こんにちは。バラ十字会の本庄です。
東京も梅雨に入り、はっきりとしない天気が続いています。今日は久しぶりの貴重な陽射しでした。アジサイの花がそこここに開いています。
いかがお過ごしでしょうか。
以前に広島を訪れたときに、平和記念公園にある鐘を見ました。そこには当時のギリシャの大使の名前で「汝、自身を知れ」という意味のギリシャ語「ΓΝΩΘΙ ΣΑΥΤΟΝ」が刻まれていました。
今回は、この格言に深く関連している「無知の知」について書いた、当会のフランス本部の代表の文章をご紹介します。
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記事:「無知とは何か」
セルジュ・トゥーサン、バラ十字会AMORCフランス語圏本部代表
「無知」(ignorance)という言葉は通常、「何かを知らないということ」もしくは「教育や知識や教養が不足していること」と定義されています。この意味では、私たちは誰もが無知であることになります。
というのも、どんな人にも知らないことが無数に多くあり、知識は限られたものであり、ある人が学び、知り、体験することのできる事柄は、はかり知れないほど多様だからです。
すべての人がこのことを謙虚に認め、受け入れなければならないのは明らかなことです。自分が無知であるということは、心静かに受け入れるべき事柄ですし、それに引け目を感じる必要はありません。無知を認めるということは不名誉であるどころか、洞察に優れ、聡明であることの証拠だとさえ言えます。
人類が誕生したころ
人類が誕生したころ、遠い昔のその当時の人々は、現代人が知っているほとんどすべてのことに対して無知であり、主な関心は、愛する人たちと自分が生き残ることでした。歳月とともに人間は、狩猟や漁猟をすること、土地を耕すこと、家畜を飼うことを学び、道具を作ったり家を建てたりすることを学びました。
つまり、人類は時とともに知識とノウハウを身につけ、無知から少しずつ抜け出していきました。原始的な文字が発明され、複雑なものへと発達し、人間は学んだことを書き記せるようになりました。文章は、人間がさまざまな分野で得た知識を伝えるための手段になりました。
知識を得るということ
そして少しずつ、哲学、科学、技術が姿を現してきました。この3つは、それぞれのやり方で人類の進歩、生活状態の改善、新しい知識の普及に役立ちました。その後、印刷技術が発明されると、書籍や他の文書が、かつてないほど多く作られるようになり、それらには一般向けの文書も、専門家向けの文書もありました。
そして近代になると、あらゆる分野の知識についての文書が、世に満ちあふれるようになりました。状況は大きく変わり、誰もが自由に知識に触れられるようになった言うことができます。過去の時代には、知識は、ほんのわずかな富裕層に属する人たちだけのものでした。
インターネットについて
インターネットの発明とともに、知識と情報が、さらに多くの人たちに広がりました。今では、無数に多くのサイト、ブログなどを通して、知識と情報を手に入れることができます。
しかし、このような知識の一般化には、危険がないわけではありません。というのも、オンライン辞書の記述を含む多くの情報に、誤り、模倣、主観的な意見、偏った意見、そして誤った方向への意図的な誘導が見られるからです。ですからインターネットのことを、情報と知識を得るための最も信頼に足るメディアだと考えるのは思慮分別のあることではありません。
無知である私たちのすべてが、情報と知識を十分に持ち合わせているという幻想を与えてしまう危険が、インターネットにはあるとさえ言えるように思えます。
「汝、自身を知れ」
バラ十字会に伝えられている次のような格言があります。「人が解放されなければならないのは、無知からであり、無知からだけである」。
この格言を次のように解釈できると私は考えています。つまり、人間の持つ最大の無知とは、知識を持っていないことではなく、人間として、集団として、個人として、自分は本当はどのような存在なのかを知らないということです。
それを見いだす方法は、本を読むことやネットサーフィンをすることではなく、内省することと、自身の心の深奥を調査することです。そして、自信を持って誠実にそれを実行している人は誰もが、いつの日か、人生の深い意味を理解したいと感じるようになります。
そのときから、その人には無知を離れる準備ができたのであり、内的な「知」が開かれることになります。
著者セルジュ・ツーサンについて
1956年8月3日生まれ。ノルマンディー出身。バラ十字会AMORCフランス本部代表。
多数の本と月間2万人の読者がいる人気ブログ(www.blog-rose-croix.fr)の著者であり、環境保護、動物愛護、人間尊重の精神の普及に力を尽している。
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ふたたび本庄です。
このことに関連して思い出したのですが、コメニウスというチェコの哲学者がいます(本名、ヤン・アモス・コメンスキー)。彼は30年戦争という当時の宗教戦争で妻と子供と多くの仲間を失い、その悲惨な経験を通して、「無知」が戦争の最大の原因であると考えるようになりました。
彼は、すべての人への教育の必要性を訴え、ユネスコ精神の産みの親だとされています。下記は小職の古い記事(8年前)ですが、よろしければお読みください。
参考記事:「マララ・ユスフザイさんとコメニウス」
下記は、前回のセルジュ・ツーサンの記事です。
参考記事:「神秘体験について」
では、今日はこのあたりで。 また、よろしくお付き合いください。
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