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意味と知識と英知の探究について(後半)

2018年8月9日


 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

 

いかがお過ごしでしょうか。

 

さて、「バラ十字哲学って何ですか」という質問への答えとして、当会のフランス本部代表が書いた文章を、前回に引き続きご紹介します。

この文章は、フランスの有名な雑誌『思索のための材料』(Matières à pensee)の2018年夏号に掲載されたものです。

 

前回の文章をまだお読みなっていない方は、こちらを先にご覧ください。

バラ十字哲学-意味と知識と英知の探究(前半)

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バラ十字哲学-意味と知識と英知の探究(後半)

バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表セルジュ・ツーサン

バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表セルジュ・ツーサン

 

3.知識の探究

知識の探究とは、どのようなものでしょうか。バラ十字会員の多くは、実際にそれを行っています。この探究の基礎になっているのは会が提供している教本です。会員は、郵送もしくはインターネット経由で、12の段位に分かれた教本を月に4冊受け取ります。

この教本で扱われているテーマのすべてを列挙することは不可能ですが、いくつか例を挙げるならば、宇宙の起源、物質の構造、時間と空間、生命を支配している法則、意識の階層構造、サイキック現象、夢の本質、神の概念、宇宙の魂、人間の魂とその性質、進化の目的、自由意志、カルマ、死の神秘と死後の世界、生まれ変わり、古代から用いられている象徴とその意味、数の形而上学などです。

これらのテーマに加えて、神秘学のテクニックを練習するためのさまざまな実習が教本には含まれています。リラックス法、集中法、視覚像の形成法、精神による創造、瞑想、祈り、身体に活力を与える方法、サイキック能力を目覚めさせる方法、心の錬金術などです。

このように、バラ十字会で扱われている知識は、理論的というよりは、実用的なものだと言うことができます。

室内で読書する女性

 

提供されるこれらの教本に加えて、バラ十字国際大学によって行われている研究作業からも会員は恩恵を受けています。

会員でない方も入手することができる雑誌『ローズ・クロワ』(Rose-Croix、訳注)の記事とマニフェスト(Manifesto)を通して、この研究作業の成果が分かち合われています。

マニフェストとは、教材の中に定期的に含まれる特別な冊子に付けられた名前であり、医学、心理学、物理学、音楽などの特定の分野の専門家であるバラ十字会員によって書かれています。

マニフェストで主に扱われているテーマは、電磁気学、精神分析学、神聖幾何学、夢の錬金術、リラックスの効用、音楽の精神深部への効用、硫黄・塩・水銀という世界の3分類、世界の創造、健康の原理、占星術の起源などです。

大まかに言えば、マニフェストでは、これらのテーマに対して、神秘学という見地からのアプローチが行われています。バラ十字国際大学がモットーとしているのは「スピリチュアリティに奉仕する文化」です。

 

訳注:日本版の雑誌は『バラのこころ』です。ECサイトのアマゾン(amazon.co.jp)で電子書籍版を入手することができます(一冊180円)。

雑誌バラのこころ表紙

 

バラ十字会員には、知識の探究のためのさらに別の方法もあります。それは、講演が行われる下部組織の会員専用の集会に参加することです。

集会では講演が終了すると、20分程度の時間が設けられ、参加者は誰でも質問をしたり、自分の意見を述べたりすることができ、他の会員はその質疑応答を聴くことができます。

 

下部組織で取り上げられ議論されるテーマは、人生の周期、誕生の神秘、死の神秘、生理学的なバランス、病気の予防、人間のオーラの性質、肯定的思考、象徴の意味、四大元素、笑いの効用、啓示とは何か、幸せの基礎などです。

参加者が集まって共同で実習を行う場合もあり、精神による創造、瞑想、サイキック能力の開発、身体の活力を高める方法、惑星との同調、音声による治療などが取り上げられています。

これらの知識に加えて、下部組織では他の会員と出会い交流することによって、豊かな時を過ごすことができますし、多くのバラ十字会員が大切にしている友愛という理想を実感することができます。

 

しかし、理論的な知識と実際的な知識が含まれているとしても、知識の探究ということを、単に新たな知識を入手することだけだと考えることはできません。

知識の探究には「自身を知る」ということが含まれます。このことは古代ギリシャの哲学者、特に倫理学の“父”と呼ばれたソクラテスが教えていたことです。しかし、「自身を知る」とは一体何を意味するのでしょう。

 

この質問に対しては、たとえばこのように答えることができます。それは、自分の望ましい長所だけでなく、自分が持っている弱さや欠点を知ることにあたります。そのためには、内省を習慣的に行うことが必要とされます。

最も高度なレベルで言えば、それは自身の非物質的な本質にあたるソウル(魂)を知ることにあたります。自己の内面の深奥を探究する作業、つまり内なる自己と意図的に交流することによってだけ、この種の知識を手に入れることができます。

この交流を実現するテクニックは、バラ十字会AMORCの学習課程で扱われる神秘学の実習の一部であり、バラ十字会の入門儀式の基礎になっています。

 

入門儀式に関していえば、それは一般的には、ある団体に入門しようとしている人に、その儀式を主宰する人が、何らかの知識を伝えたり、額に聖油を塗ったりするような式典だと、考えられています。この場合、知識の伝授は声や身振りで行われます。

それはそれとして、私の考えでは、さらに繊細で微妙なタイプの入門儀式が存在し、通常の入門儀式を超えるとまでは言いませんが、それと同等に有益です。それは、ある個人が自身の「内なる師」(心の中の教師)から授けられる入門儀式です。

実際のところ、内なる師とは、人間の内部に存在する神にほかなりません。ですから、最も重要な秘儀を授けることができるのは内なる師です。絶対的な意味では、内なる師から伝授されることこそが、私たち人間が手に入れることのできる最高レベルの知識と英知です。

神秘学の過去の達人たちは誰もが、内なる師のことを重要視し、まさにこのことを教えてきました。

 

 

4.英知の探究

それでは、英知の探究とは、どのようなものでしょうか。

この問いへの答えを出す前に、英知は過去に「ソフィア」という名前で呼ばれていたことを思い起こしましょう。古代ギリシャの哲学者は、ソフィアの源が〈世界の魂〉(訳注)の中に存在すると考えていました。

英知を持っている人つまり賢者は、称賛したり崇拝されたりします。また、大部分の人は他の人に、自分の内面的な美点をできる限り示そうと努力します。なぜでしょうか。

ある人が人間関係において、自分の内面的な美点を実際に表現する能力が、その人の真価を決める要因であると、人は直観的に感じているからです。

この傾向、この感情の原因は人の魂にあります。なぜなら、人の魂には崇高で貴い性質があり、それ自体が英知を熱望しているからです。

 

訳注:世界の魂(Anima Mundi):バラ十字会では、普遍的ソウル(Universal Soul)と呼ばれる。宇宙は、全体としてひとつの生きものであると考え、それに命を与えている要素をこのように呼ぶ。

 

ピュタゴラスは人類の歴史に出現した極めて偉大な思想家だと考えられます。彼は、すべての人にとって英知とは、向かわなければならない目標にあたるということを確信し、「英知(sophia)を愛する(phil-)」ということを、人間の最高の指針であると主張しました。

『アテナイの学堂』(ラファエロ作)

『アテナイの学堂』(ラファエロ作):古代ギリシャの哲学者たちが描かれているフレスコ画。中央左がプラトン、中央右がアリストテレス。左下の書物を見ている禿頭の人物がピュタゴラス。

 

このことから「哲学」(philosophy)という言葉が誕生しました。ですから、哲学者とは、この語の最も崇高な意味において、英知を愛し探し求める人のことです。

まさにこのことは、バラ十字会の哲学にあてはまり、この哲学に沿って生きている人の多くは、英知に達することにあこがれ、それをひとつになることと、自分のためでなく他者のために自分の振る舞いに英知を表現することを望みます。

実際のところ、英知の探究に役立てるのでなければ、意味の探究にも知識の探究にも、何の価値もありません。それは、「英知とは、人間の魂が持つ最高の美徳である」と語った哲学者スピノザと同じ意見にあたります。

古いバラ十字会の文章では、英知という人間の美徳が「スムム・ボーヌム」(summum bonum)と呼ばれていますが、それは、「最高の善」(sovereign good)を意味します。

 

しかし、英知とはそもそも何なのでしょう。バラ十字哲学の見方でいうと、それは、意識の状態の一種です。より具体的に言えば、人間の魂にある尊い美徳を目覚めさせることができた人が、その行動に表わすことのできる意識の状態です。

そのような意識の状態に達した人は、謙虚さ、誠実さ、正直さ、心の広さ、善意、非暴力を、あらゆる状況で発揮できるほど聡明であることができます。

このような目標には、一度の人生だけで達することはできないことから、先ほど申し上げたように、大部分のバラ十字会員は、人間が生まれ変わりを繰り返すと考えています。

誰もが、折々の人生で進歩していくように導かれ、いずれは完成に達し、自分の最も内面に存在する、本来の性質を表わすことができるようになります。このときその人は、バラ十字会の哲学で古くから、「バラと十字の状態」と呼ばれている英知の状態に達したことになります。

この状態に達すると、その人は、もはや生まれ変わりを繰り返す必要がなくなります。

 

どのようにしたら英知を手に入れることができるのでしょうか。

第1に、そのことを目標に据えなくてはなくてはなりません。第2に、信頼に値する方法を用いて、進めていく必要があります。

バラ十字会では、その方法として心の錬金術が知られています。錬金術というと、物質の錬金術のことがよく知られていて、それは卑金属を黄金に変容させることですが、心の錬金術とは、自分の欠点をそれと反対の性質に変容させることです。

たとえば、うぬぼれを謙虚さに、利己心を利他心に、暴力を非暴力に変容させることです。それは簡単な取り組みではなく、時間を必要とします。しかし、心の錬金術というテクニックが効果的であり、それに取り組むことが心に満足をもたらしてくれることが経験的に知られています。

おそらく心の錬金術は、私たち人間の内面を変容させ、徐々に英知に近づき、将来の人生において、英知に達するために用いることのできる唯一の方法だと思われます。

フランスの思想家ルネ・ゲノンはこう述べています。「入門儀式のプロセスと、ヘルメス学の偉大な作業は、実際のところ同一のものである。それは、心の深奥に存在するすべての美徳の唯一の本質である〈神聖な光〉を勝ち取ることである」。

 

ここで、もうひとつの別の疑問が浮かんできます。何のために英知の探究を行なうのでしょうか。

この疑問には、一言で答えることができます。進歩するためです。しかし、進歩するのは何のためなのでしょうか。

第1にそれは、自分自身とうまくやっていくためです。というのも、性格上の重大な欠点は、いかなるものであっても、体の不調や不幸の原因になり、健康や幸せから自分を遠ざけてしまうので、自分自身の敵だと言うことができるからです。

第2に、自分を進歩させるのは、愛する人たちや、友人や、同僚や、近所の人や、毎日道ですれ違うまだ知り合いでない人をも含む他の人たちと、うまくやっていくためです。

第3に、より良い地球の市民になって、すべての人の利益のために、社会の進歩に役立つためです。

明らかなことですが、さまざまな分野で、現在、世界はもがき苦しんでいます。そして、世界をより望ましい方向に変化させる唯一の手段は、自分自身を進歩させることと、他の人が、自身を進歩させることを望むように促すことです。

進歩を望むかどうかということは、究極の意味で言えば、英知を基礎とする文化を人類の歴史に出現させることを望むかどうかということだと私は思います。

 

まさにこのことが理由で、バラ十字会AMORCは、社会の進歩に貢献することを心から望み、多くの人たちの意識の目覚めに寄与するために、インターネットで文章を公表したり、定期的に本や雑誌の出版を行なったりしています。

すでに公開されている文章の中でも、特に、多くの方に注目していただきたい文章に、『人類と地球を愛するあなたへのお手紙』、『人間の義務に関するバラ十字宣言』、『スピリチュアリティが支える環境保護への取り組み』、『平和への貢献』があります。

また3つの宣言書『バラ十字友愛組織の姿勢』(2001年)、『バラ十字友愛組織からあなたへの訴え』(2014年)、『新クリスチャン・ローゼンクロイツの科学の結婚』(2016年)のことは言うまでもありません。

この3つの宣言書は、フランスでも、ヨーロッパ全体でも、世界的にも大きな反響を呼びました。

2014年に書かれた第2の宣言書の最後にはこう書かれています。

「人類が、スピリチュアリティ(精神性)の重視と人間尊重と環境保護という方向に舵を切ってほしいと、私たちはかつてないほど強く願っています。そして、この方向へと向かうことで、人類は再生を果たし、あらゆる面で生まれ変わった『新しい人類』への道が開けることでしょう」。

この数行には、バラ十字会の理想と哲学がまとめられています。

 

意味と知識と英知の探究こそが、バラ十字哲学だということについて、今まで述べてきました。

バラ十字会員は時として、理想主義者だと言われることがあります。疑いなく、過去と現在のバラ十字会員の多くを、そのように呼ぶことができます。

しかし、プラトンの次の言葉を思い起こしていただきたいのです。

「ユートピアとは、社会の理想の姿である。おそらく、この地上でそれが実現することはないであろう。しかし賢者は、ユートピアにこそ、自身のすべての望みを託さなければならない」。

 

バラ十字会AMORCフランス本部代表
セルジュ・ツーサン

 

著者セルジュ・ツーサンについて

1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。

多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。

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再び本庄です。

本文中に紹介されていた文章のうち、日本語に訳されているものを下記URLで読むことができます。

 

『人類と地球を愛するあなたへのお手紙』

www.amorc.or.jp/misc/world_citizen.html

 

『スピリチュアリティが支える環境保護への取り組み』

www.amorc.jp/reference/material_001.html

 

『平和への貢献』

www.facebook.com/amorc.jp/?business_id=956654201091832

 

3つの宣言書

www.amorc.jp/about_us/manifesto.html

 

では、今日はこの辺で。

また、お付き合いください。

 

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