投稿日: 2022/12/20
最終更新日: 2023/01/13

ペンサトール(Pensator)

ラコタ族の簡素な生活

アメリカとカナダに住むラコタ族は、スー族(訳注)という名の方がよく知られていますが、ヨーロッパから来た人々からの侵略を受け、他の部族とともに西部へと追いやられました。言語学的な研究によれば、ラコタ族はかつてミシシッピ川沿いの集落に住んでいましたが、騎兵隊が活動するようになると、グレートプレーンズ(ロッキー山脈東方の大草原地帯)に移住することを余儀なくされました。以下は、現代のラコタ族による失われた世界についてのお話です。

(訳注:スー族(Sioux):アメリカ先住民のスー語を話す民族集団のうち、ダコタ族、ナコタ族、ラコタ族の3つを指す。)

狩猟採集民であるラコタ族は、キツネやクマのことを注意深く観察していました。キツネやクマがイチゴを食べるとき、茂みにあるイチゴを食べ尽くすことはありません。クマはまた、ハチミツを食べた後に巣を壊してしまうことはめったになく、ハチミツの一部を食べると巣を置き去りにして立ち去るのでした。いつでも、再生のために十分な量のハチミツが残されていました。そうです、ラコタ族は、貪欲さを単に満足させるために大地の糧を根こそぎにするよりも、もっと良い方法を知っていたのです。それは彼らが自然と共存し、ちょうど良いバランスを見つけ、命を支えてくれる資源を大切にする方法でした。

狩猟採集民が、自然の食料庫を空にすることは決してありませんでした。彼らは環境へ与える害をできるだけ少なくしようとしていました。ラコタ族の食料源はとても多様で、しかもそれは、自然が供給し続けられるようにじっくりと考え抜かれていました。私たちの祖先は、水がどこにあるかを知っており、それを他のすべての生き物と共有していました。偉大な母なる大地は、彼らにとって豊穣の角(訳注)でした。大地には多くの種類の動物がいて、季節ごとにあらゆる種類の野菜や根菜や果物も与えてくれたのです。狩猟採集民であるラコタ族は、食物を保存する方法も良く知っていましたし、薬になる植物やそれを見つけられる場所も知っていました。

偉大な母なる大地は、彼らにとって豊穣の角でした

(訳注:豊穣の角(cornucopia):ギリシャ神話で、幼いときのゼウスに乳を与えたとされるヤギの角。その角からは望むだけ食べ物、飲み物、果物、花があふれ出たとされ、物の豊かさの象徴とされる。コルノコピア。)

私たちの祖先は、生活のためにあくせくする必要がほとんどなかったので、家族のために好きなだけ時間を使うことができました。風呂に入り、歯をきれいにして、家族とともに身だしなみを整え、自然の法則に従って生活する時間の余裕がありました。考えてみれば、生まれたばかりの子供にとって、世界のどこにいったい悪があるというのでしょうか。クマやピューマが何を殺して食べたとしても、人間の食べ物を人が食べること以上に、悪いわけではありません。私たちラコタ族は今でも、自然界のすべてのものを注意深く観察しています。私たちが生活で使うもの、私たち自身の幸せと自然の望ましい状態のために必要なものを承知しています。それは多くの現代人が、「母なる自然」に価値あるものを何も与えず、むやみに欲しがっているのとは反対です。私たちの祖先が木を切るのは、ティピ(訳注)の柱として使うときだけでした。また、植物や動物や自然を敬っていたので、私たちの祖先が自然界には悪などひとつもないと考えていたのは、容易に理解することができます。

(訳注:ティピ(tipi):北米の平原に住む先住民が住居としていた皮・布張りの円錐形のテント小屋。)

すべての良い考えは、ある種の祈りです。私たちはそう信じています。私たちには教会は必要ありません。なぜなら人生が私たちの教会であり、宇宙が私たちの神殿だからです。そして、「小さな人たち」のことを、他の人たちが「虫」と呼んでいることを私たちはかつて学んだのですが、「小さな人たち」の幸せをいつも気にかけていることもまた、私たちにとっては祈りの一つの形なのです。

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