投稿日: 2019/04/12
最終更新日: 2022/12/09

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

昨日は、長野と群馬で季節外れの大雪でしたが、東京も冷たい雨の降る寒い一日でした。今日は日射しが戻ってきて、少しほっとしています。

いかがお過ごしでしょうか。

今週は宇宙についての大きなニュースが2つありました。ひとつは探査機はやぶさ2が、岩石試料の採取のために、小惑星リュウグウに弾丸を衝突させて人工クレーターを作ったというニュースでした。

もうひとつは、イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)と呼ばれる国際プロジェクトが、M87銀河の中心にあるブラックホールの影の撮影に成功したというニュースでした。

どちらも、見ていて心躍らせた方も多かったのではないでしょうか。

イギリス出身のSF作家アーサー・C・クラークをご存知でしょうか。小説『2001年宇宙の旅』は映画化されてとても有名になりました。その他の代表作には『地球幼年期の終わり』、『海底牧場』などがあり、中学生のときに夢中になって読んだ覚えがあります。

『地球幼年期の終わり』は、地球外生命体(宇宙人)と人類の最初の出会い(ファースト・コンタクト)を描いた作品で、『海底牧場』は、未来の人類と海の関わり合いについての話です。

ダイオウグソクムシ
深さ200~1000メートルの海底に生息するダイオウグソクムシ

世界の大陸のほとんどすべての地が踏破された今、人類にはフロンティア(未開拓の最前線)が2つ残されていると言われることがあります。宇宙と深海です。

世界中の科学者の協力で、宇宙と深海の研究が盛んに進んでいますが、興味深いことに、この2つの研究では、いずれも「生命」がキーワードになっています。

昔、こう教わったことがないでしょうか。生きものは、大きく動物と植物に分けることができます。

いいえ。もしあなたのお子さんがよく勉強している小学生だとしたら、そのようなことを言えば、すぐに反論されることでしょう。お父さん、じゃあ乳酸菌は動物なの、植物なの?

動物と植物という分類を考案したのは、ギリシャの哲学者アリストテレスだとされています。彼は自然を4つの界(kingdom)というカテゴリーに分けました。鉱物界と、動かない生きものからなる植物界、動くことができる生きものからなる動物界、理性を持つ生きものからなる人間界です。

16世紀末にオランダで顕微鏡が発明されるまでは、乳酸菌などの小さい生物は知られていなかったので、生物の分類に含まれていませんでした。

動物と人間はあまり変わらないのでまとめられて、古い時代の生物学では、生物全体は植物界、動物界の2つに分けられていました(2界説)。

19世紀には、細菌や藻類が、詳しく研究されるようになりました。これらは動物界とも植物界とも違う、原生生物界の生きものだとされるようになりました(3界説)。

20世紀になり、遺伝子が細かく解析されるようになると、生物の分類は大きく様変わりしました。

現在主流の考えでは、生物は、真核生物と細菌とアーキアという3つのドメイン(domain:領域)に分けられています(3ドメイン説)。

この分類では、私たち動物も植物も、真核生物という大きなドメインにまとめられています。遺伝子解析による研究が進んだ今、生物全体という大きな視点から見ると、動物も植物も大して変わらないからです。

真核生物とは、その細胞に核があるという特徴を持つ生物で、細胞核の中には遺伝子(の大部分)が蓄えられています。

細菌というドメインに属するのは、乳酸菌とか酵母菌とか納豆菌とか、私たちの周囲にいる身近な細菌です。

「アーキア」(archaea)は耳慣れない言葉ではないでしょうか。別名「古細菌」とも呼ばれ、極限状態でも生きることのできる特殊な菌です。

食中毒を防ぐひとつの方法は、食べ物を加熱することですが、それは、細菌が75度以上の温度では生きられないからです。ところが、好熱菌という温泉や深海などに生息しているアーキアの中には、100気圧120度という高圧高温の水の中でも平気で生活できる種類のものがいます。

脱酸素剤を使うのも食品を細菌から守る方法です。それは通常の細菌は酸素がなければ生きていけないからです。ところが、沼地や深海や油田や人間の腸に住むメタン菌というアーキアは、酸素がなくても、酢酸と水素によって生きることができます。

ほとんどの細菌は濃い塩水に漬けると死んでしまうので、塩漬けにすることによって食品を保存することができますが、塩湖に住んでいる高度好塩菌というアーキアはそのような環境に耐えます。

遺伝子解析の結果、真核生物、つまり私たち動物や植物は、細菌よりもアーキアに近いことが分かっています。

ですからごく大ざっぱに言えば、私たち人間の遠い祖先は、極限状態でも生きることのできるアーキアに似た生きものであったと考えることができます。

深海には、生命の活動に必要なエネルギーを供給している太陽の光が届きません。また、深海は高圧であり酸素もあまりありません。そのため、深海には生物はほとんどいないだろうと考えられていた時期がありました。

ところが、高圧に耐えられる探査船による調査で分かったのですが、深海の海底には、重金属と硫化水素を大量に含む熱水が噴出している場所がところどころにあり、その周囲には、今までに知られていなかった多くの種類の生きものが集まるように暮らしています。

その中には数々の奇妙な生きものがいます。たとえば、インド洋の深海で見つかったのですが、ウロコフネタマガイという二枚貝の貝殻は、硫化鉄という金属で覆われているので、磁石で釣り上げることができます。

Three populations of Chrysomallon squamiferum

ウロコフネタマガイ Chong Chen [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)]

深海では、細菌よりもアーキアが数多く活動していて、他の生きものたちが生きるのに必要なエネルギーと物質を作り出していることが知られています。

深海の熱水噴出孔は、地球で生命が最初に誕生した場所ではないかと考える研究者もいます。

木星の衛星エウロパは、月よりも少し小さい程度の星です。ギリシャ神話の主神ゼウスが恋に落ちた人間、都市国家テュロスの王女エウローペーにちなんで名が付けられています。

1995年から2003年まで観測を行ったNASAの探査機ガリレオによって、エウロパには、氷で覆われた液体の水の海があることがほぼ確実になりました。

その後、ハップル宇宙望遠鏡の観測によって、エウロパの南極付近の氷からは、間欠泉のように水蒸気が噴出していることが発見されました。

エウロパは、木星の重力(潮汐力)の影響で地質活動が活発であり、しかも海の底は地球の深海に似た環境ではないかと考えられています。

地球の深海の熱水噴出孔のような極端な環境にも生きものが住んでいることから、エウロパの海は太陽系内で、地球外生命がいる可能性が最も高い場所ではないかと考えている科学者が多数います。

最初に紹介したSF作家のアーサー・C・クラークは、小説『2010年宇宙の旅』に、エウロパ人という宇宙人を登場させています。まだエウロパに生命がいるかどうかは分かっていませんが、一流のSF作家の取材力と直観には驚かされます。

Europa-moon

木星の衛星エウロパ NASA/JPL/DLR [Public domain]

今までにご紹介してきたように、極端に過酷な環境でも生きようとする生物の能力というか、執念にも似た本能は、すさまじいほどのものです。ですから、この広い宇宙の中には、地球以外にも生物が住んでいる星が、きっとたくさんあるのではないかと私は思っています。

そして、私たち人間を含む地球の生きものが、大宇宙の中で孤独ではないということが、なるべく早く分かると良いなと思っています。

宇宙という壮大なシステムのそこここで、生命が育まれ進歩し続けているということが、もし事実であり、そのありさまを人類が知ることになれば、地球上で取るに足らない理由から、人間同士が互いに争っていることの馬鹿馬鹿しさを、誰もがはっきりと感じるのではないかと思うからです。

では、今日は、この辺りで。

少しでも興味深い点があったと感じていただけたなら嬉しく思います。

また、お付き合いください。

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