以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。
※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。
秘伝的象徴についての初心者のための手引き
A Beginner’s Guide to Esoteric Symbols
コンラッド・モーガン
by Konrad Morgan
秘伝思想で用いられる象徴や記号と、その意味について書かれた多数の著作があります。しかしその多くは、特定の哲学や特定の精神修行に用いられる一連の象徴の、隠された意味を説明しようとするものです。この記事では、象徴をそのような方法で説明する代わりに、神秘学(mysticism:神秘哲学)の実践の初心者である方々に、象徴に関する私自身の洞察のいくつかと、神秘学の理解を深めるための象徴の使用法を紹介していきたいと思います。象徴には以下の3種類の基本的な目的があり、ほとんどの象徴は、そのうちの一つに該当します。
1.神秘学の具体的なテクニックや作業を略号で示すこと。
2.言語の代用。比較的最近の時代まで、一般の人々の読んだり書いたりする能力は、極端に限られたものであったことを知っていなければなりません。
3.顕在意識の働きを通り越して、下意識もしくは無意識と呼ばれる膨大な貯蔵庫にある隠された能力と通じるためのコミュニケーション方法。この最後の象徴の使用法は、極めて強力なものです。
ある作業を略号で示している象徴
Symbols as an Operational Short-hand
象徴の第一のグループは、ある日常的な実践や、特定のテクニックに含まれる作業を略号で表記しようとするものです。私が最初にバラ十字会での学習を始めたとき、当時の(旧版の)教本に掲載されていた多くの象徴や風変わりな象形文字や読みにくいアルファベットに、どれだけ魅せられたかを懐かしく思い出します。後になって私は、これらの象徴はすべて、特定の作業に含まれる手順や対象を表しているのだと理解するようになりました。それらの象徴は、神秘学の原理を研究することが極めて危険であった時代に書かれたことを除けば、ある意味で現代の料理のレシピ本のようなものでした。神秘学を学ぶ現代の生徒である私たちは、その時代の人々よりもはるかに寛容で自由な時代に生きていて、迫害や拷問を受けたり、死刑になったりする危険にさらされることなく、自己の内面を向上させるための道を学ぶことができるのは、とても幸運なことです。
私たちの先駆者は今の私たちほど幸運ではなかったので、自然やその基本的なプロセスを描写するための、複雑で秘密にされた簡略表記法のテクニックを発達させました。また、コンピューターや自費出版本によって自分の考えやアイデアを記録することが比較的簡単にできるようになった現代とは異なり、ほんの少し前の時代までは、将来の世代の利益になる知識を蓄積したり保存したりすることは困難であり、それを実現するための障壁は、今よりはるかに高いものであったことも忘れてはなりません。そうしたことを理解すると、当時正しいと認められていた宗教的信条とは異なる、内面を成長させるシステムを探し求めていた過去の多くの探求者たちにとって、考えやアイデアをできる限り簡潔な方法で表現することがとても重要であったことが理解できますし、それは同時に、貴重な筆記具の使用をできるだけ最小限に抑えるためにも役立ちました。
したがって、神秘学的な概念のこれらの「料理本」には、多くの場合、危険な魔法の呪文のように見える象徴が詰め込まれていたのですが、それらは知識を伝えるための簡略表記法に過ぎず、それぞれの象徴についての知識は、別の場所でより詳細に説明されていました。
言語の代用としての象徴
Symbols as a Replacement for Written Language
先ほど述べた神秘学的な象徴の3種類の基本的な目的のうちの二番目、つまり言語の代用としての使用についての考察には、この記事ではあまり時間を費やすつもりはありません。しかし、初心者が出会う象徴の多くについて、現代の著作家は曖昧な意味しかないと説明していますが、本来は、文字が読めない人たちが複雑な考えを理解し、互いに通じ合おうとするときに、そうした考えをより簡単に表現するための方法として、極めて日常的にこれらの象徴は用いられていたと私は考えています。実際に、古代の象徴の大部分は表面的には単純な性質の事物や問題を表しています。しかし言うまでもなく、その一部(あるいはかなり多く)には、はるかに深い微妙な意味合いが含まれています。
もちろん、中世の手工業者ギルド(職人組合)の式典や、伝統的な宗教で用いられている絵画や彫刻を見れば、さまざまな象徴や絵は、複雑な神学の背後にある原理を一般の人々が理解する唯一の方法であったことがわかります。何世紀も前の時代には、文字が読める人がほとんどいなかったことを忘れてはなりません。そのような状況において象徴を使用することで起こりうる危険は、知らず知らずのうちに人々が象徴のことを、神への崇拝を表す単なる記号と見なすのではなく、その象徴そのものを崇拝し始めることです。象徴が表している概念や事物を崇拝するのではなく、象徴そのものを崇拝することは、悲しいことに現在でもあまりにも一般的になっています。現代においてさえ、たとえば聖人の彫像は、それが表現している思考や概念全般の単なる象徴であるだけでなく、彫像それ自体が崇拝の対象となっていることがあります。
原型としての象徴
Archetypical Symbols
今述べたことから、象徴の第3の基本的な目的について考えるように私たちは導かれます。私たちは、顕在意識の働きを通り越して、それらの象徴と直接通じることができます。このような象徴には、潜在意識の領域にある精神的な能力を目覚めさせ刺激する力があり、適切に用いられると、神秘体験の質が高められたり、サイキック能力の開花が促されたりします。
第3のタイプのこの象徴を初めて見るときに、次のことを知っておくのは有益なことです。それは、幾何学的な形をしている象徴は、創造と破壊という宇宙全般に働いている影響力と通常は関連しているのに対して、幾何学的でない形をしている象徴は、有機的なプロセスと一般に関連しているということです。幾何学的な形をしている象徴の一例に、5つの角を持つ星型である五芒星形(pentagram:ペンタグラム)があります。また円形の象徴の例としては、中世の魔術の指南書(grimoire)に見られる魔除けのしるしであるシジル(sigil)や、ブードゥー教で精霊を表す象徴であるヴェーヴェ(vèvè)などが挙げられます。
幾何学的な形は伝統的に、心の内部で何らかの原理や考えが作り出されることに関連するとされており、それが適切なテクニックと組み合わせられると、何らかの新しい状態がもたらされるプロセスが開始されることになります。
一方で、幾何学的でない形、すなわち有機的な形は伝統的に、心の世界に存在すると考えられているものとコミュニケーションすることや、その力を用いることに関連があるとされています。そのような「存在」は、以前から存在するものの場合もあれば、意図的に作り上げたものである場合もあります。最近はさらに心についての理解が進み、有機的な形をした象徴は、無意識の中で休眠している特定の態度や行動や思考を目覚めさせる助けになるという見解が出されています。
特定のテクニックと組み合わせれば、この2つのタイプの象徴はいずれも、無意識のサイキック能力や潜在能力を目覚めさせ刺激する極めて強力なツールになります。そのためこのような象徴は、神秘学的な意味での成長のための、検証されたシステムからなる安全な環境(たとえばバラ十字会)で使用することが最も望ましいことです。そのような環境で学習者は試行され実証された指導システムのもとに置かれ、探求者自身の自己実現への道の進み具合に合わせた適切なペースで、さまざまな原理とテクニックが紹介されていきます。
参考文献:
Campbell, Joseph (2002). Flight of the Wild Gander:- The Symbol without Meaning. California: New World Library. p. 143. ISBN 1-57731-210-4.
Lewis, Harvey Spencer. Rosicrucian Mystic Symbols and Their Meanings.
Jung, C. G. (1934–1954), The Archetypes and The Collective Unconscious, Collected Works 9 (1) (2 ed.), Princeton, NJ: Bollingen (published 1981), ISBN 0-691-01833-2
Womack, Mari. Symbols and Meaning: A Concise Introduction. California: AltaMira Press, 2005
※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。
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