投稿日: 2021/01/15
最終更新日: 2022/08/08

 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

早くも受験シーズンが始まりました。寒いですね。今年は例年になく、早朝と昼の気温の差が激しいように感じます。

いかがお過ごしでしょうか。

 

今回は「数とは何か」というシリーズの第5回で、作編曲家の渡辺さんからの寄稿です。渡辺さんはピアノやギターを演奏なさるのですが、今回はギターの倍音との関係で、数の象徴的な意味が解説されています。

神秘学(神秘哲学:mysticism)の根本に関わるかなり踏み込んだ説明ですので、できればこのシリーズの前回(その4)の記事を読んでからお読みになると分りやすいと思います。

 

『数とは何か?』(その1)

『数とは何か?』(その2)

『数とは何か?』(その3)

『数とは何か?』(その4)

▽ ▽ ▽

数とは何か?(その5)

~形而上学における数の概念~

渡辺篤紀
渡辺篤紀

 

前回は、「シンボル主義」についてご説明し、古代に何かを作った人々は、その思想に基づいてある数を選び、それが「象徴として何らかの意味」をなしていたと言うことをご説明しました。

では、これらの思想は、単に哲学的な思想を表すために、数にシンボリックな概念を与えただけのものなのでしょうか?

自然科学や物理などの面からも説明することはできるのでしょうか?

 

■弦が生み出す倍音

まず、ギターなどの弦楽器から生じる自然倍音についてご説明したいと思います。

弦楽器にはナチュラルハーモニクス(自然倍音)というものがあり、弦上のある点を軽く触れて弦を弾くことによって倍音(ポーンという澄んだ音)を発生させることができます。

ギターの弦と男性の指

 

ギターを弾かれる方であればご存じかと思われますが、ある弦の1/2、1/3、1/4、1/5の場所を軽く触れて弦を弾くことにより、それぞれ第2、第3、第4、第5倍音という整数次倍音を出すことができます。

その中でも、今回は特に「2(1/2)」の概念と、自然科学における倍音について考察してみたいと思います。

 

前回、「二」というものについて下記のようにご説明しました。

~~~~~

■「二」

“「絶対」、つまり統一体が意識を持つと、多様性、すなわち極性が生まれる。すなわち「一」が「二」になる。”

神秘学的な観点から言うと、「一」+「一」が「二」になるのではありません。

「二」は「一」から分裂したもの、多様性の始まりであり、「極性」を象徴しています。

例えば、「男性/女性」「能動/受動」「陰/陽」などの極性の異なる対となるものを象徴しています。

しかし、「二」は正反対のものを表しているのにもかかわらず、それは「静的」なものでもあります。

なぜでしょうか?

なぜなら、それは、二つのものが均衡を保って存在しているからです。

それゆえに、「二」だけでは何かを生産することはできないとも考えられます。

~~~~~

弦の分割による倍音の生成
弦の分割による倍音の生成(クリックすると拡大されます)

 

仮にある弦の開放弦の音をC1(ド)として、この弦の長さを1/2にした場所を軽く触れてハーモニクス(倍音)を発生させた場合、発生する音はC2(C1の1オクターブ上のド)になります(C2の赤線)。

そして、このC2の場所をさらに1/2にした場所を軽く押さえてハーモニクスを発生させた場合、発生する音はC3(C2の1オクターブ上のド)になります(C3の赤線)。

同様に、C3の場所をさらに1/2にした場所を軽く押さえてハーモニクスを発生させた場合、発生する音はC4(C3の1オクターブ上のド)になります(C4の赤線)。

 

さて、お気づきでしょうか?

実は、元の音がC(ド)の場合、各々1/2の場所にある各ハーモニクスポイントで発生する音は、いずれもオクターブの違いはあれどすべてCの音になります。

 

■「二」が表すもの

前回の「二」の説明において、

・それは「静的」なものでもある。

・「二」だけでは何かを生産することはできない。

とした意味が、おぼろげながらに見えてきましたでしょうか?

 

弦長を1/2にした各ハーモニクスポイントからは、C(ド)以外の音を発生させることはできません。

ですので、上記の通り、ある意味「静的」で、他のもの(C以外の音)を「生産」をすることができない、と言うことができます。

そして、ハーモニクスは元の音の高さによるため、元の音がG(ソ)の場合、各々1/2にしたポイントでは、オクターブが異なったとしても、Gの音しか発生させることができません。

では、一本の弦からさらなる多様性を生み出すためには、どのようにすればよいのでしょうか?

 

実は、前回の「三」の説明において、

『上記の静的な「二」が多様性を得るためには、同時に「三」になる必要がある』

とご説明しましたが、まさに、その通りのことが弦の上で展開されます。

 

■第3倍音

一本の弦を二等分(1/2)した場所から発生するハーモニクスとは異なる倍音を発生させるためには、三等分(1/3)したポイントなど、1/2とは異なる場所が必要になります。

弦を三等分した場所を軽く押さえてハーモニクスを発生させた場合、元の音から「1オクターブ+完全5度上」の音、すなわちC1の音が出る弦であれば、G2の音が発生することになります。(GはCの完全五度上の音)

では、この弦を三等分(1/3)した場所をさらに二等分(1/2)した場所を軽く押さえて発生させたハーモニクスは、何の音になるのでしょうか?

答えは、G2の1オクターブ上のG3になります。

 

■形而上学的なインスピレーションとの融合

以上のことを踏まえて、2(1/2)の性質を、自然科学と形而上学的なインスピレーションを融合させて説明してみたいと思います。

・2(1/2)は、根源(C1)から1オクターブ上のもの(C2)を生じさせる

・根本的には、根源と同質のものが生じる(CからはC)

 

そして、これを他の例へと拡大していくと、

・単一の性からの分化(雌雄の発生)は、未分化の生物よりも高いレベルものである。(比喩的に1オクターブ上)

・単細胞生物など、細胞分裂などによって二等分されても同質のものが生じる。

・「一」なるものが二等分されて生じる陰陽などは、プラスとマイナスの違いはあれど、基本的には同質のものである。

などと表現することもできると思います。

 

以上のことから、私は、

「形而上学における数の概念」とは、「物理的な宇宙の法則」を「人間の意識の深層にある直観」に訴えかけるように考えられたものである、と考えています。

さて、皆さんは、どのようにお考えでしょうか?

△ △ △

ふたたび本庄です。

今回の解説は、渡辺さんが専門の音楽家として感じられている直観から発想されたものだと思いますが、一方で伝統的な神秘学(神秘哲学:mysticism)にも沿っています。

 

17世紀のイングランドの神秘家ロバート・フラッドは、バラ十字哲学の熱烈な擁護者でした。この図は、彼の『二つの宇宙誌』(1617年)に載っている「世界の一弦琴」と呼ばれる挿絵です。

ロバート・フラットの「世界の一弦琴」
ロバート・フラッドの「世界の一弦琴」(クリックすると拡大されます)

 

彼の考えでは宇宙のすべては振動であり、その振動はこの象徴的な一弦琴によって奏でられています。右上には神の手が描かれていて、弦の張りを調整しています。

図が鮮明でないのでお読みになれるかどうか分りませんが、弦は上から順に、天上の世界、惑星の世界、四大元素(火、空気、水、土)に分割されています。

当会の通信講座を学習されている方は、スピリットの鍵盤(The Keyboards of Spirit)のことを思い起こされることでしょう。

 

また、今回の説明に対応するように、2オクターブ、1オクターブ、完全五度がそれぞれ、ディスディアパソン(Disdiapason)、ディアパソン(Diapason)、ディアペンテ(Diapente)と書き込まれています。

 

関連記事:『ロバート・フラッドのバラと十字

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回は、バラ十字会のフランス代表のブログからの翻訳記事をお届けする予定です。

またお付き合いください。

 

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