こんにちは。バラ十字会の本庄です。
※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。
ハートのマークはなぜ愛を表すのか?
世界中でほぼ共通して、ハートのマークが愛を表していることを不思議に思ったことがありませんでしょうか。
両手の指でハートの形を作った写真をSNSに投稿している方を見かけることと思います。世界中のほとんど誰もが、すぐに愛を意味していることがわかります。
なぜ、ほぼ例外なく、心臓の記号が愛を象徴しているのでしょうか。
バラ十字会の学習課程で取り上げられていることなのですが、心臓は、実際に愛を受け取ったり放出したりする役割を果たしているサイキック中枢(psychic center)だという説があります。サイキック中枢とは、ヨガのチャクラと類似しているバラ十字哲学の概念です。
バラの花という象徴
もうひとつ、世界中で共通して愛の象徴として使われているものにバラがあります。
たとえばギリシャ神話では、バラは愛の女神アフロディーテ(ビーナス)の花だとされていました。
参考記事:『花という象徴』
当会を表している「バラ十字」という象徴では、金色の十字の中央に、赤い開きかけのバラが配置されています。
この場合、バラが開いていくことは、人生経験を積むことで人が内面的に成長していくことを表しています。
『ローズ』(The Rose)という映画とその主題歌
都はるみさんや、島津亜矢さんが日本語でカバーしている『ローズ』という歌があります。
原曲は、1979年にアメリカで公開された映画『ローズ』の主題歌です。
今回はこの歌と映画を話題にさせていただきたいと思います。
参考記事:『愛について』
ベット・ミドラー(Bette Midler)
ベット・ミドラーは映画『ローズ』を主演した俳優ですが、この映画の製作の経緯には、彼女の経歴が関わっています。
彼女は、ハワイ州ホノルルの出身で、ハワイ大学で演劇を専攻しますが中退し、ニューヨークに移って舞台俳優を目指しました。
26歳のときに歌手としてデビューし、28歳のときにアメリカの演劇界で最も権威あるトニー賞の特別賞を受賞します。
その後は、これからご説明する映画『ローズ』での主演としての活躍を含め、映画、ドラマ、ミュージカルへの出演でも、歌手としても数々の賞を受賞しています。
映画『ローズ』の製作の経緯とあらすじ
監督のマーク・ライデル自身が語っているのですが、この映画は最初の企画段階では、ジャニス・ジョプリン(Janis Joplin,1943-1970)の伝記として製作される予定だったそうです。
ご存じの方も多いと思いますが、ジャニス・ジョプリンは1960年代後半に活躍した強烈な個性を持つロック歌手で、薬物中毒とアルコール中毒に長年苦しんだ人です。多くの人が彼女のことをカウンター・カルチャー(対抗文化)の旗印と見なしていました。
代表曲は「You say that it’s over baby」という歌詞で始まる『Move Over』です。きっと皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。
マーク・ライデルが映画会社から話がもちかけられたとき、彼は、ホノルル出身の売り出し中の歌手で女優のベット・ミドラー(1945-)が、ジャニス・ジョプリンと同じ雰囲気を持っているので、この映画の主役にうってつけだと考えます。
しかし映画会社は、当時まだそれほど人気がなかった彼女を使うことに難色を示し、この企画はそれから10年以上宙に浮いたままになります。
一方で、ベット・ミドラーはニューヨークで活躍して徐々に人気を高め、ブロードウェイの舞台にも立つようになります。
このような事情で、先ほどの企画が復活することになります。ライデル監督は伝記映画という制約を嫌い、ジャニス・ジョプリンの逸話を部分的には取り入れるけれども、架空のロック歌手ローズの物語として製作することで話がまとまります。
まだ見たことのない方もいらっしゃると思いますので、詳しくお話しすることはしませんが、ベトナム反戦とヒッピー文化、ドラッグに社会が揺れていた1960年代のアメリカを舞台に、ロック歌手のローズの人生が描かれます。
ローズは、旅回りの生活とステージに立つプレッシャーに疲れ、アルコール中毒に苦しみ、恋に傷つき、徐々に追い詰められていきます。
このように書くと、当時のロック歌手によくある逸話のようで、何となくステレオタイプに感じられてしまうかもしれません。
しかし、この映画の主人公と他の登場人物は、優れた脚本によって過去の背景と性格の細部が、余すところなく巧みに設定されていて、それが、一流の俳優陣の演技によって的確に表現されています。
主役を演じているベット・ミドラーの、映画の中のコンサート・シーンは、力に満ちあふれていて圧巻です。
そして、ストーリー自体は人間の愚かさ、悲しさ、愛おしさに彩られていて、特に映画のクライマックス・シーンでは、人を許すことの難しさ、崇高さが輝きを放ちます。
ベット・ミドラーは、映画への出演は初めてだったのですが、この映画がきっかけとなり、その後は歌手としても女優としても長年大活躍を続けることになります。
主題歌『ローズ』の歌詞とその意味
主題歌の『ローズ』に話を戻します。応募作品がテープでライデル監督に100曲以上届けられていたのだそうですが、カリフォルニア出身の作詞・作曲家のアマンダ・マクブルームのこの作品を聴いたときに、彼はこの映画の本質が浮き彫りにされていることに衝撃を受けたそうです。
ハードロックを扱う映画の主題歌としてはおとなしすぎるという一部スタッフの反対があったものの、曲を気に入ったベット・ミドラーと監督が押し切って、この曲が主題歌に採用されることになります。
詩のように韻を踏んだ、この美しい英語の歌詞は、さまざまな人によって日本語に訳されています。
しかし、映画やテレビや、歌うことを前提とした翻訳とは異なり、ブログでは、文字数に制約されることなく、意味がわかりやすい訳を作ることができます。
拙訳ですが、以下にご紹介させていただきます。
”The Rose”『バラの花』
Some say love it is a river
That drowns the tender reed
Some say love it is a razor
That leaves your soul to bleed
愛は川だと言う人がいる
柔らかい葦(アシ)を溺れさせる川だと
愛はナイフだと言う人がいる
魂に、血を流す傷を残すナイフだと
Some say love it is a hunger
And endless aching need
I say love it is a flower
And you its only seed
愛は飢えだと、そして
満たされることのない渇きだと言う人もいる
私は言う、愛は花だと
そしてあなたは、その大切な種子
It’s the heart, afraid of breaking
That never learns to dance
It’s the dream, afraid of waking
That never takes the chance
心が傷つくことを恐れていては
踊ることを学べない
夢から覚めることを恐れていては
チャンスをつかめない
It’s the one who won’t be taken
Who cannot seem to give
And the soul, afraid of dying
That never learns to live
受け入れられることを拒む人は
与えることができそうにない
そして、死ぬことを恐れている魂は
生きることを学べない
When the night has been too lonely
And the road has been too long
And you think that love is only
For the lucky and the strong
夜が孤独すぎると感じ
道があまりにも長すぎると感じ
そして愛は、幸運で強い人にしか
訪れないと思ったときには
Just remember in the winter
Far beneath the bitter snows
Lies the seed that with the sun’s love
In the spring becomes the rose
ひとつだけ、思い出してほしい
凍えるような冬の、深い雪の下には
種子が埋もれていて、太陽の愛とともに、
春になれば、バラの花を咲かせるということを
下記の記事は、やはり海外の歌がテーマです。タゴールのベンガル語の歌『ひとりで進め』と、その和訳についてです。
参考記事:詩人ラビンドラナート・タゴールについて|「ひとりで進め」などの有名な詩歌と名言を紹介
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執筆者プロフィール
本庄 敦
1960年6月17日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部代表。東京大学教養学部卒。
スピリチュアリティに関する科学的な情報の発信と神秘学(mysticism:神秘哲学)の普及に尽力している。
詳しいプロフィールはこちら:https://www.amorc.jp/profile/
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