつけだと思います。
調べてみると、ファーブルが55歳のときから30年をかけて書いたライフワークであり、ロマン・ローランやメーテルリンクも愛読者だったとのことです。生物学者だというのに、ノーベル文学賞の候補にさえなっています。
ファーブルが生まれ育った地元で使われていたのは、オック語(Oc)という独特の言語です。オック語がフランス語に置き換わり消えていくことに心を痛め、ファーブルはこの言葉の保護活動に関わり、オック語の詩や歌も多数作っているそうです。
南フランスに広がる、オック語を話す人たちが住む文化圏は、オクシタニア(Occitania)と呼ばれています。ワインがお好きな方は「ラングドック」という産地の名をお聞きになったことがおありかもしれません。この語はオクシタニアの別名で、オック語を意味する「ラング・ド・オック」が短くなってできた言葉です。
オクシタニアを代表する都市には、大西洋側のボルドー、地中海沿いのマルセイユ、ニース、内陸のトゥールーズなどがあります。
この中では、もしかしたらトゥールーズが一番知られていないかも知れません。サッカーの男子日本代表が、ワールドカップの本戦を始めて戦った場所であり、また、ヨーロッパの航空機工業の中心地です。
中世のオクシタニアは、トルバドゥールと呼ばれる吟遊詩人が活躍していた、独特の文化で知られている地域で、その中心都市はトゥールーズでした。
12世紀ごろから、トゥールーズには、多くの療養所や病院が建てられ、貧しい人たち、孤児、巡礼者たちを援助していました。
オクシタニアでは、あらゆる国の人たちとの自由な交流が奨励され、カトリック教徒やプロテスタント、カタリ派の人たち、ユダヤ教徒やイスラム教徒、自由思想家のすべてが受け入れられていました。また、この当時にすでに、女性の地位は男性と対等と見なされていました。
トゥールーズには、「花合戦文芸アカデミー」(Accademie des Jeux Floraux)という、ヨーロッパで最も古い文芸アカデミーが生まれました。このアカデミーは、現在も文芸団体として存続しており、毎年5月3日にトゥールーズ市庁舎の一室で、文学賞の授与式を行なっています。
アカデミーという言葉の元になったのは、ギリシャ語のアカデメイアで、プラトンが作った神秘学(mysticism:神秘哲学)の研究のための学校、つまり神秘学派を意味していました。そこから、学問や芸術を研究する人たちの集団が、後にアカデミーと呼ばれるようになりました。
花合戦文芸アカデミーの起源は、14世紀の中世の吟遊詩人たちによって結成された「悦ばしき知識団」(Gai Savoir)という名の団体でした。この団体は、「詩歌を通して、より幸福でより良い世界を築く」というモットーを表向きは掲げていましたが、実際には、カトリック教会の目を避けて活動していた神秘学派でした。
16世紀には、プロテスタントとカトリックの間におぞましい宗教戦争が起こり、その間、この団体は活動を停止していました。その後、古い聖堂の地下で、クレマンス・イゾールという伝説の女性創設者の墓が発見されたといううわさが流れ、この学派が活動を再開します。
クレマンス・イゾールの像(アントニー・オーギュスタン・プレオール作、パリ・ルクサンブール公園) Photo: JLPC / Wikimedia Commons, via Wikimedia Commons
この経緯は、伝説の創始者クリスチャン・ローゼンクロイツの墓が発見され、バラ十字会が活動を再開したという、中世の言い伝えにそっくりです。
つまり、中世の神秘学派は、宗教や政治権力からの迫害を逃れることが主な理由で、定期的に活動と休眠を繰り返しており、活動を再開するときには、このようなうわさが、意図的に流されたのです。
中世の神秘学派は、必ずと言っていいほど、宗教や政治権力から弾圧されています。なぜでしょうか。その理由は、固定化した教えや慣行に縛られずに、個人個人が自由にものごとを考え、意見を交換することを、神秘学派が勧めていたからです。
このようなことは、既得の権力を持つ人たちにとって、常に都合の悪いことなのでしょう。
1909年に、トゥールーズで活動していたバラ十字会(薔薇十字団)に、米国の神秘学の研究家H・スペンサー・ルイスが入会しました。そして、才能を高く評価され、バラ十字会を引き継ぎ、米国を拠点にして活動を再開するという使命が与えられます。
そこで彼は、1915年にバラ十字会AMORCという名前で新たに団体を創設し、神秘学派としての活動を始めました。それが現在の当会です。その後、当会の活動は世界中に広がり、今では、日本を含む21ヵ国に拠点を持ち、87ヵ国ほどに、神秘学を中心テーマとする通信講座の教材をお届けしています。
そして、教育と文化への貢献によって、多くの国々や自治体から表彰されています。
この文章の冒頭で、ファーブルの百周年についてご紹介しましたが、偶然にも当会も、今年が百周年にあたります。そしてこの記念に、アメリカ合衆国のオバマ大統領から、以下のお祝いの手紙をいただきました。
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ホワイトハウス ワシントン 2015年3月12日
貴会の百周年の記念を、共にお祝いできることを嬉しく思います。
アメリカ合衆国の歴史は、大統領や将軍たちだけによって作られたのではありません。自分たちとそして今後の世代のために、より明るく力強い未来を築くことに心を砕き、努力を傾けた人たちが手をつないだときに、しばしば変革(チェンジ)がもたらされたのです。
長年にわたり皆さまは、誇るべき伝統を保ち続けてこられました。そして、この世界のありうるべき姿をあえて思い描き、その理想像の実現のために、たゆみなく努力を続けられることで、アメリカ合衆国が、よりよき明日に到達することに貢献されています。
貴会のこの記念日にお祝いを申し上げます。地域社会に対して皆さまがなされた奉仕の月日を思い起こしていただき、自らなし遂げてこられた成果を誇りに思ってくださることを私は望んでいます。そして今後の歳月の、貴会の発展をお祈り申し上げます。
バラク・オバマ
参考ページ:オバマ大統領からのバラ十字会AMORC創設百周年へのお祝いの手紙
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いかがでしたでしょうか。今回は、やや雑多なご紹介でしたが、興味深い点が少しでもあったと、あなたにお感じいただけたなら、心から嬉しく思います。
次回は、何か具体的で、直接あなたのお役に立つテーマを取り上げたいと思います。また、よろしくお付き合いください。
それでは、また。
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