投稿日: 2018/12/07
最終更新日: 2022/12/09

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

すっかり寒くなりましたね。今日は、北海道、東北、山陰が雪だそうです。

いかがお過ごしでしょうか。

札幌で当会のインストラクターをされている私の友人から、アイルランドの作家オスカー・ワイルドの書いた、日に日に寒くなるこの時期にふさわしい童話についての寄稿をいただきました。

▽ ▽ ▽

文芸作品を神秘学的に読み解く(13)

「幸福な王子」(The Happy Prince) オスカー・ワイルド著

森和久のポートレート
森 和久

ある町の広場に「幸福な王子」と呼ばれる立派な像が立っていました。彼は生前も人々から愛され幸福に生き、そして黄金の体と宝石をちりばめた偉大な像として崇められていました。

ある夜、一羽のツバメが夜露を凌ごうとこの像の下にやってきます。しかし、雨も降っていないのに雫が落ちてきました。それは幸福な王子の哀しみの涙だったのです。王子は町に住む貧しい人たちのことを思い泣いていたのです。

そして王子は自分の体から宝石や金を剥ぎ取って貧しい町の人たちに届けてくれるようツバメに依頼します。ツバメはこれから越冬のため暖かいエジプトへ行くからできないと一旦は断りますが、王子の強い懇願によりその役割を引き受けます。

幸福な王子 王子とツバメ

貧しい人たちへの施しを繰り返し、ついには、王子は全身から貴金属をすべて剥ぎ取られ、ツバメは凍え死にます。みすぼらしい姿になった王子の像は引き倒され捨てられてしまいます。しかし、二人の魂はその貴さが認められ、神の元に召されます。

ツバメはこの町に来る前、一本の葦に恋していました。しかし、その葦はその場を離れようとはせず、二人の気持ちはすれ違い、ツバメは失恋の痛手を負って、仲間のツバメたちより6週間も遅くなってからエジプトへ旅立ったのでした。もう冬が来てしまい間に合わなくなるギリギリでした。

Happy prince

『幸福の王子』ウォルター・クレインによる挿絵 [Public domain]

ツバメがこの町で出会った幸福な王子もまた、その場所から動くことはできません。ツバメは幸福の王子からも、葦のときと同じように翻弄されます。でも、葦と王子では大きく違っていたことがあります。王子は自己犠牲のうえでツバメに協力を迫りました。

ツバメの気持ちが大きく変わった場面があります。王子の目はサファイアでできていました。その2個目のサファイアを外して貧しい人に与えてほしいという王子の願いを聞いた時、失明しまうのもいとわず、施しをしようとする王子にツバメは共感しました。このまま続けていては、ツバメは冬を越せず凍死してしまうことが判っていてもです。

作者はきっと自分をこのツバメに投影していたのでしょう。実生活で大きな挫折を味わったオスカー・ワイルドは、失意のどん底でこの作品を書きました。

Oscar Wilde (1854-1900) in New York, 1882. Picture by Napoleon Sarony (1821-1896) 2

オスカー・ワイルド(28歳当時)Napoleon Sarony撮影 [Public domain]

神秘学で述べられる宇宙法則の一つに「人は与えただけのものを受け取る」とあります。何が本当に重要なのかを認識することが大切です。もしあなたが登場する誰か、ツバメだったり、施しを受けた誰かだったりしたらどうするかを考えてみるのはいかがでしょうか。物事を認識し判断する一助となるでしょう。

△ △ △

ふたたび本庄です。

この文章を寄せていただいたことをきっかけに、『幸福な王子』を再び読んでみました。

鋭い風刺がちりばめられた素晴らしい作品ですが、結末直前のツバメと王子の経緯には一見したところでは救いがないように感じられ、童話に分類されていますが、むしろ思春期以降の方々や、大人向けの作品だと思います。

子供のころには理解できなかったさまざまな点が心に引っかかり、今も考えさせられ続けています。

下記は、森さんの前回の記事です。

マリー・ロジェの謎-文芸作品を神秘学的に読み解く12

では、今日はこのあたりで。

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