最終更新日: 2026/07/10

記事:『非暴力への呼びかけ』

バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表セルジュ・ツーサン
バラ十字会フランス本部代表セルジュ・トゥーサン

まえがき

多くの社会学者によれば、私たちが生きている社会では、すべての国でますます暴力がはびこり、殺人、犯罪、あらゆる種類の暴行の件数が増え続け、犠牲者と悲しみに暮れる家族が、その後に残されています。大学、高等学校、専門学校、その他の学校などが混乱に巻き込まれ、本来平和で安全であるはずの教育機関が、今やハラスメントや脅迫に始まり、恐喝や殺人に至るまで、ほぼ毎日暴力事件が発生する現場になっています。

明らかな証拠があるにもかかわらず、こう主張する人がいます。現代社会は数十年前と比べて暴力的になっているわけではない。もしそう見えるとしたら、それはメディアが多くの視聴者、読者、ネットユーザーなどの病的な関心対象を知り、暴力に焦点をあてて、自分たちの報道のネタとして利用しているからだと。私の考えでは、この見解には重大な誤りがあり、よく言えば愚鈍な理想化、悪く言えば無責任なひとりよがりです。

父親と手を繋いでいる子供

暴力の原因

このように暴力が広範囲で増えていることに直面して、劇的で憂慮すべきこの状況の原因は何だろうかと多くの人が疑問に思っています。一般の人からも、人々を統治するエリート層からも数多くの理由が挙げられています。社会にはびこる貧困、教育の失敗、不平等、不正義、差別、欲求不満などです。確かに、これらは暴力を生じさせる要因でしょう。しかし最大の原因は、テレビ、映画、インターネット、ビデオゲームで美化されている暴力自体にあると私は考えています。

暴力が表現された映画やビデオゲームは、それを視聴したりプレーしたりする人から、すべての人間の持つ潜在的な暴力願望を表面化し、取り除き、暴力が実行に移されることを防げるという点で役に立つと主張する心理学者がいます。しかし私の意見では、仮想空間における暴力は、社会に存在する暴力を存続させ、悪化させ、常態化させるだけであり、大きなスクリーンや小さなスクリーンで見た場面に触発されて犯罪や傷害事件の一部が起きていることは明らかです。それらが発散の手段として機能しているというのは、ばかげた主張にあたると私は思います。

暴力を根絶するためには、社会的な苦難、教育の失敗、不平等、不正義、差別、欲求不満などと闘うだけでは不十分です。それに加えて、映画やその他の音声・映像メディアにおいて、暴力が蔓延しないようにすることが必要です。確かに、この手の映画を見たり、暴力的なビデオゲームをプレイしたりすることを強制される人はいませんが、そのようなものがひとたび世間全体に提供されるならば、数千、いや数百万の人(成人、ティーンエイジャー、子供)がそうするだろうと想定しなければなりません。そして、それは彼ら自身と社会全体に、マイナスのあらゆる結果をもたらすことになります。

職場で電話の相手に向かって怒鳴っている男性

テレビ、映画、その他の映像メディア上の暴力描写を減らすためには、どのような対策が取れるでしょうか。理想的には、プログラマー、プロデューサー、監督、俳優、デザイナー、その他の関係者全員が、暴力を美化し、ありふれたものにすることに自分たちが加担していることに気づき、各々が自分の立場でそうした行為を止めることです。残念なことに、暴力はマーケティングツールとなっていて、それを表現する人のすべてが、そこから金銭的な利益を得ています。ですから、暴力が私たちの画面から消えるためには、視聴というその「消費」、特に若者によるその消費を減らすようにしなければなりません。ですから当然、教育という問題全体を取り上げなければなりません。

現状を見ると、暴力があらゆる国、あらゆる社会階層に蔓延する文化となっていることが否定できません。最強の者、最も力を持っている者こそが優れているのだという誤った法則に基づいて、暴力への崇拝は様々な形をとり、体と心の両方を攻撃しています。暴力が、かつてないほど、人間の尊厳と誠実さを侮辱しています。癌のように、それは社会構造を蝕(むしば)み弱体化させ、身を守るという反応や緊張を必然的に引き起こし、「共に良く生きる」ということを阻害します

非暴力の文化を促進する

この暴力の文化に終止符を打つには、非暴力の文化を促進する以外に解決策はありません。薔薇十字団は、ユネスコ精神の父と今日みなされているコメニウスのように、またバラ十字会AMORC(訳注)の著名なメンバーであったニコライ・リョーリフのように、常に非暴力の文化の醸成に力を尽くしてきました。しかし誰が何と言おうと、この役割を最も果たすべきなのは両親です。もちろん、教師も主体的に関わっていると感じる必要がありますが、教師の主な役割は指導することであり、教育することではありません。子どもや青少年への教育の負担が教師にとって過大なものになっているのは、多くの親が残念ながら教育における責任を放棄しているか、教育に必要な指針を失ってしまっているからです。

訳注:20世紀初頭に神秘家のハーベイ・スペンサー・ルイスは、フランスで活動していた薔薇十字団からの指示で、米国でその活動を再興するときに団体にバラ十字会AMORCという名前を与えた。ウィキペディアの日本語ページ「AMORC」を参考(https://ja.wikipedia.org/wiki/AMORC)。

ニコライ・リョーリフを記念する美術館の「平和の旗」
バラ十字会AMORCの会員であった、ニコライ・リョーリフを記念する美術館(ニューヨーク)の入り口に掲げられた「平和の旗」。レーリッヒ(リョーリフのドイツ語読み)条約の定めによれば、「平和の旗」を掲げた建物は、あらゆる戦闘勢力とは中立であり独立している文化施設であることを意味し、そこを攻撃してはならない。
参考記事『ニコライ・リョーリフについて』(https://www.amorc.jp/nicholas-roerich/)

定義から言うと指導とは、子どもたちの一般教養を育むために知識を伝達し、その後、青少年が職業社会に進出するための準備をすることからなります。教育に関しては、その目的は涵養(かんよう:心に中に良いものを浸透させること)です!その中には、市民的、倫理的、そして道徳的価値観が含まれており、それらを通して、家族内、学校内、あるいはより広い社会環境において、他者に対する敬意が示されることになります。そして、これらの価値観の中には、忍耐、勇気、寛容、誠実、そしてもちろん非暴力といった資質が含まれます。

子供たちの非暴力の精神を涵養するために、親がまずすべきことは、家族の中だけでなく、社会生活で交流したり出会ったりする人たちに対しても、非暴力的な行動の模範を示すことです。そのために親は、日々の生活の中でできる限り冷静かつ平和的に振る舞い、挑発や攻撃を受けた場合でも、同様に冷静かつ平和的に対応するよう努めなければなりません。確かに、このことにはかなりの自制心が必要とされます。少なくとも、必要が生じたときに自制心を行使する意思を持っていなければなりません。しかしそれは、費やす価値のある努力ではないでしょうか。

非暴力的な行動の模範を示すだけでは、子供たちに非暴力の精神を涵養するには不十分です。親や、より広く言えば大人は、ソーシャルメディア上で見られるような、言葉による暴力や文章による暴力を含む、あらゆる形の暴力を非難しなければなりません。大人は、暴力を決して容認してはなりません。先ほど暴力的な映画について述べましたが、このことはそれを子供に見せないだけでなく、親自身も見ないことを意味します。同様に、それは暴力行為に関与しないこと、そして子供たちにもそうしないように促すことを意味します。

暴力は、社会を解体に向かわせてしまう力であり、非暴力は、教育によって涵養されるべき徳のひとつであることから、私はギリシャ文明の衰退期の始まりについて哲学者プラトンが語った言葉を思い起こします。「子供を好きなようにさせることに父親が慣れてしまい、息子がもはや親の言葉を意に介さなくなるとき、教師が生徒を恐れてご機嫌をとるようになるとき、そしてついには、若者たちが自らの上にいかなる権威も認めなくなり法を軽蔑するようになるとき、そのときこそ、過度な自由がもたらす、一見すると美しく若々しい熱狂のただ中から、独裁(僭主制)が始まる。」(訳注)

訳注:プラトン著『国家』(第8巻)より

あとがき

この「非暴力への呼びかけ」に表明されている考えに賛同される方は、ぜひこの文章をシェアしてください。また、ご自身に向けて次の誓約をなさってください。「非暴力の文化の出現に向けて努力することが必要であることを認識し、私は自分の行動においてあらゆる暴力を避け、いかなる形であれ暴力を容認しないよう、できる限りのことをすることを誓います。心からの願いを込めて。」

あなたのご健勝を心からお祈り申し上げます

人類という同胞のひとりであるあなたへ

区切り

※上記の文章は、バラ十字会日本本部が発行しているメルマガ「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の記事のひとつです。このメルマガの購読をこちらから登録すると、毎週、配信記事が読めるほか、季刊雑誌「バラのこころ」(神秘・科学・芸術)のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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執筆者プロフィール

セルジュ・トゥーサン

1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。 多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。

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