投稿日: 2021/08/20
最終更新日: 2022/08/08

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

東京板橋は、この一週間ほどはっきりしない天気が続いていましたが、昨日から青空が見えるようになりました。

そちらは、いかがでしょうか。

 

さて、前回のクイズでも取り上げましたが、歴史上、錬金術師であったとされる有名な人には、ニコラ・フラメル、カリオストロ、パラケルススなどがいます。

皆さんは錬金術師に、どのようなイメージをお持ちでしょうか。

カリオストロ伯爵
カリオストロ伯爵, Smithsonian Institution Libraries, Public domain, via Wikimedia Commons

 

ご存知のように中世の錬金術から、近代の化学と薬学が生じました。バーゼル大学はスイスの最も古い大学ですが、薬学歴史博物館があり、カリオストロの功績が讃えられているそうです。

参考記事:「カリオストロ

 

錬金術がどこで始まったのかということは、はっきりとは分かっていません。

錬金術はアラビア語では「エル・キミア」(el-kimia)ですが、このキミアの語根は黒い土地を意味する「ケム」(Khem)であり、古代のエジプトを意味しているという説があります。

古代ギリシャのプラトンは、人類史上最も偉大であるとさえ言われている神秘学(mysticism:神秘哲学)の哲学者ですが、アレクサンドロス3世(アレキサンダー大王)はプラトンの指導で優れた王になり、ギリシャの領土をエジプトにまで拡大しました。

そして、ナイル川の河口の近くに、自分の名前を付けたアレクサンドリアという都市を作りました。

 

この地ではギリシャとエジプトの当時の優れた文化が混じり合い、後に巨大な図書館が作られたこともあり、アレクサンドリアは広大な地域から学者が集まる国際都市になりました。

この地には、エジプトだけでなく中近東全域の錬金術師たちも集まっていたということが知られています。おそらく、初期の錬金術の発展に重要な役割を果たしたのでしょう。

その後錬金術は中近東からヨーロッパ、特にギリシャとビザンチン帝国に広まっていきます。中世では、テンプル騎士団が錬金術の伝統の継承に重要な役割を果しました。

ユネスコとエジプト政府によって再建されたアレクサンドリア図書館
ユネスコとエジプト政府によって再建されたアレクサンドリア図書館

 

この図は、ハインリッヒ・クンラートというドイツの錬金術師の『永遠なる叡智の円形劇場』(1609年)という本に描かれている錬金術師の部屋の様子です。

錬金術師の部屋の様子
錬金術師の部屋の様子(クリックすると拡大されます), Public domain, via Wikimedia Commons

 

部屋の中央には大きなテーブルがあり、リュートのような作りかけの楽器、工具、ベルやチャイムのようなものが乱雑に並べられています。

部屋の左には、テントのようなものが張られていて、その中に置かれた机には書物と図版のようなものと額が立てかけられています。この場所は「オラトリウム」(oratorium)と呼ばれています。この語の語源は、「発話」、「雄弁」、「祈り」を意味するラテン語の「オラチオ」(oratio)です。

オラトリウムの前の床には敷物が敷かれていて、ひざまづいた人が両手を広げて、祈っているか大声を上げているかのようです。左手前の壺のようなものからは、煙がもくもくと上がっています。

 

部屋の右には、やはり幕によって区切ることのできる一角があり、炉のようなものが据え付けられ、いろいろな道具が散乱しています。この場所はラボラトリウム(laboratorium)と呼ばれています。この語は、「実験室」を意味する英語のラボラトリー(laboratory)の語源になりました。

 

錬金術師たちは、社会から離れてキリスト教の修道士のような生活を送っていたと想像されてしまうことがあります。

しかし実際には、錬金術師たちの多くが結婚して子供をもうけ、通常の人と同じ生活を送っていました。危険がない作業を家族の人に手伝ってもらうことも多かったと伝えられています。

錬金術という名前の通り、彼らは金を作ろうとしていました。より具体的に言えば、卑金属(通常は鉛)を金もしくは銀に変えようとしていました。

このうち金を作る過程は「赤へと向かう作業」、銀を作る過程は「白へと向かう作業」と呼ばれていました。

錬金術師の部屋を再現した展示(バラ十字会AMORC古代エジプト博物館の特別展より)
錬金術師の部屋を再現した展示(バラ十字会AMORC古代エジプト博物館の特別展より)

 

しかし貴金属を作ることは、特に後期の錬金術師たちには、最も重要な目的ではありませんでした。

それは、私の考えではとても納得のできることで、爆発や火災の危険を冒して少量の貴金属を得ることが目的ならば、そのような研究に多大な労力を注ぎ込むことには、常識を持つ人は誰もが疑問を持つように思います。

それでは、錬金術師たちは一体何をしようとしていたのでしょうか。この謎を解く鍵のひとつは、先ほどの、錬金術師の部屋のオラトリウムにあります。

 

人間とはどのような存在なのかという錬金術師たちの考え方(存在論)を、バラ十字会は受け継いでいます。

その考えは普遍的なものなので、皆さんの多くにも同意いただけることと思いますが、人間とは、肉体という物質に魂という非物質的な(精神的な)エネルギーが宿ったものだと考えることができます。

 

この宇宙は、物質的なもの(物)と非物質的なもの(心)から構成されていると見なすことができます。そして、物質に働く法則を研究することは、心の世界に働く法則を突きとめるために役立つと錬金術師たちは考えたようです。

 

時代が下るにつれて、錬金術師たちは、徐々に物質の錬金術から、心の錬金術を目標として重視するようになっていきました。

物質の錬金術とは、先ほど説明したように卑金属を金や銀に変えることでした。それに対して心の錬金術とは、人間の性質にある心の不完全さ(卑しさ)を、それとは正反対の性質(貴さ)へと変えることを意味します。

つまり、傲慢さを謙虚さに変え、利己心を分け与える心に、狭い心を親切な心に変えることなどを意味しています。

皆さんも実感されていることと思いますが、私たちはエゴに強く捉えられているため、このような性格の改善は、望ましいということは分かっていても、決して簡単なことではありません。

後期の錬金術師たちは、心の錬金術という自分の人格を洗練していく実践方法の専門家でした。

そして心の錬金術のためには、オラトリウムが用いられました。オラトリウムで行われていたことは主に「瞑想」と「母音の詠唱」と「祈り」であったと推測されています。

 

このうち瞑想は、ストレスの緩和の方法として多くの人に取り組まれているので、すでに皆さんにもお馴染みのことでしょう。

「母音の詠唱」は、きっと耳慣れない言葉でしょう。ご説明します。

世界中の多くの神話で、世界が創られたときに神が「ある言葉」を発したと語られています。錬金術師たちは、人間は聖なる源(神)から生じたのであり、神が行うことは人間にも模倣ができると考えました。

そして、この世のすべてのものが振動であると考え、その振動を変えることが物や心の性質を変えることにつながると考えていました。

 

実は、先ほどの錬金術師のテーブルにはリュートのような楽器やベルやチャイムが置かれていましたが、卑金属を貴金属に変える物質の錬金術では、物質の振動の性質を変えるために、楽器やベルやチャイムを用いることが試みられていたのです。

一方で心の振動の性質を変えるためには、「母音」と呼ばれるいくつかの音節を発声するという方法が用いられました。それらの秘伝の音節は、神が創世のときに発した「ある言葉」の性質を受け継いだものだと考えられていました。

この音節には「ア・イ・ウ・エ・オ」だけではなく子音も含まれるのですが、人間が発声する(vowel)ことから「母音」(vowel sound)と呼ばれています。

 

次は「祈り」です。現代では祈りは、宗教に強く結びつけられて連想されてしまうことが多いのですが、錬金術師たちは、キリスト教の特定の宗派の祈りを唱えていたのではなく、より普遍的な性質の祈りを行っていたようです。

実際に、17世紀の終わりごろから錬金術はローマカトリックに敵視されるようになり、休止状態になりました。

 

さて、この文章をここまでお読みになってきた方のうち、バラ十字会の通信講座の学習に取り組まれている方は、きっとこう思ったのではないでしょうか。自分たちが行っていることの多くは、錬金術師たちがオラトリウムで行ってきたことに似ているのでは。

はい、その通りです。バラ十字会は、錬金術師の伝統の多くを、進歩させつつ受け継いでいます。

あなたがもし現代の錬金術師になることを望むのであれば、このページの一番下にあるバナーをクリックして、通信講座「人生を支配する」の無料体験を申し込んでください。最初の一ヵ月は何をすれば良いかを知ることができます。

 

では、今回はこの辺りで。

またお付き合いください。

 

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