こんにちは。バラ十字会の本庄です。
東京板橋では、梅雨が明けたとたんに、皮肉なことに、小雨の日が何日か続きました。
いかがお過ごしでしょうか。
さて、錬金術と聞いたときに、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。
苦労をせずに大金を手にするための怪しい方法でしょうか。
錬金術とは、鉛や錫(すず)などの卑金属(さびやすい金属)を、金や銀などの貴金属に変えようとする試みで、主に中世に行われていました。現代の化学者の大部分は、そのような変化を起こすことは不可能だと考えています。
しかし、歴史的にいえば、錬金術は化学が大きく発展するきっかけになりました。
一方で、以前に簡単にご紹介させていただいたことがありますが、錬金術には別の種類のものがあります。卑金属を貴金属に変える錬金術を「物質の錬金術」と呼ぶのに対して、もうひとつの錬金術は「精神の錬金術」(spiritual alchemy)と呼ばれています。
参考記事:『錬金術とは』
精神の錬金術とは、性格上の欠点を、その反対の性質のものに変えることです。たとえば、傲慢さを謙虚さに、利己心を分け与える心に、狭い心を親切な心に変えることを意味します。
過去のバラ十字会員の多くが錬金術についての怪文書を残していて、そこには、卑金属を貴金属に変えるための方法らしきことが書かれているのですが、それらの多くが実際には、精神の錬金術を表した比喩だということが知られています。
つまり、心の中の卑(いや)しい要素を貴い要素に変えるということが、卑金属を貴金属に変えることに例えられています。
では、精神の錬金術を実際に行ってみましょう。
まず、これまでのあなたの人生でのふるまいを振り返って、自分の性格にある最も大きな欠点を見つけだしてください。ただし、罪の意識や、怒りや、心の痛みを感じる必要はありません。ただ冷静に、客観的に観察をしてください。
その欠点によって、他の人に不快な思いをさせたり、苦しめたりして、周囲の人や自分自身の幸せを損ねていた様子も思い出してみましょう。
しかし、バラ十字会の哲学では、人間の性格の欠点は、それまでの境遇や(過去世を含めて)、親や学校の教育などによって作り出されたものであり、その人本来の性質であるとは考えていません。
そして、人間の心の奥底には、本来は、限りなく純粋で完璧な性質があると考えています。このことは、小さな子供を見れば明らかだと思われるのではないでしょうか。
さて、自分の性格にある最も大きな欠点がはっきりしたら、次に行うべきことは何でしょうか。
陥ってしまいがちな誤りなのですが、欠点と正面から戦うという方法があります。
たとえば、嫉妬(しっと)をひんぱんに感じることが性格の欠点だとしましょう。このような場合に、私は二度と嫉妬を感じることをしないと強く決心したとしても、そのような決意は、あまりうまく働かないことが多いのです。
心理学で良く知られていることですが、押さえつけられて心の奥に押し込まれた感情は、消えるのではなく、そこでエネルギーを保ち続けます。そして、自分が心の底から手に入れたいと感じていて、叶(かな)っていない何かを、他の人が手に入れているのを見たりしたときには、押えつけられていた嫉妬心が、ふたたび表面化してしまいます。
そこで、もっと望ましい方法があります。それは性格の欠点を、反対の性質のものに、少しずつ置き換えていくという方法です。
たとえば、嫉妬の感情を克服したい場合には、その反対の心の性質とはどのようなものかを考えます。それは、他の人の手に入れた幸せや、なし遂げた成果を喜ぶことにあたることでしょう。
そこで、今までの人生で、そのような喜びを感じた場面をできるだけ多く思い出します。赤の他人ではなく、身近な人であれば、そのような経験は多数あるのではないでしょうか。
たとえば、自分の子供が初めて自転車に乗れるようになったときのことを思い出します。そして、その喜びをできるだけ生き生きと思い出します。
そして、他の人の幸せを見たときには、意図的に、先ほど思い出したのと同じ喜びの感情が湧き上がるように努力します。
すると、少しずつこのようなふるまいが、意図的な努力から習慣へと変わっていきます。
このようにして、私たちは、自分自身の内面を徐々に進歩させていくことができます。
内面の進歩は、バラ十字会が提供している通信講座で取り組むことになる重要な課題のひとつです。私たちはそれを、幸せで有意義な人生を送るために欠かせない取り組みだと考えています。
精神の錬金術は、実際には、大宇宙(マクロコズム)と小宇宙(ミクロコズム)のさまざまな原理原則の応用であり、いくつかの手順を踏んで行われてきました。しかし今回はその要点として、自分の性格の欠点と直接対決するということは、あまり賢明な方法ではなく、より望ましい方法があるということをご紹介させていただきました。
以上が、少しでもあなたのご参考になれば嬉しく思います。
以下は、フランスの秘伝哲学の研究家であり、バラ十字会AMORCの会員でもあったセルジュ・ユタンの書いた記事です
参考記事:『錬金術とは何か』
今日は、この辺りで。
またお付き合いください。
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