投稿日: 2025/03/13

以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

儀式用の打楽器、シストルム- バラ十字古代エジプト博物館のコレクションから
Ceremonial Rattle or Sistrum – RC 1731

儀式用の打楽器、シストルム
儀式用の打楽器、シストルム

 一風変わったデザインのこの遺物は、シストルムと呼ばれる打楽器の一種で、とても重要で人々に愛された神聖な道具です。当時の神殿に行くことができれば、用いられているのをきっと見ることができたでしょう。シストルム(古代エジプトの言葉ではsesheshenet)は、音楽と美、愛と戦争の女神であるハトル女神(ハトホル女神)の楽器だとされ、特にこの女神に捧げられた献上品です。極めて重要な宗教的な式典の一部では、儀式を司る神官が語る言葉に合わせて、巫女が祈りを詠唱したり、歌を歌いながらシストルムを鳴らしました。

 このシストルムは、完全な状態では長さ23センチほどであったと思われます。青銅でできた3本の棒が上部の輪の中に取り付けられていました。3本の棒のそれぞれには、5~6個の金属製の円板がゆるく取り付けられており、シストルムを振ると、現代のタンバリンのような音が鳴りました。下部の持ち手の部分のすぐ上にはハトルの顔があり、大きな幅広い襟で縁どられています。ハトルは、端がらせん状に巻き上げられたふさふさとした特徴的なかつらを付けています。そして、牛の耳の形をした両耳は、自然の豊穣さを象徴しています。ハトルの頭の上には、コブラをかたどった蛇形章が付いています。これは、この女神の神聖さと、当時のエジプトの女王とのつながりを象徴していました。エジプトの女王は、ハトルと同等の存在であるとされていました。

 持ち手の正面と後ろ側には縦書きのヒエログリフの文字があります。かろうじて読める文字の意味はこうです。「永遠に若い神、2つの国の支配者、プサメティコス」。背面にはこう書かれています。「太陽の息子、ワヒブ・レー、太陽神レーのごとく、彼に永遠の命が与えられますように」。つまり、この遺物が作られた時代に古代エジプトを支配していた王の名前と称号が記されています。

 この特別なシストルムは美しい工芸品であり、薄い緑色をしたファイアンス焼き(faience)です。ファイアンス焼きとは、石英ガラスを原料とする自己施釉型の陶器です。型に入れて作る方法で作られ、中王国時代から新王国時代(紀元前2000~1000年頃)に用いられたシストルムと同じ様式をしています。エジプト末期王朝時代、特にサイス王朝と呼ばれる第26王朝時代に製作されたものです。当時このシストルムは、デンデラ、テーベもしくはメンフィスの、ハトル女神を祀った大きな神殿で行われた神聖な儀式で、重要な役割を果していました。

緑色のファイアンス陶器、エジプト末期王朝時代、第26 王朝、紀元前664 年~ 610 年頃

当会は神秘学の源流が古代エジプトにあると考え、その研究に注力しています。研究拠点のひとつ、米国カリフォルニア州サンノゼ市にあるバラ十字古代エジプト博物館は、毎年10万人以上が訪れる人気の観光スポットであり、子供向けの考古学のイベントを開催して、地元の教育にも貢献しています。

古代エジプト博物館
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