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マリー・ロジェの謎-文芸作品を神秘学的に読み解く12

2018年9月28日


 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

東京板橋ではこの数日、どんよりとした天気が続いていましたが、今日は朝から雲ひとつない青空です。天が高く感じられます。

 

いかがお過ごしでしょうか。

 

札幌で当会のインストラクターをされている私の友人から、エドガー・アラン・ポーの作品についての寄稿をいただきましたので、ご紹介させていただきます。

 

▽ ▽ ▽

 

文芸作品を神秘学的に読み解く(12)

『マリー・ロジェの謎』 - エドガー・アラン・ポー

 

森和久のポートレート

森 和久

『マリー・ロジェの謎』は『モルグ街の殺人』の続編として1843年にエドカー・アラン・ポーが発表した作品です。

続編とはなっていますが、内容的な関連はなく、探偵のオーギュスト・デュパンが登場するのが唯一の共通点です。

 

『モルグ街の殺人』は世界初の推理小説とされていますが、作者本人は特に新しい文学ジャンルを創設するつもりなどはなかったわけで、新たなストーリー構成を試みたに過ぎないのでしょう。

歴史的な変遷として推理小説は二流の文学と貶められていた時代がありました。

しかしポーとしてはそれまでにない、人々の心に訴えかけるものを追求していたのです。

バラ十字会員は「歩く疑問符」とか「伝統を重んじるが、しきたりに拘泥しない」などと言われますが、似ているようにも思えます。

 

さて、この物語は実際に起こった事件をもとにしているということで、まるで未解決事件のノンフィクションを読んでいるように展開していきます。

たとえば「下山事件」、「狭山事件」や「三億円事件」の解説書を読んだときのような気持ちになります。

新聞記事や証言者の供述を整理、検討していく形態を取っており被害者や犯人の心情には言及がほとんど及ばないからです。

ですから読者の好みは二分されるでしょう。予定調和的に情緒に訴えるような作品を好む人には敬遠されることでしょう。

 

この作品のもう一つの注目すべき点は、「囚人のジレンマ」の要素を取り入れているということです。

数学者のアルバート・タッカーが「囚人のジレンマ」という命題を考案したのは1950年のことなので、もちろんポーはそれを知るよしもありません。

100年以上も前にこの哲学的命題ともいえる内容に踏み込んでいたのです。本文にはこうあります、

 

「総監は『犯人の告発に対して』、もしくは、複数の者が関係していたことがわかった場合には『犯人のいずれか一人の告発に対して』、二万フランの金額を提供するということにした。懸賞金を発表している布告には、共犯者であっても、仲間にそむいて証人として出頭する者は、完全に無罪とするということが約束されていた。」

 

つまり、共犯者が仲間を裏切って証言したなら報奨金を得た上無罪になり、逆に裏切らず隠していたら有罪となる、ということです。

エドガー・アラン・ポーの銀板写真(1848年)

 

「囚人のジレンマ」の要点を簡単に言えば、AとBの共犯者が協調して黙秘し続ければお互い罪はそれほど重くされない。

しかし、もし裏切ったら、裏切った方は無罪になり、裏切らなかった方は重罪になるというもの(どちらも裏切ったらそこそこの罪になる)。さてあなたならどうしますか? という一種の思考実験です。

これは社会科学や自然科学の分野でも研究されている問題で、昨今では軍事関連を含めた国家間問題や経済戦略にも取り入れられています。

 

では神秘学的に考えた場合はどうでしょうか。「正直者がバカを見る」、「自分の信ずるところを行うか?」、「人を裏切るなら、裏切られた方がましか?」ということを考えてみると答えが導き出されるのではないでしょうか。

利己主義や利益第一主義を是とするかどうかということでしょう。上記の中で一つだけ見てみましょう。「正直者がバカを見る社会は間違っている」ということが言われたりしますが、本当にそうでしょうか。

誰か他の人のために何かをやってあげるとき見返りを求めるべきではないと神秘学では述べています。

災害時に商品が品薄になった時、我先に買い占めるのはどうでしょうか。それとは違い、困っている人のために自分の金品や時間を提供するのはどうでしょうか。

「正直者がバカを見る」という思考傾向が間違いなのでは? 人間性とはもっと崇高なものであるべきではないでしょうか。

『マリー・ロジェの謎』の1853年の挿絵

 

作品本文では名乗り出る者がないので、単独犯説をとります。なぜなら、このような罪を犯す者が、この好条件で裏切らないはずはないからというより、むしろ、共犯者であれば密告を恐れるため、自分が密告されないように急いで仲間を密告するはずということです。

これも「囚人のジレンマ」の重要なテーゼです。ポーの作品を読むときはBGMにアラン・パーソンズ・プロジェクトの『怪奇と幻想の物語〜エドガー・アラン・ポーの世界』(Tales of Mystery and Imagination – Edgar Allan Poe)を是非どうぞ。音響的にポーの世界を表現しています。

 

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ふたたび本庄です。

 

私ごとですが、中学生のときのことだったと思います。ポーのすべての小説を集めた4巻の文庫が出版され、書店でしゃれた表紙に惹かれて手に取り、のめりこんで、結局全巻を読んだ覚えがあります。

多くの作品の内容はもうあまり覚えていないのですが、インターネットで調べてみると、「メエルシュトレエムに呑まれて」、「黄金虫」など、懐かしい名前の話がありました。

 

下記は、森さんの前回の記事です。

赤い蝋燭と人魚-文芸作品を神秘学的に読み解く11

 

では、今日はこのあたりで。

また、お付き合いください。

 

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