こんにちは。バラ十字会の本庄です。
東京板橋は、昨日は南風が吹いて、汗ばむほど暖かかったのですが、今日は打って変わって冷たい雨が降っています。
そちらは、いかがでしょうか。
さて、日本の俳句はこの地球上で最も短い形式の詩です。日本語以外の言葉でも、俳句を鑑賞したり詠んだりすることが、世界中で楽しまれているそうです。
松尾芭蕉の有名な句「古池や蛙飛び込む水の音」は、インターネットで調べると小泉八雲さん(Lafcadio Hearn, 1850 – 1904)によって
Old pond / Frogs jumped in / Sound of water.
と訳されていました。
俳句から受け取る感動を、言語を超えて他の国の人と分かち合えることは、興味深く、また、とても素晴らしいことではないでしょうか。
山形県に住む私の友人の山下さんから、松尾芭蕉の俳句についての文章を寄稿していただきましたので、ご紹介させていただきます。
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記事:『松尾芭蕉の本音と建前』
バラ十字会日本本部AMORC 理事 山下 勝悦
江戸時代の俳人、松尾芭蕉が自身の紀行文『奥の細道』で詠んだ句のひとつに「五月雨を集めて早し最上川」が有ります。
実は、この句を詠んだ場所とされる山形県大石田(おおいしだ)では「五月雨を集めて涼し最上川」が一般的に通用しています。
芭蕉も最初は「涼し」と詠み、後に「早し」と詠み変えたのだとか。
今では「早し」と詠むのが一般的となっていますが、私個人としては「五月雨を集めて涼し最上川」の句の方がすっきりとしていて好きなのですが。
この文章をお読みの皆さん方はどちらがお好みでしょうか。
今回はこの句に関するちょっと楽しい(笑える)話です。しばしのお付き合いを。
私が四十歳の時ですからちょっと昔の話しになります……。
町友会の仲間のT君と夏祭りの寄付のお願いに町内を廻っていた時のことです。寄付のお願いは行く先々で臨機応変な対応が要求されます。
何しろ「待ってました。良い話し相手が来た!!」とばかりに世間話の相手をすることになったりする事がたびたびあるものですから。
その時はどんな話題にも応対(対応?)せねばなりません(でも、楽しかったです)。
そんなある日、二人で寄付のお願いにM氏のお店に行った時のことです。
M氏は文才豊かな著名人です。さて、このM氏にどう対応したものかと……。覚悟を決めて、まずはともあれ店内の事務所に。
すると、M氏が座る椅子の後ろの壁に芭蕉の「五月雨を集めて涼し最上川」の句が書かれた色紙が掛けられています。
良いもの見つけました。さっそく、M氏に「涼し」と「早し」の件を尋ねてみました。
するとM氏、満面の笑みで、「これは私個人の説なのですが」と、前置きの後、こんな話しをしてくれました。
松尾芭蕉と曾良 By Morikawa Kyoriku (1656-1715) [Public domain], via Wikimedia Commons
芭蕉が奥の細道の旅で大石田に入り最上川で船に乗ったのは六月(新暦で七月)。
その時期には最上川は文字通り五月雨を集め、さぞかし流れは早かったはず。
地元の人たちには毎年のことで何のこともなかったでしょう。
しかし、芭蕉はとにかく怖かったのではないでしょうか。船縁にしがみ付き、恐怖で顔が引きつっていたのではないかと。まさに「集めて早し」だったでしょうね。
しかし、芭蕉が句会の席で「早し」と詠んだのでは同席した人達から「芭蕉翁は船上で震えていた、必死になって船縁にしがみ付いていたなどと後々まで言われるのでは」と。
そこで芭蕉はプライドを優先し、文字通りの涼しい顔で「五月雨を集めて涼し最上川」と詠み、後ほど「早し」に詠み変えたのではという説でした。
そこまでは私は黙ってうなずきながら聞いていたのですが、M氏が最後に何か喋ろうとした矢先に……ついうっかり。
「なるほど…つまり…本音と建前ですか」。次の瞬間「しまった~!!」と思いました。
恐る恐るM氏を見ると、口をへの字に曲げ、苦虫を噛み潰したような顔、さらにその目は「それは私が言おうとしていたセリフです(怒!!)」と言っていました。
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下記は、前回の山下さんの記事です。よろしければ、どうぞこちらもお読みください。
参考記事:『頑固おやじの反戦メッセージ』
今日はこの辺りで。
また、お付き合いください。
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