投稿日: 2025/10/16
最終更新日: 2025/10/17

記事:『カオス(混沌)の中に潜む創造性』

渡辺篤紀
バラ十字会日本本部AMORC下部組織(大阪)役員 渡辺篤紀

私は普段、作曲や編曲などをしていますが、これらの本質である「創造」とは一体何なのでしょうか?

一見、「無」から「有」を生み出すようにも思えるこの「創造」という行為を、私なりに考察してみたいと思います。

創造する方法

「どうやって作曲や編曲をしているのか?」
とよく質問されますが、実はこの二つでは、行っている作業の性質が大きく異なります。

作曲とは、何もないところからメロディーなどを生み出すこと。
一方、編曲とは、すでにあるメロディーや曲想という“制約”の中で新たな創造を行うことです。

DTM(Desk Top Music)の作曲風景

もう少し具体的に言うと…

「絵を描きたい」という衝動だけでは、

  • 何を描くのか
  • 何に描くのか
  • 何で描くのか

といったすべてが自由で、いわば「制約のない状態」からのスタートになります。
一見自由に思えますが、実はこれは“不自由”な状態でもあります。

しかし、たとえば

  • 自画像
  • F6号(410×318mm)のキャンバス
  • 油絵の具

という条件が与えられると、その「枠の中」ではむしろ自由に表現できることもあります。

つまり、「制約のない状態」とは一種の「カオス(混沌)」であり、
「枠の中」とは、ある種の「秩序」を表しているとも言えます。

カオス(混沌)=「めちゃくちゃ」ではない

カオスとは、予測できないほど複雑でありながら、その中に潜むパターンや規則を持つ動的な状態です。

数学的には「初期条件に非常に敏感な非線形システム(例:天気)」として扱われることもあります。

「カオス」の反対が「秩序」であるとすれば…

秩序カオス
安定・制御・再現性がある予測不能・不安定・自由
マンネリに陥りやすい新たな発想が生まれる源泉

と対比することもできます。

私は、「創造性」は、この「秩序」と「カオス」の狭間(はざま)で最大化されると考えています。

すなわち「創造」とは、一見無秩序のように見える「カオス」から「意味のある秩序」を引き出す行為です。

そして、創造性の高さとは、秩序という“既存の回路”から、少しズレた“カオスの回路”へ自由に行き来できる能力であるとも言えるでしょう。

カオスのイメージ

芸術と科学

「芸術」に対して「科学」は、創造性という言葉からやや距離があるように思えます。

しかし実は、どちらもカオスを“材料”として、そこから「秩序(=意味・作品・法則)」を生み出しているという点では同じです。

  • 混沌から「感じ(Feeling / Vibe)」をすくい上げる者たち
  • 無意識のカオス=創造の泉

芸術家は頭で考えるよりも感覚や衝動を信じます。

この衝動こそが、実は「内なるカオス(混乱・未整理な感情)」そのものです。

しかし「制約なき自由」は、ときに創造ではなく“混乱”を招くこともあります。

そのため、多くのアーティストは意図的に制約を設け、「カオス」に枠を与え、その中で秩序を創り出します。

例:

  • 俳句の五七五
  • 音楽の和音やスケール
  • 絵画の技法、など
  • 混沌から「法則」を見いだす者たち
  • 科学とは「カオスの中にパターンを見つけるゲーム」

観察・測定・試行錯誤という行為は、まさにカオスの海を泳ぐプロセスです。

そこから共通する規則を抽出したものが「理論」です。

ニュートンもアインシュタインも、日常のカオスを再構成し、シンプルな数式に結晶させました。

芸術も科学も、「創造」には、カオスへと飛び込む“勇気”と、

そこから意味を掬(すく)い取る“構築力”の両方が不可欠です。

作曲のイメージ

破壊と再構築

そして、冒頭で述べた作曲と編曲の違いを改めて整理すると、

  • 編曲:ある程度枠組みのあるカオスに飛び込む行為
  • 作曲:より深いカオスに身を投じる行為

どちらもカオスから「感じ」を掬い取りますが、私にとっては、作曲の方がカオスの深度が深く、難易度も高いと感じられます。

そして、さらなる創造へと進むためには、掬い取ったものを一度「破壊」し、再びカオスへ飛び込む勇気が必要となります。

人類の発展の歴史も、まさにこの「創造と破壊」の繰り返しの中にありました。

さまざまな楽器と楽譜

結び

「完全な秩序」でも「ただの混乱」でもなく、そのあいだにある「うねり」「ゆらぎ」「ノイズ」の中から何かを見いだす。

私は、それこそが「創造」の本質だと考えています。

「カオス」という無限の境地を恐れず、

「秩序」という安全地帯に閉じこもらない“勇気”を持つこと。

その姿勢こそが、「創造の源泉」なのだと思います。

体験教材を無料で進呈中!
バラ十字会の神秘学通信講座を
オンラインで1ヵ月間
体験できます

無料でお読みいただける3冊の教本には以下の内容が含まれています

当会の通信講座の教材
第1号

第1号:内面の進歩を加速する神秘学とは、人生の神秘を実感する5つの実習
第2号:人間にある2つの性質とバラ十字の象徴、あなたに伝えられる知識はどのように蓄積されたか
第3号:学習の4つの課程とその詳細な内容、古代の神秘学派、当会の研究陣について

執筆者プロフィール

渡辺 篤紀

1972年9月30日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部下部組織(大阪)役員。ベーシスト。 TV番組のBGM、ゲーム音楽の作編曲のほか、関西を中心にゴスペルやライブハウスでの演奏活動を行っている。

無料体験のご案内講座の詳細はこちら