投稿日: 2017/11/03
最終更新日: 2022/11/24

 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

東京板橋では、今週の木枯らしで桜などの葉がずいぶんと散り、秋の風景が冬へと変わりつつあります。

 

いかがお過ごしでしょうか。

 

皆さんは、ブックトーカー(Book talker)というお仕事をご存じでしょうか。図書館員や図書ボランティアの方が主にされているのですが、何冊かの本を選んでストーリーを作り、子供たちの前でお話(ブックトーク)をすることによって、本の面白さを伝える仕事です。

 

今回は、私の友人でブックトーカーをされている可児明美さんから、このブログに寄稿をいただきました。文化の日の今日は、この文章をご紹介させていただきます。

彼女が小学生にブックトークを行った内容を、書き下ろしていただいたものです。

▽ ▽ ▽

 

記事「オオカミは悪者?」

可児明美
可児 明美

みなさんは、おおかみと七匹のこやぎのお話を知っていますか?

では、赤ずきんちゃんは?

 

ふたつとも、おおかみがでてきますね。おおかみと七匹のこやぎでは、あの手この手を使って、子ヤギたちに家の扉を開けさせて、ついには家の中に押し入って、子ヤギたちを食べてしまいます。赤ずきんちゃんのおはなしでは、赤ずきんちゃんにうまいことを言って道草をさせて、先回りをして、おばあさんと赤ずきんちゃんを食べてしまいます。こういったお話の中で、オオカミは悪者になっています。乱暴で、ずるがしこくて、欲張りで、油断するとこちらが食べられてしまいます。

 

……でも、ほんとうにオオカミは、そんな悪者なのでしょうか? 今日は、「オオカミは悪者?」というテーマで本を紹介します。

森の中の白オオカミ

 

これまでの人間の歴史の中で、世界のいろいろなところで、人間とオオカミとの戦いがありました。人間が原野を切り開いて農場をつくると、そこで飼っている牛や馬がオオカミに襲われました。家畜が襲われると、人間は困りますよね。そこでオオカミ狩りというのも行われました。

 

この絵本、『エゾオオカミ物語』(あべ弘士著、講談社)に出てくるお話しは、日本で起きたことです。昔、北海道の原野にも、オオカミが住んでいました。エゾオオカミとエゾシカは、バランスを保って共存していました。この土地に古くから住んでいたアイヌの人々も、平和に共存していました。ところが・・・、あるときエゾシカの数が激減しました。その時、ちょうど内地からたくさんの人間がやってきて、開拓がはじまりました。餌がなくなったオオカミは、家畜を襲い、家畜を襲われた人間はオオカミを狩りました。そしてとうとう、北海道の地にオオカミは一頭もみられなくなりました。今から100年ほど前のことでした……。

 

さあ、北海道にいたオオカミは、もういなくなってしまいました。では、アメリカではどうでしょうか? アメリカの開拓時代にも、人間とオオカミの戦いの歴史がありました。アーネスト・トンプソン・シートンという人がいます。『シートン動物記』を書いた人です。シートンも実際にオオカミを狩る仕事をしていたことがあります。シートンは、オオカミ退治の依頼を受けて、カランポーという場所にやってきます。そこには、ロボという名前で呼ばれていたオオカミがいました。

Ernest Thompson Seton

アーネスト・T・シートン by Bain News Service; cropped and uploaded by JGHowes [Public domain], via Wikimedia Commons

 

地元の人からオオカミ王と呼ばれるほどのロボは、とても大きかったんですね。大きいオオカミの足跡の大きさは、13センチほどもあります。ですが、ロボの足はさらに大きく14センチくらいあったのです。普通のオオカミとロボの大きさを比べると、ロボは1.5倍くらいあります。

 

ロボはとても賢くて、毒エサや罠にはかかりません。賞金稼ぎのハンターたちが何人挑戦しても、ロボは捕まりません。ロボの群れの大好物は、選りすぐった一歳の雌牛を殺して、柔らかい部分だけを食べることでした。牧場で牛を育てている人たちは、そんなことをされたら困ってしまいますね。……そんなところにやってきたシートンですが、ちいさいころから、動物や昆虫や小鳥などの生き物に強く心惹かれる子どもだったそうです。また、絵も上手で、シートンのお父さんは、シートンが立派な画家になると思っていたほどでした。つまり、シートンは動物が大好きで、物事をよく観察する人だったんですね。

 

シートンはまず、馬に乗ってカウボーイに案内してもらって、その土地をくわしく見て回りました。クルンパ川を中心とした四つの州にまたがる広い一帯がロボの縄張りでした。シートンは、ロボがどのように暮らしているかなど、いろいろ観察して、なんとかとらえようとしますが、なかなかうまくいきません。あるとき、カウボーイのひとりが言った一言で、シートンはある作戦を思いつき、実行に移します。作戦は成功しました。その作戦に利用したのは、オオカミの持つ、あるすばらしい性質でした。シートンの作戦とは、どんな作戦だったのでしょうか、そして、捕まってしまったロボには、どんな運命が待っていたのでしょうか……。

 

シートンは、ロボを捕まえる仕事を引き受けたとき、大喜びで受けたのではありませんでした。「私はロボをとらえることに疑問と矛盾を感じながらも、ロボをもっと知りたいと思いました。」と本『シートン動物記 オオカミ王ロボ』(アーネスト・T・シートン著、今泉吉晴訳、童心社)にも書いてあります。

 

また、シートンは他にもいろいろな動物のお話を書いています。

 

下町で生まれたノラネコのお話では『シートン動物記 下町のネコ キティ』(アーネスト・T・シートン著、今泉吉晴訳、童心社)、お腹を空かせてさまよっていた生活から、ひょんなことから、猫の品評会に出されてお金持ちの家の猫になります。でも、自由を求めたキティは、そこから逃げ出してしまいます。いろいろな目にあったキティですが、最後には申し分のない安定した暮らしを手に入れます。この本の最後のほうには、キティがついに手にした幸せな状態のことが書かれています。自分が何を求めているのかがはっきりわかるようになってから、求めているものが手に入るようになったのだと。これはもしかしたらシートンが、自身の人生で実感していたことかもしれません……。

 

どのお話も、シートンが動物や自然をよく観察して、深く理解して書かれています。シートンは動物の足跡の観察だけでも、こうして一冊の本『シートンの自然観察』(E.T.シートン著、どうぶつ社)ができるほど、自然を愛し、よくみて、それを多くの人にうまく伝えることができた人でした。

 

そんなシートンの子ども時代はどんなものだったのでしょうか、そしてどのような人生を送ったのでしょうか? どうしてこれほど動物のことをたくさん、詳しく、的確に、わかりやすく描くことができたのでしょうか? そのひみつはこうしたシートンの伝記『子どもに愛されたナチュラリスト シートン』(今泉吉晴著、福音館書店)、『シートン自叙伝』(シートン動物記別巻、アーネスト・T・シートン著、集英社)からわかるかもしれません……。

おわり

紹介した本

  • 『エゾオオカミ物語』(あべ弘士著、講談社)
  • 『シートン動物記 オオカミ王ロボ』(アーネスト・T・シートン著、今泉吉晴訳、童心社)
  • 『シートン動物記 下町のネコ キティ』(アーネスト・T・シートン著、今泉吉晴訳、童心社)
  • 『シートンの自然観察』(E.T.シートン著、どうぶつ社)
  • 『子どもに愛されたナチュラリスト シートン』(今泉吉晴著、福音館書店)
  • 『シートン自叙伝』(シートン動物記別巻、アーネスト・T・シートン著、集英社)

 

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ふたたび、本庄です。今週は、国内にも国外にも暗いニュースが多かったですが、この文章を読んで、心がほのぼのと温かくなりました。こんなお話が聞ける子供たちは幸せですね。

 

今日はこの辺で、

ではまた。

 

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