投稿日: 2022/09/09
最終更新日: 2024/05/17

こんにちは、バラ十字会の本庄です。

バラ十字会日本本部代表、本庄のポートレイト

◆ 前回の内容

前回の記事:『胎児と子供は、人類の歴史を繰り返す』(前編)

前回は、人間の胎児の体が、受胎してから誕生するまでに、人類の歴史を繰り返すことと、そして生まれた後の心理の発達も、人類の進歩と同じ道筋をたどるということをご紹介しました。

また、進化心理学は、米国の心理学者マズローの唱えた「欲求の段階説」を出発点として本格的な研究がスタートし、現在ではこの段階説がさらに精密化され、スパイラル・ダイナミクスなどの理論になっていることもご説明しました。

この理論によれば、現在の世界全体では、成人の40%が「神話的秩序の段階」(レベル4)、30%が「科学的達成の段階」(レベル5)、10%が「感受性豊かな自己の段階」(レベル6)にあるとされています。

詳しくは前回の文章を見ていただきたいのですが、「神話的秩序の段階」(レベル4)の特徴的なキャラクターをひとつあげるとすれば、厳格な宗教家という感じです。

「科学的達成の段階」(レベル5)では、心の存在を否定し、あくせく働く科学者というような感じです。

「感受性豊かな自己の段階」(レベル6)では、平等を極度に重視する自然保護活動家というような感じです。

◆ レベル6の欠点とレベル間の争い

このように書くと、やはりレベル6の意識が最も進んでいるように感じられますが、一方では、このレベルに属する人たちは、自己愛(narcissism:ナルシシズム)にとらわれる傾向が、他のレベルよりも強いという欠点が知られています。

また、少し難しくなりますが、社会学者の多くが、レベル6にある重大な矛盾を指摘しています。

このレベルに属する人たちの多くは、世界に対するすべての意見は絶対的なものではないと考えているのですが、その自分たちの意見そのものだけは絶対視しているという自己矛盾に陥るという傾向があります。

さて、日本の現状を考えても、国際社会の現状を考えても、この3つのレベルに属する人たちの集団が、互いに相争っていることに思いあたるのではないでしょうか。

実際のところ、この3つの段階では、価値や欲求の基準、パラダイム(思考の枠組み)があまりに異なるので、互いに他の段階の人を理解することが、極めて困難です。

明るい未来をもたらす(イメージ)

◆ 心理の進化の段階説は、人の格付けではない

しかし、この段階説が、人を格付けするためのレベル分けでないことには、十分に注意する必要があります。

この段階説は、人の価値を判断するためのものではなく、人間のどのような可能性がまだ活用されていないのかということを知るための指針、成長のためのヒントとして用いられるべきです。

また実際のところ、先ほどご説明したように、レベル6の段階も含め、それぞれの段階が、固有の欠点と課題を持っています。

しかし、これらの段階を進んでいくことが、人間の心理に起こっている素晴らしい進歩を示しているということもまた事実です。

前編でご説明しましたが、「神話的秩序の段階」では、人は主に、同じ神話を共有する人にだけ思いやりを示します。「科学的達成の段階」では、世界中の人に思いやりを示します。「感受性豊かな自己の段階」では、地球上のすべての生きものに思いやりを示します。

このように、心理的な成熟とともに、より大きな心の広さと愛を人間が持つようになることが、進化心理学の広範囲で厳密な研究から、はっきりと示されています。

◆ 第7のレベル

スパイラル・ダイナミクスを提唱した米国の心理学者クレア・グレイブス(1914-1986)は、1950年ごろに、第7のレベルが出現したと考えています。このレベルは「統合的段階」と呼ばれています。

このレベルの人たちには、世界をシステムだととらえる特徴があります。全体と部分の間の結びつきを発見することに努力を払い、全体的(holistic:ホリスティック)であることと、さまざま要素が連携していることを理解することが重視されます。

また、このレベルでは思考と感情が密接に結びつき、ひとつの経験になります。

レベル7の段階の意識は、これまでと大きく異なります。このレベルの人たちは、今までにご説明してきたようなレベルが、ひとつ前のレベルを、「含むと同時に超越している」(transcendent and include)ということを実感し、全体的なシステムの進歩にとって、すべてのレベルが必要不可欠であると感じています。

ですから、レベル7の意識の出現は、現在の世界に見られる、典型的な紛争や対立の和解のための重要な鍵になると考えられています。

スパイラル・ダイナミクス
スパイラル・ダイナミクス(再掲載)

◆ 地球、物理学というシステム

ものごとをシステムととらえると、なぜ進化のすべての段階(レベル)が、必要不可欠だと感じられ、そう理解されるのでしょうか。2つのたとえを用いてご説明します。

地球の歴史について学んだ方はご存じのことと思いますが、地球には最初は鉱物だけが存在していました。そして植物が誕生し、植物の一部が動物に進化し、動物の一部が人間に進化しました。

世界を鉱物界、植物界、動物界、人間界の4つの領域からなるシステムだとする考え方には長い伝統があります。当会の学習でも詳しく取り上げられています。

今では、鉱物、植物、動物、人間が共存し、互いに循環させるように物質を交換し合うことで、地球というシステムの全体としての健全性、持続可能性が保たれています。

鉱物から自分たちが発生したからといって、鉱物を劣ったものだとみなす植物はいませんし、植物から進化したからといって、植物を軽蔑する動物はいません。

この4つは、進化という面から見ても意識という面から見ても同等なレベルではありませんが、すべてが地球というシステムにとって不可欠な要素です。

私たち人間は、生きていくために鉱物界、植物界、動物界の3つを必要としています。海、山、森の風景、美しい花、愛らしい動物たちのことを思い浮かべてください。

鉱物界、植物界、動物界が存在するおかげで、私たち人間は自然の多様性を心から楽しみ、それに感謝しつつ、進歩し続けることができます。

地球と四大元素

もう一つのたとえとして、物理学の進歩を挙げることができます。多少難しくなりますが、とても適切な例です。

木から落ちるリンゴと、大砲から打ち出された弾と、惑星の運動が同じ法則によって支配されていることを発見したのはニュートンです。この理論は古典力学と呼ばれます。

19世紀の中ごろは、古典力学と電磁気学(光と磁気と電波の正体を説明する理論)が大成功を収め、物理学者の間に楽観が広がっていた時代でした。世界は、もうすぐすべてが(機械として)説明し尽くされるだろうと思われていたのです。

ところが、地球が太陽の周りを回っているにもかかわらず、どちらの方向に進む光も同じ速さだということが発見され(マイケルソン・モーリーの実験)、物理学者たちに難問が突きつけられます。

この問題を解決するためには、パラダイム(思考の枠組み)の転換が必要でした。東西と南北を分けて考えることができないように、空間と時間は分けて考えることができず、時空という一体のものだという理解が必要だったのです。

アインシュタインはそれを数式化することに成功し、特殊相対性理論を作り上げます。

しかし特殊相対性理論は、古典力学を否定したわけでありませんし、もちろん軽蔑しているわけでもありません。

力、質量、加速度などの概念はすべて古典力学によって作り出されたのであり、その後の現代物理学の理論は、これらの概念を「含むと同時に超越して」います。

また、物体の速さが十分に遅いときには、特殊相対性理論は古典力学に一致します。この意味でも、特殊相対性理論は、古典力学を「含むと同時に超越して」(transcendent and include)います。

ですから、車の速度は光よりも十分に遅いため、車の設計をするときに特殊相対性理論は不要であり、古典力学が今でも使われているはずです。

現在の物理学には、そのほかに量子力学、一般相対性理論などがありますが、いずれもそれ以前の理論を「含むと同時に超越している」のであり、すべての理論が物理学というシステムにとって必要不可欠です。

◆ 含むと同時に超越する

「含むと同時に超越する」(transcendent and include)ということから、なぜ胎児と子供が、人類の進化を繰り返すのかが説明できます。

つまり、前の段階を「含むと同時に超越する」ということが進化の本質であり、この方法以外には、進化の道筋をたどり、現在の状態にたどり着く方法がないからです。

以上のことから考えると、私の想像では、レベル7に達した人たちは、それ以前の段階で手に入れた、自分の中の能力を、今までよりも自在に操るようになるように思われます。

以前のレベルに属するからといって、自分の中の能力を否定的に考えていては十分に発揮できないからです。

ですから「統合的段階」の人は、命が脅かされたときには野獣のような本能を発揮し生き残り、必要なときには、強烈な感情を自己を失わずに爆発させ、

集団に完全に溶け込むことも主体性ある個人であることもでき、他の人の信仰を尊重し、緻密な論理によって行動し、

優しさと愛を生きとし生けるものに注ぎ、不寛容な他の人には、謙虚さと慈悲を持って応じる。

そのようなスーパーマンのような存在が、レベル7に属する、十分に成熟した人のように、私には想像されます。

世界中の子供

◆ 人類史上で最大の転換期

さて、グレイブスによれば、レベル6からレベル7への移行は、人類の心理の進歩の中でも、歴史上で最大の変化になります。

前編でご紹介したマズローの考え方に対応させると、レベル6までのすべての段階は、欠乏欲求(生理的欲求から承認(尊重)の欲求まで)と呼ばれる、得られていない何かに対する欲求だったのですが、レベル7の基礎になっているのは、自己実現の欲求という自分の可能性を発揮したいという欲求にあたるからです。

そこで、レベル1~6はまとめて、第1層(First Tier)の段階、レベル7は第2層(Second Tier)の段階と呼ばれています。

米国の思想家で、スパイラル・ダイナミクスをそのひとつの要素とするインテグラル理論を唱えているケン・ウィルバーは、2016年に書いた本「インテグラル理論を体感する」(原題 ”Integral Meditation”)で、レベル7の入り口に達した人は、世界の人口の5%にあたるとしています。

そして、過去の例から見て、あるレベルの人たちが人口の10%を超えると、社会にそれに相応する変化が起こるということを紹介しています。

レベル5の人たちが人口の10%を超えたときには、世界の多くの国で奴隷制が廃止され、民主国家が成立しました。

レベル6の人たちが人口の10%を超えた国では、環境保護活動が活発になり、フェミニズム運動が起こり、ヘイトクライム関連法が制定されています。

ですから、今後の数十年の間に、世界中で、それらを上回る素晴らしい変化が起こると予想されています。

マズローの欲求の段階説
マズローの欲求の段階説

◆ 人類の明るい未来

2024年の現在、国際社会も国内も、異常気象、テロリズム、ポピュリズムの台頭など、暗い話題でいっぱいです。

ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとパレスチナの争いに衝撃を受け、人類はいまだにこれほど進歩しておらず、過去にも学ばないのかと、暗澹たる気持ちになったと私に話してくれた人がいます。

ですから、進化心理学者が人類の明るい未来を予想しているということを、皆さんにご紹介したかったのです。

しかし、今までのご説明でお分かりになったことと思いますが、この明るい未来にたどり着くまでに、人類は転換期を乗り越えなければなりません。

17世紀前半は、ヨーロッパがレベル4からレベル5への転換に直面していた時期にあたります。奇しくも2022年頃と同じように、パンデミック(このときはペストの流行)が、さまざまな国で起こっていました。

私たちの大先輩である当時のドイツのバラ十字会員(薔薇十字団員)は、3冊の宣言書を発行しました。英国を始めとする各国のバラ十字会(薔薇十字団)は、神秘学派としての活動を通して、この転換がスムーズになし遂げられるために、少なくない役割を果たしました。

私たちもそれにならい、2001年と2014年と2016年に宣言書を発行しました。

(『バラ十字会AMORCのマニフェスト(Manifesto):宣言書のご紹介』: https://www.amorc.jp/manifesto/

そして、おそらくは前回を超える大転換期となるこれからを、人類が乗り越える一助となるために、何ができるかを自問し、活動を続けています。

◆ 意識の進歩の2つの道

ケン・ウィルバーによれば、人間の意識の進歩には、主に2つの方向があります。ひとつは、瞑想などによって目覚めていく進歩の道で、これには近道はなく、大きな成果を実感するためには、地道に何年も練習を続ける必要があります。

一方で、今回ご紹介しているような方向の心理的な発達については、その内容を読んで理解するだけで、進歩が大いに促されます。

ですから皆さんも「スパイラル・ダイナミクス」、「インテグラル理論」などのキーワードをインターネットで検索して、関連する本を読み、人間心理の進化についての理解を深めてはいかがでしょうか。

最後になりましたが、ご紹介です。当会の通信講座には、人間の意識の進歩についての先ほどの2つの道、瞑想と心理的な発達についての多彩な学習と実習が含まれています。

それらは、この重要な時代に自分には何ができるかを知るための材料になります。ご興味のある方は、無料体験を受け付けていますのでお申し込みください。

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