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フランシス・ベーコンについて

2021年10月1日


こんにちは。バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

東京板橋は、早朝から激しく雨が降っています。台風の被害が出なければ良いのですが。

 

いかがお過ごしでしょうか。

 

さて、唐突ですが、今回はある本の冒頭のご紹介から始めましょう。

「ペルー(そこには丸一年滞在した)を発った私たちは、南海(太平洋の旧称)経由で、中国と日本をめざして出帆した。十二ヵ月分の食料を携え、五ヵ月余りの間は、東からの弱く穏やかな良風に恵まれた。」

「ところがそのあと風向きが変わって、(中略)北へ北へと流され、そのうちに倹約して使っていた食料もついに底をついた。世界最大の荒海のまっただ中に食料もなく放り出された私たちは、もはや助かる望みは失せたものと、死の覚悟をしたが、それでもなお心をふるい立たせ…」(岩波文庫、青617-4)

 

これは、16世紀から17世紀にかけて活躍したイギリスの哲学者フランシス・ベーコンが書いた『ニュー・アトランティス』の冒頭の部分です。

フランシス・ベーコンが学んだケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ

フランシス・ベーコンが学んだケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ

 

多少ネタバレになりますが、この後のストーリー展開を紹介しますと、一行は、世界の他の地域にはまったく知られていない、新しい土地ベンサレムを発見します。この地の人々はアトランティス大陸の英知を受け継ぎ、理想の社会を築き上げています。

この土地にはソロモンの館と呼ばれる立派な大学があり、聖職者であり科学者である人たちの集団が、科学、農業、畜産、医学、機械学、芸術の研究を行っていて、その成果をすべての住民の利益のために活用しています。

つまりベーコンは、この本で一種のユートピア(理想郷)を描いたわけです。その目的は、当時の学問をどのような方向に進歩させたら良いかという自分の考えを示したのだと考えられています。

『ニュー・アトランティス』はベーコンの最晩年に書かれた本で、未完に終わっています。

そして本の最後には、「自然の大いなる業、人類に益となるものを中心に」という、ベーコンの作ったリストが付け加えられています。

たとえば、「寿命の延長」、「不快感の少ない楽な下剤」、「豊かな堆肥による土地の肥沃化」、「自然な方法による予知」、「人工の鉱物とセメント」などの項目がリストにあります。

ベンサレムの地で実現されたと描写されていたことや、このリストのいくつかは、現代の科学により実際に実現され、私たちの生活を豊かにすることに役立っています。

それはまるで、潜水艦、宇宙カプセル、ホログラム、冷凍睡眠や潜水服を予言した、19世紀のSF作家ジュール・ヴェルヌのようです。

『ニュー・アトランティス』1628年版の表紙

『ニュー・アトランティス』1628年版の表紙

 

バラ十字哲学の柱のひとつは神秘学(mysticism:神秘哲学)であり、古代ギリシャの哲学者プラトンはその最も偉大な源流です。プラトンは自分の本でアトランティス大陸についての言い伝えを紹介しているので、バラ十字哲学の伝統とアトランティスには深い関係があります。

ベーコンが自分の最後の著作の題名にアトランティスを含めたことと他のさまざまな理由から、彼が当時のバラ十字会員であったのではないかと考えている研究家が数多くいます。当時の英国のバラ十字友愛組織の代表であったと考えている人さえいます。

フランシス・ベーコンの肖像画(1618年頃)

フランシス・ベーコンの肖像画(1618年頃)

 

フランシス・ベーコンは、実験科学の生みの親とされています。実験を行うことによって人類は新しい知識を得ることができると考え、それを提案したからです。

この考え方のもとになっているのは経験論という哲学です。ごく大雑把に言えば、人間の子供は、心が完全に白紙である「タブラ・ラーサ」(tabula rasa)という状態で生まれ、経験によって知識を蓄積していくのであるから、科学も同様に実験によって知識を蓄積していくべきだという考え方です。

深層心理学者や、哲学者カントなどの研究によりタブラ・ラーサという考え方は今では否定されましたが、経験論という哲学は近代科学の成立に大きな役割を果たしました。

 

このブログでも何回か話題にしていますが、21世紀の現在は、人類の歴史の大きな転換期にあたると多くの人が考えています。

そして、前回の転換期は、400年ほど前の17世紀の初めだと想定している人が少なくありません。

当時のバラ十字哲学に強く影響を受けたフランシス・ベーコン、デカルト、コメニウス、ライプニッツのような思想家と、他の多数の思想家の貢献によって、その後の人間の意識には革命的な進歩が起こりました。

 

その結果として、近代科学、近代産業、近代社会、近代国家が成立しました。

奴隷制が廃止され、多くの国ですべての人に選挙権が与えられました。教育を受ける権利、機会の平等、幸福を追求する権利が保証され、男女の平等も進みました。

 

この変化を、米国の心理学者アブラハム・マズローは「承認の欲求」から「自己実現の欲求」への変化だと捉えています。役割ではなく個人が重視されるようになり、それと同時に、自民族中心の考え方が人類中心の考え方に変わりました。

現在私たちは、科学技術によって生活が豊かになった社会に暮らしています。また、「はやぶさ2」などが良い例でしたが、宇宙探査、数学や物理学や天文学の研究、人工知能の開発、気象の観測・予測などで、世界中の人たちが協力している姿を目のあたりにしています。

 

では、今後、私たち人類の意識と社会にはどのような変化が起るのでしょうか。

今回、フランシス・ベーコンについて調べていて、彼がこのことについてもヒントを残しているのではないかと私は感じました。

 

そのひとつは、彼が『ノヴム・オルガヌム』という本で紹介している「イドラ」(idla)という観念です。「イドラ」とは元々は偶像や幽霊を意味するラテン語で、人間が真実を手に入れるために解放されなければならない先入観、偏見を意味します。

ベーコンによればイドラには、種族のイドラ、洞窟のイドラ、市場のイドラ、劇場のイドラという4つがあります。興味のある方は、この4つについてどうぞ調べてみてください。

『ノヴム・オルガヌム』の表紙

『ノヴム・オルガヌム』の表紙、John P. McCaskey cropped by Smartse, CC BY 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/3.0>, via Wikimedia Commons

 

このうちの「洞窟のイドラ」とは、自然の光がさえぎられていることによって、また、望ましくない教育や書物や権威の盲信によって、個人が持つことになる偏見だとされます。

また「洞窟のイドラ」からは、プラトンが『国家』という本で紹介した「洞窟の比喩」も思い起こされます。この比喩は、人類の意識の進歩と神秘学の本質を突いています。

参考記事:『洞窟の比喩

 

私たち人類が、次に心の洞窟から脱出したとき、つまり、次の意識レベルに上昇したとき、過去の400年の間に自民族中心の考え方が人類中心の考え方に変化したように、現在の人類中心の考え方は、地球の生態系中心の考え方に変化するのではと私は想像しています。

そして、次に生まれ変わったときにどのような社会を見ることができるのかを楽しみに感じます。たとえば、人類はきっと、他の高等生物の一部に、幸福を追求する権利はもちろんのこと、参政権や教育の機会を保障しているに違いありません。

あなたは「そんな馬鹿な!」と思うでしょうか。それとも当然だと思うでしょうか。

 

フランシス・ベーコンは偉大な思想家です。研究すべきことが山ほどあります。

 

では、今回はこの辺りで。

またお付き合いください。

 

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