投稿日: 2025/06/09
最終更新日: 2025/06/17

以下の記事は、バラ十字会日本本部の季刊雑誌『バラのこころ』の記事を、インターネット上に再掲載したものです。

※ バラ十字会は、宗教や政治のいかなる組織からも独立した歴史ある会員制の哲学団体です。

区切り

音による治療
Healing Through Sound

メグ・ハンプソン
By Meg Hampson

音による治療

私は音楽の理論についてはほとんど何も知りませんが、自分がどんな音楽が好きで、どんな音楽が嫌いかは知っています。そして、ある音が心地良いか不快かを感じ取ることや、ある声に愛情がこもっているのか怒りを含んでいるのかも知ることができます。また私は、音や声が感情に及ぼす影響も感じ取ることができます。音楽の理論を理解していなくても、音楽の素晴らしさを味わう妨げにはなりません。

音楽は、他の何にもできないやり方で人の心を動かします。さまざまな音や拍子、リズムやハーモニーは、それぞれに異なる感情の旅へと、私たちを誘ってくれます。音楽は、一度も訪れたことのない場所に私たちを連れて行ってくれますし、甘く優しい声の響きによって、あなたの心を完全に溶かすこともあります。

古くからさまざまな伝統思想に属する神秘家たちが知っていた、すべてのものが振動によって成り立っているということが、今では科学によって証明されつつあります。物質の世界や精神の世界、感情やスピリチュアルな領域に存在するすべてのもの、自分の中にあるものでも外にあるものでも、私たちが知覚するすべては、振動を通して意識に入ってきます。これらの振動の振動数の違いによって、五感などの働きによる物体の知覚や、非物質的な性質を持つ感情の知覚など、知覚にさまざまな種類があることを説明することができます。

人間の胎児の聴覚神経の端部と内耳の骨は、受胎後18週目までに十分に発達し、聴覚が働くようになります。したがって、母体内で胎児は主に聴覚によって情報を得ます。母親の鼓動や臍帯を流れる血流音などの多様な音で満たされた真っ暗な環境に、かつては私たちの誰もが浮かんでいました。受胎後25週目になると、胎児は母親の呼吸を、呼気と吸気の柔らかいヒューという音として聞き始めます。それは寄せては返す、遠くの海岸の波の音のようです。母親の声は、高まったり静まったりして、イルカの鳴き声にやや似ており、さらに家族の声も聞き始めます。これらが、胎児が聴く主な音であり、その背後にある他の音は、あいまいな状態で胎児に届きます。

「初めに〈その言葉〉(the Word)があった。〈その言葉〉は神とともにあった。〈その言葉〉は神であった」。聖書のこの一節は、あらゆる創造の可能性、存在することになる可能性のすべてが、神すなわち宇宙精神の中に潜んでいたことを示しています。〈その言葉〉は振動を通して創造されたものとして現れ、〈神の精神〉によって〈宇宙〉が展開していくようにされました。あらゆる言葉の背後には思考や観念がありますが、思考や観念には原初の〈その言葉〉の本質が含まれており、〈その言葉〉のエネルギーと性質によって特徴が与えられています。つまり宇宙とは、〈神の精神〉が行った偉大な思考であり、それは〈その言葉〉の振動を通して具体化されたと説明することができます。

時の初めに創造力が声として発せられ、この音、この振動、この〈言葉〉が、存在するあらゆるものになったと、古代の神秘家たちも同様に説明しています。古代エジプト、ギリシャ、ローマの神秘学派ではいずれでも、振動が宇宙の基礎となる活動する力であると考えられていました。また音は、あらゆる生命を統合する要因であり、特定のいくつかの音を物体や生物に加えると、その状態を変えることができると考えられていました。

近年行われた調査によって、興味深い多くの説が出されています。その一例に以下の説があります。古代エジプトには、洗練された音楽理論と神聖な音楽があり、それは、さらに古代から伝えられた貴重な英知であるばかりか、健康を維持する日常的に用いられた方法でもあったという説です。ダン・ファースト(Dan Furst)は、サッカラ(Saqqara)神殿群のヘブセド殿(Heb-Sed Court)は病気の診断装置であると述べています。(*1)

トマティス博士(Dr. Tomatis)は、声の音声としての性質が、人の極めて強力な表現手段であると述べています(*2)。博士は、耳が聞き取れないものは声として再現できないということを見いだしました。そしておそらく、脳が作り出せないものは耳が聞き取ることはできないであろうと述べています。脳は熟練した化学者であるだけでなく、極めて複雑な音を直接発生する装置であり、音の周波数によって、身体組織に命令を下している証拠があると博士は語っています。

すべてのものは振動しているため、鼓動、脈拍、脳波の活動など、私たちの身体には、重なり合ったいくつものリズムがあります。会話をするときには、声の高さ、声色、声の大きさやリズムが使い分けられます。研究によると、これらの使い分けが、人間のコミュニケーションの38%を担っています。そして、コミュニケーションの55%が非言語的な手段によって行われており、使用する言葉の意味によって伝えられているのは7%だけです。音と音楽はいつの時代も変わりなく人にさまざまな感情体験を与えてくれていますが、そればかりでなく、気づいているかどうかに関わりなく、コミュニケーションの方法になっています。

音楽学者のジョスリン・ゴッドウィン(Joscelyn Godwin)は、「調査によると、特定の周波数の光が奪われると、人間は病気になる場合がある」と記しています(*3)。最近発表された特に魅力的な科学的事実のひとつとして、この点において光と同様のことが、音にもあてはまるということが挙げられます。つまり、音と光は私たちの体の中でビタミンやミネラルのように働いています。大部分の人において、特定の音が不足しています。その人の声を録音して測定すると、不足している音を突き止めることができます。身体を健康な状態に保つためには、音の周波数に特定のバランスが必要ですが、このバランスは一人一人で異なっています。

「最近の実験が示しているように、脳波の周波数に相当する低音の領域において、不足している周波数を再生して聴かせることは、その人を治療する極めて強力な方法になる。このとき、極めて注目すべき、実に美しいことが起こる。必要とされる脳内の制御中枢の活動が高まることによって、体が自体を回復させることが助けられる。」

人間の体のひとつひとつには、振動数の固有の混合比があり、この混合比のバランスが崩れると、身体の全体的な振動周波数が低下します。そしてこの低下が、病気の主な原因になります。振動数の混合比は、あらゆる生理機能のリズミカルな活動と密接に結び付いています。生理機能の一つが乱されると、そのリズムが影響を受け、体の全体的な調和が混乱します。そのことによって振動数の混合比が変化し、環境中の病原体に対する耐性が弱まり、病気になりやすくなります。ですから、健康を保つ最良の方法は、自分の振動数の正常な混合比を維持することです。

存在するすべてのものは振動するエネルギーであり、このエネルギーが個々の周波数であることによって、私たちの意識には、物質世界のさまざまな種類の“もの”として現れます。このエネルギーは一定であり永遠に存続するものですが、その現れは、固有の法則と秩序に従い、常に変化し、流れる川のような状態にあります。

最も基本的な細胞から、極めて密集した高度な器官、あるいは、すきまだらけの体内の空間に至るまで、体のすべての部分は振動という性質を持つため、母音と子音から構成されている特定の音程でなされた詠唱は、それを詠唱する人や聴く人の体の細胞や中枢を刺激して、有益な効果をもたらすことができるということを実証することができます。

母音(訳注)の詠唱は、人の物質的な面とサイキック面に特定の影響を与えます。人体のいくつかの腺と神経の中枢は、サイキック体(訳注)にある中枢に対応して機能を果たしています。特定の音を、正しい条件と正しい意図で詠唱すると、その音声によって、私たちの内部と周囲の宇宙のエネルギーを刺激することができます。宇宙のエネルギーと母音の関係は、時として極めて明確であり、宇宙の振動の特定の組み合わせが現れるようにするために、特定の母音を用いることができます。

(訳注:母音(vowel sound):バラ十字会では、声として発せられる音節のことを英語では「vowel sound」、日本語では「母音」と呼んでいる。この英語は、「声の」を意味するラテン語の「ウォカリス」(vocalis)に由来する。)

サイキック体(psychic body):バラ十字会の哲学では、人間は、肉体とサイキック体とソウル(魂)の3つから構成されていると考えられている。このうちサイキック体は、生理活動のバランスの維持と超心理学的な知覚を主に担っている。

音は、人間が聴覚によって捉えられる範囲にある振動現象です。各々の音には、対応する高調波(倍音、三倍音…)があり、高いオクターブで元の音と共鳴します。このことが、詠唱によって高い周波数のエネルギーと結び付くことができ、詠唱が瞑想状態を深める仕組みであると考えられています。特定の音程で特定の母音を詠唱すると、その母音によって体内の中枢に調和した共鳴が生じ、その中枢にエネルギーが十分に流れるため、瞑想状態を深めたり、健康を維持することができます。また、詠唱によって室内に特定の周波数の振動が生じ、その振動が宇宙の他の振動と同調することによって、オーラに関連するある条件に影響が与えられます。

私たちは正しい意図を持って練習を重ねると、自らが発する音によって自身の振動数を変えることができるようになります。愛のエネルギーとともに発せられた聖なる性質を持つ音声は、意識のさまざまな領域の間の相互作用を促し、多様なレベルの意識を目覚めさせます。

私たちが何を行い、何を考え、どのように感じるかで、自身が発する振動が決まります。この振動は、その人がどのような出来事、どのような人に出会うことになるかに常に影響を与えています。この瞬間に私たちが生み出した振動が、自身の周囲の状況を作り出していますが、このような作用の多くを私たちは自覚していません。私たちが経験する気分や感情は、自身から放出されるエネルギーに常に影響を与えていて、周りの環境に痕跡を残します。そのため、ある人がある場所から立ち去った後でも、振動に敏感な人は、その人の感情や態度を感じ取ることができます。

最近の科学は、振動や音の持つ効力について、過去の神秘学派が教えていたことの一部が真実であることを確認しています。また、健康を回復したり望ましい状態に保つために声を用いることが有力な手段であることも確かめられています。人が話すあらゆる言葉には特定の振動があり、細胞の意識を向上させたり低下させたりします。

生命のすべてはまさに振動であり、言葉は、身体という部屋の内部に鳴り響きます。言葉は、体の中にも外にもその振動数を伝えます。あなたのDNAは、受け取る振動数に基づいて、あなたの生命を創造します。恐怖からは低い振動数のエネルギーの場が生じ、愛からは、高い振動数のエネルギーの場が生じます。振動数が特定の範囲内にある振動は、それぞれがDNA内の特定の遺伝コードを活性化させます。(*4)

私たちは意図して、自分の個人的な振動レベルに影響を与えることができます。集団として私たちの発する音は、自分自身と周囲の人に影響を及ぼします。そして、地球という惑星を新しい意識レベルに同調させることさえできます。

惑星の振動の性質は、生命体としてのその惑星自体だけでなく、その惑星上に住んでいるすべての生物の集団としての振動によって決まります。私たちは、宇宙意識との調和が、燃え上がるように再び取り戻されるのを思い浮かべることによって、地球の振動の状態を高めるのを支援することができます。私たちの思考と行動を通して地球の振動数を上げることで、より高いレベルの振動の調和を、自身のオーラと周囲の環境に確立することができます。私たちが自身の振動を高めるならば、この惑星の振動レベルも上昇することになります。

参考文献

Dan Furst, Double Harmonics

www.biowaves.com

Ed. Cosmic Music, Inner Traditions, Rochester, Vermont 1989

GENE KEYS, Unlocking The Higher Purpose Hidden in Your DNA

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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