まさに人生を変えるほどの深みがあると
あなたに思っていただくことができれば嬉しく思います。
フランスの哲学者ジャン=ジャック・ルソーの、ある格言があります。
「良心は、決して私たちを裏切ることはなく、人類の真のガイドである。
良心と魂との関係は、本能と体との関係に等しい。
良心に従う者は誰もが、人間本来の性質に沿った道をたどるのであり、誤りへと導かれるのを心配する必要はない。」
一見すると固い言葉のように感じられます。
ところが面白いことに、ルソー本人も根っからまじめな人間というわけでもなかったようです。
「良心は、決して私たちを裏切ることはなく、人類の真のガイドである」
という部分はやや大げさですが、難しいところはありません。
良心を道徳心という言葉に置き換えると、
道徳心のことをものすごく大切なことだと思うか、
そこそこ大切だと思うかの差はあっても、道徳心のことを、完全に否定する人はあまりいないのではないでしょうか。
先ほどの格言の中の「良心と魂との関係は、本能と体との関係に等しい」
という部分が少し分かりにくいので例を使ってご説明します。
たとえば、私たちは誰もが、体のためになる食べ物は自然とおいしく感じるのに対して、古くなった魚や腐ったものなどは、もう匂いをかいだだけでも食べようという気にはなりません。
このような本能によって、私たちの体は守られています。
それと同じように人をだまさない、物を盗まない、人を傷つけない、誰も見ていない場所でも道路にゴミを捨てないといったことは、本能と同じように人間の心に本来そなわっている働きだとルソーは言っているのです。
さらに、古くなった牛乳を飲めば、体がとんでもないことになるのと同じように、良心に反する行為をすれば心がダメージを受けます。
反対に、他人の利益のために努力したり、他人の欠点や誤りを許すことができたときは、まるで良質な食べ物を吸収したときのように、魂がその分成長するということを意味しているのだと思います。
あなたは、この意見について、どう思いますか?
ルソーとは全く反対の次のような考え方もあります。
道徳というものは、国や宗教や時代によって異なる。
要するに、社会を安定して維持するために人工的に作られたルールであり、守る守らないということと心の成長とは何の関係もない。
さらに、他の人に知られることがなければ道徳など無視して、自分の利益を優先すればよいと考える方も、少数ですがおられることでしょう。
やや極端すぎるように思えますが、道徳は人工的に作られたものだという点には、同意する方が多いのではないでしょうか。
先ほどの格言の中で、ルソーはさらに良心に従うことを「人間本来の性質に沿った道」だと言っています。
つまり、人間はそもそも、善いことを行なう性質が備わっているように作られていて、その性質の表れが良心だと言っているのです。
この考え方を押し進めて、ルソーは次のような格言も残しています。
「教育とは自然の性、すなわち天性に従うことでなければならない。
国家あるいは社会のためになることを目的とし国民や公民に行なう教育は、人の本性を傷つける。」
それまでのヨーロッパの哲学では、子供というのは、理性が十分に発達していない不幸な存在だと見なされていたのです。
しかしルソーは、子供にこそ人間に本来備わっている善い性質が最も良く表れているのであり、そのような性質を文明社会の悪い影響から守ることが教育の基礎だと考えています。
バラ十字会の思想の核になっているのは、神秘学(mysticism:神秘哲学)ですが、この哲学もルソーと似た考え方をしています。
つまり、私たちの心の奥底には宇宙意識と呼ばれるレベルがあり、この部分の性質は完全に善であり、しかも創造的で聡明であると考えます。
そして、宇宙意識と日常意識(顕在意識)が通じていると、人は優れた道徳意識や本来持っている能力を発揮することができ、望む成功に向かって人生を変えやすくなると考えています。
そして、宇宙意識と日常意識を通じさせるテクニックが瞑想にあたります。
さて、道徳は人工的に作られたルールなのでしょうか。
それとも、良心つまり道徳心は、人間に本来備わっている性質なのでしょうか。
あなたはどちらだと思いますか。
あるいは、この2つのいずれとも違う考え方をされるでしょうか。
考えることに時間を費やすことは、どうも時代の流行とはいえないようですが、この機会に、ルソーの出したこの問題にチャレンジされてはいかがでしょうか。
このことからは、人生を変えるきっかけになるほど深みがある思索が生まれると思います。
以上、少しでもあなたのご参考になる点があれば、嬉しく思います。
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