我が家から車で数分の距離のところに道の駅があります。そこでは連日、近隣農家の方々が栽培した採りたての野菜が売られています。
地物のキュウリの販売が始まったと思える頃にカミさんと二人で行ってみました。色鮮やかなキュウリがスーパーマーケットよりも安い価格でドーンと重なって売られていました。そこで手頃な大きさのキュウリを一袋購入。
来たついでにと言っては何ですがお土産品のコーナーにせんべいを買いに行こうとなりました。
すると、入って直ぐのところにいつの間にか下駄の販売コーナーが。
最近の下駄は実にカラフルですね~。木と布でできたビーチサンダルと言った風情でしょうか。
そこで、ふと思い出しました。私には全く記憶が無いことだったのですが、私の姉がある時『こんな事があったね~(笑)』と言って私に話してくれた笑える……話です。
私が子供の頃、小学校に入る前のことです。母親にこんなことを言ったのだそうです。『上のお姉ちゃん二人ばっかり赤い鼻緒の下駄を履いてるのはずるい~』と。つまり、自分も赤い鼻緒の下駄が履きたいと。
かなり強引に迫ったらしいのです。とうとう根負けした母親は私を連れて近所の下駄屋さんに、その店は夫婦二人で営んでいる近所でも評判の店で旦那さんが店の奥で生地を造り、奥さんが店番と鼻緒の取り付けの仕事をやっていました。
下駄屋のおばさん、母の話を一通り聞き終わると何も聞かずに何も言わずに私の足のサイズに合わせて赤い鼻緒の下駄を仕立て上げてくれたのだそうです。
さて、その後どうなったのか・・・!?
私には全く記憶がありません。
姉もその後のことは全く話してくれません。
よっぽどのことがあったのでしょうか(笑)
もう一つ、下駄屋のおばさんのに関しての思い出ではっきりと記憶しているできごとがあります。
私が小学校の二年生くらいの頃のことと記憶しています。
この頃、我が家は国道沿いにありました。
国道とは言ってもまだ未舗装で車などは、ときおり通るだけなので私ら子供達には格好の遊び場でした。
そんなある日のできごとです。大人たちの間に、私ら子供達には理解できない話が広まったのです。
後から聞いたのですが、『小さな身体の巡礼さんがこっちに向かってやって来る』と言った内容の話でした。その時、私ら子供達はなにごとが分からずに道路で走り回って遊んでいました。
驚きました、当の巡礼さん、小学生の私より背の低い方だったのです。歳の頃は分かりませでしたが三・四十代位ではと思えました。
すると、驚いている私らには目もくれず、下駄屋さんの店内に『はい、こんにちは。ちょっと休ませて頂けませんか?』と入って行ったのです。すると着物姿の下駄屋のおばさん、正座したまま静かに一礼すると『どうぞゆっくりと休んでいって下さい』。眉毛一本動かさずの神対応でした。巡礼さんも深く一礼、すぐに二人の会話が始まりました。巡礼さんが身振り手振りを交えながらほっこりとした笑顔で話しています。今までの旅のことなどを話されていたのでしょうね。
しばらくすると、白装束と御高祖頭巾(おこそずきん)に身を包み白い杖を持った巡礼さんが右に左にゆっくりと身体を揺らしながら南の方角からこちら側、つまり北の方角に歩いて来るのが目に入りました。
下駄屋のおばさんもときおり何か話しかけています。
きっと『どちらから来られましたか? これからのご予定は?』などと話していたのではないでしょうか。
今になって思うんです。あの時の光景は観音菩薩と地蔵菩薩の会話だったと。
しばらくすると、巡礼さんゆっくりと立ち上がり、深く一礼の後、店を出て北の方角に向かって歩いてゆかれました。先ほどと同じように小さな身体を右に左にゆっくりと揺らしながら。
あの時の巡礼さん、野垂れ死にを覚悟しての旅だったのでしょうね。
もし、あの時の巡礼さんが今も存命ならばすでに百歳は超えておられることでしょうね。否、もう既に亡くなられているかもしれません。でも私は信じています、あの時の巡礼さんは今も日本のどこかで巡礼の旅を続けておられるのだと。
太っ腹だった下駄屋のおばさんに関しての私の思い出話です。
下記は山下勝悦さんの前回の記事です。
記事:『サルバドール・ダリの絵画を読む(聴く?)』
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執筆者プロフィール
山下 勝悦
1947年11月22日生まれ。山形県村山市在住。バラ十字会日本本部AMORC理事。 おやじバンドでの演奏と地元のお祭りをこよなく愛し、日常生活の視点から、肩ひじの張らない神秘学(mysticism:神秘哲学)の紹介を行っている。