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秘密の花園-文芸作品を神秘学的に読み解く15

2019年4月19日


 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。東京板橋では朝晩の寒さも緩み、春から初夏へと移りかけているような陽気です。

 

いかがお過ごしでしょうか。

 

札幌で当会のインストラクターをされている私の友人から、小説『秘密の花園』についての文章を寄稿いただきました。登場人物たちの心の機微を巧みに描いた、世界文学の古典的名作です。

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『秘密の花園』 (The Secret Garden)-フランシス・ホジソン・バーネット著

文芸作品を神秘学的に読み解く(15)

森和久のポートレート

森 和久

 

『秘密の花園』、この魅力的なタイトルの作品を誰でも一度は手に取ったり、手に取ろうと思ったことがあるのではないでしょうか。インドで両親に顧みられることなく放任されて、勝手で気難しく孤独に暮らしていたメアリーですが、流行り病のせいで両親も使用人も亡くなってしまいます。

その時、彼女は10歳でした。そこでイギリスに住む義理の伯父に引き取られることになります。伯父の大邸宅は荒涼とした田舎にあり、周りは湿原が広がっている地です。主(あるじ)の伯父は世界中を旅してまわってほとんど留守にしています。

わがまま放題に育ったメアリーは誰からも毛嫌いされ、誰とも関りを持とうとしない生き方をしてきました。イギリスにやって来てもそのような性格のままでしたが、世話係のマーサやその弟のディコンと打ち解けるようになり、さらに庭の草花やコマドリ、庭師のベンとふれあうことで、心穏やかで快活な少女へと変化していきます。

バラの庭と石組みの入り口:秘密の花園

 

そんな時、メアリーは庭の一角に四方を壁に囲まれ、入り口も閉ざされた庭園の存在に気付き、あることがきっかけで入り口の鍵を手に入れます。期待を持ってこの秘密の庭園の中に入ってみると、そこは枯れた植物がいっぱいでした。しかし、まだ完全には死に絶えていないことを知り、この庭園を再生させようとします。

庭師やディコンの手を借りて、庭園の手入れが順調に進む中、メアリーは伯父の屋敷に幽閉されている伯父の息子に出会います。コリンという名のこの少年はメアリーと同い年で、病弱のため立ち上がることもなく、わがままな上、癇癪持ちの手に余る子どもで、腫れ物に触るように扱われていました。

両親の愛情を知らずに育ったその性格は以前のメアリーのようでした。しかし、メアリーはコリンを特別扱いせず、心を解きほぐして、ついには一緒に秘密の庭園を蘇らせます。

 

メアリーが自分の性格のすさんでいたことに気付いた後、「私はディコンが好きだわ、まだ会ったことがないけど。でも彼は私のことを好きにならないわ、誰も私を好きになってくれないもの」と、ディコンの姉、マーサに言います。

マーサはマンチェスター訛りで聞きます、「あんたは自分のことを好きなのかい?」。「全然、ちっとも好きじゃないわ」とたじろぎながらメアリーは答えます。「でも、そんなこと考えたこともなかったわ」とメアリーは付け加えます。(第7章)

嫌いなことばかりを探していたら、世の中嫌なことでいっぱいになりますし、自分が好きになれない自分を他の人が好きになるわけもありませんね。

The Secret Garden book cover - Project Gutenberg eText 17396

『秘密の花園』 (The Secret Garden)の1911年版の表紙
http://www.gutenberg.org/etext/17396 [Public domain]

 

「この世に生きていて不思議なことの一つ、それは人が永遠にいつまでもずっといつまでも生きるだろうと確信する時があるということ」と本文で著者は述べています。「たとえば、穏やかで厳粛な夜明けの頃合い、太陽が昇り始めその荘厳な光を放つとき。また、日が沈む時分の森の中にたたずみ、木々の枝を通して神秘的で深い黄金の静寂を感じるとき。」(第21章)

引きこもって死ぬことばかり考えていたコリンが秘密の庭園を生き返らせた後に感じたことも、このことだと述べられています。

 

「人々が新しい世紀(19世紀)になり発見したものの一つが、思考―まさに単なる思考―はバッテリーのような力があり、太陽の光と同じぐらい良いものとなるほど強力である。しかし毒薬と同じほど害悪ともなり得るということ。悲しい思考や邪悪な思考をあなたの心に入り込ませることは、猩紅熱の病原菌をあなたの体に入らせるのと同じくらい危険である。もしそのような思考をあなたの中に入り込んだままにしておくと、一生回復できなくなるだろう。」(第27章)

これはまさに神秘学の思想そのものです。

Frances Burnett

フランシス・ホジソン・バーネット
part of a photograph by Herbert Rose Barraud (1845-1896) [Public domain]

 

コリンは他人と自分を比較してみる機会がありませんでした。作中では「哀れな子」と表現されています。メアリーもまたよく似た子どもでしたが、だんだんと気づくようになりました。そしてコリンにも教えようとしました。幸福の連鎖と言っていいでしょう。元気になって走れるまでになったコリンは「秘密の庭園には魔法がかかっている。それは奇跡を起こす魔法だ」と言っています。どんな魔法かは本文を読んでみてください。

コリンはこうも述べています、「魔法の第一歩は『きっと良いことが起こる』と口に出して言ってみること」。

メアリーの義理の伯父、つまりコリンの父親は、世捨て人のように孤独な旅を続けています。健康になったコリンの力強い『思考』は、チロル地方を旅していた父親にも届き、息子に再会せずにはいられないという想いを引き起こします。メアリーからコリンへ。そしてコリンから父親へと幸せを繋いでいく物語です。

 

個人的には『秘密の花園』といえば唐十郎の演劇作品で、それも緑魔子主演のものでした。それがあって、このフランシス・ホジソン・バーネットの1911年に書かれた作品が目に留まりました。数十年前のことです。

もちろん内容は全く無関係ですが、「秘密」+「花園」という言葉の魔力を多くの人は感じることでしょう。この作品の原題は「The Secret Garden」なので特に「花園」ではないのですが、バラ十字会員としては心惹かれるタイトルです。

作中、コリンがディコンの母親に問います「あなたは魔法を信じますか?」。ディコンの母親は答えます、「信じるともさ。そういう名前でというわけじゃないがね。名前はどうでもいいのさ。太陽が植物を芽吹かせるようにあんたを健康にしたもの、それは善きものなのさ。その『大いなる善』がわしらの世界のようなたくさんの世界を作るのさ。なんと呼ぶかは問題ではないのさ。いつでもこの『大いなる善』を信じていることだ、『大いなる善』がこの世界には満ち溢れていることを忘れちゃならないんだよ。」(第26章)

 

BGMはThe Lovin’ Spoonfulの『魔法を信じるかい?』(Do You Believe In Magic)をぜひ、おすすめします!

 

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ふたたび本庄です。

 

調べてみたところ、この小説は舞台化も映画化もされています。ブロードウェイのミュージカルだけでなく、日本語のミュージカルもあります。映画としては、フランシス・コッポラが制作総指揮をした1993年の作品が名高いようです。

 

下記は、森さんの前回の記事です。

忘れ草と紫苑-文芸作品を神秘学的に読み解く14

 

では、今日はこのあたりで。

 

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