投稿日: 2025/05/16

記事『自然について』

バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表セルジュ・ツーサン
バラ十字会フランス本部代表セルジュ・トゥーサン

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

「自然」という言葉の語源

語源から言うと、「自然」(nature)という言葉はラテン語の「natura」に由来し、「生み出すもの」という意味です。生命が約40億年前に地球に現れて以来、自然界は、地球上に生じたすべての生きものの母体であり続けてきました。

はるか昔のこの時代から、無数に多くの生物が自然界から生じ、生物は集団としてさまざまな生物種を構成しており、進化という基本的な法則に従っています。

現在のところ、ホモ・サピエンス・サピエンス(知っていることを知っている人間)と呼ばれる人類が、生理学的に最も進化した生物種だとされています。人間の体の信じられないほどの複雑さと巧妙さのことを考えると、この見解は妥当であるように思われます。

アフリカのナミビアにあるエトシャ国立公園の水辺に集まる野生動物
アフリカのナミビアにあるエトシャ国立公園の水辺に集まる野生動物

自然界は私たちの惑星と一体である

地球に生命が現れて以来、自然界は私たちの惑星である地球と一体であり続けています。

何千年もの間、人間の活動は自然界と協力すること、特に食料などの生存に必要なものをそこから得ることにだけに「限定」されていました。

時が経つにつれて、自然界は古代人の研究の対象にもなり、古代ギリシャでこの研究の成果が博物学の知識の源流を構成し、その後それは他の国に「場所を移し」ながら豊かになっていきました。自然界をアリストテレスは4つに分類し、その区分は多くの人たちに知られています。

  • 地球の土壌に存在する岩石、土、砂などからなる鉱物界
  • 樹木、草、その他の植物からなる植物界
  • 陸上や水中で暮らす動物や、空を飛ぶ鳥などを含む動物界
  • この世に住むすべての人からなる人間界
朝露とナナホシテントウ

自然は宇宙の魂のための媒体として機能する

バラ十字会の哲学の考え方では、自然とは物質的な自然だけに限られるわけではありません。さらに言えば自然は、地球上の生命の表現として、それ自体が存続することだけを目的にしているわけではありません。自然は、宇宙の魂(soul:ソウル)の宿る媒体(乗りもの)として、宇宙の魂が地球で表現されるために機能しています。

この見解は、古代ギリシャの多くの哲学者が教えていたことを反映しています。つまり、世界は一対になっていて、彼らが「現象界」(phenomenal world:フェノメナの世界)と呼んだ目で見ることができる世界は、「ヌーメナの世界」(noumenal world)と呼んだ不可視の世界に対応しているという考え方から生じています。哲学者プラトンは、「ヌーメナの世界」のことを「イデア界」と呼んでおり、こちらの言葉の方が馴染みがあるという方も多いことでしょう。

自然をこのように見ると、自然が追求しているのは、私たち人間が感覚と精神の能力を通じて知覚するものを超えた目的であるということが直観的に理解されます。バラ十字哲学の観点から言うと、自然界が存在することによって、普遍的な意識(宇宙の魂が持つ性質)が、ますます高いレベルで表現されるように、徐々に進化していくことができるようにされています。

開花したブルーベルの森に射し込む朝日

地球-自然というシステムは意識を持つ生命体である

地球-自然というシステムが意識を持つ生命体であるのは確実なことです。自然界が、特に植物界や動物界といったさまざまな領域を通して示す知性を観察するだけで、このことをはっきりと理解することができます。

季節のサイクル、生殖のプロセス、環境への適応、生物種と生物種の間の相互作用、動物がどのように食料を見つけ、子どもを育て、巣や住みかを構築するか、動物たちがどのように互いにコミュニケーションを取り、助け合い協力するか。これらは人間の知性を超える数々の妙技とノウハウであり、人間の高慢な鼻をへし折ります。

植物や動物が自然界で、いわゆる本能的な方法で行っていることからヒントを得て、人間の発明の多くが実現しました。

巣にいるヒナに餌を与えるコウライウグイスの親鳥

絶対的知性・自然界・人間という3要素

ギリシャの哲学者と同様に、バラ十字会の哲学者はいつの時代も、絶対的知性自然界人間という3要素を存在論の基盤にしてきました。言い換えれば、この3つすべてが関連しており相互に依存しているとバラ十字哲学は考えてきました。

このことが理由で、バラ十字会員の多くは、自然界と絶対的知性の2つと調和して生きるように努力しています。絶対的知性とは、創造の起源である普遍的で非人格的な知性にあたります。この知性は人間の理性では把握することができないという原則に基づき、バラ十字会員の多くは、それ自体を知ろうとするのではなく、絶対的知性の表現、つまり、宇宙と自然界と人間に働く法則を理解しようと努めています。

人は誰もが多かれ少なかれ幸せを望んでいますが、バラ十字哲学の観点から言うと、幸せを実現する最も確実な方法は、絶対的知性が表現している法則をよく知り、それを尊重して生きることです。

絶対的知性は神と呼ばれることもありますが、神自体に向かうのでないバラ十字哲学のこのアプローチは、宗教的というより科学的であり、信仰ではなく知識に基づいていることが分かります。

執筆者プロフィール

セルジュ・トゥーサン

1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。 多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。

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