投稿日: 2024/07/12

こんにちは。バラ十字会の本庄です。

山形県に住んでいる、オヤジバンドでの演奏とお祭りが、三度の飯よりも好きだという私の友人から寄稿がありましたのでご紹介します。

区切り
バラ十字会日本本部AMORC 理事 山下 勝悦

某イラストレーターの言葉です「絵画は聴くもの、音楽は観るもの」とか。う~ん・・・何となくわかるような気がするのですが(笑)。

といったことで、今回は摩訶不思議な絵画の話になります。皆さん方も私と共に不思議の旅に出かけてみませんか?

つい先日、6月20日放送のNHK『日曜美術館』を見ての感想です。当日のテーマはシュルレアリスム(超現実主義)で最初の題材はサルバドール・ダリの『ヴィーナスの夢』でした。この作品は彼が好んで描いたモチーフを一枚にまとめた作品との説明でした。

付記:この絵画のカタログをガラ・サルバドール=ダリ財団の下記のWebページで見ることができます。
『ヴィーナスの夢』(カタログ)

ダリ劇場美術館
スペインのカタルーニャ州フィゲラスにあるダリ劇場美術館。この地はダリの故郷であり、舞台下の地下室には彼が埋葬されている。

そしてその内容は、3個の柔らかい時計、燃えるキリン、蟻、顔と胸に引き出しがあり頭にロブスターを乗せた人間・・・等々が描かれています。

私はダリの描くこういった意味不明な絵が、なぜかすごく好きなのです。

ダリ作『ヴィーナスの夢』の構成のスケッチ
ダリ作『ヴィーナスの夢』の構成の筆者によるスケッチ

番組内での説明では、燃えるキリンは宇宙の終末論的モンスターで、戦争の恐怖と不安を背景として生まれたのだそうです。柔らかい時計は彼の妻が食べていた柔らかくなったカマンベールチーズにヒントを得て描いたのだとか。それ以上の説明はありませんでしたが、改めて良く見ますと3個の時計の文字盤の表示がそれぞれ違っている事に気が付きました。

手前の時計の時刻表示は普通に右まわりに1、2、3となっていますが、隣の時計の表示は数字がランダムに並んでいます。ちなみに右まわりに3、8、7、6、10、11となっています。更に3つ目の時計は数字の並び順が逆となっています。つまり右まわりに12、11、10、9、となっています。ここは時間の流れが逆転している? ということでしょうか。このことに関して、ダリはアインシュタインの相対性理論を知っていた(理解もしていた?)。そしてそれが彼の無意識の中で熟成されてこういった形で出て来たのではないでしょうか? といった解説がありました。

ダリ作『ロブスター・テレフォン』(1963年)
ダリ作『ロブスター・テレフォン』(1963年)、Nacaru, Creative Commons licenses by 4.0, via Wikimedia Commons

次は1947年に描かれた『ビキニの3つのスフィンクス』というタイトルの絵画でした。

付記:この絵画のカタログをガラ・サルバドール=ダリ財団の下記のWebページで見ることができます。
『ビキニの3つのスフィンクス』(カタログ)

アメリカが行った核実験(ビキニ環礁)を意識しての作品なのだそうです。

ダリ作『ビキニの3つのスフィンクス』の構成のスケッチ
ダリ作『ビキニの3つのスフィンクス』の構成の筆者によるスケッチ

画面の前部と後部には人間の後頭部と思える絵柄が。加えて頭髪とおぼしきモノは煙のようにも見えます。番組内では煙のように見える髪の毛は原爆のキノコ雲を示唆しているのでは、といった説明がありました。

さらに画面の中央部には向かい合わせに立つ2本の樹木が描かれています。これも人間の後頭部のように見えます。番組内の説明でもそうありました。

さて、ここからは私個人の感想になります。

この絵画を見た瞬間に「ん? これって神話の時代から未来に向かう人類の歴史を描いているのでは?」と思いました。

向かい合わせに立っている2本の樹木はアダムとイブ、そして緑色の葉はエデンの園に私は思えました。そして前面に描かれた人間の後頭部は科学技術の進歩によって作り出された人類の危機(核兵器の開発競争など)を示唆しているのではと思えました。そして山の向こうに描かれた後頭部は未来の世界を暗示しているのでは?

ダリは『人類は未来永劫、危険を孕んだ科学技術の開発(核兵器など)を止めることはないだろう』と言っている様に私には思えました。

でも……ダリは未来の空を明るい色で描いていますよね……

抽象画は解る解らないで観るのではなく、好きか否かで観る(聴く)ものなのだそうです。

これも某イラストレーターの言葉です。

ダリ作『時間のプロフィール』
ダリ作『時間のプロフィール』(1984年)、Julo, Public domain, via Wikimedia Commons

人は絵画を観るとき、音楽もそうですが、どうしても言葉で理解しようとします。これは言語を獲得した人間の自然な行為なのだそうです。

そうです。このブログ(メルマガ)の6月28日の記事、『サヴァン症候群』の話にリンクしてきますよね。

参考記事:『脳に眠る無限の可能性|サヴァン症候群とラベリングからの右脳の開放

こんな逸話があります。アインシュタインは研究に没頭すると一時的にだそうですが言葉が口から出なくなることがあったのだそうです。一過性の失語症を発症する時があったのだそうです。もしかするとアインシュタインは無意識のうちに左脳の活動を停止させていたのではないでしようか。

そう考えてみますと、ダリもこういった精神状態で絵を描いていたのではないでしようか?

サルバドール・ダリの肖像写真
サルバドール・ダリの肖像写真、カール・ヴァン・ヴェクテン撮影(1939年)、Carl Van Vechten, Public domain, via Wikimedia Commons

ということは、私たちがダリの絵を理解する為には左脳の活動を止めなければならない…のかな?

もしそうだとしたら、私のような凡人にはとうてい無理な注文ですよね(笑)。

好きか否かのレベルで楽しむことにします。

区切り

再び本庄です。

宇宙探査がかなり進んだ21世紀の現在、「人類最後のフロンティア」と呼ぶにふさわしいのは「宇宙」というよりはむしろ「人間の心の奥深く」ではないかと、ある人が語っていました。

ダリの作品に登場する品々や生きもの(のようなもの)を見ると、ダリの心の奥深くの何かが湧き上がってきて、このような奇怪なものになっているのだろうなと感じます。

奇妙であったり、懐かしかったり、限りなく貴かったり、時として強烈な感情に結びついている何かで人の心の奥は満たされているのでしょう。

そして私たちは、夢にその一部を垣間見ることがあります。

参考記事:『シャドウとひとつになる

以下は前回の山下さんの記事です。

参考記事:『漫画家、鳥山明さんを悼む|「Dr.スランプ」の思い出』

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執筆者プロフィール

山下 勝悦

1947年11月22日生まれ。山形県村山市在住。バラ十字会日本本部AMORC理事。 おやじバンドでの演奏と地元のお祭りをこよなく愛し、日常生活の視点から、肩ひじの張らない神秘学(mysticism:神秘哲学)の紹介を行っている。

本庄 敦

1960年6月17日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部代表。東京大学教養学部卒。 スピリチュアリティに関する科学的な情報の発信と神秘学の普及に尽力している。 詳しいプロフィールはこちら↓
https://www.amorc.jp/profile/

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