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歴史の転換点

2020年6月5日


 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

東京板橋では、蒸し暑い日が続いています。

東京アラートが発令され、レインボーブリッジも都庁も赤くライトアップされています。

東京にお住まいの方も、そうでない方も、どうか気をつけてお過ごしください。

 

さて、5日前のことですが、日曜美術館というNHKの番組で、芸術の専門家の方々が、新型コロナウイルスに揺れる今こそ見てほしいと思う作品を視聴者に紹介する、アートシェアという企画を行っていました。

その中で、東京都港区にある森美術館の館長の片岡真美さんは、ヴォルフガング・ライプというドイツのアーティストの『ヘーゼルナッツの花粉』という作品を取り上げていました。

この作品は2013年にニューヨーク近代美術館で発表されたものですが、実に奇妙なものです。彼が20年かけて集めたヘーゼルナッツ(ハシバミ)やタンポポの花粉を、灰色の床に敷き詰めて作った、一辺が6メートルの黄色い正方形です。

私は初めてこの作品のことを知ったのですが、自然界とは何かという問いを突きつけられる、不思議なものでした。

タンポポの花粉を集めるハチ

 

ヴォルフガング・ライプさんは、この番組に合わせて、日本の視聴者にメッセージを送りました。以下はそのメッセージの小野正嗣さんによる翻訳です。

 

『花粉を集める』

「来る日も来る日も、何週間もタンポポの草原に座り、この上なく集中して激しく、時間も我も身も心も忘れて、信じがたく思いもよらない世界の危機と混乱のただなかで、」

「ひどい病にかかり死に行く数多くの人々。新しい疫病? 600年前のような疫病が再び起こるなんてとても想像できなかっただろう? 今この私たちの生活の中に。そばに。」

「それでもなお、危機は大きければ大きいほど人類に新しい未来をもたらし、どこかほかの場所へ向かい何かを見つける手助けをしてくれた。想像し得たもののかなたに私たちは見つける。新しいありようと生き方を。」

「私たちが望むものと、私たちが人生に望むもの。大切なこととそうでないこと。慎ましさ、謙虚さ。自分自身とほかの人たちに対する、世界に対する、自然に対する、宇宙に対する全く違う関係。自分自身と世界への異なる願い。新しい未来の新しいビジョン。」

未来都市の想像図

 

芸術家の直観が、とても重要な何かを訴えているとお感じになるのではないでしょうか。

「600年前の疫病」とはペストのことでしょう。この病気の流行は14世紀から17世紀末まで続いたそうです。

17世紀末といえば、ヨーロッパでは封建領主が農奴を支配していた頃で、日本では江戸幕府による幕藩体制がしっかりと確立した頃です。

そしてペストの流行が下火になったころから、ヨーロッパで近代という時代への変化が一気に加速しました。

 

アブラハム・マズローという心理学者の言葉を借りれば、600年前の人間の心を支配していたのは「承認の欲求」でした。つまり、慣習に従順に従い、あらかじめ定められている家庭的・社会的役割を果たすことによって、他の人から承認されることが生きる意味だと、ほとんどの人が考えていたのです。

農民であれば作物を育て収穫する。職人であれば工芸品を作る。軍人であれば戦う。女であれば男に従い、妻であれば子供を産み育てるという役割だけが、人が自分の存在する意味であると考えられていたわけです。

想像してみてください。何と堅苦しい慣習社会でしょうか。

 

参考記事:「人生の学習 ― マズローの心理学

 

600年前の当時、人々は、自分と家族と同族の人たちだけにしか関心を持っていませんでした。米国の思想家のケン・ウィルバーの言い方を借りれば、自分と神話を共有している人しか、人間とは見なしていなかったのです。

たとえば、当時のヨーロッパのキリスト教徒の大部分は、他の宗教の人たちが悲惨な生活をしようが地獄に落ちようが、同情どころか関心も示しませんでした(今ではもちろん、そうではありません)。

現代人の目から見ると、何と不寛容な、不幸な世界だったことでしょうか。

しかし人類の歴史は、「自己中心性」が減る方向に、つまり多くの人たちが、自分と同胞だと考える人たちの範囲が広がる方向に進んできました。

 

当会の宣伝になってしまいますが、当時のバラ十字哲学に強く影響を受けたデカルト、フランシス・ベーコン、コメニウス、ライプニッツのような思想家と、他の多数の思想家の貢献によって、その後の人間の意識には革命的な進歩が起こり、その結果として、近代科学、近代産業、近代社会、近代国家が成立しました。

人間の心理には、マズローの言葉を使えば、「承認の欲求」に「自己実現の欲求」が取って代わるという変化が起きました。役割ではなく個人が重視されるようになり、それと同時に、自民族中心の考え方が世界中心の考え方に変わりました。

草原と謎のドア

 

この変化の影響は計り知れないほど大きなものでした。

自分の神が唯一の神ではなく、自分の集団が唯一の集団ではなく、自分のイデオロギーが唯一のイデオロギーではないと多くの人が考えるようになりました。

すべての人が役割に関わらず、つまり人間として存在しているということが理由で、人種、性別、信条にかかわらず等しく尊重されるようになりました。

奴隷制が廃止され、多くの国で、すべての人に選挙権が与えられました。教育を受ける権利、機会の平等、幸福を追求する権利がすべての人にあるとされ、保証されました。

日本ではまだ不十分なようですが、ビジネスでも政治でも他の分野でも、男性と同じように女性が重要な役割を果すようになりました。

 

今や、物理学や数学や他の多くの分野の科学研究や、「はやぶさ2」のような宇宙探査では、世界中の人たちがすでに当然のように、密接に協力し助け合っています。

他国で起こっている飢餓や他の不幸に、世界中の人たちが注目し、さまざまな支援団体が活動しています。

身体に障害を持つ人たちが、そうでない人たちと同じように社会生活を送るための支援も充実してきました。

性的マイノリティーの人たちへの差別も以前よりはひどくなくなり、誰もが自分自身の選択によって自分の望む生き方をすることが、できる方向に変化しつつあります。

 

もちろんそうはいっても、現在の世界がとても望ましい状況にあるわけではありません。不安が原因で心理的に退行し、人類がここまで進んできた「自己中心性の減少」というこの流れを後戻りしてしまう人たちもいます。

それどころか、21世紀前半の現在、さまざまな矛盾が山積みになり、世界は新しい変化を必要としています。

つまり歴史は繰り返し、ペストが流行していた17世紀と同じように、人類は「歴史の転換点」を迎えています。

バラ十字会の見解では、私たちや私たちの子孫が明るい未来を迎えるために特に重要なのは、精神性の重視(spirituality)と人間の尊重(humanism)と環境保護(ecology)です。

逆の視点から言えば、現在特に問題なのは、物質主義(唯物論)、他の人に関心を失うことと差別、環境破壊です。

 

参考:マニフェスト(宣言書)「バラ十字友愛組織からあなたへの訴え

 

この中でも物質主義(唯物論)は、特に大きな害を放ち続けています。異論をお持ちになる方もいらっしゃることと思いますが、脳波は心ではありませんし、オキシトシンは愛ではありませんし、人工知能(AI)は役に立つこともありますが意識も良心も持ちません。

峠道と道しるべ

 

先ほどの、「ヘーゼルナッツの花粉」の作者のメッセージに戻ります。それは、こう締めくくられていました。

「自分自身と他の人たちに対する、世界に対する、自然に対する、宇宙に対する全く違う関係。自分自身と世界への異なる願い。新しい未来の新しいビジョン。」

私は、この「新しい未来の新しいビジョン」がどのようなものなのかを考えることを、実にワクワクする作業だと感じます。

 

今までお話してきた、慣習社会から近代・現代社会への変化をもとに類推すると、きっとこれから起こる変化は、私たちの想像がほとんど及ばないほど徹底的なものになることでしょう。

前回のように400年まではかからないと思いますが、この変化がある程度進んだとき、人類は、どれほど幸せな時代を迎えることでしょうか。

未来の人たちは、21世紀の前半の国際社会や社会の階層間に見られた対立と分断のことを、極めて堅苦しい、不寛容な、不幸な世界だったと感じることでしょう。

 

マズローの研究に沿って考えると、多くの人の欲求が、「自己実現」から「自己超越」に取って代わるように思われます。

ケン・ウィルバーは、科学が果たしてきた役割を、神秘学(mysticism:神秘主義)が果たすようになると予測しています。

 

参考記事:「私の体は私なのか? 宗教嫌いの日本人が知るべき『神秘学』という幸福論」(MAG2NEWS)

 

日本では奈良時代から研究されていた唯識思想には、「心内の影像を心外の実境と見るな」という言葉があります。

宇宙はマクロコズム(macrocosm:大宇宙)、自然界はメソコズム(mesocosm:中宇宙)、人間はミクロコズム(microcosm:小宇宙)と呼ばれることがあります。

自然界の一部ではなく全体が、体験的には自分と同一であり、そこには〈愛〉があふれているという“悟り”を、多くの人が得ることになるのかもしれません。

 

参考記事:「陰陽思想と一元論について

 

これらのことは推測ですが、人類の歴史がこれからも、「自己中心性」が減る方向に変化していくのは間違いのないことに思われます。

このことはおそらく、宇宙の進歩を司っている普遍的法則に相応しているのでしょう。

そして、ペットを飼っている人たちは特に強く賛同してくださることと思いますが、人類は他の生きものたちも、自分たちの同胞と見なすようになるでしょう。

人類は、動物の一部が持つ“文化”から多くを学ぶことになるでしょうし、他の動物たちに教育を提供するようになるかもしれません。

 

21世紀を生きている私たちと、これから生まれてくる人たちには、このような壮大な世界の変化に、直接貢献するチャンスがあります。

この変化のためには、バラ十字哲学や最新の心理学、日本の伝統の中では、唯識思想、禅宗、西田哲学、大森荘蔵の哲学が特に役に立つのではないかと私は考えています。

 

若い人たちにお願いがあります。どうか今回ご紹介したようなことについて、そして子供の教育について、勉強し、思索し、瞑想してください。常識にとらわれずに勇気を持って進んでください。人類が明るい将来を迎えるために、あなたの力が必要とされているのですから。

 

少し長くなりました。今日はこの辺りで。

またお付き合いください。

 

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