以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。
※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

暗き場所から光の中へ
From Dark Place into the Light
ビル・アンダーソン
By Bill Anderson

科学は最も重要で貴重な我々の財産のひとつである。我々を取り巻く自然界の、並々ならぬ美そのものの正体を、科学は明らかにしてくれるだけでなく、自然界の美と我々との間の、深遠で本質的なつながりも明かしてくれる。そのつながりとは、他のあらゆる生きものと人間に共通する起源、すなわち我々の体内にある諸々の元素である。それら元素は、はるか昔に消え失せた星の中で核融合により作られた。教育とインスピレーションは、我々が世界についてより正しく理解するための最初の一歩に過ぎない。その一歩を経て我々は、すべての人々のために、世界をより良くするための役割を果たすことができる。(トム・クレス、F.R.A.S.)
原理主義(fundamentalism)は現代社会における呪いのようなものです。自分たちが信仰する宗教の聖典、聖書やコーランやトーラー(ユダヤの律法)や、聖なるその他の文献の翻訳が、文字通りに正しく、一言一句違わず、書いてある通りであると固く信じている人たちがいます。そのような人々は、知識の光にほとんど触れることができません。そのため、バラ十字会員のような神秘家たちの寛大で寛容な取り組みは、そのような人たちにとっては、受け入れがたいものです。
バラ十字会員は、混乱した世界の中で、何世紀にもわたって、理解と寛容を導く光でした。科学が発達し、人々の理解力が増すにつれて、バラ十字会の教育の内容も、年を追うごとに進歩してきました。宇宙と私たちが住む地球についての理解が増していくのと歩調を合わせて、バラ十字会は、会員に開かれた精神を持つように、かねてから呼びかけ続け、知識を獲得する努力を怠らないことを奨励してきました。トム・クレスはユーチューブの動画、『アンドロメダの覚醒』(Andromeda’s Wake)の冒頭で、次のように同様のことを述べています。「自身が情報を得ている本が時代遅れになったときには、その本の最新版を私は求めます」。
最近私は、『大衆の異端の誕生』(The Birth of Popular Heresy)という本を読みました。この本は、12世紀から13世紀において、当時の社会に見られた異端者について、聖職者がまとめた手紙と報告を英語に翻訳したものです。汝のごとく汝の隣人を愛せ、反対側の頬を向けよ、汝の敵を愛せ等がキリスト教の教義の核心であるにもかかわらず、これらの手紙には、教会の命じている事柄とは異なる考え方や生き方をしているというだけで罪に問われている同胞の男女に対する憎しみが満ちています。中世のこのような狭い見方と同じ考えを持つ人々が、世界中には今日でも数多く存在しているということを知ると、私たちは衝撃を覚えます。自分たちの「聖典」が文字通りに正しいと信じている人々は、他のいかなる解釈も、その聖典を比喩として解釈することさえも、許そうとはしません。

カタリ派、ワルドー派、ベギン修道女会、パブリカニ派の時代には、教会は自由思想(free thinking:宗教の問題を合理的な方法で考察する思想)を認めず、教会と異なる考えを持つことに対する罰は死刑であるとされ、極めてむごたらしく野蛮な方法で、処刑が行われることもありました。開かれた精神を持つ人々、つまり自分自身で考えることに努め、他の人々も同じようにすることを認めている人々の集団に属していることに、私は心から感謝しています。そうでないとすれば、教育と科学の進歩が妨げられている閉ざされた社会に住むことになります。そして、中世の考え方に戻ってしまい、大量破壊という21世紀の力に、いまだにあこがれ続けることになります。
20世紀と21世紀に、人間の知性が、めざましい飛躍を遂げて進歩したとは言えません。私たちは今日でも、たとえば古代エジプトに住んでいた人々と同じ程度の、生まれつきの知性と知的能力を持っているというのが事実でしょう。肉体的にも神経学的にも私たちは、どちらかと言えば、大して変化してはいません。唯一、まったく異なっている点は、過去においては十分な教育を受けた人々が比較的少なく、一方今日では、人口に対して高い割合の人々が十分な教育を受けているということです。この点について、私はバラ十字会を高く評価しています。バラ十字会は、会員が自身の探究精神を養うことを奨励し、その探究心を広く社会に浸透させるために、できる限りのことを行うよう勧めている教育団体のひとつです。
しばしば引用される例ですが、英国王室天文学者のマーチン・リース卿は次のように言っています。「チンパンジーは量子力学を理解することができない」。チンパンジーは量子力学を理解しようと努力して、それができなかったということではなく、チンパンジーは自身が理解していないのが何かを知ることさえないということに、この一風変わった発言のポイントがあります。チンパンジーは、量子力学というものが存在するのに気づくことさえないのです。人間に関しても同じです。人生には、努力して理解すべき事柄が数多くあります。しかし、その一部を、私たちは存在することすら知らないのです。
人間が恐れるのは、自身が理解できないものであると言われます。自分自身に関連しているすべてのことを知っていると考えている場合に、人は安心していることができます。しかし、“神秘”は、多くの人にとって、そのような安心感に脅威を与えるものです。未知なるものへの恐怖を取り去ること、そして、さまざまな信条を持つ人々に、「まだ人が一度も行ったことのない場所に行きなさい」、「すべての石をひっくり返して」確信にたどり着きなさいと励まし続けることは、バラ十字会の存在意義のひとつです。バラ十字会の学習によって、宇宙の驚異や、大宇宙と小宇宙や、〈自己〉の内部に存在している神秘に対して、心が開かれていきます。

あなたは世界を変えるためのヴィジョンを持っていますか
Do You Have the Vision to Change the World?
世界には3種類の人が存在すると言われています。物事が起きるのを見ている人、物事を起こす人、そして、「何が起きたのだ」と尋ねる人です。ジョゼフ・ラウンツリー公益財団は、「未来の創造者」(visionary)についての、ある論説を発表しました。その中で、財団は以下のように「未来の創造者」のことを定義しています。
- 未来の創造者とは、「なす必要のあることを効果的に行っている」人々を見抜き、組織によってなすことができる変革と同様に、個々人のインスピレーションによってなすことができる変革を高く評価する人のことである。
- 未来の創造者とは、目に見える兆候だけではなく、隠れた原因にも注意を向ける人のことである。
- 未来の創造者とは、人と人が互いに異なっていることに価値を見いだす人のことである。
- 未来の創造者とは、際立った成功を収めるためには、失敗の危険を冒す必要があることを理解し、実際にそのように行動する人のことである。
- 未来の創造者とは、物事をどういう風になし遂げるかということには、多くの場合、何がなし遂げられたのかということと同等の重要性があると認識している人のことである。
- 未来の創造者とは、大胆な人のことである。
これらの定義が示しているのは、根本的な解決策を採ることによって、問題を取り除こうとする姿勢であり、その問題を、扱いやすい問題に思われるようにすることではありません。未来の創造者には、明確な方向性がある一連の目的があり、それらの目的にどのようにして到達するのかを彼らは知っています。彼らは革新的で想像力に富み、自分たちが始めようとしているあらゆる努力において、変化を起こすことができるという十分な見通しを持っています。そしてこのことは、バラ十字会での学びの中に私が見いだしてきたものと良く一致しています。バラ十字会員である私たちは、人と人が異なることを歓迎するどころか、実際のところ、精神を豊かにしてくれる影響を求めて、そのような差異を見いだそうとさえします。普遍的な公正さと正義という最高の理想に合致するように、自分たちが活動していると私たちは考えています。そして、誰かが援助を求めている時に、傍観していることはありません。細かな言葉使いは多少間違っているかもしれませんが、あるグランドマスターの言葉を引用しましょう。「もし、ころんで顔を泥の中に突っ込んだとしても、我々は不運を嘆いて、じたばたすることはない。そうではなく、自力で立ち上がり、泥と水をできるだけ払い落とし、目的を持って自分の旅路を進み続ける。我々は、そのような人々の集まりである」。

最後に、2つの美しい言葉をみなさんにご紹介したいと思います。
「行動を伴わないヴィジョンは単なる夢に過ぎず、ヴィジョンのない行動は、単なる時間の無駄遣いである。行動を伴ったヴィジョンは、世界をも変えることができる。」
― ジョエル・バーカー(Joel Barker)
「皆は私の活動を大海の中の一滴の水にすぎないという。私は大海が水滴からできているのだという。」
- マザー・テレサ(Mother Teresa)
※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。
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第1号:内面の進歩を加速する神秘学とは、人生の神秘を実感する5つの実習
第2号:人間にある2つの性質とバラ十字の象徴、あなたに伝えられる知識はどのように蓄積されたか
第3号:学習の4つの課程とその詳細な内容、古代の神秘学派、当会の研究陣について





