In Search of Unity

統一を求めて

In Search of Unity

リン・ホジキンソン

By Lynn Hodgkinson

そしてある男が言った。「自分を知ることについて話してください。」
賢者アルムスタファはこう答えた。「あなたの心はひそかに、数多くの日々の、昼と夜の秘密を知っています。しかしあなたの耳は、あなたの心の知恵の声を聞きたいと切に願っています。あなたは、魂が常に知っていることを、言葉を通して知ることになるでしょう。あなたは、夢の中の自分のむきだしの体に、指で触れることになるでしょう」。(*1)

人生は旅です。人生は探求です。しかし、何を探求するのでしょうか。私たちは何千年もの間、日常生活に生じる激しい変化から一息をついて、くつろぎを与えてくれる何かを探し続けてきました。それは、人生で繰り返し生じる対立に満ちた状況に解決をもたらしてくれる何かを、個人として探すことでした。ある瞬間にはものごとが順調に進んでいるように思えても、次の瞬間には状況が変化しています。人生では、「ずっと幸せに暮らす」などということはできないように思われます。原始時代の人間が、まるで敵のように思える環境と折り合いをつけながら日々生き延びようとしていたときから、満足感や充足感を求めて私たちが忙しく生きている現代まで、私たちの生活には、まったく同じ力が強く作用し続けています。

レイモンド・アンドレア(訳注)は「人生という旅で私たちの中に起こる対立と力のせめぎ合い」についてこう書いています。

(訳注:レイモンド・アンドレア(Raymund Andrea, 1882-1975):著作家、哲学者。バラ十字会AMORCの英国本部の元代表(1921-1946在任)。主著『The Technique of the Master』、『The Technique of the Disciple』、『The Mystic Path』。)

幼い頃から晩年までの人生そのものが、相反するものの対立でないとすれば、それがいったい何だったのか私には分からない。洞察力を駆使し公正な見方で自分自身の人生を調べれば調べるほど、こうした相反するものの対立が、人生に常に作用していることが理解される。(*2)

時には幸福をもたらし時には試練をもたらす終わりなき変化の繰り返しという、人生にある見かけ上の対立を、私たちはどのようにして解決すればよいのでしょうか。人生で起こるできごとには、すべて目的があり、すべてに解決があるに違いないと私たちは心の奥底で感じています。私たちの生活のあらゆるレベルに働いている影響力の性質を、もっと詳しく見ていくことにしましょう。変化のパターンと原因と結果を理解しようとすることで、おそらく解決の場所を見つけることができます。

対立の動的なパターン

The Dynamics of Opposition

私たちの身の周りには、たくさんの手がかりがあります。私たちの人生に作用しているのと同じ原理と法則が、自然界にも現れています。一見すると対立しているように思われるものは、実際には一つのまとまりの一部であり、もっと単純に言えば、同じコインの表と裏のようなものです。次の引用に示されているように、対立を解決する手段として、ユングは自然界のイメージを象徴として用いています。

自然界では、対立の解決は常に力強いプロセスである。自然は「象徴的」という言葉の真の意味で象徴的に活動しており、滝が上流と下流を目に見えるあり方で結びつけているように、ものごとの両方の面を表現する何かを行っている。このとき、滝そのものは上流と下流という2つとはレベルが異なる第3の存在である。存在が知られているが解決されていない対立があると、夢や空想が生じる。夢や空想は滝のように、対立するものの間の緊張と本質を示し、それによって統合が準備されることになる。(*3)

自然界では、対立の解決は常に活動的なプロセスである

自然界では、対立の解決は常に活動的なプロセスである

「世界という書物」(Liber Mundi:リベル・ムンディ)とも呼ばれる自然界は、偉大な教師です。自然界には、象徴が満ちあふれています。人間の物質世界での生活の神秘を解く手がかりは、自然の活動のまさに核心にあります。また、物質科学の法則は、ある種の普遍的な計画を理解するための手引書だと捉えることができます。(*4)

たとえば極性という概念は、原子や分子、生物の細胞の構造、電場や電磁気など、さまざまなものに適用できる幅広い概念です。原子は常に電子を受け取ったり失ったりすることで負に帯電したり正に帯電したり、互いに引き付けあったり反発したりします。分子の構造が絶えず変化すると同時に、エネルギーの場の状態も絶えず変化しています。表面上は一定に見える電流や磁場も、絶え間ない荷電粒子の相互作用によって生じており、引力と反発力が生じています。

極性はさまざまなものに適用できる幅広い概念である
極性はさまざまなものに適用できる幅広い概念である

対立するものが常に押し合ったり引き合ったりしていることが、振動という性質を持つ世界全体の基礎になっています。ギリシャの哲学者ヘラクレイトスは述べています。「争いはすべてのものの父である」。砂の粒からヒマラヤ山脈の最高峰まで、赤血球から遠く離れた銀河まで、あらゆる場所で力の対立という同じできごとが生じています。古代から人はこうした対立を、さまざまな形で表現してきました。創造の神話と伝承や、対立を描いた古典文学や壮大な航海の叙事詩や、宇宙に働く自然の原理の象徴や、変容のプロセスの象徴などに、このような表現を見ることができます。

対立からは、バランスへと向かう運動、変化、争いが生じます。音楽では、旋律の進行とともに不協和音が協和音に変わることでバランスへの移行が表現されます。その結果、緊張が解放され安らぎの感覚が生じます。しかしそのような安らぎの状態は、ほんの一時的なものです。

対立は、日常生活にはどのように現れているでしょうか。私たちの生活においても、同じ原理が働いていることがわかります。ハリール・ジブラーンは「喜びと悲しみ」というテーマに関して、この2つが分かちがたいものであると述べています。

あなたの喜びは、仮面を外したあなたの悲しみです。この2つは一緒にやってきて、一方があなたと食卓に着いているときには、もう一方はあなたの寝床で眠っていることを知っていてください。あなたは、悲しみと喜びを両側の皿に載せた天秤です。(*5)

あなたは、悲しみと喜びを両側の皿に載せた天秤である
あなたは、悲しみと喜びを両側の皿に載せた天秤である

変化とは、ある状態から別な状態への移行です。それは、存在しないものと存在するものとの間を、絶え間なく行ったり来たりすることです。変化は進行です。それは動きです。

存在と無は、互いに他を作り出す。困難さと容易さは、互いに他を支え合う。長さと短かさは、互いに他を定義する。高さと低さは、互いに他に依存する。以前と以後は互いに他の後を追う。(*6)

この終わりのないサイクルや状況の不安定さから逃れようとして、私たちは一生を過ごしています。ある種の永続性を理解しようと試み、人生をある程度コントロールしようと努めます。そうすることで、私たちは原因と結果の連鎖反応をスタートさせます。そのとき私たちはもう、アイザック・ニュートンが呼んだ「慣性が継続する道」を進んでいるのではありません。積極的に変化を起こし始めているのです。

変化の原因

The Causes of Change

私たちが呼吸し、生存し、意識を持っている限り、私たちには時間が存在しています。時間を意識することによって、私たちは、自分自身の変化や周囲の変化を感じることができます。アリストテレスは著書『自然学』の中で、できごとのない時間というものは存在せず、何も起こらなければ時間が経過することはあり得ないと述べています。『自然学』で、アリストテレスは自然界の変化の過程について検討しています。彼は、形が変化しても不変である何かが存在すると考えています。物質は単に、その性質の表現を変化させているだけです。

私たちは、赤ん坊が成長して大人になり、種子が成長して草花になり、どんぐりが樫の木になるのを見ます。それはまるで、赤ん坊も種子もどんぐりも、最初からそれぞれの成熟した姿を目指して活動しているかのようです。それは、成熟した姿についてのアイデアか手本が、赤ん坊や種子やどんぐりに内在していることを意味しているのでしょうか。どんぐりが樫の木になることを夢見ていたのでしょうか。

アリストテレスはまた、人工的に作られたものとは対照的に、自然界にあるものは自体の内部から変化を引き起こすことができると述べています。あるものが別のものになる可能性が存在するときに、変化は生じます。変化には、能動的なものと受動的なものが接触することが伴います。つまり、変化を引き起こすように作用するものと、変化して他の表現に向かおうとする推進力を受け取るものが接触する必要があります。(*7)

あるものが別のものになる可能性が存在するときに、変化は生じる
あるものが別のものになる可能性
が存在するときに、変化は生じる

私たちは答えを求めているときに、変化を起動し活性化させます。心の内側の何かが、私たちに行動し調査するように促すのです。変化の旅の最終的な目的は理解することです。そうすれば、変化の繰り返しが終わり、人生において対立しているものが解決の場所にたどり着くからです。私たちはまず、日常の生活で私たちに語りかけてくる外界のしるし(sign)に気づくようにすることによって、それを始めることができます。

私たちの経験は、原因と結果の法則によって生じています。私たちは昨日の朝に戻ることもできれば、時間の始まりに遡ることもできます。どちらを選んでも、私たちが求めている統一と平安に向かって旅をしていることに変わりはありません。赤ん坊が大人に変化するためのひな型を持っているのと同じように、私たちの心の中にある何かが、私たちを達成へと導いています。『老子道徳経』には、このことが完璧に表現されています。

最初にタオ(訳注)があった
すべてのものがそこから生じ
すべてのものがそこに帰る
源を見つけるためには、その現われを遡りなさい
あなたがその子どもたちを理解し、その母親を見つけたとき、あなたは悲しみから解放される
(訳注:タオ(Tao):道教の哲学で、万物の生起、存在、変化を司る〈宇宙〉の原理。)

統一された一つのもの

The Unity of One

対立するものが〈全体であるもの〉の一部であることを理解すると、対立を和解させることができます。普遍的な秩序を表す東洋の象徴である曼荼羅では、すべての部分と要素が一つの表現に統合されています。それを見つめていると、すべての形、運動、空間と時間が結晶化し、平安な状態が訪れます。

人間として、私たちは世界という舞台の上に立っています。私たちはプレイヤーであり、参加者です。すべてのできごとや、すべての思考、発言、行動が、私たちが求める、対立するものの統一へと向かう、人によって異なるユニークな旅に直接関連しています。その旅の最初の一歩は、自分と他のすべての人とのつながりを認識したときに踏み出されます。

ルドルフ・シュタイナーは、その著書『転生とカルマ』(*8)において、ひとりひとりの人が持つ神秘的な能力と人類の集合的な良心を仲介する方法をどのようにして見つけたら良いかという問いを発しています。1992年2月4日にスイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で行われた講演で、当時のチェコスロバキアの大統領であったヴァーツラフ・ハベル(*9)はシュタイナーのこの考えを取り入れて、次のように語っています。

人間の魂は、世界の魂と同じ素材から作られている。人間は、世界の単なる観察者でも観衆でも、分析者でも管理者でもない。人間は世界の一部であり、人間の魂は世界の魂の一部である。私たち人間個人は、単に宇宙という存在の特異なひとつの結び目であり、宇宙の中の生きたひとつの原子、もしくは、宇宙という生命体のひとつの細胞でしかないが、自分自身と自分自身の神秘に対して十分に心を開いているならば、世界の神秘、世界の意志、世界の苦しみ、世界の希望を、この細胞は体験することができる。

私たちが呼吸し、生存し、意識を持っている限り、
私たちには時間が存在している。時間を意識することによって、私たちは、自分自身の変化や周囲の変化を感じることができる

私たちが呼吸し、生存し、意識を持っている限り、
私たちには時間が存在している
時間を意識することによって、私たちは、
自分自身の変化や周囲の変化を感じることができる

幸福は私たちが成長するに従って成長する(*10)

Happiness Grows as We Grow

『不可知の雲』という本の紹介の中で、ローレンス・フリーマン(Laurence Freeman)は、「幸せになるには一生かかる」いうギリシャの哲学者たちの言葉を紹介しています。インドのある伝統思想では、人はアーシュラム(修行場)に入る前に人生のあらゆる体験を経なければならないとされています。

人生のそれぞれの段階は、衰えと死の兆しではなく、生きることの充実のための開花しつつある能力の兆しである。私たちは成長して幸せへと向かうのであり、幸せは、完全に外側に向いた活動的な生活から始まり、最終的には、孤独を通して瞑想の状態に達するような連続的な移行に沿って生じる。(*11)

私たちの旅の究極の一歩は、宇宙全体とのつながりを理解することです。人生の栄枯盛衰や、調和と不調和の発生と消滅を経て、それらを乗り越え、私たちはそれらすべてが、同じ交響曲のさまざまな部分であったことを知ることができます。アリストテレスが「第一原因」、「不動の動者」、「自発的に変化する改変者」と表現したものを観想(contemplate)するとき、すべての変化が止みます。終わりのない原因の連鎖はもはや存在しません。ついにたどり着いたここが、統一の場所だからです。

タオは大いなる母と呼ばれる。
それは空虚だが無尽蔵である。
そこから無限の世界が生じる。
それはあなたの中に常に存在している。
それをあなたは好きなように用いることができる。(*12)

私たちの旅の究極の一歩は、宇宙全体とのつながりを理解することである
私たちの旅の究極の一歩は、宇宙全体
とのつながりを理解することである

脚注
Footnotes
1.『預言者』、ハリール・ジブラーン著。
2.「相反するものの対立」:レイモンド・アンドレアが1960年に行った講演。著書『The Way of the Heart』に収録。
3.1995年にRoutledge社が出版した『ユング選集 1955-6』の中の『ユングと錬金術』(Jung on Alchemy)に収録されている「合」(The Conjunction)からの引用。
4.アーウィン・ウォーターマイヤー(Erwin Watermeyer)の記事「ニュートン力学の重要性」、『Rosicrucian Digest』誌1942年4月号より。
5.1と同じ。‌
6.『老子道徳経』。‌
7.アリストテレス『自然学』第1巻~8巻の要約より。‌https://www.sparknotes.com/philosophy/aristotle を参照。‌
8.ルドルフ・シュタイナー著『輪廻転生とカルマ-人間という存在の2つの根本的真実』。1912年3月にベルリンとシュトゥットガルトで行われた5回の講義より。(Anthroposophical Publishing Co. 1960. Translation copyright Rudolf Steiner Press.)‌
9.ヴァーツラフ・ハベル(Vaclav Havel, 1936-2011):政治家、劇作家。1989年から1992年のチェコスロバキア解体までチェコスロバキアの最後の大統領を務め、1993年から2003年までチェコ共和国の初代大統領を務めた。‌
10.ローレンス・フリーマンの『不可知の雲』の紹介からの引用。原文はイヴリン・アンダーヒルによる翻訳。‌
11.10と同じ。‌
12.6と同じ。

※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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