投稿日: 2015/12/04
最終更新日: 2023/09/20

 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

昨日とは打って変わって、今日の東京板橋は、風は強いですが、雲ひとつない晴天に恵まれています。もうすっかり冬ですね。

そちらはいかがでしょうか。

 

2001~2003年にアメリカで作られた、『ロードオブザリング』という3部作の映画があります。もう3度目になるのですが、最近、この映画を鑑賞する機会がありました。ニュージーランドの自然の中で撮影が行なわれた美しい映画で、「中つ国」と呼ばれる架空の大陸でファンタジーが進んでいきます。

映画のストーリーは、次のように始まります。

 

はるか昔のことですが、闇の王サウロンは中つ国を征服しようとして、自分の魂と魔力を込めた指輪を作ります。この指輪は、はめると姿を消すことのできるのですが、持っている人の心が徐々にむしばまれ、闇の王サウロンに支配されてしまうという危険なものです。

サウロンの世界征服の野望は、過去に一度くじかれたのですが、『ホビットの冒険』という小説(2012~2014年に映画化)に書かれている奇っ怪なできごとを経て、この失われていた指輪が、ホビット族の主人公フロドの養父の手に入ることになります。ホビット族とは、中つ国の特に平和な地域に住んでいる、自然を愛し穏やかで悪への誘惑に強い種族です。

 

もしこの指輪がサウロンの手に戻ると、世界は闇に支配されることになります。すでにサウロンは、闇の勢力を結集して強大な軍隊を作り上げていて、世界の支配を阻むためには、この指輪を、サウロンの支配地域のすぐ隣にある「滅びの山」の溶岩の川の中に捨てて破壊しなければなりません。そして、危険なこの指輪を運び、溶岩の中に投げ入れるという仕事をフロドが引き受けることになります。

この使命を助けるために、中つ国に住む5つの種族から仲間が選ばれ、主人公とともに9人の「旅の仲間」が結成されます。未来を読むことや呪文や弓に長けている不老長寿のエルフ族、背が低く怪力で斧の使い手であるドワーフ族、ホビット族、魔法使い、人間です。

 

この映画の原作になっているのは『指輪物語』という小説で、著者はJ・R・R・トールキンという、オックスフォード大学の言語学の教授です。古代ヨーロッパの歴史、神話、言語を広く研究し、その成果をもとに『指輪物語』、『ホビットの冒険』を作ったと言われています。

この物語には、神話に登場する逸話や道具やキャラクターが、ふんだんに盛り込まれています。たとえば、人間を助ける森の木の精、未来を見ることのできる水鏡、魔力を持つ剣、軽くて強い伝説の金属、悪を打ち砕く洪水、癒しの力を持つ王や女王、地下深くに住む炎を吐く悪魔、ドラゴン、巨人族、魔法使いを助ける鷹などです。

湖の上を飛ぶドラゴン

 

この小説は、1965年ごろにアメリカで爆発的な人気を得ます。メインキャラクターのひとりである優れた魔法使いのガンダルフは、ベトナム戦争反対のスローガンにも使われ、「ガンダルフを大統領に!」という旗を掲げてデモ行進が行なわれたこともあったそうです。

 

さて、指輪物語に登場するエルフ、魔法使い、ドワーフ、ドラゴン、巨人族などのキャラクターや、さまざまなアイテムから、ゲーム機のロール・プレイング・ゲーム(RPG)のことを連想された方も多いのではないでしょうか。

『指輪物語』が出版されたのは、英語版が1954年、日本語版が1972年であり、その後実際に多くのファンタジー小説やRPGが影響を受けました。

日本では1983年に家庭用ゲーム機が初めて発売されると、このゲーム機で遊ぶことのできるRPGのソフトが次々と爆発的な人気を得るようになります。これらのRPGの多くには、エルフ、魔法使い、ドワーフ、巨人、ドラゴンなどが登場します。実は、私も大学生だった時期にずいぶんと時間を費やしてしまった覚えがあります。

 

なぜ、ファンタジー小説や映画、RPGに、多くの人が惹きつけられるのでしょうか。その大きな理由は、登場する逸話やさまざまなキャラクターのためだと思われます。

とても興味深いことですが、魔法使いやドラゴンや妖精の話、動物や木などと人が会話をする物語が、子供たちは大好きです。このことには、元型と呼ばれるものが関係しています。

 

元型(ドイツ語:Archetyp)はスイスの心理学者ユング(1875-1961)が作った言葉です。彼は、人の心を意識と個人的無意識と集合的無意識に分けて考えました。そして、元型とは集合的無意識の傾向のことです。つまり、おおざっぱにいえば、あらゆる人に共通して備わっている「物事への感じ方」を決める働きのことです。

無意識とは、意識することができない心の働きなので、元型について日常の意識が知ることはできません。しかし「元型のイメージ」と呼ばれるものが、元型の働きで意識の中に作られ、夢に現れたりします。元型のイメージは、その人の経験や、時代や文化にかかわらず、かなり共通しています。

よく知られている元型のイメージは次のようなものがあります。理想的男性と女性(アニマとアニムス)、仮面(ペルソナ)、影(シャドー)、大母(グレート・マザー)、いたずら者(トリック・スター)、老賢者、内なる自己などです。

 

あなたは、今まで経験したこともない、世にも素晴らしかったり、世にも奇怪だったりするものを、夢の中で見たことがおありではないでしょうか。それらの多くは元型のイメージです。

たとえば、老賢者という元型のイメージは、分かりやすい例では森の奥に住む老人ですが、人が乗れるほど大きなワシの姿だったり、壮麗な雪山だったりします。大母のイメージは、限りなく優しい母ですが、大蛇だったり、地震でできた地割れだったりもします。理想的女性は、絶世の美女であることもありますが、人間ではなく天女だったり、雪女だったり鶴だったりもします。

これらが、さまざまな文化の言い伝えに共通して登場することを、あなたもきっとご存じのことでしょう。

 

たとえば、ヨーロッパだけでなく、世界中のさまざまな古代文化に、洪水の伝説が共通して表れることが知られています。もしかしたら、太古の昔に地球規模で同時に洪水が起こるような、とんでもない事件があったのかもしれませんが、このことは元型のイメージによって説明されると考える人もいます。

また、余談ですが、UFOの目撃証言が現在でも後を断たないことをご存じでしょうか。事実は私にはよく分かりませんが、UFOのことを元型の現代的なイメージだと考える人もいます。

 

私たちは、元型のイメージに子供のように惹きつけられます。そして、日常の常識に限定されてしまっている平凡な世界ではなく、非日常の世界の一端を感じると、意識は目覚めて新しいエネルギーを得ます。

つまり私たちは、合理性や物質主義に縛られてしまった現代社会の日常の退屈さに飽き飽きとしているのです。そして心の底では、自分が物語のヒーローであったり、魔法を使えたりすることを望んでいるのです。誤解を恐れずに申し上げれば、それが、完全にあてのない望みだと言い切ることはできません。

というのも、通常は見ることのできない別の姿が、私たちの生きているこの世界にはあるからです。物語の話ではなく実際の話です。しかしこの姿は、見ることのできないベールによって日常の意識から隠されています。

そして、集合的無意識からさまざまなイメージやメッセージを、私たちが受け取ることができるようになると、このベールは取り除かれ、ある意味では世界の本来の姿である、新しい姿が現れてきます。

 

世界の本来の姿では、生き物に限らず周囲のものには、命が満ちあふれています。すべての人に、自分に託されている重要な使命があります。人は創造力を存分に発揮して、宇宙の法則の範囲内であれば、自分自身と周囲の状況を思うままに変えることができます。

バラ十字会がご提供している神秘学では、世界のこの姿を見ることを目指します。そこで、通信講座に取り組まれる方への最初のご案内で、学習をまるでゲームのように楽しんでくださいと、私は申し上げることにしています。

 

世界の本来の姿を隠しているベールを取り除くのは、正直に申し上げれば簡単なことではありません。辛抱強く、瞑想や呼吸や集中などのテクニックの練習を、積み重ねていく必要があります。

しかし、子供のころの心と好奇心を生き生きと保ち、この世界には、外見とは異なる真の姿があり、それは刺激に満ちたものに違いないと直観されている方は、特に神秘学の学習に適しているようで、長期間、忍耐強く練習を重ね、その結果として大きな満足を手にされるようです。

 

映画『ロード・オブ・ザ・リング』の第2作の終わりで、主人公フロドと、庭師で彼の親友のサムは、次のように会話を交わしています。まるで今の世界の状況について話しているようで、心を打たれました。

「ぼくにはできないよ。サム。」

「ええ、ひどすぎます。ここにいること自体、まちがいです。でもここにいる…。まるで偉大な物語の中にでも迷い込んだような気分です。闇や危険がいっぱいにつまっていて、その結末を知りたいとは思いません。幸せに終わる確信がないから…。こんなひどいことばかり起きた後で、どうやって世界を元通りに戻せるんでしょう。」

「でも、夜の後に、必ず朝が来るように、どんな暗い闇も、永遠に続くことはないんです。新しい日がやってきます。太陽は前にも増して明るく輝くでしょう。それが、人の心に残るような偉大な物語です。子供の時読んで、理由が分からなくても、今ならフロドさま、なぜ心に残ったのか、よく分かります。登場人物たちは、重荷を捨てて引き返す機会はあったのに帰らなかった。信念を持って道を歩き続けたんです。」

「その信念って何だい。」

「この世には、命をかけて守るに足る、素晴らしいものがあるんです。」

 

いかがでしたでしょうか。興味深いとあなたにお感じいただけた点が少しでもあったなら、心から嬉しく思います。

それでは、また。

 

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