こんにちは、バラ十字会の本庄です。
今回は、脳に秘められている可能性について、作編曲家でベーシストの私の友人から寄稿がありましたので、ご紹介します。
脳に眠る無限の可能性
先日、NHKのFRONTIERSの「あなたの中に眠る天才脳」という番組でサヴァン症候群について興味深いことが紹介されていました。 今回は、その内容を元に、考察してみたいと思います。
サヴァン症候群
皆さんはサヴァン症候群というものをご存じでしょうか?
ある特定の分野の記憶力、芸術、計算などに高い能力を示す人たちがいます。
たとえば、
・風景や写真を見ただけで細部にわたり緻密な絵を描ける
・初めて聞いた音楽を再現できる
・短期間で外国語を習得できる
・ランダムな年月日の曜日を言える
・素数と約数を瞬時に判断できる
などの能力を持つ人たちが知られています。
このような人たちが、絵を描いたりピアノを演奏したりする様子はテレビなどでもよく取り上げられているので、見たことがある皆さんも多いことと思います。サヴァン症候群の多くの人たちには、知的障害や自閉症などの発達障害等が見られます。
しかし、これとは異なり、頭部への衝撃や病気などにより、後天的にサヴァン症候群と同じ能力を持った人たち(獲得性サヴァン症候群)もいます。
そして、現代では研究が進み、これらのことについて様々なことが分かってきました。
左脳と右脳
サヴァン症候群の原因には諸説ありますが、脳の特徴としては、サヴァン症候群の人は、左脳よりも右脳が少し大きく、右脳が優位であることが挙げられます。
その結果、言語などを司る左脳の活動が制限され、芸術や直観的な能力を司る右脳の活動が活発になり、サヴァン症候群の特徴的な能力が発揮されるようになるとも考えられています。
このことは、ある女性の数奇な人生からも推察されます。
彼女は先天的なサヴァン症候群で、4歳にして写実的な絵を描くことができましたが、自閉症で言葉に不自由していました。
そして幼い頃は、その才能により、天才的な画家になると周囲も期待していました。
その後、彼女は自閉症を改善するトレーニングにより、言葉の問題を克服しました。
しかし、その結果どうなったのかというと、彼女はサヴァン症候群特有のその描写力を失うことになり、20歳の頃には普通の幼稚園児が描くような絵しか描けなくなってしまいました。
このように、サヴァン症候群の能力は、右脳がある種の能力を獲得したというよりも、左右の脳のバランスが崩れることにより、右脳が元々持っていた能力が解放されたと考えることができます。
そして、どの部分が解放されたのかによって、その能力に違いがあるようです。
脳の潜在的な能力を制限する「言語」
たとえば、サヴァン症候群の人が絵を描くときは、何を描いているのかなどは考えないそうです。
通常、私たちが絵を描くときは、大抵、「風景を書いている、大きなビルが5棟あり、その下には高速道路が走り…」などと考えて描きます。
しかし、サヴァン症候群の人は、見たありのままを描くだけだそうで、それ以外に本人たちにも説明できないそうです。
私たちは「言語」に重きを置いているため、たとえば、「飛行機、人物、スーツケース」が映った一枚の写真を見て、次に飛行機の部分が少し変わった写真を見ても、たいていの人はその違いに気づきません。
これは、多くの人が写真をそのまま覚えているのではなく、「飛行機、人物、スーツケースが映っている」と「言語化」して覚えているので、「人物」がいなくなった場合には気が付きますが、飛行機が少し変わっただけでは、頭の中の言語化された飛行機は、どちらの写真でも「飛行機」のままなので、その変化に気づきにくくなります。
これは、私たち人類が「言語」を手にした結果、身の回りのものに名前をつけ、その名前によって物事を認識して脳の処理を簡素化しているからです。
言い換えれば、「世界を名前で認識している」とも言え、逆に名前のないものは、視覚において認識することが難しくなるのかもしれません。
古代の壁画
下の絵は、フランス南部アルデシュ県にある「ショーヴェ洞窟」に描かれた壁画で、約3万2000年前のものと考えられています。
とても写実的でが、サヴァン症候群の人たちが描く絵ととても似ているそうです。
このことから、この壁画を描いた人たちは、簡単な言葉はあったとしても、まだ今日のような言語を獲得していなかったのではないかと考えられています。
そうすると、何万年も前の古代の洞窟壁画などに共通するその芸術性の高さは、言語を獲得する以前の特徴である可能性があります。
日本でも縄文土器と弥生土器の間には、その複雑さや芸術性においてかなりの差がありますが、ひょっとすると、これは言語の獲得と関連があるのかもしれません。
余談ですが、縄文土偶などは「植物の精霊」をあらわしているという説がありますが、獲得性サヴァン症候群の人の中には、目に映るものがフラクタル図形で見えるという人もいます。
また、作曲する際に、目の前に白と黒の四角形が飛び回り、それを楽器で弾くだけという人もいます。
共通するのは、サヴァン症候群でない人が見ているものとは異なるものが実際に見えているということです。
ですから、言語を獲得する以前の人類と今の人類とでは違うものが見えていた可能性もあり、それが精霊信仰などの源泉となったのかもしれません。
「言語」によって得たもの、失ったもの
現代人にとっては、視覚の記憶力よりも、言語を獲得したことによる恩恵の方が大きいものと思われますが、この世界に「名前を付ける」ことによって失われたものと、得られたものの両方があるようです。
言語を発達させることにより、左脳の活動が活発になって右脳の働きを抑え、体系的に物事を分析したり、コミュニケーションしたりすることを円滑にしています。
しかし、「言語化」という「ラベリング」をすることにより、その現実的な「存在」をある「簡素化された存在」に脳の中で置き換えてしまい、その存在自体の本当の姿を見られなくしているのかもしれません。
すべてのラベリングを無くした世界は、果たしてどのような世界として自分の目に映るのか、とても興味深いことではないでしょうか。
再び本庄です。言語によるラベリングで私が最初に思い出すのは、虹の色の数についての話です。
虹は空気中の水滴によって太陽光が屈折してできるので、その色の変化は物理的には連続しています。つまり、本来は色と色の境目はないはずです。ところが、赤色、だいだい色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色という言葉があるので、7色に見えているという説があります(別の説もあります)。
あと、植物を育てていて実感することがあるのですが、根、幹、枝、茎、葉は、はっきりとした境目がなく連続的に変わっている場合がよくあります。
言葉によるラベリングという制約から解放されると、これらはいったいどのように見え、感じられるのでしょうか。興味深いことです。
下記は前回の渡辺さんの記事です。
記事:『三という数が持つ神秘性|統一体を分割するという考え方、四大元素、陰陽五行』
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第3号:学習の4つの課程とその詳細な内容、古代の神秘学派、当会の研究陣について
執筆者プロフィール
渡辺 篤紀
1972年9月30日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部下部組織(大阪)役員。ベーシスト。 TV番組のBGM、ゲーム音楽の作編曲のほか、関西を中心にゴスペルやライブハウスでの演奏活動を行っている。
本庄 敦
1960年6月17日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部代表。東京大学教養学部卒。
スピリチュアリティに関する科学的な情報の発信と神秘学(mysticism:神秘哲学)の普及に尽力している。
詳しいプロフィールはこちら↓
https://www.amorc.jp/profile/