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約束の話

2018年4月13日

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

東京板橋では、桜の木が若葉から、濃い緑へとすっかり変わりました。

 

いかがお過ごしでしょうか。

 

さて、このブログにすでに何回か登場していただいていますが、小中学生に本を紹介するブックトークというお仕事をされている私の親しい友人から、寄稿をいただきました。

彼女の文章を読むといつも、読みたい本、読み返したい本が増えすぎて困ります。

今回はなかなかディープな話です。

真剣に読書をする女の子

 

 

▽ ▽ ▽

 

記事『約束の話』

可児明美

可児 明美

 

皆さんは、これまでに約束をしたことがありますか? お友達やお家の人となにかの約束をしたことのある人も、いますよね?

そのとき、どんな約束をしましたか? 守るのが簡単な約束もあれば、守るのがなかなか難しい約束もあったかもしれませんね。

 

これは日本の江戸時代にできたお話で、『雨月物語』という物語集に出てくる「菊の約束」というお話です。(はじめてであう日本の古典『雨月物語』古田足日編、小峰書店)

あるとき、播磨の国に住んでいた学者が、旅の途中で具合が悪くなった立派な武士を看病して助けました。看病のかいあって、武士はすっかり元気になりました。

二人はとても気が合って、兄弟になることにしました。しかし元気になった武士は、旅の目的を果たすために、出雲へ行くことになりました。

 

武士は別れ際に、今年の秋の菊の花の祝いの日に戻ってくると約束しました。ところが武士は行った先で足止めされ、閉じ込められてしまいました。

武士は困ってしまいます。約束の菊の花の祝いの日に帰るために、この武士はとうとう、ある行動に出ました。

いったい武士は、どうやって約束を守ったのでしょうか? そして待っていた学者はそのあと、どうしたでしょうか。

Ueda Akinari

『雨月物語』の作者、上田秋成の肖像 By 甲賀文麗 (KoKa Bunrei) (甲賀文麗作「上田秋成像」) [Public domain], via Wikimedia Commons

 

先のお話では、誠実に約束を守ろうとした武士のことが書かれていました。次のお話も、友達のために命をかけて走りぬいたお話です。(『走れメロス』太宰治著、角川つばさ文庫)

人間を信じることができないため、罪もない多くの人々を殺す王がいました。

主人公のメロスは、王を暗殺しようとして失敗し、捕まえられて死刑を言い渡されます。

最後に妹の結婚式をすませたいからと、親友を人質に残し、三日間の自由をもらいました。

 

式が終わって、人質となった親友のもとへと、そして自分が死刑になるためにメロスは走り続けます。

そのまま逃げてしまえば、親友の命と引き換えに死刑から逃れることができますね。でも、メロスはそうしませんでした。みなさんなら、どうしますか?

 

……さあ、メロスは約束の時間までに無事たどり着くことができるのでしょうか? メロスと親友の運命はいかに……?

最後のほうに出てくるメロスと親友の会話のやりとりがとてもかっこいいので、ぜひ味わってみてください。

Osamu Dazai

太宰 治 (Shigeru Tamura [Public domain], via Wikimedia Commons)

 

次のお話も、友達を助けるために約束をして、危険な状況に追い込まれてしまうお話です。(『親友のつくり方、教えましょう。』くもん出版)

この本の中には、親友をテーマにした名作がいくつか載っています。その中でも、『ヴェニスの商人物語』は、シェークスピア劇が少年少女むけの物語の形で書いてあります。

 

友人のために自分の肉を担保にしてお金を借りたアントニオは、返済期限がやってきて、高利貸しシャイロックから、肉で借金を返済するように迫られます。

とうとう裁判になりますが、この裁判にはアントニオにとって強力な助っ人がいたのでした。

さあ、助っ人はどうやって絶体絶命のアントニオを救い出すのでしょうか? そしてその助っ人とは、実は……

CHANDOS3

ウィリアム・シェイクスピア By John Taylor (Unknown) [Public domain], via Wikimedia Commons

 

さて、いろいろな約束をご紹介しましたが、昔ばなしにも約束はよく出てきます。(『黒いお姫さま ドイツの昔話』ヴィルヘルム・ブッシュ採話、福音館書店)

この中の黒いお姫さまというお話では、子どもがいなかった王様とお妃様のところにお姫さまが生まれます。

ところがお姫さまは15歳の誕生日の前の日に、私は明日死ななくてはならないが、どうしても約束してもらいたいことがあると言い出します。

お姫さまは、死んだ自分の棺に、1年の間毎晩見張りをつけるよう、約束してほしいと言います。

 

王さまは約束を守って、1年間、棺に見張りをつけます。けれども見張りは、夜中に棺から出てきたお姫さまに首をひねられて次々に殺されます。

そしてとうとう、見張りをしたいと名乗り出る者がいなくなってしまいました。

けれどもヤーコプという羊飼いの若者が、見張りに名乗り出ます。さあ、ヤーコプはうまく見張りをやり遂げることができるでしょうか?

実はヤーコプは、お姫様の呪いを解く、ある一つの条件を満たしていた若者でした。その条件とは、何だったのでしょうか? そしてヤーコプは、うまくお姫様の呪いを解けるのでしょうか?

 

約束がテーマの本をいくつかご紹介しました。こうしてみると、約束と友情には、どうやらつながりがありそうですね。約束と友情をぜひ味わってみてください。

 

おわり

 

紹介した本

『はじめてであう日本の古典 雨月物語』古田足日編、小峰書店

『走れメロス』太宰治著、角川つばさ文庫

『親友のつくり方、教えましょう。』くもん出版

『黒いお姫さま ドイツの昔話』ヴィルヘルム・ブッシュ採話、福音館書店

 

△ △ △

 

ふたたび本庄です。こちらは猫の話を扱った可児さんの前回の記事です。

参考記事:『猫がテーマの本

 

今日はこの辺りで。

また、お付き合いください。

 

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直感について

2018年4月6日

 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

今日の東京板橋は、朝から風がとても強く、道端に自転車が何台も倒れていました。

今週は、ずいぶんと寒暖の差が激しかったですね。

 

いかがお過ごしでしょうか。

 

さて、今回の話題は直感です。(直観とも書くことがあり、意味に差があるという人もいますが、ここではどちらも同じだとします。)

直感は虫の知らせとも呼ばれますし、英語では「はらわたの感覚」(gut feeling)と言うそうです。

あなたの今までのご経験で、直感が働いたと最もはっきり感じたのは、どのようなときだったでしょうか。

 

以下は、当会のフランス本部の代表が、直感について書いたブログ記事の翻訳です。

 

▽ ▽ ▽

 

バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表セルジュ・ツーサンのブログ

バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表セルジュ・ツーサン

Serge Toussaint

 

記事「直感について」

 

誰もが知っている通り、人間には身体能力というものがあります。それは、体の働きであり、具体的には、歩く、走る、登る、跳ぶ、這う、泳ぐ、踊るなどです。

これらの能力には、骨、筋肉、神経が関わっていて、脳によってコントロールされています。

私たち人間には、感覚能力というものもあります。視覚、聴覚、触覚、味覚、臭覚などの五感であり、それぞれの感覚に与えられた刺激は、それに対応する脳の特定の部分によって処理されます。

身体能力は、精神(心)の意図したとおりに体を動かす働きなので精神-運動機能と呼ばれ、感覚能力は知覚機能と呼ばれることもあります。

 

しかし、脳はこの2つの機能だけでなく、精神の機能も司っています。精神の機能の中でも特に重要なものに、思考、記憶、想像という3つの働きがあります。

思考という働きのおかげで、私たちは現在の状況について考えることができます。

記憶という働きのおかげで過去を思い出すことができます。

そして想像という働きのおかげで、思考の限界を超えて楽しいことを思い浮かべたり、未来を予測したり期待したりすることができます。

ですから、心理学で「主観的機能」と呼ばれるこの3つの精神の働きは、それぞれ、現在と過去と未来という3つの時間の区分に関わっています。

 

そして、私たちにはさらに、以上のような精神の働きに加えて、いわゆる”超心理学的”な機能があります。

下意識の機能と呼ばれることもありますし、20世紀の初頭に活躍したインドの神秘家で詩人のオーロビンド・ゴーシュは、超精神的(super-mental)機能と呼びました。

このような働きの中でも特に重要な働きに直感があります。

この働きによって私たちは、時計を見ずに時刻が分かったり、受け取ったばかりの手紙を読む前に、それを誰が書いたかが分かったり、友人の女性が妊娠していることが、本人が気づく前に分かったり、ある場所で、ある出来事が起こったことが、教えられる前に分かったりするというようなことが起こります。

直感(イメージ図):吊された多数の鍵からひとつを選ぶ

 

直感は通常の精神の働きとは異なり、脳の活動の結果から生じているのではありません。直感が働いたときのことを思い起こしていただければ、そのときには、思考という働きを使っていなかったことがお分かりになることと思います。

直感によって意識の中に生じる印象は、突然でつかの間であり、絶対に正しいという感じが伴っています。真の直感は正しく、間違った直感などというものはありません。

そのようなものは実は直感ではなく、直感と勘違いされていますが、その源は“ごく些細な”間違った思考です。

 

バラ十字会の哲学の観点から言うと、直感とは心の深奥の働きの一種です。

より明確に言うと、直感は、魂(soul:ソウル)という、人の最も貴い要素に由来します。このことが、直感が常に正しい理由です。

しかし、人は生まれつき直感を十分に活用できるわけではなく、この能力を目覚めさせる必要があります。そのためには、どのようにしたら良いのでしょうか。

お勧めの方法は、直感によって心の中に生じる印象に常に注目し、それに従うことを習慣にすることです。

日々の生活を送る上で、直感は思考と同じように役立つので、直感という心の働きを無視してしまうのは残念なことです。

19世紀のフランスの作家アンヌ・バラタン(Anne Barratin)はこう述べています。「直感とは、(その人がそう考えるところの)神が与えてくれる、真実の光のきらめきです。」

 

バラ十字会AMORCフランス本部代表
セルジュ・ツーサン

 

著者セルジュ・ツーサンについて

1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。

多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。

本稿はそのブログからの一記事。

 

△ △ △

 

再び本庄です。

 

神秘体験という言葉を耳にしたことがおありでしょうか。

突然、今までにないほど心が澄み切った状態になり、宇宙と自然のすべてが愛に満たされていると感じたり、すべてがひとつであると感じたりして、思考を超えた、人生についての新しい展望が開けます。

神秘体験(イメージ図)

 

私たちが提供している通信講座の教材で説明されていることなのですが、バラ十字会の哲学では、直感のことを最も初歩的な神秘体験だと考え、より高度な神秘体験のための第一歩になると考えています。

ですから、先の記事でセルジュ・ツーサンが説明していた、直感を目覚めさせる方法は、簡単に行えることですが、見かけよりも重要な意義があります。

 

参考記事:『神秘体験の不思議

https://www.amorc.jp/reference/material_005.html

 

最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。

では、また。

 

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テンプル騎士団について

2018年3月30日

 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

 

今日の東京板橋は良い天気なのですが、やや風が強く、桜吹雪が華やかに舞っています。

 

いかがお過ごしでしょうか。

 

さて、バラ十字会AMORCの日本の代表を務めていて、ときおり尋ねられることがあります。それは、テンプル騎士団とバラ十字会にはどのような関係があるのですかというご質問です。

このご質問にお答えするためには、まず、テンプル騎士団と十字軍の違いについて説明する必要があります。

そしてこのことには、中世のヨーロッパとパレスチナの生々しい歴史が関連しています。

 

今から1000年近く前、11世紀の終わりごろのできごとですが、当時のローマ法王(ウルバヌス2世)がカトリック教会の会議で次のことを訴えました。

イスラム教徒がパレスチナを占領して、その地に住んでいるキリスト教徒を虐殺している。また、聖墳墓と呼ばれる、エルサレムにあるキリスト教の聖地を占拠し冒涜しているので、奪い返す必要があると訴えたのです。

 

歴史家によればこの訴えは、完全な嘘とまでは言えないとしても、真実からかなり離れていました。

当時この地を支配していたトルコやエジプトのイスラム教徒は、キリスト教に寛大であり、キリスト教徒の巡礼も認め、この地で2つの宗教は比較的平和に共存していたのです。

ローマ法王の真の動機は、カトリック教会の支配をパレスチナにまで広げて経済的な利益を増やすためだったと、多くの専門家が考えています。

 

しかし、ローマ法王のこの訴えは成功し十字軍が結成されました。何千人もの一般の人々がヨーロッパを横断してエルサレムに向かい、途中の国でも賛同者が加わり、十字軍の規模は膨れ上がりました。

彼らはさまざまな土地で、略奪や殺人を行いました。十字軍は“聖なる戦い”であるので、十字軍に参加している間に犯した罪には有罪の判決が下されることはないと兵士は教えられていたのです。

その後13世紀の終わりまで、何回もの十字軍の遠征が行われ、そのたびに各地で虐殺や略奪が起こりました。

 

十字軍の遠征のごく初期から、フランスの少数の騎士たちは、キリスト教徒であったにもかかわらず、その残虐な行ないを非難していました。

一方で、十字軍の影響によってパレスチナでは、キリスト教とイスラム教の対立が、とても激しくなっていました。

1118年に、9人のフランスの騎士たちがエルサレムに移住し、テンプル騎士団を結成しました。その目的は、パレスチナのキリスト教徒が攻撃されたときに彼らを守ることでした。

Flag of the Knights Templar

テンプル騎士団の旗(中央がクロスパティー) Lexicon at English Wikipedia [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html), CC-BY-SA-3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/) or CC BY-SA 2.5 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.5)], via Wikimedia Commons
 

しかし、パレスチナからイスラム教徒を排除することには関わっていませんでした。また、十字軍からユダヤ教やイスラム教の施設を守ることも行っていました。最初の騎士団長はユーグ・ド・パイヤンという人でした。

この騎士団の本部が、古代のソロモンの神殿(テンプル)があったとされる場所の近くに置かれていたことが、テンプル騎士団という名前の由来です。

 

騎士団のメンバーの大部分は、勇敢であるばかりか高潔であるという評判が広まり、カトリック教会から公認されたこともあり、テンプル騎士団に入ることを志願する人が多数に上りました。

また、その人道主義的な活動は多方面からの支持を受け、テンプル騎士団は多くの国にまたがる巨大な組織に成長します。

 

テンプル騎士団のメンバーはキリスト教徒だったのですが、十字軍の活動とは一線を画し、十字軍によって行われているイスラム教徒の虐殺を非難していました。

また、イスラム教の学者たちと密接に交流し、多くの知識を受け取っていました。当時のイスラム世界は、あらゆる分野で西洋よりもはるかに進んでいたのです。

イスラム教の学者たちからテンプル騎士団へ、錬金術、秘伝哲学、数秘学、象徴学などの知識がもたらされました。

またテンプル騎士団の中枢の人たちは、ユダヤ教の指導者たちとも密接な関係を保っていました。

 

以上のご説明で、十字軍とテンプル騎士団は、性質が全く異なるということがご理解いただけたことと思います。

十字軍は多くは、ほとんど何の訓練も受けていない一般の人たちで、信仰心は強い人が多かったようですが、教育はほとんど受けていませんでした。そして、宗教ではなく、政治と経済の利害関係に基づいた命令を受けている指揮官たちに率いられていました。

一方で、テンプル騎士団のメンバーは、よく訓練を受けた騎士などであり、異文化に深い理解を示し、他の宗教に寛容であり、キリスト教とイスラム教の間の戦いが収まり、あらゆる宗教が和解することを望んでいました。また、カトリック教会に無条件に従う集団ではありませんでした。

Jerusalem Al-Aqsa Mosque BW 2010-09-21 06-38-12

アル=アクサー・モスク。このモスクはテンプル騎士団の設立当初の本部の横にあった。古代のソロモンの神殿(テンプル)があったとされる場所に建てられており、テンプル騎士団の名前の由来になった。 By Berthold Werner (Own work) [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html) or CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons

 

このようなとても進んだ考え方を持つ人たちが、当時の権力者から憎悪されるというような事例は、人類の歴史の様々な場面に見うけられます。

他の宗教への寛容や異文化についての理解でも、テンプル騎士団は進んでいましたが、それだけではありませんでした。彼らによって、国際取引を行うことができる銀行システムが歴史上初めて作られたことが知られています。

このシステムによって、テンプル騎士団は莫大な財産を手に入れていました。

 

当時フランスは、国の財政が危機に瀕していました。フランス王フィリップ4世(フィリップ端麗王)は、テンプル騎士団の進んだ考え方を憎悪しただけでなく、ローマ法王を利用して、その財産を手に入れることを決断します。

フィリップ4世の策略により、テンプル騎士団には異端の嫌疑がかけられ、当時の騎士団長ジャック・ド・モレーやメンバーの一部は、宗教裁判を経て火あぶりの刑になります。そして騎士団の活動は1311年に停止されました。

 

さて、最初の質問に戻ります。テンプル騎士団とバラ十字会にはどのような関係があったのでしょう。

先ほどお話ししたように、テンプル騎士団の人たちは、錬金術、数秘学(宇宙の秩序の基礎としての数の意味を研究する学問)、象徴学に深い関心を持っていました。

さらに、ユダヤ教の秘伝哲学、キリスト教のグノーシス派の思想も研究していました。これらの分野はまさに、中世から近世のバラ十字会員が主に研究していた分野と同じです。

 

テンプル騎士団の良く知られている象徴は、クロスパティーと呼ばれる赤い末広がりの十字なのですが、騎士団の中枢のメンバーは、自分たちの秘密の象徴としてバラ十字を用いていたことを示す文献がいくつか残されています。

ですから、当時のバラ十字会とテンプル騎士団は密接に関わっていた可能性があります。

 

フランスの社会学、哲学、宗教史の専門家であるフレデリック・ルノアーはこう語っています。「ソロモンの神殿、あるいは古代エジプトにさえ遡ることのできる秘伝哲学の知識が、テンプル騎士団を通してバラ十字会に伝わったのであろう」。

実際にも、当会に伝えられている用語や式典、考え方の多くに、テンプル騎士団からの影響が見られます。

何世紀も昔のことなので、謎に包まれている部分も多いのですが、知られている情報は以上のようなことであり、テンプル騎士団からバラ十字会には、さまざまな知識や伝統思想が伝わったのだと推測されています。

ポルトガルのトマールに残るテンプル騎士団の城

ポルトガルのトマールに残るテンプル騎士団の城

 

ここで、ひとことお断りしておかなければなりません。私やバラ十字会は、今までのようなご説明で、現在のカトリック教会のことを非難しているわけではありません。

ただ、数世紀前の人類の歴史に起こった悲しいできごとのことをご紹介しています。

 

このブログで、ときおり話題にしていることですが、バラ十字会AMORCの世界中の会員には、カトリック教徒の方々も含む、あらゆる宗教を信仰する方々がいて、またもちろんですが、宗教を信仰していない方々もいます。

そして、会員の間には、宗教的な立場の違いを超えた寛容の精神と友愛が実際に成立していますし、この状況が世界のすべての人たちに広がることを心から望んでおり、そのことを活動の目標のひとつにしています。

ですから、バラ十字会は事実上、テンプル騎士団の理念を受け継いでいるとさえ言うことができます。

 

最後に、もうひとつご紹介しておきたいことがあります。テンプル騎士団の中枢の人たちは、ユダヤ教とキリスト教の秘伝哲学のことを特に重要な知識だと考え、熱心に研究していました。

ユダヤ教の秘伝哲学はカバラと呼ばれますが、1ヵ月ほど前に下記の記事で、このテーマについて簡単なご紹介をしました。

参考記事:『カバラと生命の樹について

https://www.amorc.jp/blog/?p=1713

 

これらの秘伝哲学は、バラ十字会の哲学にとって欠かせない要素になっています。

しかし、バラ十字会以上に、テンプル騎士団の哲学を専門に受け継いでいる団体があります。

それは、「伝統マルティニスト会」(Traditional Martinist Order)と呼ばれる哲学団体です。

 

1931年にフランスでオーギュスタン・シャボソー(Augustin Chaboseau)が創設したこの会は、「知られざる哲学者」という異名を持つルイ・クロード・ド・サンマルタンの思想を通して、テンプル騎士団の哲学を継承しています

伝統マルティニスト会は、残念ながら日本では活動していませんが、バラ十字会AMORCは、この会の考え方と活動に賛同し、世界中でこの会を後援しています。

 

テンプル騎士団をテーマに、今回はかなり立ち入った話題についてお話をさせていただきました。

ご参考になったと感じていただけた部分があれば、とても嬉しく思います。

 

最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。

では、また。

 

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松尾芭蕉の本音と建前

2018年3月16日

 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

 

東京板橋は、昨日は南風が吹いて、汗ばむほど暖かかったのですが、今日は打って変わって冷たい雨が降っています。

そちらは、いかがでしょうか。

 

さて、日本の俳句はこの地球上で最も短い形式の詩です。日本語以外の言葉でも、俳句を鑑賞したり詠んだりすることが、世界中で楽しまれているそうです。

松尾芭蕉の有名な句「古池や蛙飛び込む水の音」は、インターネットで調べると小泉八雲さん(Lafcadio Hearn, 1850 – 1904)によって

Old pond / Frogs jumped in / Sound of water.

と訳されていました。

 

俳句から受け取る感動を、言語を超えて他の国の人と分かち合えることは、興味深く、また、とても素晴らしいことではないでしょうか。

 

山形県に住む私の友人の山下さんから、松尾芭蕉の俳句についての文章を寄稿していただきましたので、ご紹介させていただきます。

 

▽ ▽ ▽

 

記事:『松尾芭蕉の本音と建前』

バラ十字会日本本部AMORC 理事 山下勝悦

バラ十字会日本本部AMORC 理事 山下 勝悦

 

江戸時代の俳人、松尾芭蕉が自身の紀行文『奥の細道』で詠んだ句のひとつに「五月雨を集めて早し最上川」が有ります。

実は、この句を詠んだ場所とされる山形県大石田(おおいしだ)では「五月雨を集めて涼し最上川」が一般的に通用しています。

芭蕉も最初は「涼し」と詠み、後に「早し」と詠み変えたのだとか。

 

今では「早し」と詠むのが一般的となっていますが、私個人としては「五月雨を集めて涼し最上川」の句の方がすっきりとしていて好きなのですが。

この文章をお読みの皆さん方はどちらがお好みでしょうか。

今回はこの句に関するちょっと楽しい(笑える)話です。しばしのお付き合いを。

夏の最上川(大石田)

 

私が四十歳の時ですからちょっと昔の話しになります……。

町友会の仲間のT君と夏祭りの寄付のお願いに町内を廻っていた時のことです。寄付のお願いは行く先々で臨機応変な対応が要求されます。

何しろ「待ってました。良い話し相手が来た!!」とばかりに世間話の相手をすることになったりする事がたびたびあるものですから。

その時はどんな話題にも応対(対応?)せねばなりません(でも、楽しかったです)。

 

そんなある日、二人で寄付のお願いにM氏のお店に行った時のことです。

M氏は文才豊かな著名人です。さて、このM氏にどう対応したものかと……。覚悟を決めて、まずはともあれ店内の事務所に。

 

すると、M氏が座る椅子の後ろの壁に芭蕉の「五月雨を集めて涼し最上川」の句が書かれた色紙が掛けられています。

良いもの見つけました。さっそく、M氏に「涼し」と「早し」の件を尋ねてみました。

するとM氏、満面の笑みで、「これは私個人の説なのですが」と、前置きの後、こんな話しをしてくれました。

Basho by Morikawa Kyoriku (1656-1715)

松尾芭蕉と曾良 By Morikawa Kyoriku (1656-1715) [Public domain], via Wikimedia Commons

 

芭蕉が奥の細道の旅で大石田に入り最上川で船に乗ったのは六月(新暦で七月)。

その時期には最上川は文字通り五月雨を集め、さぞかし流れは早かったはず。

地元の人たちには毎年のことで何のこともなかったでしょう。

 

しかし、芭蕉はとにかく怖かったのではないでしょうか。船縁にしがみ付き、恐怖で顔が引きつっていたのではないかと。まさに「集めて早し」だったでしょうね。

しかし、芭蕉が句会の席で「早し」と詠んだのでは同席した人達から「芭蕉翁は船上で震えていた、必死になって船縁にしがみ付いていたなどと後々まで言われるのでは」と。

そこで芭蕉はプライドを優先し、文字通りの涼しい顔で「五月雨を集めて涼し最上川」と詠み、後ほど「早し」に詠み変えたのではという説でした。

 

そこまでは私は黙ってうなずきながら聞いていたのですが、M氏が最後に何か喋ろうとした矢先に……ついうっかり。

「なるほど…つまり…本音と建前ですか」。次の瞬間「しまった~!!」と思いました。

恐る恐るM氏を見ると、口をへの字に曲げ、苦虫を噛み潰したような顔、さらにその目は「それは私が言おうとしていたセリフです(怒!!)」と言っていました。

 

△ △ △

 

下記は、前回の山下さんの記事です。よろしければ、どうぞこちらもお読みください。

参考記事:『頑固おやじの反戦メッセージ

https://www.amorc.jp/blog/?p=1680

 

今日はこの辺りで。

また、お付き合いください。

 

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神秘学について

2018年3月9日

 

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

東京板橋では、サクラソウや桃の花をたくさん見かけるようになりました。

 

いかがお過ごしでしょうか。

 

先日、高校の同窓会に出席したときに、久しぶりに再会した親友に、こう言われました。

「おお、こんばんは。フェイスブックで活躍だね。ホームページも見たよ。なかなかいい感じだけど、神秘学って言うところが何となく怪しいかな。」

 

確かに、「神秘学」(mysticism)あるいは「神秘哲学」という言葉を何となく怪しく感じる人は多いようです。

 

まあ、無理もないことなのですが、事情を知ると意見が変わる人も多いのです。

たとえば、今私が座っているデスクの後ろの本棚には、井筒俊彦さんという哲学・文化研究の大家が書いた「神秘哲学」という本があります。

この本を読むと、ソクラテス、プラトン、アリストテレスなど、西洋の哲学の源流が、まさに神秘学にあたるということが分かります。

ですから、「ヨーロッパの伝統的な哲学」と「神秘学」はほぼ同じ意味だと考えることができます。

 

神秘学とは何かという説明は、さまざまな切り口から始めることができます。当会のフランス代表が書いた「神秘学について」というブログ記事では、「神秘学」という言葉の由来から説明が始まっています。

今回、この記事を日本語に初めて翻訳しましたので、ご紹介させていただきます。

 

▽ ▽ ▽

 

バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表セルジュ・ツーサンのブログ

記事「神秘学について」

バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表セルジュ・ツーサン

Serge Toussaint

 

「神秘家」(mystic)という言葉を用いて、謎めいた人や奇妙な人を指したり、ひどい場合には、現実感覚を失った偏った考え方をしている人のことを意味したりするジャーナリストやコラムニストがいます。

もちろん、このような意見に私は同意していませんが、残念ながら「神秘家」という言葉が、軽蔑的な意味や否定的な意味で用いられることが時として見うけられます。

 

そこで、「神秘家」という言葉の本来の意味を、その語源から考えてみましょう。「神秘学」(mysticism:神秘哲学)という言葉は、ギリシャ語の「ムスティコス」(musticos)に由来します。

「ムスティコス」は「人生の秘密」、より広く言えば「人生の秘密について調べること」を意味します。

ですから神秘家とは、人生の秘密に興味を持ち、物事がなぜ、どのようにして起こるのかを理解しようとしている人のことを指します。

僧院で本を読む子供の僧侶

 

神秘家と、この語の本来の意味で呼ばれる人たちの多くに共通している特徴は、人生について、宗教というよりはむしろスピリチュアルな(spiritual:非物質的な領域が存在すると想定し、それを重視する)取り組みをしていることです。

つまり、このような人たちは、ソウル(魂)と神が存在すると考えていますが、神のことを、人格を持たない絶対的な知性だと理解しています。

さらに、宇宙と自然界と人間はこの知性に満たされていて、この知性は、物質的な法則と非物質的な法則として表れていると考えています。

 

神秘学的な見方からいえば、これらの法則を学び、それを活用し、それに沿うように生きることが、私たちの誰もが望んでいる幸福を実現するための最も確実な方法です。

そして、私たち人間の大部分が幸せでないという現状は、私たち人間がこれらの法則に無知であり、あまりにも頻繁にそれに違反しているということがまさにその原因です。

 

一部の人の想像とは異なるかもしれませんが、神秘学の探究を行っている人たちの大部分は、バランスの取れたごく普通の生活を送っています。

さらに言えば、このことは神秘学の探究にとって必要不可欠なことです。

というのも、神秘学は社会から遠ざかったり現実から逃避をしたりすることを意味しておらず、それとはまったく反対に、神秘学が意図しているのは、他の人たちとの交流を通じて個人が内面的に進歩するのを補助することだからです。

ですから神秘学は日常生活のことを、役に立ち必要不可欠な経験の場だと見なしています。

一緒に本を読む3人の子供の僧侶

 

このことはまさに、バラ十字会AMORCの世界中の会員の大部分が共有している見解です。

「神秘家の頭は天空にあるが、足を大地につけている」という古くからのことわざも、このことを表しています。

 

ちなみに私は神秘学のことを、スピリチュアリティを探究する(内面の崇高さを究めようとする)行いの中でも極めて優れた種類の探究のひとつだと考えています。

なぜなら、神秘学とは単に神を信じることではなく、先ほどご説明したように、神(人格を持たない絶対的な知性)が私たちの周囲に表現しているさまざまな法則を理解することだからです。

別の言い方をすれば、神秘学とは、宇宙(と神)を理解するためだけでなく自身を理解するための知識です。

さらに、私たち人間は自分の運命をコントロールすることができ、自分の望みにできるだけ合致するような人生を実現することができるということを、多くの神秘家が確信しています。

もちろんこの実現のためには、自分の考え、発言、行いをさまざまな法則に沿うように変えていくことが必要になります。

雨の日に室内で本を読む女性

 

この文章の結びとして、優れた科学者であり真の神秘家であったアルバート・アインシュタインの言葉をご紹介したいと思います。

「我々が経験できる最も美しく、最も深遠な感情は神秘の知覚である。(中略)私たちにとって計り知れないことが実際に存在し、最高の英知かつ燦然(さんぜん)たる美として現れていて、私たちはその最も粗野な部分しか理解することができない。この知識、この感覚こそが真の経験すべての核心である。」

 

バラ十字会AMORCフランス本部代表
セルジュ・ツーサン

 

著者セルジュ・ツーサンについて

1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。

多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。

本稿はそのブログからの一記事。

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以前にこのブログでは、ルドルフ・シュタイナーが神秘学をどのように捉えていたかということをご紹介しました。この記事も神秘学とは何かをご理解いただくためのご参考になること思います。

参考記事:「シュタイナーと神秘学

 

 

では、今日はこの辺りで。

また、お付き合いください。

 

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