こんにちは。バラ十字会の本庄です。
今日の東京板橋は、秋らしい晴天が広がっています。日に日に涼しくなり、過ごしやすい朝晩です。
いかがお過ごしでしょうか。
世の中には、実にさまざまな種類の収集があるようですが、今回はこけしの収集が話題です。
山形に住んでいる、お祭りとジャズが三度の飯よりも好きだという、私の友人からの寄稿です。
こけしは東北地方の伝統工芸で、伝統こけしを製作する職人さんは、こけし工人(こうじん)と呼ばれているそうです。
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記事:『こけし』
つい先日、ふと思うところがあり『価値』という言葉を国語辞典で調べてみました。
すると『あるものを他のものよりも上位に位置づける理由となる性質』とありました。
さらに、哲学的解釈と言った説明もありました。こちらは『人それぞれの欲求や関心の度合いにより価値は相対的なものとなる』と。
う~ん。解ったような、解らないないような…(笑)
というわけで、今回は価値や価値観の話…ではなく、それらにまつわる話でいってみましょう。
ちょっと古い話になりますが、今でも似たようなことがあるのでは?
しばしのお付き合いをよろしく。
宮城県鳴子温泉で開催された全国こけし祭りに出かけたときのことです。
目的は会場内で行われる伝統こけしの展示即売会です。
その日も私は『究極の一品』を求めて会場内を歩き回っていました。
歩き回ること数十分。
ついに出逢いました!! ちょっと見は質素で地味な造りですが、なぜか人生を達観したような穏やかな表情のこけしです。
見れば見るほど、素晴らしい出来映えです。
価格は千数百円位だったと記憶しています。
これは妥当な値段です。実は、毎度のことなのですが、会場は各地から集まった大勢のこけしマニアでごった返しています。
出来の良いこけしは次々と買われていきます。早い者勝ちです、選んだならば、すぐにレジに直行です。
さて、家に帰ってから詳しく調べてみました。するとこの工人、評論家の間では評価があまり芳(かんば)しくありませんでした。
しかし、私は自分の直感と感性を信じて選んだのです。全く後悔はしませんでした。
そして、翌年の春、思っても見なかったことに出くわしました。
宮城県の遠刈田温泉にこけしを探しに行ったときのことです。目ぼしい土産物店を見つけたので入ってみました。
すると店内の一番目立つ場所にあの工人のこけしがドーンと鎮座しています。そこで思わず『オヤジさん。この工人のこけし、私も持ってますよ。去年の秋に鳴子温泉で行われた全国こけし祭りで買いましたよ』。
するとオヤジさん。驚いた顔で『えっ去年の秋? この方は去年の10月に亡くなられたのですよ。本物だとすれば最晩年の作品ですよ』。さらに言葉を続けて『それでは、これも縁と思って、このこけしを一本どうですか? 9800円ですが、9000円におまけしますよ?』
今度は私が驚きました。『オヤジさ~ん。その価格って、一体どうなっているんですか?』。
すると。作者が亡くなってしばらく後に急に評価が高まり、この価格になったのだということでした。
この時は何があったのかは一切、聞かせてもらえませんでした。
そこで、こういったことの裏事情を探るのを得意とする(?)友人に相談してみました。世の中にはいるんですよ、こういった人物が(笑)。
すると、やはりこの工人のこけしは、著名な評論家たちから『地味だ、がさつだ』と言われていたのだそうです。
ところが亡くなってしばらく後に、ある若い評論家が『あの工人の作品を地味だ? がさつだ? とんでもない。素朴な味の立派なこけしだ!!』と爆弾発言をしたのだそうです。
すると私らのような一般の収集家たちからも『そうだそうだ、味わい深い立派なこけしだ』と賛同の声が次々と沸き上がって来たのだそうです。
こういったことがきっかけとなり、突然に価値と需要が高まったのだそうです。ところが作者はもうこの世にはいません。結果、販売価格がはね上がった、ということなのだそうです。
ちなみに、私が購入したこけしも、最晩年の作品に間違いないと判明しました。
その時、友人がポツリとつぶやきました。
『こけし祭りに参加したいの一念で作り上げた渾身の一品なのだろうね』
こけしの話をもう一つ。
前述の土産物店のオヤジさんから聞いたボヤキ話です、これは笑えます。
ある時、ビシッとスーツを着込んだ男性客がふらりと店に入って来たのだそうです。挨拶もそこそこに懐から分厚い札束を取り出し、『オヤジさん、この金額で○△工人のこけしを買えるだけ売ってもらえないか?』と言ったのだそうです。
○△工人とは地元遠刈田の最長老でもあり第一人者でもあった方です。
具体的な金額は聞かせてもらえませんでしたが、相当な金額だったらしいです。当時はこういった収集家や投機が目的の人たちも珍しくありませんでした。そこで『はい。それでは』と金額相応の本数のこけしを渡したのだそうです。
すると、男性客は持参した二つのボストンバッグ一杯にこけしを詰め込み『それでは失礼します』と言ってすぐに店を出て行ったのだそうです。
いや~今日は良い客が来てくれたものだと喜んだ翌日。またもや前日の男性客が店に現れたのだそうです。そこでオヤジさん『昨日はありがとう、ごさいました~(笑顔)』。
するとその男性。ボソッと一言『○△工人。今朝がた入院したよ…』それだけ言って、さっと帰って行ったのだそうです。
それを聞いたオヤジさん『しまった~!!』
その頃、○△工人は入退院を繰り返していたのだそうです(高齢でもありましたが)。
後日聞いた話ですが、あの時が最後の入院だったそうです。
この話の説明や解説は不要ですよね……
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ふたたび本庄です。
私ごとですが、中学生の頃に、切手の収集をしていました。郵便局に、発行日の朝に買いに行ったり、切手の買い取りと販売をしている近所のお店に、お小遣いを握りしめて通ったりしていました。
あるテレビ番組で紹介されていたのですが、マジック・ザ・ギャザリングという米国発のカードゲームやポケモンカードゲームでは収集が盛んに行われていて、カードによっては驚くような高値で取引がされるということです。
また最近は、羽田空港や上野駅などのさまざまな場所で、ガチャ(カプセルトイの販売機)をよく見かけます。
切手や記念硬貨の収集は下火のようですが、それとは別の、さまざまな収集があるようです。
下記は、山下さんの前回の文章です。
記事:『ウイスキーの一升瓶』
では、今日はこのあたりで
来週末は、都合により配信をお休みします。
再来週、また、お付き合いください。
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