こんにちは、バラ十字会の本庄です。
今週の日曜日は春分の日でしたね。東京板橋では、ソメイヨシノが三分咲きです。
いかがお過ごしでしょうか。
さて、先日見ていたテレビの歴史ドラマに、鎌倉幕府を創設した源頼朝と、頼朝の最初の妻の八重姫が登場していました。
八重姫は架空の人物であるという説もありますが、ある資料によれば、八重姫の父は伊東祐親(すけちか)という、現在の伊東市のあたりに勢力を広げていた豪族でした。
当時は源氏の宿敵であった平家が、まだ権力の中枢にいた頃で、源頼朝は流罪中の身であり、伊東祐親は、流人の頼朝の監視役でした。
このドラマによれば、祐親は、自分の娘が罪人の頼朝と結ばれ、息子の千鶴御前を生んだことに激怒します。また、平家にとがめられることを恐れて、まだ幼い千鶴御前を殺害します。
しかし、不憫に思い、彼の墓として立派な五輪塔を建てます。
皆さんも、きっと五輪塔を見たことがあるのではないでしょうか。この写真は千鶴御前の実際の墓ではありませんが、典型的な石作りの五輪塔です。五輪塔は、五大を意味する五種類の部分からできています。
五大とは、インドの古代思想で森羅万象を構成すると考えられた、地(ち)、水(すい)、火(か)、風(ふう)、虚空(こくう)の5つの要素のことです。
インドで仏教が成立したときに、インドの古代哲学の五大の考え方が仏教に取り入れられ、その後長い歳月にわたって伝えられ、五輪塔が生じたのでしょう。
五輪塔は下から、方形をした地輪、球形をした水輪、角錐台の形をした火輪、半球形をした風輪、宝珠(ほうじゅ)の形をした空輪を重ねて作られます。
五輪塔の形はインドで定められたと言われていますが、実際には日本以外に五輪塔は残されておらず、日本で考え出されたという説もあるそうです。
平安時代の末期から作られるようになり、五つのそれぞれの石に真言が刻まれることがあるなど密教思想と強い関連があるとされますが、真言宗だけでなく、多くの宗派で供養塔や墓として用いられています。
興味深いのは、森羅万象が5つの要素からなるという考え方が、他の様々な古代思想にも見られることです。
古代中国では、森羅万象は、木、火、土、金、水の5要素からなるとされました。これは五行説とよばれています。
五行説は、世界の成り立ちだけでなく人体の働きの説明にもなっています。漢方に詳しい方は、私よりもはるかに良く実感されていることと思いますが、人体の働きをホリスティックに(holistic:全体論的に)把握するための優れた方法です。
たとえば、次のような対応によって人体が捉えられています。木:肝臓の働き、火:心臓の働き、土:脾臓の働き、金:肺臓の働き、水:腎臓の働き。
古代ギリシャや中世のヨーロッパでは、火、空気、水、土が万物を構成する四大元素だとされていました。
古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、四大元素は地上を構成する元素だと考え、これに天上(星々の世界)を構成するエーテルを第五元素として付け加えました。
一方で中世の錬金術師たちは、第五元素のことを、四大元素の精髄(essence:エッセンス)にあたると考えていたようです。
五輪塔の最上にある宝珠の形をした空輪が、第五元素に対応するように思われるのは興味深いことです。
この図は、1785~1788年にドイツのアルトナ(現在のハンブルク市の一部)で発行された『16世紀と17世紀のバラ十字会員の秘密の象徴』という本に登場する図版です(白黒版は下記URLのBOOK1の3ページで見ることができます)。
https://www.rosicrucian.org/secret-symbols-of-the-rosicrucians
左上が火、右上が空気、左下が水、右下が土を表す錬金術の記号で、中央には実験室にいる錬金術師が描かれています。
現代では100種類以上の化学元素が知られています。古代インドの五大や西洋の四大元素は、近代の原子論の劣ったバージョンであると見なされてしまうことが、時としてあります。
古代の人々には精密な実験によって真の元素を発見する能力がなかったため、周囲に見られる自然現象などの主な性質から、素朴な類推によって、世界を構成していると思われる少数の根本要素を想定したという見方です。
しかし、五大や四大元素の象徴としての豊かさや、さまざまな実践での実用性を知ると、このような見方は、古代哲学に対する著しい過小評価であることが分かります。
先ほど中国の五行思想のところでも話しましたが、これらの考え方は、世界(マクロコズム)と人間(ミクロコズム)を全体的なシステムとして捉えるための方法だと考えることができます。
つまり、五大や四大元素は、世界や人体を構成する部品を意味しているのではなく、世界と人体に働いている根本的な原理を象徴しているのだと、とらえることができます。
バラ十字会の哲学ではこの考え方に沿って、土、水、空気、火のことを、四大元素(four elements)ではなく、四大原理(four principles)と多くの場合に呼んでいます。
世界と人体の根本的な原理の例を、ひとつご紹介します。伝説上の鳥フェニックスは、最期が近づくと自ら火の中に飛び込み、そこで焼かれることによって生まれ変わるとされます。
この言い伝えは、火が、世界(マクロコズム)と人体(ミクロコズム)の再生の原理を表す象徴であることを示しています。
四大元素について、それが象徴する働き(原理)をまとめるとこのようになります。
- 土(Earth):力強くする働き(Fortify)
- 水(Water):浄化する働き(Purify)
- 空気(Air):活力を与える働き(Invigorate)
- 火(Fire):再生する働き(Regenerate)
第五元素も付け加えておきましょう。
- エーテル(Ether):統一する働き(Unify)
いかがでしょうか。これら象徴を念頭において、世界と人体という千変万化の大活動について考えてみてください。きっと興味深い思索になることと思います。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
では、この辺りで。 またお付き合いください。
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