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健康について

2018年11月30日

 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

 

早いもので、明日からもう師走ですね。

いかがお過ごしでしょうか。

 

 

さて、今日の話題は健康です。健康の大切さについては誰にも異論のないことと思いますが、規則的な生活とか適度な運動とか、その手の話であれば、あまり新鮮さを感じないという方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、神秘学(mysticism:神秘哲学)という観点からは、もう少し違う話ができます。

当会のフランス代表がこのことについて書いていますので、ご紹介します。

▽ ▽ ▽

健康について(A propos de la sante)

バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表セルジュ・ツーサン

バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表セルジュ・ツーサン

 

健康は「最も貴重な宝」だとよく言われますが、私もそう思います。

人生には変転がつきものであるとしても、肉体的にも精神的にも病気に悩まされることがなく、常に健康を享受することができれば、生きることはずっと快適になるのではないでしょうか。

しかし、私たちの多くは普段、健康の価値について十分に考えることなく、病気になって初めて、健康であり体のどこにも苦しみを抱えていないということが、どれほどありがたいことなのかを実感します。

ジョギングするミドルのカップル

 

他の人よりも生まれつき体が丈夫な人がいるので、健康という面において誰もが同等の条件にないということは事実です。

このような人は、生またときから活力にあふれていたり、免疫力が高かったり、精神的に頑強であったり、優れた回復力を持っていたりします。そしてこれらの要素によって、病気に対する強い耐性を持っています。

しかしそれでも、どのように日々生活しているかということが、私たちの健康に大きな影響を与えることに変わりはありません。実際のところ、お酒を飲み過ぎたり、タバコを吸ったり、カフェインなどの薬物を取り過ぎたり、不適切な食習慣や、運動不足や休息の不足などが、多くの病気が生じることを助長しています。

このようなことの大部分は、私たちが自身の自由意志を不適切に行使しているという問題に相当します。

 

健康に悪影響を与えているにも関わらず、あまりにもしばしば見過ごされている要因に、ネガティブな思考があります。

ネガティブな思考には、うらやみ、嫉妬、怒り、恨み、憎しみなどの感情だけが含まれるのではありません。ネガティブな思考には、不安、恐れ、心配などを伴う悲観論や敗北主義が含まれます。

このような感情や思考の傾向は、破壊的なエネルギーのようなものであり、それが私たちの体の細胞、内分泌腺、内臓や、生理活動全般に望ましくない影響を及ぼします。また、私たちの体全体の調和を混乱させ、全体的な代謝を劣化させます。

ジョギングする若い女性

 

以上のことから考えると、健康を保つための最良の方法には、身体面の衛生(食事、運動、睡眠)だけでなく、精神面の衛生が含まれると言うことができます。

精神面の衛生のためには、望ましい思考、美しい感情、洗練された情操で心を満たすように努力することが必要です。

ますます多くの医師が、このような要因が健康に影響を及ぼすことを認めるようになり、治癒のための重要な要因として、「道徳心」のことを考慮するようになっています。

予防は治療に勝るということは誰もが知っていますが、私の考えでは、精神面の衛生と道徳心は、病気の予防のために何よりも大切な要素です。

 

あなたを驚かせることになるかもしれませんが、私はまたスピリチュアリティ、つまり自身の心の深奥や普遍的な精神に触れる、瞑想などのような行ないの実践が、健康と病気の防止のために必須だと考えています。

もちろん、スピリチュアリティが万能であり、投薬や外科的な処置に出番がないと述べているわけではありません。投薬や外科処置が不要だなどと語ることは、責任ある態度だとは言えません。

しかし、私たち人間の心の深奥には崇高なエネルギーが生来存在することを認め、このエネルギーと同調するための行ないを定期的に実践するならば、それは身体と精神の健康に必ず寄与します。

このような実践の健康への効果は、極めて大きいことが知られているので、一部の先進的な医師は、治療計画を立案する際にその中に瞑想などを組み入れるようになっています。

 

バラ十字会AMORCフランス本部代表
セルジュ・ツーサン

 

著者セルジュ・ツーサンについて

1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。

多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。

△ △ △

再び本庄です。

健康と心の関係について考えたとき、私が思い出すのは、フランスの哲学者ルソーの「良心と魂との関係は、本能と体との関係に等しい」という格言です。

この格言にはいくつかの解釈があるようですが、そのひとつは、「体の健康は本能によって守られていて、魂の健康は良心によって守られている」という説明です。詳しくは次の記事をご覧ください。

人生を変えた格言

 

また下記は、前回紹介したセルジュ・ツーサンの文章です。ご参考まで。

正義について

 

では、今日はこの辺で

また、お付き合いください。

 

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一本のクリの木から

2018年11月22日

 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

 

12月が近づいてきました。せわしなく、慌ただしく仕事をしています。

皆さまは、いかがお過ごしでしょうか。

 

 

小中学生に読書の楽しさを紹介するブックトークというお仕事をされている、岐阜に住んでいる私の親しい友人から寄稿がありましたので、ご紹介させていただきます。

読んで、とても考えさせられました。

 

▽ ▽ ▽

 

記事『一本のクリの木から…』

可児明美

可児 明美

 

秋は実りの季節、お米や木の実、キノコ、魚などいろいろな収穫がありますが、その中に栗もありますね。

秋の味覚の栗ごはんに、栗きんとん、栗まんじゅうなど、栗のお菓子もおいしいですよね。

 

病気になってしまった大きなクリの木が切り倒されたむこうに、小さな一本のクリの木が生えていました。(「クリの木の太陽」)

その木の成長を見守っていた公園の管理人のおじさんが、こんな話をしてくれました…

クリの木がどのようにして太陽から栄養を作り出すのか、人や動物や昆虫がどのようにかかわっているのか…

そしてある時、クリの木とおじさんにピンチが訪れたこと…

おじさんとクリの木はどのようにしてピンチをのりこえたのでしょうか?

最後におじさんは、クリの実を子どもたちと食べながら言います。

「わしらは仲間だ。ミミズもカブトムシもスズメもリスも、1本のクリの木から太陽を食べた仲間だぞ!」と。

栗の実

 

木や草、人も動物も昆虫も、私たちは仲間だ、とおじさんは言いました。

「父は空 母は大地 インディアンからの伝言」に書かれているのは、1854年にアメリカ先住民のシアトル首長から、アメリカ大統領にあてられた伝言です。

今から150年以上前の話ですね。

アメリカ先住民の人々は、開拓者である白人に、先祖代々住み慣れた豊かな土地を取り上げられ、不毛な居留地へと追いやられることになってしまいました…

 

伝言では、ワシントンの首長が土地を買いたいといってきたが、どうして空が買えるのか、大地を買うことができるのだろうか? との疑問があげられています。

そして最後には、「わたしたちが大切にしたように、この大地を大切にしてほしい、わたしたちが愛したように、愛してほしい」との願いで終わっています。

アメリカ先住民の人々は、どのように自然と関わって暮らしていたのでしょうか?

一方、白い人たちは、どうだったのでしょうか。味わってみてください。

 

自然がなくては、人は生きていけませんね。

では、生物がすっかり消えてしまったら、どうなってしまうのでしょうか?

「生物が消えた島」には、生物がすっかり消えてしまったある島の、その後の様子が詳しく書かれています。

火山活動によって、インドネシアのクラカタウ島は、島中が火山灰でうまり、谷には黒こげになった木しかない、死の世界になってしまいました。

この島は、それからどうなっていったのでしょうか?

噴火から3年後、13年後…、科学者たちが調査した様子が書かれています。

いろいろな植物や動物が住みつくようになり、森林ができてくるのですが、それでもそこには入ってこられない動物がいます。

それはどんな動物でしょうか?

そしてそこに人間は住めるのでしょうか?

そして森が再び出来上がるまで、いったいどのくらいの年月が必要だったのでしょうか?

森と湖

 

先ほども「私たちは仲間だ」、と公園のおじさんが言っていましたが、実際のところ、人間は動物に困ってしまうときもありますね。

「人はなぜカラスとともだちになれないの?」には、身近にいるカラスについていろいろなことが書かれています。

カラスって、そもそもどんな鳥なのでしょうか?

どんなところに住んでいるのでしょうか?

カラスは頭がいいって本当かな?

どうして害鳥とされているのでしょうか?

私たちはカラスとどのようにかかわっていったらいいのでしょうか?

身近にみられるカラスについて、詳しく知ってみるのも、おもしろいかもしれません。

 

カラスのように、害鳥とよばれる生き物がいる一方で、人間が乱獲して数を減らしてしまった生き物を、保護しようとする活動もあります。

「アホウドリに夢中」には、数が減ってしまったアホウドリの保護研究にとりくんだ様子が書かれています。

どうしてこの鳥にアホウドリという名前がついたのでしょうか?

その背景には、とてもやりきれない悲しい事実が隠れていました。

この本の著者は、この鳥のことをアホウドリではなく、オキノタユウという美しい名前で呼ぼうと、呼びかけています。

 

人と自然とのかかわりについて、いくつかの本をご紹介しました。

いろいろな関わり方がありますね…

あなたは、自然とどのように関わっていきたいですか?

おわり

栗の木

 

紹介した本

「クリの木の太陽」 文・松岡洋子 大日本図書

「父は空 母は大地 インディアンからの伝言」訳・寮美千子、ロクリン社

「生物が消えた島」文・田川日出夫、福音館書店

「人はなぜカラスとともだちになれないの?」監修・杉田昭栄、農文協

「アホウドリに夢中」著・長谷川博、新日本出版社

 

△ △ △

 

ふたたび本庄です。

今朝のニュースで紹介されていたのですが、インドネシアの国立公園の海岸にマッコウクジラの死体が漂着し、その体内から6キロものプラスチックゴミが見つかったとのことです。

目を背けたくなるような、悲しいニュースでした。

 

宣言書『バラ十字友愛組織からあなたへの訴え』には、環境保護についての当会の見解が紹介されています。

結論の冒頭を引用します。

「以上が、この文章によってあなたと分かち合いたいと、私たちが心から望んでいる考えです。スピリチュアリティの重視と人間尊重と環境保護という方向に向かって、人間は、個人としても集団としても行動を起こすことが、今すぐ必要とされているとバラ十字会は確信しています。しかし、もしこの3つに順位をつけるとすれば、最も優先されるべきなのは環境保護でしょう…」

 

次のリンクをクリックしてお読みください。

宣言書:『バラ十字友愛組織からあなたへの訴え』(Appellatio Fraternitatis Rosae Crucis)

 

下記は可児さんの、前回のブックトークの記事です。

記事:『大空を飛ぶ

 

今日はこの辺りで。

また、お付き合いください。

 

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エメラルド・タブレットと樹皮のたとえ

2018年11月16日

 

 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

東京板橋では、昨日から晴れが続いていますが、朝は、手がかじかむほど寒くなりました。

 

そちらはいかがでしょうか。

 

さて今日は、『エメラルド・タブレットの解釈と説明』の後半をご紹介したいと思います。

前半についてまだお読みでない方は、できればこちらの記事を先にご覧ください。

参考記事:『エメラルド・タブレットの解釈と説明』(前半)

 

しかしその前に、前半の文章に登場した「スピリット」(生命力)と、後半の文章に登場する「外皮」に深く関係している、カバラの研究家の「樹皮のたとえ」をご紹介したいと思います。カバラの研究家は、人間が犯す罪のことを樹皮にたとえています。

 

樹皮とは、樹液が循環せずに固まってしまったため、汚れたしわができた“外皮”の部分で、やがて乾燥してはがれ落ちます(fall away)。

神秘学(mysticism:神秘哲学)によれば、私たち人間には、周囲の環境と社会を理想の状態に近づけるという仕事と、自身の性格を洗練し完成させるという仕事があります。

この2つの仕事は、「善を行うこと」にあたります。そして善を行うためには、樹液(生命力)を働かせなければなりません。樹液を働かせずに固まらせてしまうならば、その人は死んだ樹皮のように退化し萎縮して、樹皮と同じように堕落(fall away)してしまいます。

 

しかし、悪は必ず善に包み込まれて無効にされるため、自然の中には、最後まで悪であり続けるものはありません。

死んだ樹皮は、誰かがそれを拾(ひろ)い、火を起こし、その熱で体を暖めたり、その灰で肥料を作ったり、木を育てたりするので、やはり役に立ちます。

また、樹皮は木の根元で分解して栄養になり、木の根を通って樹液に戻ります。

 

カバラによると、永遠の炎が悪を焼き尽くしますが、それは実は罰ではなく、浄化のための再生の炎であり、悪は、全般的に有用である善に戻されます。

 

それでは、ヘルメスのエメラルド・タブレットの解釈と説明の後半をご紹介します。原本は、バラ十字会AMORCの北中南米担当英語圏本部の所有している英語訳のデータで、日本語に訳されるのは初めてのことです。

 

前回も申し上げましたが、通常の読み方をしても、専門の方以外には、この文章はさっぱり分からないと思います。

 

しかし、すべての人の心の奥には、真実と英知が潜んでいます。この文章には、それを活性化してくれる効力があります。

ですから、次のようになさることをお勧めします。

 

1.30分ほど、誰にも邪魔されない時間を確保して、ひとりきりになれる静かな場所に行ってください。

2.まず、心を静めて、エメラルド・タブレットの図版をじっくりと観察してください。ご自身で着色した図があれば、それを用いてください。

3.そして、次の言葉を唱えます。

「これから読む文章によって、私の心に、錬金術の秘法が明かされますように。」

4.次に図版を参照しながら、以下の文章(後半)を読んでください。

5.読み終えたら、しばらくの間、心の奥の声に耳を傾けてください。

 

この文章には、2重の意味があります。表面的な意味は物質の錬金術、つまり卑金属を貴金属に変えるための方法です。しかし、より重要なことが伝えられています。それは心の錬金術、つまり自分の中にある卑しい要素を高貴な要素に変換するための技法です。

錬金術師の部屋

バラ十字古代エジプト博物館(カリフォルニア州サンノゼ)に再現された錬金術師の部屋

 

* * *

 

ヘルメスのエメラルド・タブレット(Tabula Smaragdina Hermetis.)

エメラルド・タブレットの図版(カラー)。クリックすると画像ファイルが表示されます。

ヘルメスの秘密の言葉(Verba Secretorum Hermetis.)

 

(ヘルメスの秘密の言葉の内容については、次の記事をご参照ください)

参考記事:『エメラルド・タブレットとは

 

* * *

 

ヘルメスのエメラルド・タブレットの解釈と説明(後半)

(Interpretation and Explanation of the Tabula Smaragdina Hermetis)

 

この技法には、7つの方法がある。そのひとつでも無視したとしたら、汝は無益な作業をすることになる。

 

しかし、何よりもまず、汝は純化をなし遂げなければならない。

そして純化には2つの側面があるが、汝はまずそのひとつだけを行う必要がある。

 

最初の作業は、他に何も加えることなく、

何かを抽出するのでもなく、単に腐敗によって自然に行われる。

世俗的なあらゆるものから、すべてのものがその後に準備される。

 

この最初の方法には2つの道がある。正しい道を進む者に幸あれ。

第一の道は、火の力によってそれ自体で自動的に継続していく。このことを良く心得ておきなさい。第2の道は、さらに遠くまで続き、手に入れるべき宝に達する。

このことは、溶解によって行われる。そして飽和によっても行われる。私は汝に伝える。何よりもまず、純化に取りかからなければならない。そうすれば汝は、この優れた技法の最後にまでたどりつくであろう。

純化のすべてが完了した後に、“それ”が準備されて、太陽、すなわち望ましい時節にある、タマムシコガネの運ぶ温かい糞の中で煮沸される。この段階ははるか先にまで進み、それは揺るぎのない完全なものになる。そして、賢者の宝がその中に存在する。

 

その他のすべての方法は極めて微妙であり、能力の高い多くの人がそこで失敗をする。というのも失敗が蒸留の目的であり、賢者たちの昇華であるからである。

 

四大元素が分離される。四大元素を賢者たちは、空気、水、調整された火、大地の土と呼ぶ。

大地の土は、多くの人を惑わせた。すべての力がその中にあるにも関わらず、それは役に立たないものだと考えられた。

 

自分の〈外皮〉から土をどのようにして分離するかを知らない人々がおり、彼らはそれゆえに失敗する。

〈外皮〉は、扉の向こう側に捨てられる。しかし、賢者は再びそれを取り上げ、雪のように白く、汚(けが)れのないように純化する。私は指摘するが、実際のところ、このことが基礎である。

 

しかし、汝がそれを分離することを望むのであれば、その重大さを心得よ。というのも、私は誓って言うことができるが、準備が不足していれば、汝は失敗するからである。

それゆえに汝は、賢者たちが正体を知っているある種の酢(す)も持っていなくてはならない。それを用いて、汝は分離を行うことができる。もはやその中には、世俗的なものは何も残らなくなり、肉体と魂が分離される。すなわち、火と土が呼び集められて、その後にこの2つが純粋にされる。

 

右を向いた手が3つ

 

そしてその結果、注目すべき混合物がもたらされる。そしてそのようにして、それは驚くべき力になり、完成されたものと、完成されていないものが現れる。

そしてまた、もし火が正しく調整されるならば、それは一年よりもはるかに短い期間で、全体的に完全になる。

 

そして、汝はついにすべての方法を手にする。そこには3つ以上の道はない。

すぐに惑わされて道を誤る人もいるが、他の人には、すべては明確で容易である。

 

ひとつの道は、賢者の水であり、それは水銀に他ならない。

もうひとつの道は酢と呼ばれる。これは極めて少数の人にしか知られていない。

そしてこの酢は、哲学者の鉄を避けて通る。

この酢は、銅という主人を喜ばせる。

それゆえに賢者の水と酢は、それぞれがもう一方を選んだ後に極めて密接に結びついて、何百もの形と名前が与えられた。

 

真の源からひとつの道が生じ、少なからぬ人々が、丸々一年の間、その道に沿って作業を行った。

しかし、多くの人は、技術と巧みさによって、その長い期間を短縮した。

そして、錬金術が述べている準備は、速やかに自由に行うことができるようにされた。

準備によってこそ、この石は偉大で栄光あるものになる。

 

とはいえ、何ひとつ欠けるところのない物質は、ただひとつだけしかない。

しかし、それが自体の名前を明かすとき、その名前に多くの人が惑わされる。

そうではあるが、私は汝に十分に、多くの方法、多くの形、多くのやり方で示してきた。

多くの名前がある。私は汝に忠告する。真の道から外れた方向に導かれてしまわないように。

 

それはある種の水薬、ある種の強力な毒であると、長老たちは写本に書く。

他の人は、それをヘビ、怪物と呼び、いかなる意味でも高価ではないと言う。

それは、世界中のすべての人、富める者にも貧しい者にも良く知られている。

それはさまざまな金属の性質であり、それを通して金属は輝かしい勝利を得る。

完全さは、それと同じことであり、完全さは、その上に載せられる王冠である。

 

それを理解し、事情を知った者にとって、実践は完了する。

もし汝が正しい道に従い、作業に注意深く加わるならば、汝は遠からず、さらに2つのものを発見し、それを選ぶであろう。

そのひとつは構成であり、賢者たちはそれを秘密にしていた。

火の性質にもまた、巧妙な技巧が隠されている。それゆえに、火の秩序が、発見されるもうひとつのものである。

この2つとともに、あまりに多くのことを扱うべきではない。さもなければ、あらゆる行ないが失敗してしまう。

 

人がこの技法を行うときには、最高の巧妙さが必要とされる。

雌鶏(めんどり)から雛(ひな)が生じるのと同じことを、時の始めにそれが行ない、時自体がそれを検証した。

火が調節されるまさにそのとき、この宝が作り出される。

 

勤勉であり、常に怠るな。心に平静を保ち、絶対なる者を敬え。そして、絶対なる者に助けを求めよ。もし、汝がそれを得たならば、貧しい者たちと彼らが必要としているもののことを、いつも忘れないようにせよ。

 

* * *

 

いかがでしたでしょうか。

この文章から受ける刺激によって、あなたが、重要なヒントを手に入れられることを願っています。

 

先週この文章の前半をご紹介した後に、バラ十字会の通信講座では、こんなに難しいことをやっているのですかというご質問を受けました。

そんなことはなく、この講座のカリキュラムは、どなたにもご理解いただけるように段階的に構成されています。

実はエメラルド・タブレットは、15ヵ月の初心者課程と4年6ヵ月の本科課程を学んだ後の、専門課程で扱われる内容のひとつなのです。

しかし、高度なこの文章の内容も、先ほどご紹介したような方法を用いれば、多くの皆さんに楽しんでいただけるのではないかと思っています。

 

ご参考:神秘学通信講座「人生を支配する」-学習コースのご案内

 

では、今日はこの辺りで

また、お付き合いください

 

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エメラルド・タブレットの解釈と説明

2018年11月9日

 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

東京板橋では、快晴だった昨日とは打って変わって、朝から雨が降り続いています。

 

いかがお過ごしでしょうか。

 

3年ほど前のことですが、このブログでエメラルド・タブレットについての記事を書いたことがあります。それ以降、何人かの方から、感謝の言葉と、もっと詳しく知りたいというご要望をいただいていました。

そこで今回は、錬金術についてのこの話題を再び取り上げたいと思います。

 

錬金術と聞くと、なんだか怪しいと感じる方も多いことと思います。苦労しないでお金を儲ける詐欺まがいの方法というような意味を連想される方もいます。

しかし、古代エジプトで生じ、長い歴史を持つこの分野に携わっていた人たちの大部分は、極めてまじめな研究者たちでした。また、この研究から現代の化学と薬学が生まれました。

錬金術について理解するためには、次のことを考えに入れる必要があります。さまざまな学問が個々の分野に分かれたのは、比較的最近になってからのことであり、それまでは、たとえば哲学、政治学、医学、化学、占星術や宗教の研究などは、同じ人が行っていたのです。

自然哲学者として有名なあのアイザック・ニュートンも、物理学や数学だけでなく、錬金術や神秘学(mysticism:神秘哲学)の研究者でした。

参考記事:『アイザック・ニュートンと太古の神殿

 

専門家によれば、錬金術の根本的な考え方として次の2つを挙げることができます。

1.自然界では、不完全なものは完全なものに進化していく

2.人間は自然界をまねて、それと同じことを行うことができる

 

たとえば錬金術師たちは、自然界では、錫や鉛のような不完全な金属が、徐々に進化して、金や銀のように完全な金属が生じたと考えました。

そして、人間には自然界と同じことができるので、卑金属から金や銀が作り出せると考え、その方法を研究しました。

 

また彼らは、人間は、自然界で利己的な不完全な状態から徐々に進歩して、賢者のような完全な状態になると考えました。

そして、どのようにして、そのような人格の向上を促し、確実にするかということを研究していました。

 

また、病気とは不完全な状態であり、健康とは完全な状態だと考えました。自然界では多くの場合、病気を健康に変える自然治癒という現象が起きるので、錬金術師たちは、それと同じことを人の介入によって実現する方法を探していました。

 

ですから、錬金術師たちは、自然界というシステムを研究すると同時に、卑金属から金や銀を作り出そうとし、人格を向上させるための方法を試し、エリクサーと呼ばれる万能薬を調合しようとしていました。これらのすべては錬金術師たちにとって、ひとつが他のヒントになる一貫した研究だったのです。

ドイツの錬金術師ハインリッヒ・クンラートの本には、錬金術師の部屋を描いたイラストが登場します。左のテントのような部分は、人格を向上させるために祈りと瞑想を行う場所であり、オラトリウムと呼ばれていました。カーテンがある右の四角いテーブルは、実験を行うための場所で、ラバラトリウムと呼ばれていました。

この2つから、現在の英単語「オラトリー」(oratory:祈りの部屋)、「ラボラトリー」(laboratory:実験室)が生じました。

ハインリッヒ・クンラートの『永遠なる叡智の円形劇場』(1609年)の挿絵

ハインリッヒ・クンラートの『永遠なる叡智の円形劇場』(1609年)の挿絵。クリックすると拡大されます。

 

話を戻します。錬金術についてのある言い伝えがあります。それは、ヘルメス・トリスメギストスという賢者が錬金術の秘法を刻んだ、エメラルドでできた板、もしくはエメラルド色の板があるという言い伝えです。

ヘルメス・トリスメギストスとは誰かを説明するためには、古代ギリシャの時代にまでさかのぼらなければなりません。

古代ギリシャ時代に、アリストテレスという優れた哲学者がいました。彼の授業を受けたアレクサンドロス3世(アレキサンダー大王)は、その知識によって優れた王になり領土を拡大します。そして、自分の名前にちなんで、アレクサンドリアという都市を世界中にいくつも作ります。

 

そのうちのひとつである、エジプトのナイル川の下流にあったアレクサンドリアでは、古代エジプトの文化と古代ギリシャの文化が混ざり合いました。

エジプトのトート神は、言葉と文字を人間に教えたとされていた神でしたが、ギリシャのヘルメス神と同一視され、「第1のヘルメス」と呼ばれるようになります。

そして、エジプトに住んでいた優秀なある哲学者が、「第2のヘルメス」、別名「ヘルメス・トリスメギストス」と呼ばれるようになりました。彼が実在の人物であるかどうかは分かりません。トリスメギストスとは「3重に偉大な」という意味で、神智学、錬金術、魔術の3つの分野を知り尽くしているという意味です。

 

エメラルド・タブレットがほんとうに存在したかどうかも、はっきりとは分かっていません。

しかし、そこに書かれていたとされる文章が、何種類か伝えられています。

そのひとつが、18世紀の後半にドイツ北部の町アルトナで発行された『バラ十字会員の秘密の象徴』という本に登場します。

円形をした図版とラテン語の表題が2つあり、その下にドイツ語でヘルメス・トリスメギストスの言葉が書かれています。また、その後の2ページには、やはりドイツ語で、「ヘルメスのエメラルド・タブレットの解説と説明」という題の文章が、詩の形式で書かれています。

エメラルド・タブレットの図版(カラー)

エメラルド・タブレットの図版(カラー)。クリックすると画像ファイルが表示されます。

 

ヘルメス・トリスメギストスの言葉については、以前に下記のページで日本語訳をご紹介しましたので、そちらを参照してください。

参考記事:『エメラルド・タブレットとは

 

今週、「ヘルメスのエメラルド・タブレットの解説と説明」の部分の翻訳を行いました。この文章が日本語に訳されるのは初めてのことだと思います。原本は、バラ十字会AMORCの北中南米担当英語圏本部の所有している英語訳のデータです。やや長い文章なので、今回は前半をご紹介します。

 

この文章には、人間の不完全さを完全な性質に変えるための秘法、つまり、傲慢さを謙虚さに変え、利己心を分け与える心に、狭い心を親切な心に変えるための秘法が含まれています。

しかしおそらく専門家以外には、普通に読んだのでは、何を意味しているのかさっぱり分からないと思います。

なぜ、これほど分かりにくく書くのだろうかと、最初は私も疑問に思っていました。ところが、読み込んでいるうちに理解したのですが、この文章は、心の奥を刺激することで、そこから何かが湧き上がってくることを意図しています。

 

そこで、次のように、当時の錬金術師のまねをしてみることをお勧めします。

 

1.30分ほど、誰にも邪魔されない時間を確保して、ひとりきりになれる静かな場所に行ってください。そこがあなたの「オラトリウム」になります。

2.まず、心を静めて、エメラルド・タブレットの図版をじっくりと観察してください。

3.そして、次の言葉を唱えます。

「これから読む文章によって、私の心に、錬金術の秘法が明かされますように。」

4.次に図版を参照しながら、以下の文章(前半)を読んでみてください。

5.読み終えたら、しばらくの間、心の奥の声に耳を傾けてください。

 

* * *

 

ヘルメスのエメラルド・タブレットの解釈と説明(前半)

 

この図は、一見しただけでは、単純で取るに足らないもののように思われるが、偉大で重要な事柄が隠されている。

のみならず、この図にはある種の秘密が含まれていて、それは、世界で最も偉大な宝である。

というのも、この地上で、次のような者よりも優れていると考えられる者がいるであろうか。黄金のような徳と威厳を常に保ち、健康さを生涯にわたって保つ王である。そしてこの王は、どのような生き物にも超えることのできない、あらかじめ定められた寿命に達するまで、生き生きとして、はつらつとしている。

先ほど述べたように、このすべてがこの図の中に明らかに含まれている。

図の中には3つの盾があり、ワシとライオンと独立した星が描かれている。

そして、その3つのまさに中央には、皇帝の地位を表わす球が巧みに描かれている。

同じように、この図の中には天と地が意図的に配置されており、互いに向かって伸ばされている2つの手の間には、さまざまな金属の象徴が見られる。

そして、絵を囲んでいる円周の中には、7つの単語が記されている。

そこでこれから私は、それぞれが個々に何を意味するかを述べ、ためらうことなく、それがどのような名前で呼ばれるかを示す。

そこには賢者の秘密があり、この秘密の中に偉大な力が見いだされるであろう。

そして、どのようにして準備を行うべきかということも、以下に説明される。

3つの盾は、塩と硫黄と水銀を示す。

塩は肉体(corpus)であり、錬金術の技法において、まさに最後のものにあたる。

そして硫黄は、魂(soul)であり、それなしでは肉体は何もできない。

水銀は力のスピリット(spirit)であり、肉体とソウルをひとつに保っている。それゆえにそれは媒介(medium)と呼ばれる。なぜなら、媒介がなくては、作られた何ものも安定性を保つことがないからである。

魂と肉体は、スピリットがこの2つとともにある限り、死ぬことがない。

そして、宿るべき肉体がなければ、魂とスピリットは存在することができない。そして、魂とともになければ、肉体もスピリットも何の能力も持たない。

これが錬金術の意味である。肉体は形と安定性を与える。魂は肉体に宿り、それに血の気を与える。スピリットは肉体を満たし、それに流動性を与える。そしてそれゆえに、これら3つのうちのひとつだけでは、錬金術は存在することができない。

また、最も偉大なる秘技も、単独では存在することができず、肉体と魂とスピリットを必要とする。

それでは、この3つが生じた源である第4のものとは何であろうか。下の盾の7つの先端を持つ星が、その名前を示している。

同じようにライオンは、色と力によって、その本質と性質を示している。

ワシには、黄色と白が現れている。

私の語っていることを注意深く聴きなさい。よく用心しなさい。王権を表わす球は、この最高の善を象徴している。

天と地と四大元素と火と光と水が、その中にある。

2つの手は、正しい思考と真の知識という誓いの証人である。そして、すべての金属と他の多くの源は、この2つに由来する。

さて、残るは7つの単語である。さらに、それらが何を意味するのかを聴きなさい。今、このことを良く理解したならば、今後この知識が、汝を見捨てることは決してない。

すべての語は、ある都市を表わしていて、そのそれぞれには、ひとつだけ入り口がある。

第1の語は金を示し、その見かけは黄色である。

第2は、純白の銀である。

第3は水銀であり、灰色である。

第4は錫(スズ)であり、空色である。

第5は鉄であり、血のような赤である。

第6は銅であり、真の緑色である。

第7は鉛であり、墨のような黒である。

私が意味することに注意し、よく理解しなさい。これらの都市の入り口に、まさに錬金術のすべての基礎がある。

どの都市も、単独では何の成果も出すことができない。他のすべてを用いる必要がある。

そして、入り口が閉ざされるやいなや、いずれの都市にも入ることができない。

そして、もし都市に入り口がなかったとすれば、これらの7つは何もなし遂げることができなかったであろう。

しかし、これらの入り口が同時に閉じられるとき、7色からひとつの光線が出現する。

ひとつになって輝いたとき、その威力は何にも比べられない。

このような驚異を、汝は地上では見ることができない。それゆえに、さらに個別要素について聴きなさい。7つの文字、7つの単語、7つの都市、7つの入り口、7つの時刻、7つの金属、7つの曜日、7つの暗号である。

それはまた、7つの薬草であり、7つの技法であり、7つの鉱石である。

永遠なる技法はすべて、これらによって成立する。

このことを見いだした者に幸あれ。

もし、以上のことが汝にとって難しすぎて理解できないのであれば、ここに私は再び、いくつかの他の個別要素を挙げる。私は汝に、憎しみもうらやみもなく、明確に単純に完全に明らかにする。どのようにして、それが硫酸(Vitriol)という一語によって名付けられるのかを、それを理解できる者に明らかにする。

もし汝が、熱心な努力によってカバラの方法を理解し、暗号の中に7と50という数を発見するならば、汝はあらゆるところにこの数を見いだすであろう。

この作業が汝を落胆させないように、私の述べることを正しく理解せよ。そうすれば汝はこの作業を楽しむことができる。

さらに、次のことを完全に理解せよ。何も濡らさない水というものが存在する。

この水から、さまざまな金属が作られ、その水は氷のように固く凍る。

湿った塵(ちり)が豊かな風を起こし、その中にはあらゆる性質がある。

このことをもし汝が理解しないのであれば、私は汝のために他の名前は示さない。

そして、どのようにしてそれを準備するかを示す。

それには、7つの方法がある……

 

* * *

 

バラ十字会の通信講座(下記)を学ばれている方々に補足があります。この文章でスピリットと呼ばれているものは、教材では根源的生命力(Vital Life Force)と呼ばれています。

 

参考:『1ヵ月無料体験プログラムのご案内

 

いかがでしたでしょうか。次回は、この文章の後半をご紹介します。

 

実は、『バラ十字会員の秘密の象徴』に掲載されているエメラルド・タブレットの図版は白黒なのです。ご紹介したカラーの図版は、専門家が彩色したものですが、それがあなたにとって、最も望ましい彩色であるとは限りません。

ですから、白黒の図版を掲載しますので、時間の余裕がある方には、次回までに印刷して塗り絵をしてみることをお勧めします。心静かに塗り絵をすると、楽しい不思議なひとときを経験できることと思います。

エメラルド・タブレットの図版(白黒)

エメラルド・タブレットの図版(白黒)。クリックすると画像ファイルが表示されます。

 

 

では、今日はこの辺りで

また、お付き合いください。

 

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正義について

2018年11月2日

 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

 

朝のニュースで紹介されていたのですが、春の空の色は空色(そらいろ)というのに対して、夏空の色は紺碧(こんぺき)、秋と冬の空の色は天色(あまいろ)と言うそうです。天色は空色よりも少しだけ澄んだ鮮やかな薄青です。

今朝の東京板橋の空は、まさに天色でした。

 

いかがお過ごしでしょうか。

 

 

さて、正義という言葉は、どうも最近、あまりいい意味で使われることが多くないのではと感じています。あまり根拠もないのに、自分の意見を大上段に振りかざすというようなイメージでしょうか。

真実は立場によって異なると考える、最近の傾向の影響かもしれません。

 

当会のフランス代表が正義について書いた文章を翻訳しましたので、今回はそれをご紹介します。

▽ ▽ ▽

『正義について』(À propos de la justice)

バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表セルジュ・ツーサン

バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表セルジュ・ツーサン

 

辞書を引いてみると、正義(justice)は哲学的な理想であり、法的なシステム(訳注)でもあると書かれています。

訳注:フランス語や英語の単語「justice」には、正義という意味と司法という意味がある。

 

私にとって明らかに思われるのは、自分や他の人にとって何が正義で、何が不正かということを判断する内的な感覚が、すべての人に備わっているということです。このことを確認するためには、不当な扱いを受けたときに子供が示すふるまいを観察するだけで十分ではないでしょうか。

たとえばある子供が、実際には何も悪いことをしていないのに、何かを言ったり行ったりしたとされて叱られたような場合です。その子は激しくそれを否定し、途方に暮れて泣きじゃくりながら、自分の正しさを主張することでしょう。

 

すべての人が、正義についての内的な感覚を持っているのは、なぜなのでしょうか。バラ十字哲学の観点から言うと、それは人間には魂(soul:ソウル)があるからであり、魂は「正義の感覚」と一体だからです。

同様に、人間の行動の中で何が原則として善であり、何が原則として悪であるかを、すべての人が心の奥で知っているということも私は確信しています。このことについても、それを裏付ける子供の行動を、あなたもきっと見たことがあるのではないでしょうか。

ある子供が、“悪い”ことだとはっきり知りながら、それを行った場合、伏し目がちになり、口ごもりながら、おどおどとしています。残念なことに教育は、多くの場合にこの資質を守り育もうとはしないので、多くの人が徐々に“道徳感覚”を失い、自身の良心に耳を傾けなくなってしまいます。

正義の女神と花畑

 

別の疑問も生じます。もしすべての人に正義についての内的な感覚が備わっているのであれば、世の中にこれほど不正が多いのはなぜなのでしょう。その理由は、自分の魂の促しではなく、エゴの衝動の影響のもとに行動する傾向が人にあるからだと思われます。

エゴは自分の関心と利益を動機にしがちであり、時として、いえ、あまりにもしばしば、他の人たちを軽視します。私たちはその結果、自身の正義の感覚と道徳の感覚に反するようにエゴにけしかけられ、不正な行ない、あるいは悪の行ないにさえ導かれてしまいます。

全般的に言えば、私たち人間には間違ったことでさえ行う自由があります。ここでは話題として詳細には取り上げませんが、この自由は私たち人間にとって重荷であるのかそうでないかなど、自由意志について、興味深いさまざまな疑問を検討することができます。

 

人は周囲の人に対して不正なこと(非難、名誉毀損、攻撃、搾取、束縛など)をしてしまうことがあり、その犠牲となった人にはさまざまな否定的な影響が生じるので、人間社会は正義を維持することを目的として司法という制度を作るようになりました。

司法制度は、時とともに発達して複雑になり、現在では多数の職業(警察、検察官、裁判官、弁護士など)を含む全体的なシステムになっています。そして、不正の犠牲になった人がその損害を補償されるためには、長い手続きを経る必要があります。

司法制度のことを私は大切なものだと考えていますが、あらゆる種類の煩雑な手続きと、それ自体に生じている不正のために、このシステムはもはやボロボロになっているのではないかと感じています。

古書と時計と天秤

 

残念なことに、さまざまな不足、特に教育の不足、そして物質を偏重する(心を軽視する)傾向と個人主義が原因で、不正な行ないがますます増え、社会に不公正が広がっています。

人間の性質のうちの最良の部分の促しのもとに行動する能力こそが、個人と集団の幸せの基礎であるということを多くの人が理解し、人類が全体として協調するようになることを私は心から願っています。

バラ十字会AMORCフランス本部代表
セルジュ・ツーサン

 

著者セルジュ・ツーサンについて

1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。

多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。

△ △ △

再び本庄です。

この文章に示されているような、人の本来の性質は善であるという考え方は、性善説と呼ばれています。

そして、その正反対は性悪説だと一般的には考えられていて、性悪説の代表的な思想家は荀子だとされます。

 

ところが調べてみると、「人の性は悪なり、その善なるは偽なり」という荀子の言葉は、二重に誤解されているようなのです。

多くの場合この言葉は、「人の本来の性質は悪であり、善だと考えるのは偽(いつわ)りである」などと解釈されています。

 

ところがこの言葉の前半の部分は、人間の本質について述べているのではなく、「人間は環境や欲望によって悪に走りやすい傾向がある」ということを指摘しているのだそうです。

さらに、「偽」という漢字に「いつわり」という意味が生じたのは後の時代のことで、この当時の意味は「変化したもの」もしくは「作為によって成立したもの」だったそうです。

ですから、この言葉の後半は、「善は、(悪に走りやすいという傾向を)教育や訓練という作為によって変化させたものである」というような意味になります。

 

人間の本質を深く追究した優れた思想家には、それが悪だと考える人はいないのかもしれません。興味深いことです。

 

下記は、前回紹介したセルジュ・ツーサンの文章です。ご参考まで。

独立と独立心について

 

では、今日はこの辺で

また、お付き合いください。

 

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