投稿日: 2026/06/02
最終更新日: 2026/06/09

以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り
アンティークの食器棚

つかの間の出来事
A Fleeting Moment

ハロルド・クリーグスマン
By Harold Kriegsman

新しい家に引っ越したとき、部屋の隅に打ち捨てられたように置かれている、埃と蜘蛛の巣だらけの古くてかび臭い食器棚が目に留まりました。あまりに寂しそうで哀れな感じがしたので、家を掃除した後に、その食器棚をもう一度使えるようにしてみることにしました。蜘蛛の巣を取り払い、よく水拭きをして乾かし、そして磨き上げました。その仕事を終えると、新しく生まれ変わった食器棚は見違えるようになり、また使うことができるようになりました。

その後のことですが、瞑想しているときに、その食器棚のイメージが心に浮かびました。私は、古い食器棚と人生に共通点があることに気が付きました。人生を無益に過ごしているときは、消極的で受動的な生き方から抜け出せずにいます。この食器棚が古くて汚い状態だったときには、虫たちが住んでいました。それと同じように、人間はほかの人々から顧みられないでいるときには、自身の凝り固まった悪習に陥ってしまいます。掃除する前の食器棚のかび臭さは、無益に過ごしている人生という病気にたとえることができるかもしれません。この類推をさらに進めていくと、食器棚を掃除して生き返らせた私の行ないは、新しい意識からの呼びかけや、心の奥底からの声と同じであるとすることができるでしょう。

昼も夜もないような目まぐるしい現代のライフスタイルの中で、ほとんどの人は、自分の周囲のどこにでもある、とても多くの「善」(goodness:善性)に気づくことができないでいます。そして、素晴らしいあり方で現れるこの世界の本質に一瞬気づいたとしても、それを正しく捉えることができません。生活は現代的になり、私たちは、ほとんど自動化された状態で生きることになってしまいました。最新のテクノロジーに依存しているために、私たちは、身の回りの快適さの範囲外にあるものを探究することができなくなっています。残念なことに、今日では人工的なものが、絶大な影響を及ぼしているように思われます。

小さな子供の笑顔

ある日、いくつかの用事のために外出し、公園を抜けて近道をしていたときに、日常生活という現代的な目隠しを突き抜けて、一瞬の理解が私にひらめきました。そのときそれは、啓示のようにも思えました。小道を歩いていて、小さな子供の幸せそうな、弾けるような笑い顔を私の目が捉えたときに、それは一瞬にして起ったのです。その笑顔は、ベビーカーから私に向かって射している光線のようでした。何がきっかけになったのかわかりませんが、まったく突然に、自然の素晴らしい法則が、私の心の中の目に、あふれんばかりに、その色彩を現わしたように思われたのです。こみ上げてきた感情と、やさしいそよ風、暖かい日差し、雲、青く澄んだ水は、緑の木の葉の群れと混じり合い、私の神経に思いがけない落ち着きをもたらし、体に、再び命と活力が与えられたように感じたのでした。

そして、それと同時に、ちょうどあの食器棚のように、私の身体は春の大掃除を受けたのだということが分かってきたのです。蜘蛛の巣は、笑っている無邪気な子供の顔から発せられた喜びと愛によって取り除かれたのです。その瞬間に私が感じたのは、「善」はどこにでもあり、私たちに必要とされることは、その存在に気づき、感謝し、しっかりと抱きしめ、そして、十分意識し続けることだけであるということです。

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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