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プシューケーとエロース

2021年11月12日


こんにちは。バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

立冬も過ぎ、東京板橋でも朝晩の寒さがいよいよ厳しくなってきました。

いかがお過ごしでしょうか。

 

さて、ギリシャ神話に登場する人物のひとりにプシューケーがいます。英語読みではサイキ(Psyche)で魂の象徴とされ、心理学(サイコロジー:psychology)、精神的(サイキック:psychic)などの英単語の語源になっています。

プシューケーについてのギリシャ神話の逸話を調べたところ、豊かな内容を持ち、さまざまな部分で、神秘学(神秘哲学:mysticism)と関連していました。この逸話には、細部の異なるいくつかのバージョンがあるのですが、そのひとつを、かいつまんでご紹介させていただきたいと思います。

黄金の箱を開けるプシューケー

黄金の箱を開けるプシューケー。ジョン・W・ウォーターハウス画、John William Waterhouse, Public domain, via Wikimedia Commons

 

プシューケーは元々は神ではなく、人間の夫婦に生まれた三人姉妹の末娘でした。あまりにも美しく、人々が美の女神アプロディーテー(ウェヌス)を賛美せずに彼女を讃えるようになってしまったため、嫉妬深いアプロディーテーの怒りを買います。アプロディーテーは息子のエロース(クピードー、キューピッド:恋の神)に、2つの呪いをプシューケーにかけるように命じます。ひとつは、美しいにもかかわらず求婚者がひとりも現れないようにするという呪いで、もうひとつは、この世で最も醜い男に恋をするという呪いです。

ご存知の通り、いたずら者のエロース(キューピッド)は弓矢を持っており、自由に空を飛ぶことができ、その矢に傷つけられたものは、そのときに目の前にいる者と恋に落ちてしまいます。エロースはひとつ目の呪いをかけることには成功するのですが、矢を射ようとしたときに誤って自分の指を傷つけ、プシューケーに恋をしてしまいます。

エロース、ウィリアム・アドルフ・ブグロー(1875年作)

エロース、ウィリアム・アドルフ・ブグロー(1875年作)、William-Adolphe Bouguereau, Public domain, via Wikimedia Commons

 

娘のプシューケーに求婚者が表れないことを心配した両親は、アポロの神殿に神託を聞きに行きます。すると神託は、「山の頂上に、プシューケーを運ばなければならぬ。そこで彼女は、神々も人間も逆らうことのできぬ怪物と結婚することになる」というものでした。

プシューケーはみずからこの神託に従い、村人によって山に運ばれ、そこにひとりだけ置き去りにされます。西風の神ゼピュロスが、この世のものとは思えない美しい宮殿にプシューケーを運びます。その宮殿には、目には見ることのできない召使いたちがいて、彼女は何不自由のない快適な生活を送ることになります。しかし、宮殿の持ち主である夫は、彼女に自分の姿を見ないことを約束させ、夜にだけ寝室に現れるので、プシューケーは夫の姿を知ることができません。

やがて、家族が恋しくなったプシューケーは、二人の姉を宮殿に招きます。姉たちは、姿を見せない夫はきっと大蛇であり、プシューケーを太らせてから食べるつもりに違いないと言います。そしてプシューケーに、夫が眠っている間にランプの光で姿を確認して、蛇であることが分ったら、ナイフで首を落としてしまいなさいと言います。

 

夫の優しい声を知っているプシューケーは、最初は姉たちの言葉を相手にしないのですが、やがて好奇心と疑念がつのるようになり、ランプとナイフを用意して、寝ている夫の姿を見てしまいます。

すると見えたのは、背中に羽を生やした、神々の中でも最も美しいとされるエロースの姿でした。さらに近づいてその顔を見ようとしたとき、ランプの油が夫のエロースの肩に垂れ、エロースは火傷を負って目を覚まします。そして、「愛は疑いとは一緒に暮らしていけないから」という言葉を残して、彼女のもとを飛び去っていきます。

彼女はエロースを探して、あちこちを放浪します。そしてある地で、穀物を大切に取り扱ったことがきっかけで、豊穣の女神デーメーテールの助力を得ます。デーメーテールの取りなしで、女神アプロディーテーの神殿で下働きをしながら、アプロディーテーの怒りをなだめる機会が得られます。

絵画『プシューケーと玉座の上のアプロディーテー』

エドワード・マシュー・ヘイルの1883年の絵画『プシューケーと玉座の上のアプロディーテー』。ラッセル=コーツ美術館(英語版)所蔵、Edward Matthew Hale, Public domain, via Wikimedia Commons

 

女神アプロディーテーは、人間であり下女となったプシューケーに、次々と無理難題を出します。凶暴な金の羊の毛を集めてくるようにとか、龍の住む泉から水を汲(く)んでくるようにとかです。

そのたびに、神々からの不思議な助けがあり、それらを乗り越えるのですが、最後の極めつけの難題は、冥界に降り、そこにいる女王ペルセポネー(プロセルピナ)から化粧品を分けてもらい、アプロディーテーに届けるというものでした。

しかしこの難題も。火傷の癒えたエロースが助けに駆けつけ、乗り越えることができます。そしてエロースは、神々の中の神ゼウス(ユーピテル、ジュピター)に、アプロディーテーとプシューケーの仲裁を頼みます。

 

ゼウスは、エロースが弓矢を用いて、絶世の美女ひとりが自分に恋をするようにするということを条件に、アプロディーテーの怒りをなだめることに同意します。プシューケーは、神々の食物であるアンブローシアを食べて不死になり、神々の夫婦としてユーピテルと永遠に暮らすことになります。

後にこの二体の神の間には、「喜び」、「若さ」という名の双子の女神が生まれます。

プシューケーとエロースの像

プシューケーとエロースの像(サンクト・ペテルブルグのサマーガーデンにて、提供:shutterstock)

 

以上、駆け足でのあらすじの紹介でしたが、この逸話は、詩情にあふれている楽しい読み物です。またそれだけでなく、さまざまな象徴的な意味が込められていて、謎解きを楽しむことができます。ご興味のある方は、インターネットで調べたり、本をお求めになったりしてみてください。

 

さて、この逸話のさまざまな部分が、神秘学と関連しているということを、最初にお話しました。

第1の関連は、プシューケーの両親が神託を聞きに行ったアポロの神殿です。皆さんは、この神託の予言が見事に当たっていたことにお気づきでしょうか。神々も人間も逆らうことのできない恋(の神)とプシューケーが結婚したからです。

この神殿があるデルポイは、紀元前17世紀頃から2000年以上にわたり、デルポイの密儀と呼ばれる神秘学の学派の中心地でした。アポロの神殿の入り口には「汝自身を知れ」という言葉が刻まれていたとされます。

この言葉は「身のほどをわきまえろ」という意味だと誤解されることがありますが、真の意味は、表面的な自己ではなく自身の本質を探究しなさいということです。神秘学派のほとんどが、このことを人生の中心課題だとしています。

 

神秘学との第2の関連は、豊穣の女神デーメーテールと冥界の女王ペルセポネーです。ペルセポネーはデーメーテールの娘にあたり、ギリシャ神話には、この2人についても興味深い逸話があります。野原で花を摘んでいたペルセポネーを、冥界の王ハーデースがさらい、その後に起った様々なできごとの結果として、ペルセポネーは、冬は冥界の王ハーデースのもとで暮らし、春と夏と秋は地上のデーメーテールのもとで暮らします。

絵画『ゼウスに抗議するデーメーテール』

アントワーヌ=フランソワ・カレの1777年の絵画『ゼウスに抗議するデーメーテール』。ボストン美術館所蔵、Antoine-François Callet, Public domain, via Wikimedia Commons

 

ペルセポネーが冬にあの世で暮らすことは、表面的には、穀物や草花が冬に枯れることの説明になっています。しかし、隠された意味としては、人間の生まれ変わりの周期を表しています。古代の神秘学では、人間の生まれ変わりは当然の事柄として扱われていました。

このことに関連していますが、ギリシャ語の「プシューケー」は「魂」を意味していると同時に「蝶」も意味しています。青虫がさなぎになり蝶になる様子が、人間が死を経て、肉体を離れた自由な魂になる様子の象徴だと見なされているのだと思われます。

イシス・ペルセポネー像

イシス・ペルセポネー像、イラクリオンにある考古学博物館所蔵、Wolfgang Sauber, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons

 

ギリシャの首都アテネの近郊には、古代ギリシャ時代に栄えたエレウシスという名の小さな都市があり、ここでは、デーメーテールとペルセポネーを崇拝するエレウシス神秘学(エレウシスの密儀)が、紀元前1800年ごろから、やはり2000年以上にわたって栄えていました。

この地で秋に行われる収穫の祝祭は、エレウシス神秘学派の入門儀式の機会にもなっていました。この祭りは古代ギリシャでとても重要視され、開催期間中の55日間は、ギリシャ全土で休戦が守られていました。

英語で神秘を意味する「ミステリー」(mystery)という語の語源は、ギリシャ語の「ミステリア」(mysteria)です。ある研究家によれば、この語は「口を閉(と)ざす」(秘密にする)などというときに用いられる「閉ざす」を意味する動詞「ムオ」(muo)と祝祭を意味する「テリア」(teria)からなります。「ミステリア」という言葉の元々の意味は、「そこで秘密が伝えられた祝祭」だったと推測されています。

 

さて、ご紹介した逸話でプシューケーは、最初は人間ですが、さまざまな試練を経た後に、神々と同等の完全な存在になります(ギリシャ神話には、嫉妬深かったりして、完全さが感じられない神々も多数いますが)。

ですから、今回ご紹介したこの話の全体は、人の魂が、人生に存在するさまざまな試練を乗り越え、何度も生まれ変わりを繰り返しながら、やがて完全な存在になるという、古代の神秘学派の考え方を象徴していると考えることができます。

このことは山登りにたとえられます。人間はスピリチュアリティという山を少しずつらせん状に登りながら、さまざまな景色を体験し、学びを得て、意識のレベルを向上させ、人格を洗練させていきます。

 

宣伝になりますが、この考え方は、現代の神秘学派であるバラ十字会にも受け継がれています。

比喩的な意味で言えば、神秘学派が昔も今も行っているのは、この登山道の整備と紹介だと言うことができます。

具体的に言えばこの登山は、バラ十字会では、イメージを心の中に形成する練習や、瞑想の実習や、人間の潜在意識と世界の関連について学んだりすることからスタートします。

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今回は、魂の女神プシューケーと恋の神エロースについての神話と、それが神秘学とどのように関連しているかをご紹介しました。

では、この辺りで。

またお付き合いください。

 

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